データでわかる人材育成の大切なポイントと実践方法を徹底解説!
人材育成の大切なポイントと具体的な方法をデータに基づいて解説。社員を4つのレベルに分けて、それぞれに効果的な育成方法をお伝えします。
“人事部として取り組みたいテーマ、従業員規模に関わらず9割の人事が「人材育成・組織開発」と回答”
これは、株式会社ラーニングエージェンシーが、2022年に調査した「人事部アンケート」の結果です。
引用:【ラーニングエージェンシー「人事の課題」実態調査(人事の取り組み編)】
https://www.learningagency.co.jp/topics/20230111
調査時期:2022年10月26日~11月30日
調査方法:Webでのアンケート調査
サンプル数:277人
あなたはこの結果について、どう思われたでしょうか?
私自身は人材育成に携わっているので、この結果にとても興味が湧きます。
ただ、人材育成に取り組みたいけれど、それが十分に叶わない・・・そんな思いが、この結果からひしひしと伝わってくるような気がしました。
というわけで、この機会に「人材育成とは?」について、詳しく深掘りをしてみることにしてみます。
この記事でわかること
この記事の目的は、企業の人事担当者や管理職の方々に、以下の3つをお伝えすることです。
1. 人材育成を行う上で、人員や時間など様々な不足にどう対応するか?
2. データから見る効果的な人材育成の方法とは?
3. 社員の4つのレベル(新卒・先輩・中堅・リーダー)による教育方法の違い
これにより、あなたが所属する組織やチームの人材育成の取り組みを、より一層進化させるお手伝いができれば嬉しいです。
是非、人材戦略を考える上での参考としてください。
人材育成で大切なこと
まず人材育成を行う上で、大切なポイントは何でしょうか?
これも様々ですが、ここでは以下の3つの要点を挙げておきます。
1. 継続的に行われること
研修やトレーニングは1回行えばOK・・・ではありません。
技術や市場環境は日々変わるため、常に最新の知識やスキルを身につけることが求められます。
2.個別のニーズに対応していること
各社員は異なる経験、スキルセットを持っています。
一律の研修やプログラムではなく、各社員の強みや弱点、キャリアの目標などを考慮したプログラムを提供することで、より高い効果と成果を期待できます。
3. 双方向のコミュニケーションがあること
一方的に研修をやらされている・・・ではなく、上司や同僚とのコミュニケーションを通じて、フィードバックや助言をもらいながら、目標を定めることが大切です。
これらのポイントを意識することで、社員一人ひとりが自らの成長やキャリアの方向性に合わせた教育や研修を受けることができるようになります。
人材育成によくある課題
とはいえ、人材育成が大切なことなど、あなたも十分理解されているはずです。
それでも現実は様々な課題があって、理想通りに進むことは少ないですよね。
では実際どんな課題があるのでしょうか?
課題を理解し、できるだけ事前に解消しておくことも、人材育成の一環です。
以下に、人材育成の取り組みにおいてよく見られる課題を挙げます。
1.目的・目標の不足
多くの企業で、何を目的として人材育成を行っているのか、その目標が曖昧であることがよくあります。
明確な目標が設定されていないため、研修や教育の内容もバラバラであり、社員にとっての取り組み方針が不明確となってしまいます。
2.人員と時間の不足
人材育成の取り組みを実施するための、専任のスタッフが不足していることも課題ですよね。
また、日常業務に追われる中で、研修や教育活動に時間を割くことが難しい状況も見受けられます。
3.予算の不足
質の高い研修プログラムの実施や、最新の学習ツールの導入には予算が必要ですね。
しかし、人材育成に十分な予算が割り当てられてられず、質の低い研修の実施や、効果的なツールが導入できないという課題に繋がることもあるでしょう。
4.人材育成に関する知識・意識の不足
組織内での人材育成の重要性が十分に認識されていない場合、その取り組みは表面的なものに留まることが多いです。
また、人材育成の方法や手法に関する最新の知識が不足していると、時代に合わない古い方法での研修や教育が行われてしまうこともあります。
5. フィードバックの不足
私の経験上、社員が研修や教育を受けた後、その内容や効果に対するフィードバックが不足していることも大きな課題です。
フィードバックの機会がないと、いくら素晴らしい教育プログラムを受けても、あまり意味がありません。
ちなみに冒頭のアンケート調査において、人材育成・組織開発を進める上での課題は?という質問に対しては「人員と時間不足・部署ごとの意識不足・人材育成の知識不足」がTOP3に挙げられていました。
これらの課題は、企業の成長を阻害する要因となりますし、人材育成に対する優先順位を下げてしまうことにもつながります。
育成内容だけではなく、これらの課題を正確に認識し、適切に対策することも大切ですね。
どうやって「不足」に対応するか?
