社員のモチベーションが下がる原因は?頑張らずにやる気を出す方法

今回のテーマは「モチベーション」です。とは言え、一般的なモチベーションを高める方法は扱わず、少し異なる視点から解説してみます。

社員のモチベーションが下がる原因は?頑張らずにやる気を出す方法

今回のテーマはズバリ「モチベーション」です。

普通ならモチベーションを上げる方法について触れると思いますが、今回は「モチベーションを下げない方法」に注目してみたいと思います。

なぜなら、モチベーションを上げる方法については、Googleを調べれば情報が溢れていますし、それ以上に世間的に言われるモチベーションを高める方法には、個人的に若干無理があると感じるからです。

例えば

  • ビジョンや目標を設定する
  • 社員に成功体験を積ませる
  • 人間関係を改善する

といった項目は、モチベーションを上げる方法としてよく言われることです。

しかし、モチベーションが低い人がビジョンや目標設定を行うことで、本当にモチベーションが上がるのでしょうか?

成功体験を積ませるといっても、それが難しいから困っているんですよね?

人間関係改善は、多くの組織で行うべきですが、時間がかかります・・・。

今回は、これまで1,000人以上の方にコーチングを行ってきた経験から、こういった一般的且つ無難な方法ではなく、少し異なる視点からモチベーションについて解説したいと思います。

これを読んで頂くことで「正しいモチベーションとの関わり方」が分かるようになります。

内発的動機付けと外発的動機付け

内発的動機付けと外発的動機付け

これは既にご存知かもしれませんが、まずモチベーションには2種類あると言われています。

それが

  • 内発的動機付け
  • 外発的動機付け

です。

基本的ではありますが、社員のモチベーションを維持し、向上させる上で非常に重要なのでお伝えしておきます。

1.内発的動機付け

内発的動機付けは、個人の内部から生じる動機付けです。

これには、興味、好奇心、自己実現、自己達成の感覚などが含まれます。

例えば、新しいスキルを学ぶことに対する興味や、達成感を得るための自発的な努力がこれに該当します。

内発的動機付けには時間がかかるという難点がありますが、うまく機能した社員は業務に対してより熱心で、創造的かつ主体的に取り組む傾向があります。

2.外発的動機付け

外発的動機付けは、外部の報酬や罰、社会的圧力など、外部からの刺激によって生じる動機付けです。

給与の増加、昇進、同僚や上司からの評価などがこれにあたります。

外発的動機付けは、即座の行動を促す効果がありますが、長期的には内発的動機付けほどの持続性や深い満足感をもたらすことは少ないとされています。

2種類のバランスが重要!

これら2種類のモチベーションは、どちらが良い・悪いということではありません。

外発的動機付けに頼りすぎると、社員は報酬や評価のためだけに働くようになり、やりがいや自己成長の感覚を失いがちです。

一方、内発的動機付けだけに依存すると、組織の目標や業績との整合性を欠く場合があります。

理想的なモチベーションの状態は、内発的動機付けと外発的動機付けのバランスが取れていることです。

つまり、モチベーションを持続的に高めるためには

  • 内発的動機付けにより、社員が仕事に興味を持ち、自分自身の成長を感じられるような環境を作ること
  • 外発的動機付けにより、適切な報酬や評価システムを設けること

が重要であり、このバランスをうまく取ることで、社員は自分の仕事により深くコミットし、組織全体の生産性と満足度の向上に寄与することができます。

恐らく、現段階でこの結論に異論がある人は少ないと思いますし、これが達成されることが理想的でしょう。

モチベーション低下の主な原因

モチベーション低下の主な原因

では、ここで「モチベーションの低下となる原因」を見てみましょう。

東京未来大学の調査によると、モチベーション低下の理由は以下の通りだったそうです。

  1. 仕事に対してやりがいを感じることができない
  2. 給与が仕事に見合っていない
  3. 仕事への慣れから飽きが生じている
  4. 人間関係が上手くいっていない
  5. 同期や周りが転職し始めた

