「営業が採れない」には理由がある——中小企業の求人票6月の見直しポイント
失業率2.5%・IT求人7割増の裏で苦戦する営業採用。中小企業が明日からできる求人票の見直し術を最新データで解説します。

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先日、ある中小企業の人事担当者から、こんな相談を受けました。
「事務の募集をかけると応募はそこそこ来る。なのに、本当に欲しい営業担当だけが、まったく採れないんです」
おそらく、これを読んでいるあなたの会社でも、似た感覚があるのではないでしょうか。
求人広告のデータを眺めていると「IT技術者は急増、事務職は激減」といった派手な見出しに目が行きます。
ところが、現場で中小企業が一番頭を抱えているのは、統計の見出しには出てこない職種——営業職だったりします。
このレポートでは、4月末に出そろった最新の公的データを押さえたうえで、「データには出にくいが現場では一番効く話」、つまり営業職をどう採るかという視点まで踏み込みます。
読み終えたとき、あなたの会社の求人票を6月に何から見直すべきか、その判断材料になることを目指します
エグゼクティブサマリー
今月、中小企業の人事担当者に押さえてほしいポイントは次の3つです。
– 失業率は改善したのに「採れない感」は消えない。
完全失業率は2.5%まで下がり、就業者数は3か月連続で増加。
数字の上では雇用は堅調ですが、現場の「欲しい人が来ない」という感覚とのズレはむしろ広がっています。
– 求人広告は前年割れでも、職種ごとの明暗は極端
全体の掲載件数は前年同月比マイナスながら、IT技術者は前年比約7割増。
一方で事務職は4割超の減少。「全体の動き」と「職種ごとの動き」を分けて見る必要があります。
– 本当の難関は、統計に出にくい営業職
派手な数字に振り回されるより、自社が採れていない職種——多くの中小企業にとっては営業——のボトルネックを特定し、求人票を相手目線で書き直すことが、6月の最優先アクションです。
人が足りない時代の採用——なぜ競争はこんなに激しいのか
まず、全体の数字から確認します。
厚生労働省「一般職業紹介状況」(2026年4月分)によると、有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍で、前月と同じ水準でした。
これは求職者1人あたり1.18件の求人がある、つまり仕事を探す人より求人のほうが多い、という状態が続いていることを意味します。
新規求人倍率は2.11倍で前月を0.04ポイント下回り、正社員の有効求人倍率は0.99倍と、こちらも横ばいでした。
一方、総務省「労働力調査」(2026年4月分)では、完全失業率(季節調整値)は2.5%となり、前月から0.2ポイント低下しました。
就業者数は6,860万人で、前年同月より64万人増え、3か月連続の増加です。
ここで、採用する側として押さえておきたいのは、「失業率が下がる」と「採れない」は、矛盾でも何でもなく、同じことの表と裏だという点です。
失業率が下がるということは、それだけ働き口を探している人が減り、労働市場が締まっている、ということです。
仕事を探す人が減れば、当然、企業同士の採り合いは激しくなります。
つまり、失業率の低下は「景気が良くてめでたい」だけの話ではなく、採用側にとっては「ますます採りにくくなっている」というシグナルでもあるわけです。
「人はいるはずなのに採れない」という感覚を持つ人もいるかもしれません。
確かに、就業者数自体は増えていますし、完全失業者数も193万人と前年からは増えています。市場に人がいないわけではないのです。
ただ、その人たちは多くがすでにどこかで働いているか、特定の職種・条件に偏っている。
「世の中に人はいる」ことと「自社が欲しい人を採れる」ことは、まったく別の話だということです。
ここが、今月一番お伝えしたい出発点です。
全体の数字が締まっている以上、採用は構造的に難しくなっている。
そのうえで、どの職種で競争が特に激しいのかを見極めることが、限られたリソースで成果を出すカギになります。
求人広告に目を移すと、企業側の動きがもう少し具体的に見えてきます。
公益社団法人全国求人情報協会「求人広告掲載件数等集計結果」(2026年4月分)によると、4月の職種別求人広告件数は全体で2,424,363件。
前月比では+2.7%と持ち直したものの、前年同月比では-7.2%と、1年前より減っています。