ではここから、それぞれの不足にどうやって対応するか?を考えてみましょう。
これを考える場合は、5W1H(Why・What・Who・When・Where・How)に立ち返ると、シンプルな結論を導き出しやすいです。
1.目的・目標の不足
対応策:明確な目的を決める(なぜ/Why)
人材育成と言っても方法や目的は様々で、時代背景によっても大きく変わります。
そんな中、なぜ沢山のリソースを投じて人材育成を行う必要があるのでしょうか?
では。あなたに質問です。
Q.AIが発展し、個人の価値観が大きく変化している今だからこそ、人材育成を行う目的は何ですか?
(例1)AIが多くの業務を効率化・自動化する中、人間だけが持つ感性や対人スキル、創造性はより価値を持つようになります。
これらのスキルや資質を高め、伸ばすための人材育成が必要だと言えますね。
(例2)技術や業界の急速な変化に対応するためには、一度の教育だけではなく、絶えず新しい知識やスキルを学び続けることが求められます。
そんな「生涯学習の推進」が必要だからとも言えそうです。
(例3)価値観の変化に伴い、従来のような一貫したキャリアパスだけでなく、多様なキャリアの選択肢が増えていますよね。
それぞれの社員が自らのキャリアをデザインし、成長するためのサポートをすることで、社員の離職防止につながるから・・・かもしれません。
ちなみに目的=ゴール、目標=ゴールに辿り着くまでの道のり・指標です。
計画を行う際は、言葉の定義も明確にしていきましょう。
何のために行うのか?という明確な目的を持つことが、人材教育の質と効果を大きく変えるはずです。
2.人員と時間の不足
対応策:優先順位の設定と業務の効率化(何/What、誰/Who)
まず最も重要なスキルや職務に焦点を当て、他の要素を後回しにします。
以下の質問から考えてみましょう。
Q.組織の中でいま最も必要なスキルは何ですか?
(例)組織の将来のビジョンと戦略を考慮した上で、デジタル変革に伴う「データ解析スキル」
Q.そのために選べるトレーニングは何ですか?
(例)分析ツールの使い方、実践的なデータ解析ワークショップ
Q.目的を果たすために、誰を優先して教育すべきでしょうか?
(例)組織内でデータに関わるポジションにいる社員(マーケティング部門、経営企画部門など)
利用可能なリソースを確認し、最も効果的な育成活動の選択や調整を行いましょう。
また、人事業務の効率化ツールを導入することで、業務の効率を上げ、育成活動の時間を増やすことも選択肢に入ります。
3.予算の不足
対応策:全体的なコスト削減(何/What、いつ/When、どうやって/How)
これは状況によって一筋縄でいかない問題ですが、まずは人員・時間と同じく、徹底的に項目を絞りましょう。
Q.すぐにでも削減できるコストは何ですか?
(例)使用頻度が低いまたは不必要と判断されるソフトウェア、サブスクリプションを解約する、など。
Q.育成活動のタイミングとして相応しい時期はいつですか?
(例)通常の業務が落ち着く時期(低商談期間や非繁忙期)、新しい年度の予算策定前、など。
Q.具体的なコスト削減の方法は?
