あなたの会社は大丈夫?経験者が伝えたい「ブラック企業あるある」

ブラックサバイバーである筆者が、ブラック企業にありがちなこと5選をご紹介します。

  

ブラック企業にも個性がある

「ブラック企業」と一言にいっても、その実態は様々です。

社員がどういった点を不満に感じているのか、何に苦痛を感じているのかを突き詰めていくと、実に様々な会社の「色」が表れています。

しかし、そんなカラフルな「色」をすべて覆い隠してしまうような「黒」と表現されるブラック企業。

いつからかそう呼ばれるようになってしまった会社は、一体なぜそうなってしまうのでしょうか。

ブラック企業の内部にいるからこそ分かる「黒い部分」があるのと同様に、少し離れた第三者の目線でないと見えてこない「黒い部分」もたくさんあります。

自分はすっかり慣れてしまって問題なく受け入れられていることも、知らない人が聞いたら驚くほどあり得ないようなことかもしれないと思うと、少し怖いですよね。

今回は、ブラック企業に勤務した経験を持つ私が、ブラック企業にありがちなことについてご紹介していきたいと思います。

「自分のいる会社って、もしかしたらブラックかも…」

「新しい勤め先が見つかりそうだけど、なんだかちょっと怪しい…」

そんな時は、ぜひこの記事の内容と比較してみてくださいね。

ブラックあるある①「ふわっとしたスローガンが好き」

まず、ブラック企業によくあることとして、ふんわりとした良い感じの言葉を好むということを挙げておきましょう。

経験のある方はよくご存じかと思いますが、ブラック企業では何故か社訓や経営理念、社長からのお言葉といったものが頻繁に登場する傾向があります。

もちろん、これらは一般的な会社であれば何の問題もありません。

社員が一つとなって高い目標を持ち、皆で共有や意見交換をしながら仕事に励むというのは、大変素晴らしいことです。

しかし、ブラック企業においてはそうとは限りません。

ブラック企業におけるこういったスローガンは、妙にふわっとした概念のようなもので、何の具体性も無いということがよくあります。

なんとなく聞こえのいい言葉を並べているだけで、実際の中身は空っぽなのです。

それにもかかわらず、何故かそのスローガンを朝礼や会議の度に言わされたり、社長や社員が日常的に連呼していたりなど、異様な光景が広がっていることさえあります。

これらの意味や必要性はというと、特にありません。

もしあるならば間違いなくそちらのほうが具体的ですし、それをスローガンとするはずです。

ブラック企業のスローガンは、職場におけるただの合言葉のようなものと化しており、社員は今後どのように仕事に取り組むのか、現時点での最終目標は何なのか、といったことがはっきり定まっていないことが多いです。

中身が伴っていれば「一人ひとりの意識が高い会社なんだなあ」で済むようなことが、それがまったく無いことによって、ただの「おかしな会社」「ヤバい会社」になってしまっているのです。

そのうちに、社員はこれらのスローガンに使用される言葉に嫌悪感を抱くようになります。

そうなってしまえば、当然社員の心は会社からどんどん離れていきますね。

これでは仕事に対するモチベーションを大きく低下させてしまい、結果として、会社の成長にはなかなか繋がらないということになってしまうのです。

あなたは会社の経営理念に賛同し、共感できているでしょうか?

そのための具体的な取り組みや、全体の目標が何なのかを理解していますか?

日頃あまり意識したことがなかったという方も、是非今一度考えてみてください。

ブラックあるある②「理由なき謎ルールがある」

こちらも①に関連したことですが、ブラック企業には何で存在するのか分からない上に皆がおかしいと思っているにもかかわらず、何故か改正されない謎ルールというものが存在します。

