【社会を知る編②】その企業は何ファースト?日本の上場企業の現実を把握しよう

就活生・転職者向け第2弾。今回は日本の企業のうち、特に大企業・上場企業の「もどかしい現実」をお届け。企業選びの前に、ご参考ください。

日本は中小企業に支えられている

あなたが知っている日本の企業を教えてください。

と言われたら、就活生のみなさんは何社くらい挙げることができますか?

総務省・経済産業省による令和3年の経済センサス-活動調査によると、日本の企業は約367万社、そのうち法人企業は約178万社あります。

ものすごい数ですよね。

日々メディアで見聞きするのは知名度の高い企業ばかりですが、実際のところ、どのような構成なのでしょうか。

まずは日本の企業について、全体像を把握してみましょう。

出典:2021年版 中小企業白書

日本では、全企業のなかで、「中小企業の定義」が中小企業基本法で定められています。

表のとおり、業種によって少しずつ定義が異なりますが、資本金もしくは従業員数のどちらかの条件を満たせば中小企業に該当するとみなされます。

中小企業の数は、なんと全体の99.7%。

特に小規模企業が約85%を占めています。

そして従業者の約70%が、中小企業で働いている状況です。(※2016年時点、個人企業も含む)

付加価値額とは、企業が事業活動によって生み出した価値を数値で表したもので、基本的に利益とほぼ同義語で使われます。

付加価値の視点では、さすがに資金力をもつ大企業の割合も多いですが、それでも中小企業が全利益の約53%を生み出しています。

ところで、「大企業の定義」は明確にはありません。

中小企業の定義より多ければ、大企業ということになります。

また、よく耳にする言葉に「大手企業」というものがありますね。

大手企業にも、特に定義はありません。

一般的に、各業界でのシェア率、売上、規模などが上位に入る知名度の高い企業のことを指します。

よって、中小企業でもその業界のトップであれば、大手企業になります。

改めてこれらの数字を見ると、いかに日本が中小企業に支えられているかということが分かります。

特に都心の大学に進学し、就職活動が始まると、ついつい周りの人の動向や情報が気になり、誰がどこに内定した、誰はどこを受けているなど、ランキングに出てくるような有名企業の名前が飛び交いがちですが、こうやって全体像をみてみると、もっともっと視野を広げてみてもいいと思いませんか?

多くのシェアを占める中小企業についてピックアップする前に、今回の記事では、全体の一握りの企業数ではあるものの、約5割の付加価値を生み出している大企業のうち、さらに少数派の上場企業を中心とした情報をお届けします。

まずは、対極からスタートです。

 

上場と非上場、それぞれの選択

この企業は今年上場した、もしくは上場廃止を決定したなど、上場という言葉はよく聞きますね。

学生のみなさんの中には、大手=上場というイメージをもっている人もいるかもしれません。

ここでは改めて、上場・非上場企業について整理したいと思います。

まず、上場・非上場にかかわらず、株式会社には株主が存在します。

株主とは、それぞれの株式会社の株の所有者です。投資家とも呼ばれます。

上場するとは、自社が発行する株式を証券取引所に公開して、不特定多数の投資家と広く売買できる状態にすることです。

証券取引所の厳しい審査をクリアして、証券取引所での株式取引資格を与えられた株式会社だけが、上場企業となります。

日本には4つの株式市場が存在します。

東京証券取引所(東証)・名古屋証券取引所(名証)・札幌証券取引所(札証)・福岡証券取引所(福証)です。

なかでも東京証券取引所は最も大きな市場で、特に、東証一部上場という言葉に馴染みのある人も多いと思います。

以前までは、東証では時価総額や市場の特徴により、一部・二部・マザーズ・JASDAQなどに分かれていましたが、現在は市場のコンセプトごとに、プライム市場・スタンダード市場・グロース市場という3種類の市場区分になっています。

プライム市場:グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場

スタンダード市場:公開された市場における投資対象として十分な流動性とガバナンス水準を備えた企業向けの市場

グロース市場:高い成長可能性を有する企業向けの市場

引用:日本取引所グループ

3つの市場のなかではプライム市場の審査基準がもっとも厳しく、旧東証一部上場企業の多くが、現プライム市場に移行しています。

また、スタートアップ要素が強い企業であれば、グロース市場に上場する傾向があります。

いずれにせよ、上場するためには、収益基盤や時価総額、株主数など、それぞれ一定以上の基準を満たさなければなりません。

そのため上場企業は、必然的に大企業の割合が多いことになります。

 

