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はじめに
現代のビジネス環境は目まぐるしい勢いで変化していますが、あなたはこの変化に適応できているでしょうか?
- 市場や技術の変化に適応できず、従来の方法に固執している
- 新しいアイデアやアプローチが生み出せない
- 根本的な問題にアプローチする力が弱まっている
このような人は、物事に対する考え方を見直す必要があるかもしれません。
現代のビジネス環境では、柔軟な思考と適応力が求められるため、ゼロベース思考の重要性がますます高まっています。
環境の変化とともに自分も変えていかなければ取り残されてしまう時代ですので、「周りについていけてないな」と感じている人は、今すぐスキルアップを図るべきです。
ここでは、現代人が習得しておきたい考え方である「ゼロベース思考」について、メリット・デメリット、そしてトレーニング方法について解説していきます。
時代に合った考え方を習得したい人は、ぜひ参考にしてみてください。
ゼロベース思考とは
ゼロベース思考とは、既存の前提や習慣、過去の経験にとらわれず、全てを白紙の状態から見直して考えるアプローチです。
特徴としては、以下の5つが挙げられます。
- 既成概念の排除:これまでのやり方や常識に縛られず、全く新しい視点から問題を捉える
- 目的や本質の再確認:「なぜそれをやるのか?」「本当にそれが必要か?」といった根本的な問いを投げかける
- 創造的な解決策:従来の方法にとらわれず、革新的なアイデアや方法を探る
- 柔軟な思考:既存のプロセスや構造を見直し、必要に応じて抜本的な変更を加える
- コスト効率の改善:過去の予算や実績に依存せず、ゼロから最適な資源配分を検討する
ゼロベース思考は、新しい市場への進出や事業の再構築、業務プロセスの改善などのビジネスシーンでのみ利用されると思われがちですが、実は個人レベルの問題にも使うことができます。
例えば、自分のキャリアをゼロから見直し、真にやりたいことや目指すべき方向を考えるという風にも利用可能です。
このように、ゼロベース思考は変革やイノベーションを推進する上で非常に有効な手法であり、従来の枠を超えた新たな可能性を引き出す力を持っています。
ゼロベース思考が注目される背景
ゼロベース思考が注目されるようになった背景としては、主に以下の2つが挙げられます。
- ビジネス環境の複雑化
- 働き方の多様化
簡潔にまとめると、
- 競争が激化し、従来のやり方では企業や個人が生き残るのが難しくなっている
- 社会の変化により、新たな働き方を模索する必要が出てきた
ということが背景にあります。
では、詳しく見ていきましょう。
①ビジネス環境の複雑化
ビジネス環境や社会が急速に変化したことが大きな影響を与えています。
主な要因としては、以下の4つが挙げられます。
- 急速な技術革新:IT技術・AI・IoT・ブロックチェーンなどの急速な発展により、ビジネスの在り方が大きく変化。従来の方法や技術に固執していては新しい技術を取り入れることができず、競争に遅れを取るリスクが高まる。
- 市場のグローバル化:市場が国境を越えてグローバルに拡大し、競争が激化。従来のローカルな市場戦略や方法では、グローバルな競争に勝ち残ることが難しくなった。
- 顧客ニーズの多様化と変化:顧客の嗜好やニーズが多様化し、変化のスピードが速くなった。従来の製品やサービスでは顧客の期待に応えられず、柔軟で革新的なアプローチが求められている。
- ビジネスモデルの変革:サブスクリプションモデルやシェアリングエコノミーなど、新しいビジネスモデルが登場。伝統的なビジネスモデルに固執すると、新しい競合に対抗できなくなる。
これらの背景から、ゼロベース思考は現代のビジネス環境において重要なアプローチとして認識されるようになりました。
既存の枠組みにとらわれず、柔軟かつ革新的な解決策を模索することが、変化の激しい時代において成功するための鍵となっています。
②働き方の多様化