【東京未来大学 モチベーション研究所調べ】社会人3年目へのアンケート概要

参考:【東京未来大学 モチベーション研究所調べ】社会人3年目へのアンケート概要

  • 調査主体 :東京未来大学
  • 調査期間 :2018年11月9日 (金) ~11月12日 (日)
  • 分析対象 :転職経験の無い社会人3年目の男女
  • 調査方法 :ウェブでのアンケートを実施し、回答を分析
  • 有効回答数 :300人

これらの要因に適切に対処することができれば、社員のモチベーション低下を防ぐことができるかもしれません。

では、上記の2種類のモチベーションバランスと、モチベーション低下の要因を踏まえて、具体的にどうしたら良いのでしょうか?

続いて“一般的な対処法”も見ておきます。

モチベーションを上げる一般的な戦略

モチベーションを上げる一般的な戦略

内発的動機付け・外発的動機付けのバランスを取りながら、モチベーションを上げるためには、以下のような方法が考えられそうです。

1.明確な目標設定(内発的動機付け)

先ほどの調査結果で「やりがいを感じない」「仕事への慣れ」が挙げられていたように、モチベーションが低い人は目標やゴールが不明確(もしくは徐々に不明確になっていく)であると言えます。

どれだけ楽しい作業であっても、終わりが見えない、達成基準が分からない・・・といった状態では流石に疲弊します。

だからこそ、明確な目標設定はモチベーションを高めますが、それらの目標は現実的であり達成可能でなければなりません。

具体的で測定可能な短期目標と長期目標を設定し、それらを達成するたびに社員の成果を認めることで、モチベーションを上げる・維持することが可能となります。

2.ポジティブなフィードバックと認知(外発的動機付け&内発的動機付け)

ポジティブなフィードバックは、社員の自信を高め、モチベーションを向上させます。

定期的なミーティングを通じて、良い成果や改善点に対して建設的なフィードバックを提供することはとても重要です。

これにより、社員は自分の努力が認められていると感じ、モチベーションが高まります。

3.自律性と権限の付与(内発的動機付け)

人は誰かから一方的に押し付けられた、自分がコントロールできていないことには、興味関心を失いがちです。

例えば、何をしたら達成なのか?というゴールを明確にし、困ったときにはサポート体制が万全であることを示した上で、具体的な方法は本人に任せるなど、社員に一定の自律性と決定権を与えることで、モチベーションを向上させることができます

安心・安全の場を作ることが前提となりますが、自分の仕事に対するコントロール感と責任感を持つことで、より創造的かつ主体的になるでしょう。

4.継続的な学習と成長の機会(内発的動機付け)

単なる成功体験や権限の付与だけではなく、継続的な学習と成長の機会を提供することも、社員のモチベーションを高める重要な要素です。

研修プログラム、ワークショップ、メンタリングなどを通じて、社員が自分のスキルを伸ばし、キャリアを発展させることができるようサポートします。

関連記事:社員のキャリア発展をサポートするコーチングの方法とは?

5.仕事内容に見合った報酬、休暇や福利厚生の充実(外発的動機付け)

長期的にモチベーションが維持できるものではありませんが、やはり仕事に見合った報酬は、努力を続けるための重要な要素です。

また、休暇制度の充実も社員が長期的に見て健康を保ち、燃え尽き症候群などを防ぐことに繋がります。

これらの戦略を適切に実装し、継続的に評価・改善することで、社員のモチベーションを高めることができます。

・・・が、しかし。

これらは、確かに理想的な方法ではあるものの、なかなかうまく行かないのが現実ですよね。

というわけで、今回はさらに別の視点からモチベーションについて考えてみます。

ドーパミンとモチベーションの関係

結論、モチベーションは高める方法ではなく「低下させない方法」に注目した方が良いと私は考えます。

その理由は「モチベーションが上がるとき、私たちの体内で何が起きているか?」にあります。

ドーパミンの役割

ドーパミンは脳内の神経伝達物質の一つで、私たちのモチベーション、快楽の感覚に大きく関与しています。

例えば、成功体験や肯定的なフィードバックを受けると、ドーパミンが放出され快感を感じます。

つまり「モチベーションが高まった状態=脳内でドーパミンが放出されている状態」とも言えます。

ドーパミンから得られる快感は、同じ行動を繰り返しやすくするため、学習や成長のプロセスにおいて重要な役割を果たします。

ただし、ドーパミンにはデメリットもあり、過剰に放出されると「ドーパミン中毒」と呼ばれる状態を引き起こすことがあります。

ドーパミン中毒とは何か?