では、何のために上場するのでしょうか。

主な目的は次のとおりです。

  • 資金調達のため
  • 社会的な認知度を上げるため
  • 優秀な人材を集めるため

他にも目的や紐づくメリットはありますが、一番の目的は資金調達といえます。

企業が何か大きな事業を行うためには、資金が必要です。

原材料、設備投資、製品やサービスを生み出す人の雇用など、あらゆる面でお金がかかります。

しかも事業に必要な資金は巨額なことが多く、会社経営者が保有している資金だけでは足りないことがほとんどです。

上場企業は、株式市場に開かれているため、不特定多数の一般投資家や機関投資家などと株式を売買することが可能になり、各企業の事業や動向に期待する投資家から広く資金調達できる可能性が高くなります。

売買による対価は企業の資本となるため、金融機関からの融資とは異なり、返済の必要がありません。

そのため、安定した経営につながります。

上場は、資金を効率的に集める方法のひとつとして、資本主義経済の発展に影響を与えてきました。

また、証券取引所の厳しい審査をクリアした企業として社会に認知されるため、よりよい製品やサービスを提供する企業であれば、世の中に広く認識されることで、社会的な信用も得ていくことが可能になります。

さらに別の視点でいえば、優秀な人材を集めることにもつながります。

というのも、上場は主に企業のオーナーが自社株を売ることで巨額の資金を得るという形にはなりますが、ストックオプション等によって、従業員の資産を増やすことができる可能性があるからです。

あらかじめ従業員にストックオプション=自社株が買える権利を付与しておいて、企業が上場したときに権利を行使できるという方法をとっている企業もあります。

ある意味、従業員の福利厚生のようなものです。

過去の事例でいえば、リクルートの上場時のニュースが記憶に新しいかと思います。

そのため、上場前提で経営を組んでいる企業は、間接的に優秀な人材を集めることにもつながっています。

しかし、デメリットも存在します。

改めて企業側の目線で、上場のメリット・デメリットをみてみましょう。

一般的に、このような整理ができます。

決してメリットばかりではなく、むしろリスクもとっていることが分かります。

特に、企業買収のリスクに晒されたり、株主に経営面について口を出される“モノ言う株主”への対応が求められたりするなどといった場合です。

これらメリット・デメリットの反対が、非上場企業の傾向として当てはまります。

そのため、経営者の方針によっては、上場できる条件が整っている企業であっても、あえて非上場を選択しているケースもあります。

例えば、代表的な企業は次のとおりです。

  • サントリーホールディングス
  • 竹中工務店
  • JTB
  • YKK
  • 田中貴金属工業 など

どの企業も、みなさんよくご存じだと思います。

例えば、サントリーの創業当時から続く精神、「やってみなはれ」は、有名な言葉ですね。

株価の動向や株主の意見にあまり影響されることなく、自社の経営理念を貫いて挑戦を続けるための方針として非上場を選択している企業でも、社会的な信頼を得られていれば問題なく事業を継続することが可能です。

それは、大企業でも中小企業でも変わりません。

確かに厳しい審査を通過しているという点では、社会的に認められた企業としての信用価値がありますが、上場しているから良いということではなく、それぞれの企業の経営方針や戦略のひとつ、という意味合いで捉えると、よりフラットな視点で企業選びができるのではないでしょうか。

 

もはや外資系?日本の上場企業の現状

ここからは、さらに上場企業の現状についてみていきますが、その前に、株主の権利について整理してみましょう。

株主の基本的な3つの権利は次のとおりです。

  1. 剰余金配当請求権
  2. 株主総会における議決権
  3. 残余財産分配請求権

今回は1.と2.について注目します。

剰余金配当請求権とは、株主である企業の利益を配当として受け取ることができる権利のことです。

配当金という言葉で馴染みがあるかと思います。

ただし、企業は配当を出す義務はなく、配当の有無や金額は株主総会の決議によって決定されるため、利益が出なかった年や、利益が出ていても経営判断によっては、配当がない場合もあります。