COVID-19パンデミックを機に働き方も大きく変化しました。
具体的な影響としては、以下の5つが挙げられます。
- リモートワークを始めとした柔軟な働き方:リモートワークが急速に普及し、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方が求められるようになる。従来のオフィス中心の働き方や管理方法では対応できないため、新しい働き方に適応した業務プロセスや管理手法を再構築する必要がある。
- 多様な人材の活用:ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の重要性が高まり、年齢や性別、国籍、バックグラウンドの異なる多様な人材が活躍するようになった。多様な視点やスキルを活かすために、従来の均一的な働き方や組織文化を見直す必要がある。
- ワークライフバランスの重視:働き方改革やライフスタイルの変化に伴い、仕事と生活のバランスを重視する風潮が強まっている。従来の長時間労働や画一的な勤務時間ではなく、柔軟な勤務体系や効率的な働き方が求められている。
- キャリアの多様化:個人が複数のキャリアを持つパラレルキャリアや、短期的なプロジェクトベースの働き方が増加している。従来の終身雇用や固定的なキャリアパスにとらわれず、多様なキャリア形成を支援する仕組みが必要となった。
- テクノロジーの進化:AIやビッグデータ、クラウドコンピューティングなどのテクノロジーの進化により、仕事の仕方が大きく変わっている。従来の仕事の流れやプロセスをテクノロジーに適応させる必要がある。
ビジネス環境の複雑化に加えて、このような多様化する働き方に対応するためにも、従来の枠組みにとらわれない柔軟な思考が必要となっています。
ゼロベース思考を身に付けるメリット
ゼロベース思考を身に付ける主なメリットは以下の4つです。
- 創造的なアイデアを生み出せる
- 顧客視点で考えられる
- 複雑化した問題を解決できる
- 変化に対応しやすくなる
①創造的なアイデアを生み出せる
ゼロベース思考は、固定観念や習慣にとらわれずに考えることを重視するため、創造的なアイデアを生み出せるようになります。
現代のような変化する市場や環境に適応し、個人や組織が成功を収めるためには創造的なアイデアが必要です。
例えば、創造的なアイデアが生み出せるようになると、以下のようなメリットが得られます。
- 競争優位性の獲得
- 新規ビジネスの創出
- リスク管理の質向上
- チームのモチベーション向上
- 長期的な成長
他者が思いつかない独自の価値を提供することで、マーケットシェアの拡大や顧客の支持を得たり、新たな市場を開拓することができますし、多様な視点を取り入れることで、予期しないリスクや課題に対する備えもできるようになります。
また、創造的なアイデアが生まれる環境は、チームメンバーにとって刺激的であるとも言えます。
そういった環境のもとで、新たな挑戦や成果を共有することでチーム全体の士気が高まり、生産性や協力体制の向上にも繋がります。
②顧客視点で考えられる
ゼロベース思考は、既存の考え方を一旦捨てて考えるため、顧客の本質的なニーズや課題に改めて焦点を当てることができます。
顧客との信頼関係を強化し、企業やサービスの成長を促進するためには、顧客視点で考えることが重要です。
- 「顧客は何を必要としているのか?」「どのような問題を抱えているのか?」を把握し、それに対してどのような価値を提供できるかを考える
- 顧客のストレスを取り除き、使いやすさや満足度を高める取り組みを行う
このように、単に顧客の意見を聞くのではなく、その意見をビジネスの中心に据え、顧客にとって最も価値のある体験や解決策を提供することが重要です。
顧客視点で考えるメリットとしては以下の4つが挙げられます。
- 顧客満足度の向上
- 競争力の強化
- 製品・サービスの改善
- ブランドイメージの向上
顧客視点を欠いてしまうと競争力を失い、長期的なビジネスの持続性が危ぶまれるため、常に顧客の立場に立った視点での戦略が求められます。