(例)オンラインリソースの活用(オンライン教育プラットフォームや無料のオープンコース)を活用する。
従業員に自己学習を奨励し、必要な情報を提供する、など。
また、以下のように交渉を活用したコスト削減も考えられます。
・研修会社の繁忙期を避ける
例えば新卒研修が多発しそうな、2月〜6月を避けて見積もりを取ったり、早期に予約を行うなどして自社にメリットのある状況を作れないか?検討してみましょう。
・フリーコラボレーション
これは実践できるケースがかなり限られる方法ですが、他の組織や専門家と協力をして、無料のワークショップやトレーニングセッションを設ける方法です。
(例1)社長同士つながりのある会社で、それぞれ優秀な社員が持っている知識やスキルを、共有し合うような勉強会を実施する。
(例2)社員の人脈ネットワークを通じて、まだ経験が浅いが、確かな知識を持っている研修講師などを探し、無料or格安で業務を依頼する、など。
特に例2は、私が講師側の立場として、起業したての頃にお世話になった方法です(笑)
人選は注意したいところですが、講師側も実績を積みたいと考えているので、お互いメリットがあります。
4.人材育成に関する知識・意識の不足
対応策:人事部のスキルアップ、リーダーシップの強化(なぜ/Why、何/What)
知識の補強については、人事部自体も継続的な研修や学びを行う必要があります。
最新の人材育成の手法や知識を取り入れることはもちろん、人材育成のマニュアル化をしっかりと行うことで、属人的な育成状況を避けることが重要です。
Q.企業全体としてではなく、人事部や各部署単体としての目的はなんですか?
(例)具体的な成果を上げて、他部署からの信頼や評価、また人事としての存在価値や影響力を強めるため、など。
Q.どんなスキルや知識があれば、社員の育成状況をより改善することができますか?
(例)コーチングスキル、育成に関する最新の情報やツールの知識、など。
Q.何があれば人材育成マニュアルが作成できそうですか?
(例)社員のフィードバックや評価データ、専門家や外部コンサルタントの意見、など。
私自身も、過去にチームマネジメントを行なっていた頃、育成マニュアルの作成を行なっていました。
当時はかなり苦労しましたが、おかげでその後の育成や指導に一貫性が生まれ、改善点も見出しやすくなりました。
人材育成に対する意識不足については、中間管理職やリーダー層の育成に焦点を当て、リーダーシップ研修やマネジメントスキルの向上を促進することで補います。
育成意識の差は、やはりリーダーの考え方の違いから生まれることが多いです。
リーダー層が求めているような研修を優先して実施することで、本人のモチベーションと成功体験を促し、育成そのものに意義を見出せる環境を作る必要があります。
これについては後ほど「データに基づいた4つの人材育成手法と特徴」でお伝えします。
5. フィードバックの不足
対応策:フィードバックの場をスケジューリングする(いつ/When、どこで/Where)
私がコーチとして「人材育成に最も重要なことは何か?」と問われたら、迷わず「フィードバックの機会をつくること」と答えます。
どんな教育プログラムも、その内容自体が大切なのではありません。
大切なのは「教育を受けた側が、その内容をどれだけ落とし込めているか?」です。
極端な話、どんなプログラムでも受け手が自身の知識や経験と照らし合わせて落とし込むことができれば、一定の効果があると考えているからです。
そのために必要なのは、フィードバックによる理解と気づきの促進です。
ちなみにフィードバックの機会が失われてしまう理由は、単に習慣として組み込まれていないからです。
フィードバック不足への対応するにはまず「スケジュールに組み込むこと」から始まります。
Q.フィードバックの確認をいつ行いますか?
(例)研修実施後、1週間以内に始める、など。
Q.どこで行いますか?