採り合いは激しいのに、企業の出稿は前年より慎重——人手不足のなかでも、やみくもに募集を増やすのではなく、的を絞って動いている企業が多い、という構図がうかがえます。
ここまでを一言でまとめると➡全体の数字が良くても、自社の採用が楽になるわけではない。だからこそ「全体」ではなく「自社の採れない職種」に目を向けることが、今月の出発点になります。
業界・職種別動向 派手な「二極化」の裏側
次に、職種ごとの動きを見ていきます。ここが、今月のデータで一番くっきりと差が出ているところです。
全求協の2026年4月分データでは、求人広告件数の前年同月比で、専門(IT技術者)が+68.6%と突出して伸び、建設・採掘も+20.9%と高い伸びを示しました。
逆に、大きく減ったのが事務(-41.7%)と輸送・機械運転(-35.4%)です。
事務職は、ここ数か月ずっと前年割れが続いており、企業が事務系の募集を絞っている傾向が鮮明です。
中途採用市場でも同じ方向が見えます。
パーソルキャリア「doda転職求人倍率」(2026年4月)によると、全体の転職求人倍率は2.38倍(前月差-0.01ポイント)とほぼ横ばいでしたが、職種別ではエンジニア(IT・通信)の求人倍率が10倍を超える高水準を維持。
IT人材については、求人が求職者の10倍あるという、企業から見れば極端な「採れなさ」が続いています。
ハローワーク経由の新規求人(厚労省・2026年4月分、原数値・前年同月比)を見ると、教育・学習支援業(+1.5%)、製造業(+1.2%)が増加した一方、卸売業・小売業(-11.0%)、宿泊業・飲食サービス業(-9.1%)、情報通信業(-7.3%)などが減少しています。
ここで注意したいのが、情報通信業の新規求人がハローワークでは減っているのに、求人広告ではIT技術者が急増している、という一見矛盾した動きです。
これは、IT人材を採りたい企業が「ハローワークでは高度な技術者は採れない」と判断し、専門性の高い求人広告や民間サービスへ出稿先を移していることを示唆します。
同じ「IT求人」でも、どのチャネルに出ているかで数字の出方がまるで違うわけです。
地域別では、もう一つ面白い差があります。
全求協のデータで、求人広告件数の前年同月比がプラスだったのは中四国(+6.9%)だけ。
近畿は-13.7%、関東・甲信越は-9.3%と、都市圏ほど前年割れが目立ちました。
採用の過熱と冷え込みは、全国一律ではなく地域ごとに違う顔をしているということです。
こうした職種別・地域別の動きは、自社の採用チャネルや募集地域を考えるうえで参考になります。
ただ——と、ここで現場の話に移りたいと思います。
ここまでを一言でまとめると➡数字の「二極化」は派手だが、それはあくまで広告に出てきた職種の話。
自社が本当に苦しんでいる職種は、この見出しの中にないかもしれません。
現場視点 統計に出てこない最難関「営業職」をどう採るか
ここまでデータを見てきて、IT技術者の急増や事務職の激減といった派手な動きが目立ちました。けれど、私が中小企業の採用支援をしてきて、現場で一番「採れない」という相談を受けるのは、実はこうした見出しに出てくる職種ではありません。営業職です。
求人サイト経由の募集で特に苦戦する職種に、営業担当がいます。意外に思われるかもしれませんが、これには明確な理由があります。
営業職の採用が難しいのは、市場の構造を3つの層に分けて考えると見えてきます。
ひとつ目。本当に営業が好きで、今いる会社できちんと実績を残している人。
こういう人は、そもそも転職活動に移行しません。満たされているからです。
ふたつ目。営業職の中で、顕在的に転職先を探している人。
こういう人は、たいていエージェント登録をして、自分から積極的に動きます。
バリバリ活動しているこの層は、エージェント経由で動くので、中小企業が求人広告で出す直接募集にはなかなか来ません。
そして、残るのが3つ目の層です。
「いつかは転職したいな、そろそろかもしれないな、でもまだかもしれない、でも怖いしな」——そんな、まだ行動を起こしていないけれど、心のどこかで転職を考えている人たち。
いわゆる転職潜在層です。
中小企業が直接募集で採りにいくべき相手は、実はここなのです。この潜在層にどうアピールできるかが、営業採用の勝負どころになります。
では、なぜこの潜在層は動かないのか。営業職には特有の事情が2つあると見ています。
ひとつは、「営業」という言葉そのものへの、刷り込まれた負のイメージです。
家の門に貼られた「営業お断り」「訪問お断り」——日本人は知らず知らずのうちに、営業という言葉にあまり良くない印象を持っているように思います。
