AI研究最前線vol.8 AIの「会議疲れ」

たくさんの人が参加する会議をまとめるのは少しばかり疲れてしまう…そんな悩みが、AIにもあったようです。

  

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「三人寄れば文殊の知恵」ということわざがあるように、「複数人が集まった方が良いアイディアが出るだろう」と考えている人が多くいます。

一人で考えるよりも、多くの人が知恵を出し合った方がいい答えに辿り着けるに違いない。

企業でも、難しい課題ほどチームで取り組み、会議を重ねながら意思決定を行う場面はたくさんあります。

 

実はこの「三人寄れば」の考え方は、AIの世界にも広がっていました。

 

最近、AI Agentという研究領域が注目を集めています。

どういうものかと言いますと、ChatGPTやGeminiなどの生成AIにAgentとしての役割を持たせ、行動・議論をさせることで、何かしらの目的を達成する、という研究です。

ここでポイントとなるのは、一つのAIだけで完結させるわけではない、ということです。

複数のAI Agentがチームを組み、役割を分担しながら協力して課題を解決していくものになります。

 

例えば、一つのAgentが情報収集を担当し、別のAgentが分析、さらに他のAgentが内容を確認する、といったことを実施することができます。

この領域は生成AIの発展に伴い、急速にできることが増えてきました。

しかも人間と違い、短時間での試行錯誤が容易にできるため、どんなファシリテーターがいれば議論が活発になるのか。

得られる結果がより良いものになるのか?ということを検討することができるようになります。

 

実は私自身も少し齧ってみたのですが、確かに面白い結果がたくさん出ました。

論文としてもまとめ易そうで、研究者としても美味しい領域であるように感じます。

 

「AIもチームで働けば、より賢くなる」

 

そんな期待があり、多くの研究において「マルチエージェント」、すなわち、複数のAgentを組み合わせる手法が開発されてきました。

 

ところが2026年7月24日。

Nature Machine Intelligenceという雑誌に掲載された研究が、この前提にとある疑問を投げかけることとなりました。

【Capable language models can outgrow the benefits of collaboration】

https://www.nature.com/articles/s42256-026-01268-y

この研究では、OpenAI、Google、Anthropicの生成AIモデルを用いて、さらに様々なエージェント構成、課題の組み合わせのもとで、AI Agentの出力を260通りの条件で比較しています。

そしてその結果明らかになったのは「複数のAIが協力すれば必ず性能が向上する」というわけではない、ということでした。

 

しかも、単独のAIのみで高い性能を発揮できるような課題では、AIを増やしても性能はほとんど向上せず、場合によってはかえって低下してしまったのだそうです。

 

その理由として、「調整コスト」が挙げられます。

人間の会議において、参加者が増えるほど情報共有や意思統一に時間がかかるように、AIでも同様の状況が発生してしまいました。

そのため、課題が比較的単純であれば、調整コストがAgentの協力によるメリットを上回ってしまう、とのことです。

さらに研究では「単独AIによる成績」を見ることで、マルチエージェント、すなわち合議された場合の結果をある程度予測できることが示されています。

つまり、「一人で十分にできる仕事なら、無理にチームで取り組まなくても良い」ということができます。

 

一人でやった方が早い仕事、というのは確実に存在しています。

そして同じことがAIにも生じている。

 

私たち人間とAI。

こんなにも違うものなのに、同じ部分がたくさんあるのは、SFのようでとても面白い…そう思うのは、私だけではないと信じています。

 

 

P.S.

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Who is writing

大学にてデータサイエンスを学ぶ傍ら、多くの人にデータ分析の面白さを伝えたいと日々奮闘中。