(例)各部署ごとに実施〜その後適当な部署で検討、など。
人事部としては各部署のリーダー層に、社員から得たフィードバックの報告義務を担ってもらうのが良いでしょう。
これらの情報が人材育成の成果確認として使われ、マニュアルとなり、以降の更なる改善へとつながります。
データに基づいた4つの人材育成手法と特徴
ここまで人材育成の目的、課題とその対応策についてお伝えしました。
ここからは、厚生労働省の発表している「働き方の多様化に応じた能力開発等に向けた課題について」を参考に、具体的な人材育成方法と、メリット・デメリットを整理します。
1.OJT(On the Job Training)
OJTは、実際の業務を通じて行われる教育・研修の手法です。
経験豊富な先輩社員や上司が、業務をしながら後輩や部下に技術やノウハウを伝える形式を取ります。
<メリット>
即時のフィードバックと実践:業務を通じて学んだことを、即時に反映させることができる。
実務との連携が強い:実際の業務環境での学びのため、実務とのギャップが少ない。
<デメリット>
体系的に学ぶことが難しい:実際の業務を中心に学ぶため、体系的なカリキュラム通りにいかない。
環境や人によるバラツキ:指導する先輩や環境によって、一定の品質を保つのが難しいことがある。
OJTは、時間・人員・知識などの不足が要因で、仕方なく選択されているケースもよくあります。
<参考にしたいデータと結論>
データ:OJT を評価している企業と、していない企業間でのギャップについて。
結論1:「とにかく実践させ、経験させる」といった明確な計画性がない OJT は、生産性の向上との関連があまりみられない。
結論2:「段階的に高度な仕事を割り振っている」といった明確な計画性のある OJT、「仕事について相談に乗ったり、助言している」といった具体的な業務内容に直結する OJT、「仕事の幅を広げている」といった新たな業務内容にチャレンジさせるような OJT などが、生産性の向上につながる可能性がある。
2.OFF-JT(Off the Job Training)
OJTが実務中に行われるのに対し、職場外で行われる教育方法です。
これには新入社員研修やスキルアップ研修、リーダーシップ研修、最近ではeラーニングなども含まれます。
社員の知識やスキルを一定の基準に合わせるための基本的な手法です。
<メリット>
基準を統一できる:全社員が同じ知識やスキルを持つことで、業務の品質や効率が一定以上を保つことができる。
明確なカリキュラム:目的や目標の設定がしやすく、計画的に教育を進めることができる。
<デメリット>
個人のニーズに応じた教育が難しい:一律のカリキュラムのため、個々の社員のニーズや進捗に合わせた教育が難しい。
実務とのギャップが生じる場合がある:実際の業務環境と研修の内容が乖離している場合、実務への適用が難しいことがある。
<参考にしたいデータと結論>
データ:OFF-JTの受講状況別にみた社内の雰囲気とそのギャップについて。
結論:OFF-JT の受講者は、「先輩が後輩を教える雰囲気がある」「上司や同僚などと相談しやすい雰囲
気がある」「社員同士の職場外でのつきあいがある」といった雰囲気を感じている割合が高い。
3.メンタリングとコーチング
メンタリングは、経験豊富な個人(メンター)が、自身の知識、経験、洞察力を共有し、指導対象者(メンティー)の成長と発展を支援するプロセスです。
メンタリングの目的は、メンティーが個人的なスキルや職業的な能力を向上させ、より成功するための支援を提供することです。
一方、コーチングは、コーチとしての専門知識や技術を持った者が、社員の自己啓発や問題解決をサポートする手法です。
<メンタリングとコーチングの違い>
どちらも同じような意味で使われることが多いですが、メンタリングはメンターの存在が、メンティの会社や仕事に対する考え方にまで、影響を及ぼす存在になることがよくあります。
