デザイン思考はビジネスに役立つ?メリットと5つのプロセス

ユーザー視点で考え、解決策を導き出すのが「デザイン思考」です。はたしてビジネスに活かすには、どうしたらよいのでしょうか?

  

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はじめに

「顧客ニーズを満たす製品やサービスが思うように売れない」

「新しいアイデアを生み出す場が不足している」

「組織内での問題解決がスムーズに進まない」

このようなお悩みを抱えていませんか?

現代のビジネス環境は市場の競争が激化する一方で、顧客の期待値もますます高まっています。

そのため、従来の方法だけでは複雑な課題に対応しきれないと感じる企業も少なくありません。

そのような中で注目されているのが「デザイン思考」です。

単なるデザインの手法ではなく、課題解決やイノベーションを生むためのアプローチとして、多くの企業が採用しています。

AppleやGoogle、P&Gといったグローバル企業がデザイン思考を活用して成功を収めているのはその一例です。

そこで今回は、デザイン思考がどのようにビジネスに役立つのか、そのメリットを解説するとともに、5つのプロセスについて解説していきます。

デザイン思考を実践する際に使える「フレームワーク」や「注意点」についても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

デザイン思考とは

デザイン思考とは、「ユーザー視点」を重視し、問題解決やイノベーションを生み出す方法です。

基本的な特徴は、以下の通りです。

  • ユーザー中心:ユーザーの視点を徹底的に理解することが出発点です。観察やインタビューを通じて、表面化しにくいニーズや課題を見つけ出します。
  • 協働的:チーム全体で多様な視点を持ち寄ることで、新しいアイデアを生み出します。専門知識や役割を超えて協力することで、より効果的な解決策を探ります。
  • 反復的:解決策を一度で完璧に仕上げるのではなく、プロトタイプを繰り返しテストし、改善しながら進めていくプロセスが特徴です。この柔軟性が、迅速かつ適応力のある解決策を生み出します。
  • 実験的なアプローチ:失敗を恐れずに試行錯誤を繰り返すことが推奨されます。実際のユーザーからのフィードバックを重視し、理論ではなく実践に基づいて進めます。

デザイン思考は、単なる技法ではなく、課題に柔軟に対応するための「アプローチ」と言えます。

この方法論を取り入れることで、より創造的かつ効果的な解決策を導き出せるようになります。

 

アジャイル思考やアート思考との違い

アジャイル思考やアート思考との違いは以下の通りです。

  • アジャイル思考:素早く成果を出し、フィードバックをもとに改良を続けることを重視。主にプロジェクト管理や製品開発に用いられます。
  • アート思考:個人的な表現や感情を重視し、感動やインスピレーションを引き出すことを目的とします。主に芸術作品の創作や自己表現などに用いられます。

これらの思考法はデザイン思考と似ている部分がありますが、目的やアプローチが異なるため、混同しないように注意しましょう。

 

デザイン思考がビジネスで必要とされている理由

デザイン思考が注目されるようになった背景には、社会やビジネス環境の変化・顧客ニーズの多様化・競争の激化などが大きく関係しています。

主な理由としては、以下の3つが挙げられます。

  1. 顧客ニーズの多様化と消費者中心の市場への移行
  2. ビジネスの複雑化とイノベーションの必要性
  3. テクノロジーの進化

それでは、詳しく解説していきます。

 

①顧客ニーズの多様化と消費者中心の市場への移行

かつては、企業が製品やサービスを提供すれば、それを消費者が受け入れる「プロダクトアウト型」の市場が主流でした。

しかし、現代では消費者がより大きな発言力を持ち、ニーズや期待に応じた「マーケットイン型」「カスタマーセントリック型」のアプローチが求められています。

具体例を挙げると以下のようになります。

  • 「トヨタのプリウス初期モデル」と「Tesla」
  • 「インスタントラーメン」と「完全栄養食のベースフード」
  • 「レジ横に置かれた缶コーヒー」と「セルフで抽出できるコンビニコーヒー」