ドーパミン中毒は、同タイトル「ドーパミン中毒 /アンナ・レンブケ (著), 恩蔵 絢子 (翻訳)」で使われている言葉で、快楽や報酬に対する過剰な依存状態を指します。

最も分かりやすいのは、ギャンブルや薬物に依存することで、短期的な快楽や報酬を得るために、長期的な目標や健康を犠牲にしてしまう例ですね。

また同書によると「ドーパミンから得られる快楽と苦痛は、シーソーのような関係にある」とされています。

快楽に傾いた分、その反動で苦痛の方にも大きく傾いてしまうという意味です。

つまり、ドーパミンから得られるモチベーションは、一時的にやる気を生み出すかもしれませんが、反動でストレスや燃え尽き症候群にもつながる可能性があるわけです。

一般的に言われるようなモチベーションの高め方には、ドーパミンと関係が深いであろうと思われるものも多々あります。

だからこそ、私はドーパミンに頼り過ぎる前に「モチベーションを低下させない方法」に注目すべきだと考えています。

コーチングクライアントの事例

私はコーチングを生業としていますが、過去のクライアントにはドーパミンの影響(あくまで私個人の見解ですが)で、モチベーションの高低差が、必要以上に激しくなってしまっている方を何人も見てきました。

彼らは周りから見ると

  • 意識が高い
  • やる気に溢れている
  • 行動力がある

といった、モチベーションの高い人たちに見えるのですが、私から見ると同時に不安も大きく、行動していないと落ち着かない・・・といった印象すら受けました。

そのため、次から次へと目標を変更することで行動に一貫性が見られなかったり、自らを苦境に追い込み過ぎてしまったり、楽しそうなことや、やりがいのありそうなことに、つい流されてしまう傾向が見られました。

これは少し極端な例ですが、職場においてもドーパミンの影響を理解することは、健全なモチベーションを保つためにも重要でしょう。

モチベーションを元に戻す〇〇のチカラ

モチベーションを元に戻す〇〇のチカラ

では、過度にドーパミンに依存せずに、健全にモチベーションを高めるにはどうしたら良いのでしょうか?

そのためには「下がったモチベーションを、意図的に元の状態に戻せること」が非常に大切になります。

モチベーションが下がった時には、高めるのではなく、まず元に戻すこと・・・これがモチベーションを下げない、本質的な方法だと考えています。

その具体的な方法として、今回は「自分の価値観を理解すること」をオススメしたいと思います。

価値観とは?

価値観とは、個人が重要だと考える信念や原則、あるいは人生において大切にしていることです。

これには個人の行動基準から始まり、道徳観、美的感覚、はたまた人生の目的などが含まれます。

価値観は、私たちの選択、行動、反応を形成し、モチベーションに深い影響を与えます。

個人の価値観が職場環境や仕事内容と一致している場合、その人は自然と高いモチベーションを保ち、より生産的で満足感を感じることができます。

逆に、価値観が不一致の場合、仕事への関心やモチベーションは低下します。

例えば「仕事での成長」という価値観を持っている人は、多少忙しくても昇進や新しい仕事にチャレンジすることに意欲的になる反面、誰がやっても結果が変わらないルーティンワークを任されるとモチベーションが下がるかもしれません。

もし「家族との時間」を重視している場合であれば、仕事と家庭とのバランスを取ることで、彼らのモチベーションは高まりますが、残業が多かったり、休暇が少なくなると一気にやる気が削がれることがあります。