第三者に話すと驚かれてしまうような内容でも、会社内では皆当たり前のように実行しているのです。

実際に私が経験したり、耳にしたりしたことがある謎ルールを一部ご紹介します。

・LINEやチャットツールは禁止、連絡はメールで行う

・オフィスでゴミ袋は使わず、段ボール箱で代用する

・事務員は同僚のコーヒーの飲み方を全従業員数十人分把握し、朝の出勤時はミルクや砂糖の量などをそれぞれ調整したものを全員分用意する

・勤務中に野球の話をしてはいけない

「どうして?」と聞かれてしまうと、私もまったく見当がつかないので困ってしまうのですが、これらは本当に存在していた謎ルールです。

ここで一つひとつ掘り下げるのはあまり有意義でないので、今は遠慮させていただきます。

これの本当の恐ろしさは、これらのルールを守らなければならないことではありません。

このルールを廃止しようと提案すると、それとなくやんわり封じ込められてしまうことです。

誰が決めたのか分からないルールに、多くの人が「面倒だ」とか「意味がない」と口にしているところへ、

「だったら止めちゃいましょうよ」と言うと何故か、

「えっ、あー…」

という雰囲気になります。これには様々な理由が考えられますが、

・社長が決めたことだから逆らえない

・今更システムを変えるのが面倒くさい

・余計なことをして責任を負いたくない

・とにかく関わりたくない

といったことが挙げられるでしょう。

ただ、これについては

「いや、これはこういう理由があるから大切なルールなんだよ」とか、

「確かにそうだね、あとで一緒に上司に相談してみようか」

などと前向きな意見を言ってくれるメンバーがいれば、今後状況を変えていける可能性もありそうです。

しかし、そういった説明や提案がまったく無い場合、社員の仕事に対するモチベーションは既に下がりきっているということになります。

なかなか難しいことですが、社内の環境やシステムを積極的にアップデートしていこうという意志の強い会社が成長していくと考えると、その逆では成長は望めないということになってしまいます。

良い部分はさらに良くなるように。悪い部分は改善していく。

当たり前のように聞こえますが、とても大切なことですね。

ブラックあるある③「誰もやりたくないのにイベントが多い」

②のように、ブラック企業には「誰もやりたくないのにやらなければならないこと」が多く存在します。

そして、その最も分かりやすい例として挙げられるのが、社内でのイベントです。

ブラック企業ですから、平日の就業時間中に「たまにはみんなでゆっくりわいわい楽しもうよ!」なんてことはまずあり得ません。

こういったイベントの多くは、ほとんどが休日返上で行われているものです。

最悪の場合は、前日から準備が必要とされるために土日が丸2日間潰れるなんてこともあります。

最たる例は、バーベキューです。

まったく楽しみにしていないにもかかわらず準備に駆り出され、始まってからは一応楽しもうと努めるものの、終わってからはいつもと一味違う虚無感と疲労に襲われる…そのような経験がある方もいることでしょう。

社員とのコミュニケーションを図るためのイベントがすべて悪いというわけではありません。

しかし、皆で楽しもうという空気感が無い状況でこういったイベントに参加することは、はっきり言って苦痛でしかないのです。

そもそも、社員の多くが自分の職場や仕事などに嫌悪感を抱いている状況では、こういったイベントを楽しむことはほぼ不可能です。

言ってしまえば、既に「うちの会社はブラック企業だ」と社員が思ってしまっている場合、このイベントは何の意味もないものになってしまいます。

「イベントが多いからブラック」というよりは、「イベントが楽しめないほどのブラックになってしまった」という表現の方が正しいかもしれません。

このような事態になってしまう前に、社内のコミュニケーションを最適化し、社員同士の関係性を改善していく必要があります。

そう考えると、社員同士のコミュニケーションを図るためには、イベントよりも先にやるべきことがたくさんありそうですね。

ブラックあるある④「誰かが抜けると停止する業務がある」

仕事をしていると、「これはあの人に聞かないと分からないな」ということが起こるのは、よくあることでしょう。

しかし、もしその方が会社をお休みしていた場合、どうするのが良いでしょうか。

一般的な会社であれば、周囲の同僚や上司に相談しながら対応するか、本人が出勤してから報告。相当急ぎであれば、電話やチャットで連絡したりするなどして対応するでしょう。

では、ブラック企業ではどうでしょうか。

最も良くない展開の一つが、その人にしかわからないことなので、周りは一切関与せずに放置するというものです。

翌日出勤してきた社員は、「え、何で誰もやってくれなかったの?どうして連絡をくれなかったの?」と思うでしょうが、しっかり引継ぎや共有をしていなかった本人にも責任はあります。

その上、周りの社員は「仕事を放置して休みを取ったのが悪い」と言わんばかりに無関心を貫くこともあります。

これにより、最終的に迷惑がかかるのは誰でしょうか?

社内だけのことであればまだしも、顧客や取引先に迷惑がかかる可能性もありますよね。

果たして、このような仕事のやり方に生産性があるといえるでしょうか。

良い言い方をすると、多くのブラック企業ではそれぞれの仕事を担当する人が明確に決まっています。

しかしそれは言い換えると、自分以外の社員の仕事にはほとんど関与しないということなのです。

どこかの工程でトラブルが発生してしまった場合に、その他の工程を担当していた社員が、「私は自分の仕事はきちんとやった、自分は関係ない」と、知らんぷりをするという光景は決して珍しくありません。

つまり会社として、チームとして、一つの仕事を成し遂げようとする気持ちが無いということです。

これに関しては、一概に会社が悪いと言えない部分はあると思います。

悲しいですが、人のために動くことができない人や、思いやりや協調性に欠ける人というのは、世の中に少なからず存在しているのです。

それでも、そういった仕事の仕方を黙認している企業には少なからず責任があると言わざるを得ません。

仕事への取り組み方やチームワークに関しては、労働環境やメンバーのマインドセットによって大きく変えられる可能性もあるので、やはり会社側が見直しをしていく必要性があるでしょう。