上記のように、一方的にメリットを押し出すよりも、消費者が抱える課題にフォーカスを当てた商品やサービスが注目されています。

デザイン思考は、消費者の視点に立ち、潜在的なニーズを掘り起こすことを重視するため、こうした市場環境に適しているとして注目を集めました。

 

②ビジネスの複雑化とイノベーションの必要性

グローバル化やデジタル技術の進展により、ビジネスの競争環境は複雑化しています。

この中で差別化を図るには、新しい価値を創造する「イノベーション」が不可欠です。

従来のような論理的で効率重視の問題解決手法だけでは、顧客が真に求める価値や市場の変化に対応できないことが増えています。

そこでデザイン思考は、感性と直感を活かしつつ、新しいアイデアを迅速に試すため、イノベーションの手法として重視されるようになりました。

 

③テクノロジーの進化

AIやIoT、クラウド技術などの進化により、企業は多くの選択肢を持つようになりました。

「あれもできれば、これもできる」というように、やろうと思えば何でもできる状態です。

しかし、それぞれの技術がユーザーや企業にどのような価値を提供するのかが明確でない場合が多くあります。

このように、選択肢が増えることで「技術優先」の考え方が強まり、「人間中心」の視点が失われる危険性が指摘されています。

そのような中でデザイン思考は、人間の共感や体験を軸にして問題を解決するため、デジタル時代において「人間性を取り戻す手法」としても注目されています。

デザイン思考では、技術ではなくユーザーの課題から解決策を発想するため、どの技術を使うべきかが明確になります。

 

デザイン思考の5つのメリット

デザイン思考の主なメリットとして、以下の5つが挙げられます。

  1. 顧客中心の問題解決が可能
  2. イノベーションが促進される
  3. 部門間の連携を強化できる
  4. 社員のエンゲージメントが向上する
  5. 複雑な問題に対処できる

短期的な問題解決に活かせるだけでなく、長期的な組織の活性化にも繋がる点が大きなメリットです。

では、詳しく解説していきます。

 

①顧客中心の問題解決が可能

デザイン思考は「共感」を最初のステップに据え、顧客の視点や感情を深く理解することから始まります。

これにより、単なる製品やサービスの提供ではなく、顧客が本当に必要とする体験を提供できます。

Amazonを例に挙げると、簡便性を追求して、「ワンクリック購入」を導入しています。

ネットショッピングをする人なら分かると思いますが、買うまでの工程は短い方が圧倒的に楽ですよね。

こういった、顧客が必ずしも重視していないが、あったら嬉しいサービス設計をすることで、顧客満足度が向上します。

また、ユーザーに寄り添ったソリューションを実現することで、競合との差別化も可能です。

 

②イノベーションが促進される

デザイン思考は、自由な発想で多くのアイデアを生み出し、プロトタイプを通じて迅速に試行錯誤するプロセスを重視します。

この反復的なアプローチが、新しい価値やビジネスモデルの創出を促します。

例えば、Airbnbはユーザー調査とプロトタイピングを繰り返し行うことで、宿泊者とホストを直接結ぶという革新的なプラットフォームを生み出しました。

このように、革新的なアイデアにより市場のニーズに合った新しい商品やサービスを迅速に開発することが可能です。

 

③部門間の連携を強化できる

デザイン思考は、異なる職種やバックグラウンドを持つメンバーが協力して課題に取り組むプロセスを重視します。

そのため、部門間の壁を取り払い、情報共有や共同作業が自然と行われます。

例えば、Googleでは、エンジニアやデザイナー、マーケターが共同して課題に取り組み、新製品の開発を加速させています。

このように、デザイン思考を用いることでチームの多様性を活用できますし、コミュニケーションが円滑になることで企業全体の一体感が生まれます。

 