③複雑化した問題を解決できる
複雑化した問題に対しては複雑な解決策を考えがちですが、ゼロベース思考は問題の核心をつくことで、シンプルで効果的な解決策を見出すことができます。
複雑な問題は、従来のアプローチが通用しなかったり、その定義自体が間違っている場合もあります。
そのため、これまでのアプローチを疑い、全く新しい方法を模索することや、問題そのものを再定義することで全く異なる角度から解決策を見つけ出すことが必要です。
その点、ゼロベース思考は、問題を根本から捉え直し、効果的かつ革新的な解決策を導き出すのに役立ちます。
複雑化した問題がスムーズに解決できると、以下のような多くのメリットが得られます。
- 効率性や生産性の向上
- コスト削減
- 組織の柔軟性や競争力の強化
- チームのモチベーション向上
- 顧客満足度の向上
- 意思決定の迅速化
現代は変化が激しく複雑な問題ばかりですので、効率的かつ的確に解決することが求められます。
④変化に対応しやすくなる
ゼロベース思考を身に付けることで、組織や個人は変化に対して柔軟で迅速に対応できるようになります。
具体的なメリットは、以下の通りです。
- 状況が変わった際に新しいアプローチを柔軟に取り入れられる
- 新しい状況に迅速に適応し、問題解決をスムーズに進められる
- 未知の状況や不確実な状況に対する耐性が高まり、変化に対して前向きに捉えられるようになる
- 変化に対応するだけでなく、変化を作り出せるようになる
固定観念に縛られず、常に新しい視点から物事を捉えることで、変化を恐れずに受け入れ、むしろその変化を利用して成長やイノベーションを実現できるようになります。
これにより、変化の激しいビジネス環境でも競争力を維持し、さらには新たなリーダーシップを発揮することができるようになります。
ゼロベース思考のデメリット
ゼロベース思考は、現代社会にマッチした考え方ですがメリットばかりではありません。
主なデメリットとしては、以下の4つが挙げられます。
- 時間と労力がかかる
- 過去の成功や経験を無視するリスクがある
- 組織内で抵抗が生じやすい
- 失敗のリスクが伴う
これらのデメリットを理解した上で、ゼロベース思考を適切に活用することが重要です。
場合によっては、従来の方法と新しいアプローチを組み合わせることで、より効果的な解決策を見出すことができます。
①時間と労力がかかる
全てをゼロから考え直すためには、深い分析と慎重な計画が求められるため、必然的に時間と労力がかかってしまいます。
特に、以下のような工程では多くのリソースを必要とします。
- 既存の前提を取り払う作業
- 新しいアイデアの創出
- 関係者間の合意形成
- リサーチとデータ収集
- 計画の再構築と実行
従来の考え方ややり方が染み付いている組織や個人にとって、全く新しい視点で問題を捉え直すというのは非常に難しく時間のかかる作業です。
また、ゼロベース思考で導き出された新しいアイデアや戦略を実行に移すには、関係者全員の合意が必要です。
しかし、従来のアプローチと大きく異なる場合、これまでの方法に慣れ親しんだ関係者の理解と納得を得るのは容易ではありません。
そのため、反対意見をまとめたり、説得したりするのにも時間がかかってしまいます。
②過去の成功や経験を無視するリスクがある
ゼロベース思考には、創造的な解決策を見出す利点がありますが、同時に過去の成功や経験を無視するリスクも伴います。
というのも、ゼロベース思考には以下のような性質があるからです。
- 既存の知識を意図的に捨てる
- 過去のデータを無視する
- 新しいアイデアや手法を重視する
過去の経験に基づいた最適解を無視することで、あえて新しい視点を探そうとしますが、この過程で過去の有益な知識やノウハウが軽視される可能性があります。
また、既存の枠組みを壊して新しい考え方を模索するということは、経験豊富なスタッフの意見や知識が過小評価されることにも繋がります。