ブラックあるある⑤「未解決の問題が山積みになっている」

さて、④のような状況を続けていて、誰かが退社してしまったとしましょう。

ブラック企業においては、ある日突然誰かが出社しなくなるという状況は全く珍しくないのです。

もし引継ぎをする十分な時間があったとしても、後任の従業員はあまり積極的に話を聞かないこともあります。

「これは自分の仕事ではない」という意識が強い上に、人手不足から自分の負担が増えてしまうことに苛立ってしまい、「これが分からなければ後々苦労することになるのは自分たちだ」という考えを持てないのです。

その結果、人が入れ替わるにつれて、社内には分からないことがどんどん増えていきます。

そうすると、当然トラブルが発生する頻度も多くなります。

既にいなくなってしまった人に責任転嫁をし、無理矢理な形で問題を乗り越えていくので、実質的な解決には繋がりません。

それを繰り返していくことにより、現状解決できない問題がどんどん増えていってしまうのです。

これはある意味、ブラック企業であるがゆえに起きてしまう最も重大な問題の一つだと言えるでしょう。

原因はというと、人手不足や業務過多、コミュニケーション不足など、様々な要因が挙げられます。

要するに、ブラック企業の本質そのものに起因しているということです。

こうなってしまった企業は、ビジネスを継続できるでしょうか。

順調に売り上げを伸ばし、顧客の増加、満足度アップ、事業規模の拡大などといったことが望めるでしょうか。

働いている従業員たちは、どうなってしまうのでしょう。

会社のために懸命に働く優秀な人材がいたとしても、もはや彼らだけではどうにもなりません。

沼にはまってしまったブラック企業は、ある一定のラインを超えるとそこから抜け出せなくなってしまうのです。

ブラック企業の真の恐ろしさ

企業とは、家庭や学校などと同様に、一つのコミュニティとして捉えられると思います。

社会人になると、様々な企業や団体に接する機会がありますが、コミュニティの外からは見ることができない、実際に所属して初めて見えてくる部分はたくさんありますよね。

人対人の場合、

「あの人、もっと嫌な人かと思ってたけど全然そんなことなかった!」

「怖そうだと思いながら話しかけたら、すごく良い人だった!」

などということはしばしばありますが、面白いことに、コミュニティにおいてこういったことはほとんどありません。

外部の多くの人から「なんかヤバそうだな」と思われてしまう会社は、その通りとんでもない会社であることが多いです。

あなたは、勤め先を客観視できていますか?

あなたの会社は、顧客や取引先、大衆からどのように思われているでしょうか。

もしも、自分の勤務先をブラックだと感じているにもかかわらず、第三者からの評価にギャップを感じたり、客観的にどういったものなのかよく分からないと思っていたら、非常に危険です。

その場合、あなたは既にブラック企業の一部となってしまっている可能性があります。

ブラック企業の恐ろしさは、薄給や人手不足、労働環境の悪さだけではありません。

特に怖いのは、優秀だったはずの人材を消耗し、ブラック化してしまうことです。

環境は人を変えてしまいます。

最初は素晴らしい人材であったにもかかわらず、ブラック企業に居続けることによって、他人との接し方、仕事への取り組み方、モチベーションは大きく変化していきます。

そうして働き続けているうちに、ブラック企業から抜け出したいと本気で思っているのに、ブラック企業を形成する一つの要因となってしまうことがあるのです。

しかし、ブラック企業であるからといって、すぐに辞めたり転職をしたりすることが難しい場合もあるでしょう。

勤務先の会社がそうであると知りながらも、愛着があったり、顧客との関係性を重んじていたり、仕事としてのやりがいを感じたりしながら、勤続を選ぶ方々もいるはずです。

環境に耐えながら働き続けるという選択をすることは、決して悪いことではありません。

悪いことではないのですが、正しい選択肢の一つでないこともあります。

そこで働き続ける選択をした場合は、あなた自身の価値を著しく低下させてしまう可能性が潜んでいることに注意してください。

もちろん、そのような企業と関わりを持たないことが一番ですが、ある日うっかり足を踏み入れてしまった場合はどうか忘れずにいてくださいね。

あなたのアイデンティティや健康を守るためにも、その場にいる時間は短いほうが良いでしょう。

最悪の場合、あなたの持つ個性が破壊されたり、心身に影響が及んでしまうようなことにもなりかねません。

どうか、そうなってしまう前に新たな道を切り開くことができるよう願っています。

Who is writing

日本橋学館大学リベラルアーツ学部卒業。
学生時代を関東で過ごした後、東北の田舎に帰郷。嫌々地元で就職を決めたら、うっかりとんでもないブラック企業に入ってしまった!
絶望的な環境からなんとか抜け出し、個人事業主として働き始めて早5年。現在は、ブラック企業撲滅を目標にライターとして活動中。
本当はお芝居や音楽、歴史が好き。