④社員のエンゲージメントが向上する

デザイン思考は、全員が主体的に意見を出し合い、課題解決に貢献するプロセスを重視します。

そのため、社員が自分の意見が尊重されていると感じ、やりがいや達成感を得やすくなります。

そもそも、簡単に意見を出せるのか?という話ですが、もし「できること(Can)」に基づいて考えると、スキルや知識が少ない人は意見を出しづらくなります。

例えば、新入社員の場合はできることが少ないため、発言量が少なくなりがちです。

しかし、デザイン思考は「できること(Can)」ではなく「求められていること(Needs)」に基づいて考えるため、知識やスキルがなくても、顧客目線で考えることで意見を出すことが可能です。

このように、デザイン思考を用いることで、社員全員が仕事への意欲を持ちやすくなり、生産性の向上にも繋がります。

 

⑤複雑な問題に対処できる

現代のビジネス環境では、「顧客ニーズの多様化」や「技術の進化の速さに追いつくことが難しい」といった複雑な問題が増えていますが、デザイン思考を使えば効果的に対処することが可能です。

その理由としては、以下の3つが挙げられます。

  1. 問題をしっかり整理できる
  2. いきなり完璧を目指さない
  3. 多様な視点を取り入れる

デザイン思考のプロセスでは、最初に「課題定義」を行います。

これは、複雑な問題を「何が本当の課題なのか」に分解し、シンプルに整理するステップです。

例えば、「売上が伸びない」という問題を「顧客の購買体験にストレスがあるから」という本質的な課題に置き換えることで、解決策が見えやすくなります。

また、デザイン思考では、「まず試す」ことを大切にします。

小さなプロトタイプを作り、実際に試して改善していくことで、複雑な問題を一度に解決しようとするのではなく、段階的に解決していきます。

難しい課題に対しても、異なる職種やバックグラウンドを持つ人々がアイデアを出し合うことで、新しい発見やユニークな解決策が生まれます。

このように、問題をシンプルに整理し、多様な人々の知恵を活用して、小さく試しながら改善することで、複雑な課題も着実に解決へと導くことができるのです。

 

デザイン思考の5段階プロセス

 

デザイン思考は、以下のような5段階のプロセスで成り立っています。

  1. 共感(Empathize)
  2. 定義(Define)
  3. 概念化(Ideate)
  4. 試作(Prototype)
  5. テスト(Test)

では、具体的にどのようなことをしていくのか分かりやすく解説していきます。

 

①共感(Empathize)

まず初めに、ユーザーの視点に立ち、感じているであろう悩みや欲求を理解します。

これを行うことで、表面的なデータや想像ではなく、ユーザーの「リアルな感情や行動」に寄り添えるため、真の課題が見つけられます。

具体的には、直接話を聞く(インタビュー)・観察する・アンケートを行うなどの方法を活用します。

例えば、新しいコーヒーメーカーを開発する場合、ユーザーがどのようにコーヒーを淹れるかを観察し、不便さを感じる点を特定します。

そうすると、「掃除が面倒」「時間がかかる」などの課題が見つかります。

 

②定義(Define)

次に、「共感」で得た情報を整理し、解決すべき課題を明確に言語化します。

この時に大切なのが、課題を1つのシンプルな「問題文」として定義することです。

例えば、「忙しい朝でも、手間をかけずに美味しいコーヒーが飲みたい」といった形です。

課題が曖昧なままだと解決策が的外れになりがちですが、ここで具体的な課題を設定することで、全員の方向性が揃います。

 

③概念化(Ideate)

次に行うのは、「概念化」です。

プロセス②で定義した課題に対して、できる限り多くのアイデアを出します。

この段階では「良い/悪い」を判断せず、とにかく数を重視することが大切です。

制限を設けず自由に発想することで、斬新で独創的な解決策が生まれる可能性が高まります。

具体例は以下の通りです。

  • 自動で豆を挽き、抽出まで完結する全自動コーヒーメーカー
  • カプセル式で簡単に淹れられるシステム
  • 前夜にセットすると朝自動で淹れてくれるタイマー付きモデル

アイデアを出すコツとしては、ブレインストーミングやマインドマップを活用するとよいでしょう。

これらを使うことで、アイデアを出しにくい人でも自由に発想することができます。

 

