From 山極毅 丸の内のオフィスより
ChatGPTの登場で時代の境目にある今、これまではAIに取って代わることのない仕事と言われていた職種も、むしろAIの方が得意分野になるという現象も起きています。
これからテクノロジーが一挙に進化するとどのようなことが起こるのか、歴史を振り返って見ましょう。
あなたは以下2つの事例の共通点が、何かわかりますか?
〜事例1:製鉄業界〜
中学校の教科書にも登場しそうな、劇的な産業革命が起こった製鉄業界。
ほとんどの工程を人の手で担っていた時代は
- 原材料の前処理
- 鉄を取り出す「製銑(せいせん)工程」
- 不純物を取り除き、受注したものにあわせて化学成分の調節をする「製鋼(せいこう)工程」
それぞれの工程に熟練の職人がいました。
しかし、自動化をするために機械が導入されると・・・
それまで、体力勝負・熟練の経験や勘で頑張ってきた方々は当然抵抗します。
これまで製鉄を守ってきたのは俺たちだ!
何十年やってきたと思っているんだ!と。
しかし、経営者側からすると、機械を導入した方が明らかに効率がいい。
しかも、
- 熟練とはいえ人間ですからどんな環境であっても一律、一定の品質を保つことも難しい。
- 熟練の経験を持つ人材にまで育て上げるためには、とてつもない時間と労力がかかる。
- 職人さんが辞めてしまえば、人員が欠けてしまう
と、高品質の製品を一定に保ちつつも、大量生産するためには機械化が合理的なのです。
すると、「機械を制御する人(モニターする人)」という新しい仕事が生まれますよね。
そして、その新しい仕事をこなすことが出来るのは若手が多い。
若手に多いと言うよりは、若手の方が柔軟に新しいことを覚えやすいと言い換えることもできます。
かたや肉体労働、かたや機械のオペレーション。
今までの肉体労働とは全く違うカテゴリーのスキルを求められるようになり、熟練の職人さん達はリスキリング(働き方の変化により、新たに発生する仕事のために役立つスキルや知識の習得を目的に、勉強してもらうこと)もできず、そんな概念もありません。
歳を取ってからでは、そんなもん覚えらんねえよ!と、世代間の対立が起こってしまったようです。
機械を導入した後、ある程度の期間が経過すると、昔からの体力自慢の熟練の職人さんはいなくなり、若い世代を中心に機械のオペレーションでどう効率を上げて行こうか・・・という時代が当たり前になりました。
〜事例2:駅の改札〜
あなたがもし、50代であれば・・・
毎朝、駅員が20人、30人がずらっと改札口に並んでいる光景を子どもの頃に見た記憶があるかもしれません。
今では信じられませんが、改札口で
- 乗客が買った切符を切る
- 到着した駅で切符を受け取る
- 定期券の有効期限を目視で確認する
すべて駅員が手作業で行っていました。
しかし、自動改札口が普及し、改札口に立つ駅員は0人へ。
機械化により、人員は大幅に削減することができました。
2つの事例の共通点は、機械の導入により作業工程も極限まで効率化し、人員も1人または0人へ削減することができたという点です。
ありとあらゆる仕事が機械(AI)にとって変わられる・・・
そうすれば、人間がする仕事が減り人員は余るのではないかと思われるかもしれません。
にもかかわらず今もなお、人手不足だ!と叫ばれているのはなぜでしょうか?
それは、機械化により人の手はいらなくなったかもしれませんが「スキル不足による人手不足」が起こっているからです。
肉体労働→機械を制御するエンジニアへ、仕事が移り変わっているため人はあまっているけれど、スキルを持っている人がいないという人手不足の時代が続いているのです。
今やAIにとって変わられる仕事が増えるからこそ、人間に求められる仕事が高度化しています。
高度化するということは、私たちには今までよりも一段階上の仕事を求められるということ。
そして、すでに1段階上のスキルを持っている人材はこれから「企業間で取り合いになる」のは免れません。
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