次に、株主総会における議決権です。

議決権とは、企業の株主総会での決議に参加できる権利のことです。

株主総会では、企業の経営方針に関わるもっとも重要な事案が決定されます。

株主は企業からの議案に対して、賛成・反対の票を投じることができます。

票の数は1人1票ではなく、株の保有数に応じて与えられます。

企業における株の保有割合、持ち株数によって、株主が行使できる権利の範囲が変わってきます。

具体的に、参加できる決議の種類と議決権の内容についてみていきましょう。

≪決議の種類≫

  • 特別決議:合併や解散、譲渡、定款変更など、人というよりは企業そのものに対して重要な決定を行う際に必要な手続きです。
  • 普通決議:取締役の選任や解任、決算の承認、役員報酬額の決定、余剰金の配当について決定する際に必要な手続きです。日々の経営に直結する事案に関わります。

≪持ち株割合による議決権の範囲≫

  • 1%:株主総会における議案提出権があります。
  • 3%以上:総会の招集、会社の帳簿等、経営資料の閲覧ができます。
  • 1/3超:株主総会の特別決議を単独で阻止することができます。
  • 1/2以上:株主総会の普通決議を単独で阻止することができます。
  • 1/2超:株主総会の普通決議を単独で成立させることができます。
  • 2/3以上:株主総会の特別決議を単独で成立させることができます。

学校のテストなどで、“議決権行使”としてなんとなく数字を覚えた記憶があるのではないでしょうか。

企業が上場すると、外部の資金力をもった個人・機関投資家が多額の株式を保有することが可能になり、場合によっては「大株主」が誕生することになります。

大株主の明確な定義はありませんが、議決権のある企業の発行株式の10%以上を保有する株主を「主要株主」と呼びます。

大株主は経営や株価に影響を与え得る存在となり、株の保有割合によって先ほど述べたような議決権をもつことができます。

では、実際にどのような大株主がいるのか、日本の上場企業の現状に当てはめてみていきましょう。

前回の記事の冒頭でご紹介したランキング企業を事例に、みていきたいと思います。

出典:2024入社希望者対象 就職ブランドランキング調査 

2位の日本生命は株式会社ではなく相互会社のため、1位と3位~6位の企業を例にみていきます。

ホールディングスが100%持ち株会社の場合は、ホールディングスの情報とします。

企業の大株主の構成は、各企業のHPにそれぞれ掲載されています。

それでは、上位5社のHPの情報をみてみましょう。


伊藤忠商事

大和証券グループ

東京海上ホールディングス

三菱商事

博報堂DYホールディングス


それぞれの企業を投資の側面から支えている大株主一覧です。

ご覧になって、いかがでしょうか。

博報堂以外は、ずいぶん外資企業の割合が多いなという印象ではないでしょうか。

そして、すべての企業の大株主の上位に、共通して出てくる企業があります。

  • 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)
  • 株式会社日本カストディ銀行(信託口)

なんだ、日本の銀行がたくさん保有しているならば安心だ、と思われたみなさん。

ここにカラクリがあります。

これら2つの金融機関は、資産管理を専門とする信託銀行です。

カストディアンと言われ、投資家に代わって有価証券の保管・管理などの業務を行う金融機関になります。

例えば外国人投資家が日本株を購入する場合、自分の名義ではなく、カストディアンに依頼し、カストディアンを名義人として日本企業の株を買うことが多いのです。

HPや株主名簿上に登場する、日本マスタートラスト信託銀行(信託口)などの名義は、有価証券の保管・管理を行うカストディアン名義です。

そのため、信託口は証券の保管や配当の受け取りを委託されているだけに過ぎず、実質の議決権行使の権利をもつ、本当の株主・機関投資家は別に存在するということです。

参照:日本シェアホルダーサービス 

 