④試作(Prototype)

アイデアを出すことができたら、その中から実現可能なもの、またはユーザーに響きそうなものを選び、小規模で形にします。

この段階では、実際の製品やサービスではなく、紙やアプリのワイヤーフレームのように簡易的なモデルで構いません。

できるだけ早くアイデアを具体的な形にして、すぐに試せる状態を作ることが大切です。

具体例は以下の通りです。

  • ペーパープロトタイプ:コーヒーメーカーの操作画面やスマホアプリのUIを紙に描き、ユーザーに操作感を体験してもらう。
  • 簡易モックアップ:既存のコーヒーメーカーを改造し、タイマー機能を追加するなどして動作を再現する。
  • シナリオテスト:透明な構造で淹れる様子を再現したシミュレーション動画を作成し、ユーザーの反応を確認する。

このように、完成品をいきなり作るのではなく、小さな試作品を作り、迅速にフィードバックを得ることでリスクを最小限に抑ることが狙いです。

 

⑤テスト(Test)

最後に、ユーザーに試作品を使用してもらい、感想や意見をヒアリングします。

具体的には、「何が上手くいっているか」「どこが使いづらいか」を確認し、課題を修正してプロトタイプを改善します。

具体例は以下の通りです。

  • 家庭でのテスト:タイマー付きモデルをユーザーの朝のルーティンで実際に使ってもらい、「手間が減ったか」「味は満足か」などのフィードバックを収集する。
  • UIテスト:スマホアプリの操作感を試してもらい、設定方法や操作手順が直感的かどうかを評価する。
  • 感情的な反応を調査:透明な構造のデザインについて「楽しさ」や「視覚的な満足感」を尋ね、ユーザーが興味を持つか確認する。

このように、早い段階でユーザーからの意見を聞き、改良を繰り返すことで、最終的な成果物の完成度が高まります。

これらのプロセスは直線的ではなく循環的に進めることができるため、テストで得たフィードバックをもとに、再び「定義」や「概念化」に戻ることもあります。

手間がかかると感じるかもしれませんが、これを繰り返すことで、ユーザーにとって本当に価値のある解決策を生み出すことができます。

 

デザイン思考の注意点

デザイン思考は、ユーザーファーストで考え、本当に必要とされている商品やサービスを作ることができる便利な方法ですが、決して万能ではありません。

主な注意点としては以下の3つが挙げられます。

  1. 必ずしも成功するとは限らない
  2. 全員が慣れていないと上手くいかない
  3. ゼロベースでの創造には向いていない

これらの注意点を理解した上で適切に活用すれば、デザイン思考は強力な問題解決の手法として機能するでしょう。

 

①必ずしも成功するとは限らない

デザイン思考は、ユーザー中心のアプローチやプロトタイピングを通じて解決策を見つける効果的な手法ですが、必ず成功するわけではありません。

上手くいかないケースの例は以下の通りです。

  • 課題の設定が不適切:顧客の購買体験を改善したいのに、誤って製品の性能改善だけに焦点を当ててしまう。
  • アイデアが実現不可能:現実的なリソースや技術の制約を無視してしまう。

このような場合は、いくら良いアイデアであっても成果に繋がらない可能性があります。

対策としては、課題設定の段階で十分にデータを収集し、ユーザーのニーズを正確に把握すること、そして、現場の技術者や専門家を巻き込み、実現の可能性を確認するプロセスを組み込むことが挙げられます。

もちろん、これらの対策を行っても、「試作→テスト」の段階で思うような成果が挙げられないこともあります。

元々、「小さく試す→改良改善を図る→再度試す→上手くいく」という流れを辿る手法であるため、すぐに成功する訳ではないと認識しておきましょう。

 