そのため、過去の知見や実績を完全に無視するのではなく、適切に組み合わせて活用することで、ゼロベース思考の強みを活かしながらリスクを軽減することが重要です。
③組織内で抵抗が生じやすい
ゼロベース思考は、従来のやり方を根本から見直すことを伴うため、組織内での抵抗が生じやすいです。
特に、長年にわたり確立されたプロセスや文化を持つ組織では、変化に対する抵抗が強く、新しいアイデアや方法を受け入れるのが難しい場合があります。
抵抗が生じやすい主な理由は以下の通りです。
- これまでのやり方が否定されることに不安を感じる
- これまで積み上げてきた努力が無駄になると感じる
- 権威や専門性を持つ人にとっては、自分たちの知識や経験が軽視されると感じる
- 新しい方法に対するリスクを懸念する
このような心理的抵抗やリスク回避志向が強い組織や個人は、従来の安全で確実な方法を支持し続ける傾向があります。
これを乗り越えるためには、変革の必要性やメリットをしっかりと説明し、従業員の意見を尊重しながら進めることが重要です。
④失敗のリスクが伴う
ゼロベース思考には、当然ながら失敗するリスクが存在します。
これは、既存の枠組みや経験にとらわれず、問題を根本から再構築するアプローチを取るため、新しいアイデアや戦略が必ずしも成功するとは限らないからです。
具体的な理由は以下の通りです。
- 斬新なアイデアやアプローチを追求することが多く、実行可能性が低いものが採用されることがある
- 過去の知見を活用しないことで同じ過ちを繰り返したり、すでに有効性が証明されたアプローチを無視してしまう可能性がある
- 新しいアイデアやプロジェクトに大きな投資を行った結果、それが上手く機能しなかった場合、組織全体に大きな経済的損失やリソースの浪費をもたらすリスクがある
- 従業員が新しい戦略や方針に適応できなかったり、強い抵抗を示す場合、プロジェクトの実行が滞り、計画通りに進まないことがある
- 市場や顧客のニーズと合致しないアクションを行うリスクもある
このように、革新的なアイデアを生み出せる一方で、失敗するリスクも多く含んでいます。
これらの失敗を避けるためには、新しいアイデアが実行可能か、過去の経験を無視していないか、組織や市場に適応可能かを慎重に検討することが必要です。
リスクを管理しつつ、慎重な分析と実行計画を立てることで、ゼロベース思考の利点を最大限に活かしながら、失敗のリスクを最小限に抑えることが可能です。
ゼロベース思考を身に付けるためのトレーニング方法
ゼロベース思考を身に付けるためには、以下のステップを意識的に実践することが重要です。
これにより、既存の前提にとらわれず、問題や課題を根本から再構築する能力が養われます。
- 現状を疑う姿勢を持つ
- 先入観を持たない
- 問題を再定義する
- クリティカルシンキングを行う
- 未来思考で考える
- 多様な視点を取り入れる
①現状を疑う姿勢を持つ
ゼロベース思考を実践する第一歩は、現状を当たり前と考えずに、常に「なぜこの方法で行っているのか?」と問いかける姿勢を持つことです。
現行のプロセスやルールを疑い、そもそもそれが最適なアプローチであるのかを見直します。
具体的な方法は、以下の通りです。
- 日常の業務やプロジェクトで、「なぜこの手法を採用しているのか?」「他の方法ではダメなのか?」と問いかける習慣をつける
- 定期的にチームや個人で、現在の業務プロセスや戦略を見直す機会を設け、改善の余地がないかを検討する
この姿勢を持つことで、現状に満足せず、常に新しい可能性を探る習慣が身に付きます。
そうすることで、個人や組織は変化に対して柔軟に対応し、成長し続けることが可能になります。
②先入観を持たない
ゼロベース思考では、過去の経験や既存の知識によるバイアスを排除し、白紙の状態で問題に取り組むことが重要です。
そのため、先入観を持たずに、あらゆる可能性をオープンに検討する姿勢が必要です。
具体的な方法は以下の通りです。
- 問題に直面した際は、「もし何も前提がなかったら、どのように解決策を見つけるか?」と考えてみる