(メンティが新人の場合、メンターは上司とは限らず、先輩社員であることも多い。)
一方コーチングは、相手の課題に対して、コーチが質問を通じて解決方法を導き出していく方法です。
比較的経験の浅い新人などに対してはメンタリングを、ある程度経験を詰んだ社員・管理職にはコーチングを適応することが多いです。
<メリット>
個人のニーズに応じたサポート:一人ひとりの課題やニーズに合わせて、的確なアドバイスやサポートが可能。
社員の自己成長を促進:自らの課題を認識し、解決策を見つけるプロセスを通じて、自己成長を促進することができる。
<デメリット>
時間と手間がかかる:一人ひとりのサポートが必要なため、コストや時間がかかる場合がある。
質が担保しにくい:メンターやコーチの質や技術によって、提供されるサポートの質が変わるため、一定の質を担保するのが難しい場合がある。
<参考にしたいデータと結論>
データ:指導役や教育係が配置された場合の効果について。
結論:多様な人材の能力が十分に発揮されている企業(正社員)に対して、指導役や教育係の配置の実施率が高い。
4.職種・職務、役職別の専門研修
これらは多くの場合、OFF-JTに含まれますが、重要な構成要素として個別に挙げておきます。
<メリット>
ターゲットに合わせた育成:特定の職務や役職に必要なスキルや知識に焦点を絞って育成することができ、各役職の具体的なニーズや要求を満たすトレーニングが実施できる。
効率的なリソースの使用:必要な人材にだけ、関連するトレーニングやリソースを提供することで、無駄なコストや時間を削減できる。
<デメリット>
統一性の欠如:組織全体の価値観や文化を浸透させるのが難しくなる可能性がある。
コストの増加:各職務や役職に合わせて異なる育成プログラムを開発・実施する必要があり、場合によってはコストが増加することが考えられる。
<参考にしたいデータと結論>
データ:多様な人材の能力発揮等の状況別にみた教育訓練の内容。
結論:多様な人材の能力が発揮されている企業では、特に「職種・職務別の研修」「役職別研修」といった研修が適用されているケースが多い。
<各図の引用>
厚生労働省「働き方の多様化に応じた能力開発等に向けた課題について」
「第2-(2)-9図:P138」「第2-(2)-11図:P140」「第2-(2)-12図:P142」「第2-(2)-7図:P136」より
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/18/dl/18-1-2-2.pdf
データからわかる5つのポイント
これらの結果をまとめると、以下のことが見えてきます。
・OJTは「明確な計画があること」「業務に直接関すること」「チャレンジさせること」が重要。
・OFF-JTは社内の雰囲気を良くし、従業員同士のコミュニケーションを円滑にする要素となる。
・メンタリング、コーチングの実施は、多様な人材の能力が十分に発揮される可能性がある。
・職種・職務、役職別の専門研修の開催は、多様な人材の能力が十分に発揮される可能性がある。
・総じて、能力開発に関連する人材マネジメントの実施は、社員の能力を高める要素となる。
では、これらを意識して、誰を・どのように育成すれば良いのでしょうか?
続いては、社員の4つのレベル(新卒・先輩・中堅・リーダー)における、具体的なポイントをお伝えします。
よくある社員レベルごとの状態と対応方法
ここでは社員を4つのレベルに分けて、具体的な対応法を考えます。
なぜなら、社員レベルを見誤った育成は逆効果になるからです。
例えば、あなたもこんな経験ありませんか?
・まだまだ指示が必要な新人に、自発的な行動を期待する。
・やる気のある中堅社員に、細かすぎる指示を出してしまう。
こういった対応の結果は、容易に想像できますよね?