②全員が慣れていないと上手くいかない

デザイン思考は、個人で行うものではなく、チーム全体で取り組むアプローチです。

そのため、メンバー全員が手法に慣れていないと、プロセスが上手く機能しません。

特に重要になるのが以下の3点です。

  1. 共感の重要性:顧客の視点に立つことに慣れていない場合、課題設定がズレてしまう。
  2. ブレインストーミングのルール:自由な発想を歓迎する文化がなければ、斬新なアイデアが生まれにくい。
  3. 反復的なプロセス:結果が出るまで何度も試行錯誤することに慣れていないと、途中で諦めたり効率が悪くなったりする。

例えば、あるプロジェクトで、メンバーの一部が「正しい答えを最初から求める」傾向が強いと、ブレインストーミングの段階でアイデアが出なくなります。

チームで行う以上、共通認識を持つことは非常に重要な要素となりますので、デザイン思考の基本を教育し、プロセスや価値観を共有しておくことが必須となります。

いきなり実践的に行うのは難しいと思いますので、初めは簡単な課題で練習し、チームの慣れを促すとよいでしょう。

 

③ゼロベースでの創造には向いていない

デザイン思考は、ユーザーの課題に基づいた解決策を見つけるアプローチです。

そのため、「完全に新しい価値」や「ゼロからの発明」には向いていません。

例えば、顧客が「もっと便利なスマートフォンが欲しい」と感じていても、全く新しい形のコミュニケーションデバイスを提案するには至らないわけです。

iPhoneのような革新的な製品が生まれた背景には、スティーブ・ジョブズの独自の発想が大きく影響していると言えます。

これは、ユーザーの課題解決を目指すデザイン思考とは異なり、直感やビジョンを重視する「アート思考」と呼ばれるアプローチに近いです。

そのため、課題解決型のプロジェクトでは「デザイン思考」を使い、ゼロベースの創造が必要な場合は「アート思考」や「ゼロベース思考」など、別の手法を選ぶことが必要になります。

 

デザイン思考に使えるフレームワーク

デザイン思考で最も重要なプロセスとも言えるのが、「共感」「定義」「概念化」の3つです。

  • ユーザーが抱える悩みやニーズを理解する
  • 解決すべき課題を明確にする
  • 課題に対してできる限り多くのアイデアを出す

これらが曖昧だったり、不十分だと試作・テストをしても上手くいかないため、フレームワークを使ってしっかり土台を固める必要があります。

デザイン思考に使える主なフレームワークは以下の3つです。

  1. 共感マップ
  2. カスタマージャーニーマップ
  3. ハウ・マイト・ウィーフレームワーク

では、詳しく解説していきます。

 

①共感マップ

共感マップは、ユーザーがどのように感じ、考え、行動しているのかを整理するフレームワークです。

「見る」「聞く」「言う」「考える」「感じる」「する」の視点で情報を収集し、ユーザー像を具体化します。

具体的な手順は以下の通りです。

  1. 対象となるユーザーを特定する。
    例)コーヒーメーカーを購入する主婦やビジネスマン
  2. 4つの象限に情報を整理する:用意した共感マップに以下の項目を記入していきます。
    ①言う/する(Say & Do):ユーザーが実際に発言している内容、行動や習慣
    例)忙しい朝でも簡単に美味しいコーヒーが飲みたい。毎朝インスタントコーヒーを淹れる。
    ②考える/感じる(Think & Feel):ユーザーの考えや悩み
    例)手軽さは大事だけど、味も妥協したくない。
    ③見る(See):ユーザーが普段目にしているものや情報
    例)広告やSNSで見かける「簡単操作のコーヒーメーカー」
    ④聞く(Hear):ユーザーが普段耳にしている情報
    例)職場の同僚が自動洗浄機能のあるモデルが良いと勧めてきた。
  3. 不満や問題点(Pain)と得たい価値(Gain)を特定する。
    ・Pain:コーヒーを淹れる手間が面倒
    ・Gain:高品質なコーヒーが簡単に淹れられる

このように、共感マップに情報を細かくまとめることで、ユーザーの感情や行動、ニーズを明確にし、デザイン思考のプロセス全体で具体的かつ効果的に活用することができます。

 