もうひとつは、「営業」という言葉の定義が大きすぎることです。
営業と一口に言っても、既存顧客への深耕営業、追加発注をもらうためのルート営業、新規開拓営業——スタイルはまるで違います。
ところが求職者側から見ると、求人票に「営業」とだけ書かれていても、それがどんな営業なのかが推測できない。
自分がそこで何をする人になるのか、イメージが湧かないのです。
だから私がいつも勧めているのは、職種タイトルを変えてください、ということです。
「営業」ではなく、たとえば「お客様の課題を聞くコンサルタント営業」のように書く。
それだけで、求職者の頭に働く姿が浮かんできます。
要するに——人を求めている企業側が、求職者側の気持ちをよくわかっていない。
営業採用の失敗は、ほとんどがここに起因します。
求人票という、たった一枚の入り口で、相手の立場に立った言葉に翻訳できているかどうか。
それが、潜在層に届くかどうかを分けます。これは中小企業だからこそ効く打ち手でもあります。
エージェントに高い手数料を払い続ける体力勝負ではなく、求人票の言葉を磨くことなら、明日からでも追加コストゼロで取りかかれるからです。
ここまでを一言でまとめると➡自社が採れない職種(多くは営業)について、求職者の気持ちに立って職種タイトルと求人票を書き直す。これが、データの派手な動きより、よほど中小企業の採用を動かします。
6月に中小企業の人事担当者がとるべき3つのアクション
ここまでの話を踏まえて、今月、具体的に何から手をつけるべきか。3つに絞ってお伝えします。
1. 自社の「採れない職種」を、職種タイトルから見直す
まず、過去半年で応募が集まらなかった職種を一つ挙げてください。
それが営業なら、求人票のタイトルを「営業」のまま放置していないか確認しましょう。
「コンサルタント営業」「お客様の課題解決担当」など、その仕事が実際に何をするのかが伝わる言葉に置き換えるだけで、潜在層の反応は変わります。
新規開拓なのかルート営業なのか、どんな営業かが一目でわかるように書くことがポイントです。
2. 顕在層ではなく「潜在層」に届く求人票に書き換える
すでに積極的に動いている人(顕在層)はエージェントに流れます。
中小企業が直接募集で狙うべきは、「いつか転職したい、でもまだ怖い」という潜在層です。
この層は不安が大きいので、入社後の働く姿、教育体制、どんな人が活躍しているかを、求職者目線で具体的に書く。
「あなたがここで何をする人になるのか」が想像できる求人票を目指してください。
3. 職種別データの「派手な動き」に振り回されず、自社のボトルネックを特定する
「ITが7割増、事務が4割減」といった見出しは目を引きますが、それがそのまま自社の課題とは限りません。
自社で本当に採れていない職種はどこか、応募はあるのに採れないのか、そもそも応募が来ないのか——ボトルネックを切り分けることが先決です。
そのうえで、1と2の打ち手を、自社の最難関職種に集中投下しましょう。
この3つは、いずれも明日から、追加予算なしで着手できます。
まずは1つ、自社で一番採れていない職種の求人票を開くところから始めてみてください。
まとめ
4月末に出そろった最新データは、「雇用は堅調、しかし職種ごとの明暗は極端」という姿を映していました。
けれど、中小企業の採用現場で本当に効くのは、その派手な数字を追いかけることではなく、自社が採れていない職種——多くは営業——について、求職者の気持ちに立って求人票を書き直すことです。
市場に人はいます。届け方を変えれば、届く相手は必ずいます。
もし、「自社の採用のどこにボトルネックがあるのか、客観的に把握したい」と感じたら、無料の採用力診断で現状を整理することから始められます。
求人票の見直しや採用業務そのものの負担に悩んでいる場合は、タレントブリッジの無料相談で具体的な手立てを一緒に考えることもできます。
腰を据えて採用力を磨きたい方には、賢者の人事 AI活用塾や採用100本動画講座もご用意しています。
自社のペースに合うものから、無理なくお試しください。
参考文献・出典
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年4月分)について」
総務省統計局「労働力調査(基本集計)2026年(令和8年)4月分結果」
公益社団法人全国求人情報協会「求人広告掲載件数等集計結果(2026年4月分)」
パーソルキャリア株式会社「doda転職求人倍率(2026年4月)」
