要領が悪いのは欠点じゃない 真面目な人ほどハマる“見えない縛り”の正体

「自分は要領が悪い」その原因は性格ではなく“思考のクセ”にあります。その正体と、性格を変えずに仕事がラクになる考え方を解説します

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はじめに

「自分はどうも要領が悪い」

そう思いながら、この記事にたどり着いたのではないでしょうか。

周りはサクサク仕事を片づけているのに、自分だけ時間がかかる。

何度もやり直しが出る。気づけば残業している。

そして、こう思う。

「やっぱり自分はダメなんだ」と。

世の中には「要領が悪い人の特徴」を並べた記事があふれています。

優先順位がつけられない、完璧主義、抱え込みがち——どれも当たっているかもしれません。

でも、それを読んで「で、どうすればいいの?」と余計に落ち込んだ経験はありませんか。

私は人事の仕事を通じて、「要領が悪い」と言われる人を数えきれないほど見てきました。

そして、ひとつ確信していることがあります。

要領の悪さは、性格の欠陥ではありません。

そして、性格を変える必要もありません。

この記事では、よくある「特徴リスト」とは少し違う角度から、要領の悪さの本当の正体と、性格を変えずに仕事がラクになる考え方をお伝えします。

 

要領が悪い人は、実は「丁寧に生きてきた人」である

まず、大前提をひっくり返します。

要領が悪いと言われる人の多くは、能力が低いわけではありません。

むしろ逆のことが多い。

私が現場で見てきた「要領が悪い」とされる人には、驚くほど共通する特徴があります。

それは——

– 真面目で、手を抜くことに罪悪感がある

– 「間違えてはいけない」という気持ちが人一倍強い

– 人に迷惑をかけたくない、と常に気を配っている

– 細部まできちんとやらないと気が済まない

お気づきでしょうか。

これらは全部、「美徳」とされてきたものです。

丁寧さ、誠実さ、責任感、配慮。

子どもの頃から「いいことだ」と教えられ、実際にその通りに生きてきた。

その積み重ねが、いまのあなたを作っています。

つまり、あなたの「要領の悪さ」は、いいかげんに生きてきた結果ではなく、真剣に生きてきた結果なのです。

ここを取り違えると、対処の方向を完全に間違えます。

 

本当の原因は「思考のクセ」——あなたを縛る“見えないルール”

では、なぜ真面目な人ほど要領が悪く見えてしまうのか。

カギは「思考のクセ」にあります。

もっと言えば、自分でも気づいていない“見えないルール”に縛られているからです。

具体例で考えてみましょう。

あなたは上司から資料作成を頼まれました。

「ざっくりでいいから明日まで」と言われたのに、なぜか細部まで作り込んでしまい、徹夜になった。

提出したら「ここまで要らなかったのに」と言われた——。

このとき、表面的には「時間配分のミス」に見えます。

でも、その奥には、こんな“見えないルール”が動いています。

「中途半端なものを出したら、能力が低いと思われる」
「手を抜いたら、いいかげんな人間だと見なされる」
「完璧でないと、怒られる・嫌われる」

これは単なる習慣ではありません。

「そうしないと怖いことが起きる」という、心の奥の防御反応です。

人は誰しも「こう変わりたい」という願いと同時に、「変わったら困ることが起きる」という裏側の不安を抱えています。

「もっと手早くやりたい」と願いながら、心の奥では「手早くやって雑だと思われるくらいなら、時間をかけて丁寧にやるほうが安全だ」と無意識に判断している。

だから、いくら「効率化しよう」と頭で思っても、体が言うことを聞かない。

アクセルとブレーキを同時に踏んでいる状態なのです。

要領の悪さの正体は、能力でも性格でもなく、この「アクセルとブレーキの同時踏み」です。

 

いちばん効かないアドバイスは「性格を変えろ」

ここまで読んで、ひとつ腑に落ちることがあるはずです。

「真面目さをやめろ」「完璧主義を直せ」「もっとおおらかになれ」——こうしたアドバイスが、なぜあなたにまったく効かなかったのか。

それは、性格を変えようとしているからです。

考えてみてください。

何十年もかけて培ってきた価値観や気質を、「明日から変えよう」と言われて変えられる人がいるでしょうか。

性格を変えろというのは、「右利きを明日から左利きにしろ」と言うのに近い。

できないどころか、できない自分にまた落ち込むという、最悪のループに入ります。

そして、ここが大事なところです。

あなたの性格は、変える必要がありません。

真面目さも、丁寧さも、責任感も、あなたの大切な個性であり強みです。

それを捨てたら、あなたがあなたでなくなってしまう。

変えるべきなのは、性格ではありません。

変えるのは、たった2つだけです。

 

変えるのは「捉え方」と「やり方」の2つだけ

 1.「捉え方」を変える——見えないルールに気づく

最初の一歩は、自分を縛っている“見えないルール”に気づくことです。

先ほどの例なら、こう問い直してみる。

「中途半端なものを出したら能力が低いと思われる」

→本当にそうだろうか?むしろ早く8割の形を見せたほうが、上司は安心するのでは?