②カスタマージャーニーマップ

カスタマージャーニーマップは、ユーザーが製品やサービスを知ってから使うまでの過程を時系列で整理するフレームワークです。

これを活用することで、各段階でのユーザーの感情や行動を把握し、課題を発見することができます。

具体的な手順は以下の通りです。

  1. ターゲットのペルソナを設定する。
    例)30代男性・会社員・忙しい朝に美味しいコーヒーを飲みたい
  2. 認知→興味関心→情報収集→比較検討→購入・契約→利用→サポートのように態度変容のステップを設定して、ユーザーの行動や思考を整理する。
    例)興味関心段階:本当に便利か疑問に思う。
    例)利用段階:最初は使いやすさに感動するが、掃除が面倒に感じることもある。
  3. 課題と改善点を特定する。
    例)
    ・課題:他のサービスとの違いが分からない。
    ・改善点:広告やWebサイトに「簡単さ」や「お得感」をより強調する内容を反映する。
    例)
    ・課題:ユーザーが「掃除のしやすさ」を強く求めていることに気づく。
    ・改善点:クリーニング機能を強化する。

人が商品やサービスを購入したり利用する前には、認知・情報収集・比較検討など複数の工程を踏むことが分かっています。

これらの工程一つひとつに焦点を当てて考えることで、その時にユーザーが何を考え、何を感じているかが明確になります。

つまり、カスタマージャーニーマップを活用することで自然とデザイン思考が行えるという訳です。

 

③ハウ・マイト・ウィーフレームワーク

ハウマイトウィーフレームワークは、「どのようにすれば~できるか?」という問いを作成し、具体的なアイデア出しの起点とするフレームワークです。

これを活用することで、解決すべき課題を建設的な問いに変換し、発想の方向性を広げることができます。

具体的な手順は以下の通りです。

  1. 課題を特定する。
    例)忙しい朝に手間をかけず美味しいコーヒーを飲みたい。
  2. 課題を解決するために、前向きで広い視点を持つ問いに変換する。
    例)どのようにすれば、忙しい朝でもユーザーが短時間で美味しいコーヒーを楽しめるようにできるか? 
  3. 問いを深掘りして具体的な解決策を導き出す。
    例)タイマー機能付きの自動清掃システムを作る。一杯分だけ抽出するカプセル方式を採用する。
  4. ブレインストーミングを行い、多くのアイデアを収集する。

ポイントは、「〜できるか?」の部分を「あるべきユーザー体験」にすること、そしてその手段や方法まで明確にしないことです。

「どうしたら改善できるか?」のように抽象的すぎたり、「どうしたら短時間で美味しいコーヒーを抽出できるカプセルが作れるか?」のように具体的すぎてもいけません。

これには練習が必要ですが、斬新で創造的なアイデアを多く出すためには、適切な問いを立てることが大切です。

 

デザイン思考の活用事例

デザイン思考を活用して成功を収めた事例はいくつも存在します。

ここでは、代表的な例として以下の3つについてご紹介していきます。

  1. iPod・iTunes
  2. Oral-Bの電動歯ブラシ「Genius」
  3. Airbnb

 

①iPod・iTunes

2000年代初頭、音楽業界は違法ダウンロードの増加で苦境に立たされていました。

ユーザーは、音楽を簡単に購入して楽しむ方法を求めていましたが、既存の音楽プレーヤーは使いにくく、デザインも洗練されていませんでした。

そこでAppleは、「ユーザーの音楽体験全体を再設計する」というデザイン思考のアプローチを取りました。

具体的には、以下の通りです。

  1. 共感
    ・音楽愛好者の行動を徹底的に観察し、「どこでも簡単に音楽を楽しみたい」と考えていることを理解する。
    ・「使いやすいプレーヤー」と「簡単に音楽を購入できる仕組み」が不足していることに気づく。
  2. 定義
    「ユーザーは、音楽を手軽に購入し、どこでも快適に楽しむ方法を求めている。」と課題を定義する。
  3. 概念化
    シンプルなデザインでポケットに入るサイズのプレーヤー「iPod」と、簡単に曲を購入できる「iTunes Store」を開発するアイデアを構築する。
  4. 試作とテスト
    プロトタイプを作成し、操作性やデバイス間の連携性のテストを繰り返す。