またそれぞれで「1.よくある状態」「2.能力」「3.コミットメント力」「4.意識すべき対応」「5.主な育成内容」についてご紹介しますので、是非活用してください。
社員の4つのレベルとは、以下の通りです。
1つずつ見ていきます。
レベル1:新入社員
よくある状態:やる気がある初心者
能力:低
コミットメント力:高
意識すべき対応:伝え、導き、明確に指示する。
環境に対する安心感が生まれ、他社員とのラポールが築けるまでは、自発的に動くことを期待したり、変に思い切った行動をさせないこと。
教育者は具体的な指示を出し、相手がどのような業務を構成するかを考え、近くでしっかり監視しながら、成功体験を積ませる必要があります。
<主な内容>
・企業のミッションやビジョンの理解
・基本的な業務スキルやコミュニケーションスキル、など。
<取り組み方>
・ 新入社員研修やOJTを活用して、基本スキルを習得。
・メンターや先輩社員との定期的な1on1を通じて、フィードバックや指導を受ける、など。
レベル2:入社2〜3年目の先輩社員
よくある状態:学ぶ姿勢は見せるが、やる気を失いかけている
能力:中
コミットメント力:低
意識すべき対応:説明する、鼓舞する、コーチング、など。
指示と援助のバランスが必要なフェーズです。
まずは相手がきちんと理解できるよう、単なる指示ではなく説明することを意識しましょう。
その説明や決断に対して不明点や質問があれば、モヤモヤを残さずに解決できるよう質疑応答の機会を設けることです。
そのためにコーチングを使ってアプローチし、相手の内面にある欲求や気づきを促す必要があります。
<主な内容>
・専門的な業務スキルの習得
・プロジェクト管理やマネジメントの初歩、など。
<取り組み方>
専門研修やセミナーを活用して、高度なスキルにつながる知識を習得。
小規模のプロジェクトに参加し、実務を通じてスキルアップを図る。
レベル3:入社5年目ほどの中堅社員
よくある状態:チームに貢献はするが消極的
能力:中〜高
コミットメント力:様々なレベルが混在
意識すべき対応:場に参加させる、携わる、援助する
このレベルはモチベーションの高い人と低い人が入り混じるため、育成としてはとても難しいレベルです。
それなりに入社年数が経っているからといって「そんなのは出来て当たり前だ」という態度を取るべきではありません。
教育者は相手と一緒に何ができるか?を考えるブレインストーミングを行ったり、主体的に行動できるようサポートしながら、相手の達成事項を認めてあげましょう。
指示よりも、相手が動きやすくなる援助を多めにすることで、本人が自然と場に参加できる状態を目指します。
<主な内容>
・リーダーシップの基本
・意思決定や問題解決のスキル、など。
<取り組み方>
リーダーシップ研修やワークショップを活用して、基本的なスキルを習得。
実際の業務を通じて、チームマネジメントやリーダーシップを発揮する機会を増やす。
レベル4:5年目以降のリーダー社員
状態:経験豊富〜熟練者
能力:高
コミットメント力:高
意識すべき対応:委任する、任せる
ここは物理的にも精神的にも、ある程度の困難を乗り越えてきた方々が到達するレベルです。
教育者はもはや相手に任せ、そこに生じる責任と共に決断を委ねましょう。
ただし、完全放任主義というわけではありません。
相手に関心を向け、耳を傾け、明確なルールのもとで業務をモニターしましょう。
でないとモチベーションが維持できず、より成長が期待できる他社へ引き抜かれる要因となります。
<主な内容>
・ビジョンやミッションの策定と浸透
・組織の変革やイノベーションの推進
<取り組み方>
経営者研修や外部のセミナー・講演会を活用して、最新の知識を習得。
リーダー層同士の意見交換や勉強会を定期的に開催し、組織の方向性を共有・確認する。
以上が4つのレベルごとの、育成方法です。
個別の人材育成については、こちらの記事でも詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
研修なしで理想的な上司と部下の関係性をつくる“価値観”の使い方
https://blog.people-resource.jp/ideal-boss-subordinate-relationship-value
まとめ
結果の見えづらい人材育成だからこそ、確実なデータをベースに戦略を立てることは、企業の競争力向上において欠かせない要素となるでしょう。
人事担当者や管理職の方々は、是非これらの情報をもとに、より効果的な人材育成方法を考え、実践してみてください。
これにより、社員一人一人が持つポテンシャルを最大限に引き出し、組織全体としての成長を促進することができます。