- 他の業界や分野の方法論や事例を参考にし、自分の分野でどのように応用できるかを考える
ただ、先入観を排除するのは、そう簡単なことではありません。
今までの経験や感情、信念などが強く影響するため、まずは自分がどのようなバイアスを持っているのか認識することが重要です。
自己認識を高めることで、自分の思考のパターンや傾向に気づき、それをコントロールできるようになります。
③問題を再定義する
ゼロベース思考では、問題の定義そのものを再構築することが必要です。
既存の問題設定が正しいかどうかを見直し、場合によっては新たな視点から問題を捉え直します。
具体的な方法は以下の通りです。
- 問題や課題に取り組む際に、「この問題の本質は何か?」「この問題をどう定義すべきか?」と考え直す
- チームで問題をディスカッションし、異なる視点や意見を集めて問題の再定義を試みる
再定義を通じて、表面的な問題から根本的な問題へと視点を移すと、新たなアプローチを取り入れることができます。
これにより、より効果的かつ革新的な解決策が生まれやすくなり、個人や組織が直面する課題に対して柔軟に対応できるようになります。
④クリティカルシンキングを行う
クリティカルシンキングは、既存の前提や仮定を疑い、問題の根本原因を深く掘り下げ、論理的かつ現実的な解決策を導き出すのに役立ちます。
これにより、ゼロベース思考がより効果的に実践され、持続可能な成果を生み出すことができるようになります。
具体的な方法は以下の通りです。
- 「この情報は誰が、何を目的に提供しているのか?」を常に考える
- 自分の考えに対して「なぜそう考えるのか?」を問い直す
- 自分が特定の意見に偏っていないか、常に自己チェックを行う
- 「もしAが正しいならば、Bも正しいか?」といった条件付きの推論を考える練習をする
これらを日常的に意識しながら実践することで、クリティカルシンキングのスキルを高め、より効果的な問題解決や意思決定ができるようになります。
⑤未来思考で考える
未来思考は、長期的な視野で未来の可能性を考え、今の行動や意思決定に反映させる能力です。
様々なシナリオを想定し、それぞれに対してゼロから戦略を立てる練習をすることで柔軟な思考が養われ、変化に対応しやすくなります。
具体的な方法は以下の通りです。
- 「もし〇〇が起こったら?」という仮説を立ててみる
- 現在のトレンドが今後どのように変わる可能性があるかを想像してみる
- 楽観的・悲観的・中立的なシナリオを描き、それぞれのシナリオで自分や組織がどのように行動すべきかを考える
- 「この決定が10年後にどう影響するか?」と問いかける
- 現状に満足せず、常に「次に何が来るか?」を考える習慣をつける
未来思考を身に付けるためには、現在の延長線上ではなく、様々な未来の可能性を考え、長期的な視野で行動を計画することが重要です。
これらのコツを活用することで、不確実な未来に対しても柔軟に対応し、持続的な成長や成功を目指すことが可能になります。
⑥多様な視点を取り入れる
ゼロベース思考を強化するためには、自分自身の視点だけでなく、多様な意見や視点を取り入れることが重要です。
そうすることで、思考の幅が広がり、より柔軟かつ斬新なアプローチが可能になります。
具体的な方法は以下の通りです。
- 異なる部門や分野の人と協力し、様々な視点から問題を検討する機会を作る
- チームやプロジェクトで、多様なメンバーを積極的に組み入れ、新しいアイデアの創出を促進する
- 会議やディスカッションで、異なる意見や批判を積極的に歓迎する
- 自分が通常関心を持たない分野のニュースやトレンドをフォローする
多様な視点を取り入れることで、従来の枠組みを超えた新しいアプローチや解決策を見出すことができ、ゼロベース思考の真の価値を最大限に引き出すことができます。
ゼロベース思考の具体例
では、実際にゼロベース思考を取り入れて成功した企業事例について見てみましょう。
ここでは、聞き馴染みのある日本の3つの企業についてご紹介していきます。