価値観をモチベーション管理に活用するメリット

モチベーションに関して、価値観を基準に考えることのメリットは「頑張らなくて良い」ということです。

私たちは普段、自然に・無意識に価値観を使っています。

例えば、いま住んでいる家、部屋のインテリア、本棚に並んでいる本、スマホの画面に並ぶアプリ、休憩中に食べるランチの選び方まで、全て価値観に影響を受けています。

そんな価値観をうまく活用するには、まず自分の価値観を自覚することから始まります。

一度自覚ができれば、あとは「今の環境において価値観を優先するにはどうすれば良いか?」を考えるだけです。

仮に、価値観に沿わない出来事が起きたとしても「これは自分の価値観とは違ったんだ」と認識するだけで、モチベーションを必要以上に下げることが少なくなるでしょう。

また価値観から得られる満足感や達成感は、ドーパミンよりも「セロトニン」に近いイメージがあります。(これは、あくまで私のイメージと感覚です)

セロトニンは幸福ホルモンの1つで、ドーパミンを抑制し、精神を安定させる働きがあります。

温泉に入った瞬間の「ふぅ・・・」の、あの感覚です。

ドーパミンが「よっしゃ、やるぞ!」と気合を入れているのに対して、セロトニンから得られる意欲は、リラックスしながら「よし、やりますか」というイメージですね。

どちらも場面によって重要度は変わりますが、セロトニンを基本にすることで、安定して、穏やかで、変に浮き沈みのないモチベーションが維持できると思います。

このように、個々の社員の価値観を尊重し、それを仕事に反映させることで、より充実した職場環境が生まれ、組織全体の生産性と満足度が向上するでしょう。

価値観については、こちらでも詳しく解説しています。

まとめ:頑張らずにモチベーションをアップさせる

まとめ:頑張らずにモチベーションをアップさせる

さて、今回はモチベーションについてお伝えしてきました。

今回お伝えしたかった「モチベーションを下げない方法」をまとめると

  1. 価値観を重視することで、必要以上にモチベーションを下げない。
  2. 下がったとしてもすぐに元に戻せる状態をつくる。
  3. その上で一般的な「モチベーションを高める方法」を取り入れる。

です。

この流れを実践することが、より効率的な生産性向上につながるのではないか?というのが、私のモチベーションに関する結論です。

私のコーチングクライアントにも、自分の価値観を明らかにすることで、頑張らずとも高いモチベーションを維持できるようになった方が沢山いらっしゃいます。

幸い価値観の自覚にはお金もかかりませんし、大した労力もかかりません。

そういった意味でも、とても効率の良いモチベーションの高め方と言えます。

是非、ご自身の価値観を自覚し「モチベーションが高い・低い」に振り回されない環境を作り出してください。

Who is writing

岩下 知史(いわした ともふみ)

職業:メンタル&ビジネスコーチ、ライター。

クライアントは経営者、会社役員、ドクター、看護師、個人事業主〜主婦まで多岐に渡る。

大学卒業後は主にホテル業界に従事、東証一部上場企業にてチームマネジメントに携わり20名ほどの部下を抱える。

離職率の高いホテル業界で、人材教育へのプレッシャーから躁鬱病を経験するも、それまで一度も予算達成したことがなかったチームを常勝チームへと成長させる。

その後2015年に独立、様々な成功と失敗体験を積む中で「教育」に情熱があることを再認識し、経験・人脈ほぼゼロの状態から、コーチング、ライティング、Webマーケティング、研修講師業などを通じて本格的に人材教育業界へ。

2020年からは世界で100万人が活用しており、MicrosoftやIBMといった有名企業に人材育成ツールとして導入されている「ウェルスダイナミクス」において、専属のメルマガライター兼・日本に3人しかいない公認トレーナーを務める。

その間は1,000人以上のビジネスパーソン、有資格者の指導にあたり、2022年にトレーナーを卒業〜現在に至る。

人生のミッションは「自ら思考・選択・行動できる人材を育てること」、趣味はギターと筋トレ、心理や精神世界に関する読書、娘と遊ぶこと。