では、上場企業全体として、実際どのような株主の構成になっているのでしょうか。

出典:ニッセイ基礎研究所 2020年度株式分布状況調査

こちらの図は、日本の株式市場における主要投資部門の株式保有比率の推移です。

2000年初頭を境に、トップと最下位が逆転するという、大きな変化が起きています。

背景として、前回の記事同様に、ここでも過去の日本の政策が挙げられます。

代表的なのが、政府主導による株式持ち合い解消の動きがあったことです。

株式の持ち合いとは、株式会社同士が互いの株式を持ち合うことです。

経営の安定化を目指す企業同士が、相手企業に支配権を行使されない範囲で株式を所有し合うことに特徴があります。

そのため、互いに独立した関係を維持することができます。

信頼できる企業同士で株式を持ち合えば、結果的に敵対的買収の防衛策にもなります。

高度経済成長期の日本は、このような独自の形を採用し、互いの企業の成長を支え合ってきました。

日本ならではの「共同体の精神」が、株式市場においても、このような形で表れていたんですね。

しかし、1990年前半のバブル崩壊を機に、事業法人等や都銀等の業績が悪化し、多くの企業は保有している株式を売却することで経営を維持します。

さらに、銀行の株式保有を制限する「銀行等の株式等の保有の制限に関する法律」が公布され、銀行の保有株の削減が進み、株式持ち合いの解消が促進されました。

参照:株式持ち合いの変遷と展望

一方で、1979年に外国為替及び外国貿易法(略称:外為法)が改正され、国内外の資本取引が自由化されたことで、外国人投資家による日本株の購入が加速し、保有比率が大きく上昇していきます。

そして現在、保有比率は外国法人等がもっとも多く、全体の30%前後を推移しています。

また、先述の信託口経由の株主は表に出てこないので、もし最終的な受益者が外資であれば、30%をはるかに超えている可能性が高いです。

ここまでくると、日本の上場企業は、もはや外資の出資力を無視できなくなっています。

この外国人持ち株比率は各企業で公開されているので、自分で確認することができます。

企業名は日本の名前で、自分は日系企業に応募していると思っていても、実態は外資の企業になっていることも珍しくありません。

外資でも出資してくれるのであれば、資金調達の点では問題なさそうに思えますが、自社以外の他社(もしくは個人)の多くは、ビジネスですから当然自らの利益を最優先に求めます。

特に外資の機関投資家は“モノ言う株主”である可能性も高く、信託口をはじめ、外資が大株主に登場している企業は、株価や配当、経営に対する要求を強く受けていると考えることもできます。

そのため、一昔前のように、上場企業であれば給与を含めて雇用全般が安定しているとは言い切れず、上場企業の事情も少しずつ変わってきています。

買収されれば、経営方針は大きく変わり、場合によってはリストラの対象になることもあり得ます。

それはいつの時代でも同じですが、現在の状況下で不安定なのは、もしかしたら上場企業なのかもしれません。

 

なぜ、日本は30年以上も初任給が変わらないのか

ところで、配当金は企業にとっては利益の社外流出です。

ここに、ある興味深いデータがあります。

出典:相川清「法人企業統計調査に見る企業業績の実態とリスク」

こちらは、企業の売上高・給与・経常利益・設備投資・配当金の推移を示したグラフです。

資本金10億円以上の企業、5,026社の統計のため、実質大企業の約30年間の推移データということになります。

こうやって改めて可視化されると、けっこう衝撃的です。

1997年を100としたときに、2018年の時点で、なんと配当金だけ群を抜いて6倍に増えています。

そして、特に2013年から売上高は上がっていないが、経常利益は伸びている。

ということは、内訳は純粋な本業での営業利益ではなさそうです。

(※もちろん売り上げが伸びている企業もあるため、あくまで全体の数値としてご覧ください)

しかも、従業員給与と設備投資はマイナス、特に設備投資は非常に低く抑えられています。

ところで、企業の付加価値を上げる効率的な方法のひとつは、設備投資であるというデータがあります。(詳しくはコチラをご覧ください→山極毅の人事戦略チャンネル)

そのため、中小企業と比較すると、設備投資にまわせる資金力がある大企業の方が、業務プロセスの自動化が進むことで生産性が上がり、必然的に利益を生みだしやすくなり、結果的に給与に還元され、一人当たりの額面が高くなるという見解です。

しかし現実は、設備の投資・アップデートよりも配当金が優先され、株主が利益を得ています。

しかも先述のとおり、株式保有比率のトップは外資です。

このグラフのデータだけをみれば、本当は設備投資をして生産性を上げたり、人材育成への投資や従業員の賃上げもできる状態にあるのかもしれない、ということです。

でも、それが容易にはできない理由がある。

理由のひとつとして、株価を高く保つために高配当をすることで、外資の買収の脅威から身を守る必要があるからです。

それだけ、外資と日本の上場大企業が、この30年間の経済システムや法律を通して、すでに切り離せない状態になっていることがうかがえます。

付加価値の還元において、日本は元々従業員ファーストでした。

しかし、資本主義経済では株式会社の“正解”は、株主還元であるという考え方が強まり、先述のとおり、市場の自由化・活性化を促進するために外国人にも配当金を、という流れになります。