実は、職場で評価される人は「完璧なものを時間をかけて出す人」ではありません。

「6割でいいので早く見せて、相手と方向性をすり合わせられる人」です。

上司の立場からすると、締め切り直前に完璧なものを出されるより、早い段階で「こんな方向で進めていますが、合っていますか?」と確認してくれるほうが、何倍もありがたい。

手戻りが減るからです。

つまり、あなたが「手を抜いている」と感じる行動こそが、実は「相手に配慮した、要領のいい仕事」だったりするのです。

あなたの持ち味である“配慮”は、捨てるのではなく向ける先を変えるだけでいい。

「完璧に仕上げること」への配慮を、「相手の時間と安心」への配慮に向け直す。

これが捉え方の転換です。

2.「やり方」を変える——小さく試せる3つの行動

捉え方が変わったら、あとは具体的なやり方を変えるだけです。

性格はそのままで構いません。

(1) 6割で一度見せる

完成させてから出すのをやめ、「途中ですが方向性だけ確認させてください」と早めに共有する。

怖さは残っていて構いません。

怖いまま、やってみる。

一度やると「意外と怒られない」ことが分かります。

(2) 頼まれたら、まず「ゴール」を聞く

「いつまでに」「どのレベルで」「何のために使うか」を最初に確認する。

要領のいい人は、作業を始める前に必ずゴールを握っています。

あなたが細部にこだわってしまうのは、ゴールが曖昧なまま全力疾走しているからです。

(3)「これは丁寧にやる/これは雑でいい」を分ける

すべてに全力を注ぐのをやめ、力を入れる場所を選びます。

あなたの丁寧さは貴重な資源です。

だからこそ、本当に大事な場面に温存する。

手を抜くのではなく、配分するのです。

どれも、性格を変えなくてもできることばかりです。

怖さを抱えたまま、行動だけを少し変えてみる。

それだけで、「要領が悪い」という評価は驚くほど変わっていきます。

 

要領の悪さは、伸びしろの裏返し

最後に、いちばん伝えたいことを。

「要領が悪い」と悩めるということは、あなたが仕事に真剣でよくなりたいと願っている証拠です。

どうでもいいと思っている人は、そもそも悩みません。

そして、これまで見てきたように、あなたの要領の悪さの裏には、真面目さ・丁寧さ・責任感という、簡単には手に入らない財産が隠れています。

要領のよさは技術なので、後から身につけられます。

でも、あなたが持っている誠実さは、要領のいい人がのどから手が出るほど欲しがるものです。

順番が逆だっただけ。

財産はもう持っている。

あとは、捉え方とやり方を少し変えるだけです。

今日からすべてを変えようとしなくて構いません。

明日誰かに何かを頼まれたら、いつもより少しだけ早く、6割の状態で「方向だけ確認させてください」と声をかけてみる。

たったそれだけで十分です。

怖さは消えないかもしれません。

でも、怖いまま一歩踏み出した経験が、少しずつ「自分は要領が悪い」という思い込みをほどいていきます。

「要領が悪い」というレッテルは、誰かが軽い気持ちで貼っただけのもの。

あなた自身が、それを信じ続ける必要はありません。

これまで丁寧に、誠実に積み重ねてきたものは、何ひとつ無駄になっていません。

その財産を抱えたまま、ほんの少しだけやり方を変えていきましょう。

性格はそのままで大丈夫。

あなたは、変わらなくていいんですよ。

 

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Who is writing

株式会社経営人事パートナーズ 代表取締役 / 元・日産自動車 グローバル人事部長

横浜国立大学大学院 工学研究科修了。日本交流分析学会 正会員。

エンジニア・商品企画出身という、人事としては異色の経歴の持ち主です。

2010年、突然のグローバル人事部長への異動から私の人事人生は始まりました。

任されたのは、世界25万人の社員の採用・離職管理と、約1兆円の人件費マネジメント。

人事未経験での船出は悪戦苦闘の連続でしたが、3年後にはそれらを毎月役員会に報告できる体制をつくり上げていました。

そこで得た教訓は「人事のすべての仕事は、つなげて考えたほうがうまくいく」というもの。

採用・育成・評価をバラバラに最適化するのではなく、全体としてとらえる。

自分を客観視しにくいのは人も会社も同じだからこそ、私たちは数多くの成功と失敗の経験を活かして、お客様の人事課題を一緒に考えるパートナーを目指しています。

「人は、会社がなくても生きていける。でも、会社は人がいなければ存続できない」——

その想いで、日々お客様と向き合っています。