このようにして、iPodとiTunesは作られ、ユーザーは曲を1曲ごとに購入でき、簡単にデバイスに転送できるようになりました。

 

②Oral-Bの電動歯ブラシ「Genius」

電動歯ブラシ市場の競争が激化し、機能面での差別化が難しくなっている中で、ユーザーは「適切な歯磨きの方法」に不安を感じていました。

そこでOral-Bはデザイン思考を用いて、歯磨きの体験を徹底的に分析しました。

具体的には、以下の通りです。

  1. 共感
    「どのくらいの時間をかければよいか分からない 」「磨き残しがあると感じる」といった課題を発見する。
  2. 定義
    「ユーザーは、自分の歯磨きが正しくできているかを知りたがっている。」と課題を定義する。
  3. 概念化
    解決策として、歯磨き中のユーザーをリアルタイムでガイドする「スマート機能」の搭載を発案する。
  4. 試作とテスト
    ・スマホのアプリ連動で磨き残しを検知するプロトタイプを開発する。
    ・ユーザーにテストさせ、操作性や効果を検証する。

このようにしてOral-Bは、スマホアプリを介して歯磨きのリアルタイムガイドを提供することで、競合製品との差別化に成功しました。

 

③Airbnb

創業当初のAirbnbは、一般人が自宅を短期間貸し出すという新しいコンセプトを掲げていましたが、ユーザーを十分に惹きつけることができませんでした。

そこで、ユーザーの課題を理解し、サービス体験全体を改善するためにデザイン思考を導入しました。

具体的な内容は、以下の通りです。

  1. 共感
    ・創業者たちは、自らホストや宿泊者としてサービスを体験する。
    ・ホストは「掲載写真の質が低い」、宿泊者は「物件情報が信頼できない」と感じていることを発見する。
  2. 定義
    「宿泊者は、安心して物件を選びたいと考えているが、掲載情報が信頼性に欠ける。」と課題を定義する。
  3. 概念化
    ・プロのカメラマンを派遣して物件の写真を撮影するアイデアを採用する。
    ・信頼性を向上させるために、ユーザーレビューやホストプロフィールを充実させる。
  4. 試作とテスト
    ・プロが撮った写真を一部のホストでテスト導入し、宿泊率の向上を確認する。
    ・段階的に機能を拡張し、宿泊者とホスト双方からのフィードバックを反映させる。

このように、プロのカメラマンが撮った写真やレビュー機能により、物件情報の信頼性が向上し、宿泊予約数が急増しました。

 

まとめ

今回は、デザイン思考のメリットや活用する際の具体的なプロセスについて解説しました。

現代では、テクノロジーの向上やビジネスの複雑化など、様々な理由で商品やサービスが溢れかえっています。

そのような中で、他社との差別化を図ったり、顧客のニーズに合ったものを作り出すには、従来の考え方では対応しきるのが難しくなっています。

そこで注目されているのが、ユーザー視点で解決策を導き出す「デザイン思考」です。

デザイン思考を使えば、ユーザーの意見を強く反映させたものや、ユーザー自身は気づいていないものの実は困っていた課題を解決できる商品・サービスを作ることができます。

他社との差別化を図るには、必ずしも創造的なものを作る必要はありません。

ユーザーの悩みや課題に向き合い、一つひとつ解決していくことで、ユーザーにとって本当に価値のある新しい製品やサービスが生まれるため、デザイン思考をぜひ活用してみてください。

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Who is writing

医療系大学卒業後、理学療法士として医療機関に勤務。その後、整体院を運営をするなかでWebマーケティングも経験する。コンテンツ制作スキルを活かし、医療健康分野や不動産、プログラミングなどの幅広いジャンルの記事執筆を行うとともにWebディレクションにも従事。「一人でも多くの人の悩みを解決する」をモットーに活動の幅を広げている。