①ユニクロ
ユニクロは、ゼロベース思考を活用して「低価格で高品質」というこれまでのアパレル業界の常識を覆すビジネスモデルを確立しました。
1990年代の日本のアパレル市場では、ファッションは「高価格=高品質」という固定観念が強く、品質を保ちながらコストを下げることは難しいとされていました。
しかし、ユニクロはこの前提をゼロベース思考で見直し、従来のアパレル業界の流通構造を完全に再設計したのです。
具体的には、中間業者を排除し、素材の調達から製造、販売までを一貫して管理する「SPA(製造小売業)」モデルを採用することで、低価格かつ高品質な商品を提供できる体制を構築しました。
その結果、世界的に展開する大手ファッションブランドへと成長し、「エアリズム」や「ヒートテック」といった革新的な商品を次々に生み出すことに成功しています。
②リクルートホールディングス
リクルートホールディングスは、ゼロベース思考を駆使して、紙媒体からインターネットへのシフトを成功させ、デジタル分野で優位な立場を築きました。
1990年代から2000年代にかけて、リクルートは求人情報誌や進学情報誌といった紙媒体でのビジネスが中心でしたが、インターネットの普及により、従来のビジネスモデルに限界が見え始めていました。
そこで、リクルートは、紙媒体に依存しない新たなビジネスモデルをゼロから構築する必要があると認識しました。
そして、インターネットを活用した新しいサービスモデルに大胆に舵を切り、リクナビやSUUMOなどのオンラインサービスを展開したのです。
その結果、求人情報や不動産情報を全国規模で迅速かつ効率的に提供することができるようになり、業界での競争力を大幅に強化することに成功しました。
③メルカリ株式会社
メルカリは、ゼロベース思考を用いて、フリマアプリという新しい市場を開拓し、成功を収めました。
2010年代初頭、日本では個人間の中古品取引がオークションサイトを通じて行われていましたが、これには一定の知識や手間が必要であり、多くの人にとっては利用が難しいものでした。
そこでメルカリは、「誰でも簡単に売買できるプラットフォーム」というゼロからの発想で、スマートフォンを利用したフリマアプリを開発しました。
ユーザーインターフェースを直感的で簡単なものにし、幅広い層が利用できるようにしたのです。
その結果、短期間で日本国内最大のフリマアプリへと成長し、海外市場への進出やキャッシュレス決済サービス「メルペイ」の展開により、さらに事業領域を拡大しています。
ゼロベース思考の注意点
ゼロベース思考は強力なツールですが、全ての状況で有効というわけではありません。
特に、時間的制約がある場合や実績のあるプロセスが既に存在する場合、組織文化が変革に抵抗する場合などでは、他のアプローチを検討することが必要です。
また、成熟した市場や法規制が強い分野では、ゼロベース思考の適用に慎重さが求められます。
適切に運用しないと逆効果になる可能性があるため、過去のデータや経験を適度に参考にし、リソース管理やリスク管理を徹底することが、ゼロベース思考を成功に導くための鍵となります。
まとめ
今回は、ゼロベース思考のメリットやデメリット、そして身に付けるためのトレーニング方法について解説しました。
現代のように変化の激しい時代では、従来の考え方だけで生き抜くことは難しくなっています。
既存の知識や考え方も必要ですが、時には革新的なアイデアも求められます。
そこで役立つのが、従来の枠組みや前提にとらわれず、根本から物事を考え直す「ゼロベース思考」です。
これができれば、創造的なアイデアの創出や複雑な問題の解決などが可能になり、既存の限界を超えて新しい価値を見出せるようになります。
ただし、一朝一夕で習得できるものでもないため、解説したトレーニング方法を日々実践して、問題や課題を根本から再構築する能力を少しずつ養っていきましょう。
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