規制緩和、コーポレートガバナンスの強化、 新会社法施行、三角合併の解禁、四半期報告の制度化など、株主ファーストとも捉えられる方向に政策が偏りはじめ、敵対的買収の脅威が増したことも、株主への配当が増えた原因のひとつでしょう。

もちろん日本の経済成長には、お金の量を増やすこと・投資が必要なのですが、そうして生みだすことができた利益の出口が、外部、ましてや外国人投資家ではあまり意味がありません。

海外に流出するということは、それだけ国内で循環できるはずの富が失われているということです。

結果的に、個人の所得に反映されない→所得が増えないから、個人がお金を使わない→モノ・サービスが売れない→企業の売り上げが上がらない→経済が成長しない→デフレが続く、という前回の記事の流れになります。

現状の制度では、外国人持株比率の多い上場企業は、非常に身動きがとりづらいといっても差し支えないのではないでしょうか。

表には出てこない葛藤もあるということです。

だからこそ、各企業の経営者の考え方・哲学が、経営方針に大きく反映されます。

就活生だけでなく、転職をお考えのみなさんも、トップの発言や企業の動向など、この視点からチェックしてみると、また何か気づきがあるかもしれません。

 

あなたの志望企業は、結局何を一番大切にしているか

上場すれば、企業は資金調達がしやすくなり、知名度も上がります。

社会的な信用や支援も得やすくなり、大きなプロジェクトを動かすことができるでしょう。

特に大手の大企業は歴史もあり、先人たちが長い時間をかけて信用を築いてこられたからこそ現在まで続いています。

先輩方が培った信用力・ブランド力のおかげで、私たちの世代も、企業名だけで一定の信用を得ることができ、取引が成立することもあります。

ですから、上場大企業としての重み・凄みがあるのは事実です。

しかし、どんなに利益を上げても、今のシステムでは企業存続のための経営判断も含めて、持ち株比率によっては、利益の大部分が外国人投資家に配当として流れてしまうので、なかなか従業員の手元には反映されにくいという点があります。

一方、中小企業を中心とした非上場企業は、今はコストプッシュインフレが続き、価格転嫁も厳しい状況ですが、モノ言う株主の圧力等は少なく、発想力を活かして自社独自の方法や社会が求めているニーズにこたえていくためのアクションを思い切って選択していくことができます。

もし、その商品やサービスが世の中に歓迎されて売り上げが伸び、利益を上げることができれば、システム上では、ダイレクトに給与にも反映される可能性があります。

ただし、莫大な資金力で大きなプロジェクトを動かす、という経験は、自社単体ではなかなかできないという傾向があります。

どちらを選択しても、それぞれの良さがあります。

規模の大きさにやりがい・楽しさを見出す人もいれば、事業の中身重視の人もいます。

大量生産で大きな付加価値を生みだす世界と、生産数は少ないけれどオーダーメイドで持続可能な世界。

どのような働き方に魅力を感じ、どのような貢献をしていきたいかは人それぞれの価値観によります。

しかし、従業員ファースト・顧客ファースト・株主ファースト、もちろんどれも大切で企業の成長段階によって優先順位は変わるのかもしれませんが、自分が志望している企業の目線の先には、誰がいるのだろうか?

日本の上場大企業で働くことを選択する場合、このような視点から、もう一度広く捉え直してみると、知名度だけに惑わされず、また新しい企業との出会いがあるかもしれません。

次回、【社会を知る編】第3回は、中小企業の情報を中心にお届けします。

どうしても情報の全体数が少なく、特に就職活動の場面では、スポットライトを浴びる大企業の陰に隠れてしまいがちな存在。

しかし、日本を支えているのは中小企業です。

全体像を把握しながら、自分に合った中小企業をみつけられる方法をお伝えしたいと思います。

Who is writing

大学卒業後、人材業界にて法人営業・キャリアコンサルティングに従事。
20代~60代まで幅広い年齢層のキャリア・メンタル相談を経験する。
その後、企業の新卒採用代行、大学生の就職活動支援、さまざまな生きづらさを抱えた学生と向き合う伴走支援に携わり、現在の社会構造と人の活かし方に疑問をもつ。
また、人にかかわる問題の根底は「教育」にあると考え、幼少期の教育・子育て分野にも
キャリアを広げている。
2級キャリアコンサルティング技能士(国家資格)