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2026年で節目の90回目となったマスターズゴルフトーナメント。
今回は過去の名シーンと共に、会場であるオーガスタ・ナショナルGCのバックナインについてご紹介します。
名シーンで彩られたオーガスタ・ナショナルのバックナイン

マスターズは四大メジャー(マスターズ、全米オープン、全米プロ、全英オープン)の中で唯一、オーガスタ・ナショナルGCという会場を変えることなく行われてきた大会です。
そして各ホールは、数えきれないほどのドラマで彩られています。
特に優勝争いも佳境を迎える最終日のバックナインは、11番~13番ホールまでの「アーメンコーナー」をはじめとしてスコアが目まぐるしく動くため、毎年ゴルフファンを興奮させ続けてきました。
今回はこれまでに行われた89回の中の名シーンと共に、バックナインの各ホールでドラマが生まれる理由についてもご紹介していきます。
11番ホール(パー4・520ヤード)~1987年ラリー・マイズが決めた奇跡のチップイン~

「アーメンコーナー」の始まりである11番ホール。
実際、2025年の平均スコアは4.240と全体で3番目の難しさとなっています。
500ヤードを超える距離の長さ、左に行きがちなつま先上がりのライから左に池が広がるグリーンに向かって打つセカンドショット、グリーン前にあるマウンドが攻略を阻んでいるのです。
1987年大会のプレーオフ2ホール目、地元オーガスタ出身のラリー・マイズが打ったセカンドショットは左を嫌がってプッシュアウト。
グリーン右手前に40ヤード以上ショートしてしまいます。
対するグレグ・ノーマンはセカンドをグリーン手前のエッジまで持ってきており、勝負あったかと思われました。
ところがマイズのアプローチは、ラインに乗って見事にカップイン。
半ば呆然としたまま打ったノーマンのバーディパットは外れ、歴史に残る劇的な優勝となりました。
12番ホール(パー3・155ヤード)~2016年ジョーダン・スピースの悲劇~

12番ホールは長さ150ヤード程度と、選手たちはショートアイアン以下で狙うほどの短いパー3です。
しかし、クリークとバンカーに挟まれた奥行きのないグリーン、そして何より読みづらい風が選手たちを悩ませます。
2016年にこのホールで悲劇の主人公となったのが、ジョーダン・スピースでした。
前年覇者のスピースは2位に5打差をつけてバックナインに入り、連覇濃厚かと思われました。
ところが10番、11番を連続ボギーとした後の12番、ティーショットはグリーン右手前にぶつかってクリークにつかまります。
更には打ち直しの第3打も大きくショートし、ボールは再びクリークへと沈んでしまいました。
結局このホールで「7」を叩き、スピースの連覇は幻となったのです。
15番ホール(パー5・550ヤード)~2021年松山英樹の「ナイスボギー」~

最後のパー5となる15番ホール。
ホールの長さだけ見れば十分2オンを狙えますが、そう簡単にはいかないのがオーガスタ。
360~370ヤード付近の左サイドから木々がせり出しており、それが邪魔にならない位置へティーショットを打てるかが最初の関門となります。
加えて、グリーンの手前と奥はそれぞれ池に向かって傾斜しており、スコアを落とす危険性もはらんだホールです。
2021年大会の最終日、首位に立っていた松山英樹もこのホールでピンチを迎えます。
後続に差をつけるべくグリーン奥のピンに向かって放ったセカンドショットは、あろうことか奥の池に入ってしまうのです。
後に松山選手本人は「思ったよりアドレナリンが出てしまった」と語っています。
続く第4打は飛び過ぎれば手前の池へ転がり落ちる難しいシチュエーションでしたが、グリーン奥のエッジに寄せるナイスアプローチ。
そこから2パットに収めるナイスボギーで首位を守り、アジア勢初となるマスターズ制覇へと繋げました。
16番ホール(パー3・170ヤード)~2005年タイガー・ウッズのチップインバーディ~

今では池越えの美しいパー3として知られる16番ですが、開場当初は12番ホールのグリーンと左右対称にしたようなクリーク越えのホールでした。
そこへ1947年に設計家のロバート・トレント・ジョーンズSrが大改造を加え、今のような形となりました。
グリーンは右から池に向かって強い下り傾斜がついており、それを踏まえたショットを打てるかが攻略のカギになります。
2005年大会の最終日、1打差で首位に立っていたタイガー・ウッズがグリーン左奥のピンに向かって打ったティーショットは、グリーン左に外れる大ピンチ。
そして第2打、測ったかのようにピン真上の傾斜の頂点へ放たれたタイガーのアプローチはそこからピンへとコロコロと転がり、最後のひと転がりでカップイン。
この年の優勝と共に、ファンの心へ刻まれる一打となっています。
なお、2005年を含め長らく最終日のピンポジションは左奥の傾斜の下が定位置となっていましたが、2025年は右奥の傾斜の上にピンが切られました。
最終日16番は、ピンポジションにも注目です。
17番ホール(パー4・450ヤード)~1986年ジャック・ニクラスの歴史に残るバーディー~

2025年の平均スコアは難易度4番目だった17番ホール。
両サイドから迫る高い木がプレッシャーとなるのに加え、グリーン面が高くなっていてピンの根元が見えないため狙いづらくなっているのです。
今年は10ヤード距離が伸び、更に選手たちを苦しめることになりそうです。
このホールでドラマを作ったのが、「帝王」ジャック・ニクラスです。
1986年、首位と4打差の9位タイで最終日をスタートした当時46歳のニクラスが、バックナインで怒涛の追い上げを見せます。
16番のバーディで首位に並ぶと、この17番でも約3メートルのバーディパットを決め、単独トップに立ったのです。
結局後続は追いつくことができず、ニクラスが実に6回目となるマスターズ優勝を果たしました。
左手でパターを掲げた17番ホールでの姿は、マスターズ史上屈指の名シーンとなっています。
18番ホール(パー4・465ヤード)~2025年ロリー・マキロイがつかんだグランドスラム~

高い木の間を抜いて2つのバンカー右のフェアウェイを狙うティーショットに、打ち上げの先にある縦長の二段グリーンを狙うセカンドショット。
2025年大会のホール難易度は2番目と、決して気を抜くことができない最終18番ホールです。
皆さんの記憶にも新しい、2025年大会。
1打差をつけて首位に立っていたロリー・マキロイでしたが、フェアウェイからのセカンドショットは右手前のバンカーに。
そこから寄せて残った1.5mのパーパットも外してしまい、結局このホールでボギー。
勝負の行方はジャスティン・ローズとのプレーオフに持ち込まれてしまいます。
しかしプレーオフ1ホール目の18番で、マキロイが今度はセカンドを1mに付けるスーパーショット。
ローズがパーとしたのに対しマキロイがバーディパットを沈め、悲願のマスターズ制覇と史上6人目となるキャリアグランドスラムを達成したのでした。
そしてドラマは続いていく

今回は、マスターズトーナメントの舞台となるオーガスタ・ナショナルGCのバックナインの特徴について、各ホールでの名シーンと共にご紹介しました。
1986年には8位に入るなどマスターズには11回出場、その後昨年大会まで27年間にわたってTBSのマスターズ中継解説を務めたプロゴルファーの中嶋常幸さんは「マスターズは国立劇場、全米オープンは国立競技場」との言葉を残しています。
その言葉に象徴されるように、オーガスタは「ゴルフの祭典」の舞台であり続けるべく、毎年のように改造・改修が行われてきました。
そしてこれからも時代の変化に対応しながら、オーガスタという舞台の上で様々なドラマが展開されていく事でしょう。
