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ブラックを避ける一番のコツは「危険を感じたら応募しないこと」
「ブラック企業」という言葉が生まれて十数年。
インターネット上での一過性の流行語と思われていた言葉は、すっかり一般社会にも浸透してしまいました。
昔と比べると日本の労働環境はかなり良くなってきていると思う方も多そうですが、現在でも劣悪な環境で従業員を酷使したり、信じられないようなやり方で会社経営をするような企業は存在しています。
先日、某中古車買取会社の経営体質が大きな問題として取り上げられていたように、第三者が見れば「いや、それはおかしいでしょう」と思われるようなことが、さも常識であるかのようにまかり通ってしまう恐ろしさを持っているのです。
就活生や求職者の間では、そういったブラック企業を見抜くためのコツやポイントは度々話題になります。
しかし、情報としてそれらを知っていたとしても、「何とかして早く仕事を見つけなければ」という焦りなどから、会社選びに失敗してしまう方も出てきてしまうのが現状です。
つまり、新しく仕事を探す場合は、ブラック企業に吸い込まれ利用されてしまう可能性は常に付きまとっています。
新たな第一歩を踏み出そうとする中で、そのような事態に見舞われてしまう可能性はできる限り少なくしておきたいですね。
そこで、今回から正式な契約が決まるまでにブラック企業を見抜くポイントについてご紹介していきたいと思います。
このシリーズでは、応募する際の様々な過程において注意していただきたいことについて解説します。
シリーズ第1弾は、求人やホームページに記載されている「キーワード」についてです。
文章中に「…ん?」と思ってしまうような言葉があまりにも多い場合、その会社はブラック企業である可能性があります。
今回は、そういった危険なキーワードとその理由について紹介します。
応募前に是非ご参考にしてください!
キーワード①アットホーム
私が以前勤めていた会社にて、採用人事の仕事を担当していた頃の話です。
ある日、求人に掲載する文章を完成させた上司が、
「こんな感じで良いかな?」
と、見せてくれた原稿にこのキーワードが書かれていました。
「良いと思うんですけど、『アットホーム』という表現はやめておきましょう。ブラックだと思われかねないので。」
と、告げた時の上司は、予想外の反応だったようで少しショックを受けていました。
まぁ、本当にブラック企業だったのですが。
「『アットホーム』と書かれている会社はブラック」というのは、現在30代の私が大学生だった頃から存在していたネットミームです。
企業の採用担当者にも私と同じくらいの世代が増えてきたためか、はたまたこのミームが一般常識として浸透してしまったのか、以前に比べ見かける機会が少なくなったキーワードでもあります。
おそらく、和やかであたたかく、明るい家庭のような職場環境をイメージさせるために「アットホーム」という言葉が使用されていたのでしょう。
しかし、実際にありがちなこととしては、
・社員に対して過干渉
・残業が多過ぎてプライベートがない
・無駄なイベントが多い
・まったく正反対のギスギスした空気感
といったことが挙げられ、求職者の間でも半ばネタとして取り上げられることが多いキーワードなのです。
また、自社がアットホームであると騙る企業は、並外れた精神論で社員を拘束し、時間外勤務や社外での労働・ボランティアなどを強要してくるような会社である場合もあります。
先述した私の勤め先はまさにそのタイプであり、会社はあくまで真剣に「我が社はアットホーム!」思っているのですが、実際の経営体質が常識から大きく逸脱し従業員を苦しめているため、ブラック化している状態でした。
本当にアットホームな良い雰囲気の職場も、もちろん存在しているのでしょう。
しかし、何も情報がない段階で選択することは避けるべきです。
職場環境や働き方、外部からの評判についてよく調べておきましょう。
ただでさえ警戒している方が多いキーワードですが、そのように話題になっていることすら意識していないということは、採用人事やその他のシステムについてのアップデートを怠っている可能性もありますね。
昔ながらのアナログなやり方を続ける企業を見極める指標にもなるかもしれません。
キーワード②風通しが良い、和気あいあい、活気ある職場
どれも求人で見かけることの多いキーワードです。
これらの言葉から分かる情報は一体何でしょうか。
おそらく、企業の言いたいこととしては「アットホーム」の件と同様、「和やかであたたかく、明るい家庭のような職場環境」なのでしょう。
しかし、あまりにも具体的な情報がなさすぎるとは思いませんか?
「なんとなく感じの良い言葉で誤魔化し、それっぽくふわふわした形でまとめる」というのは、ブラック企業の常とう手段です。
ネット界隈においては、
「風通しが良い」←先輩から仕事を押し付けられやすい
「和気あいあい」←他人の悪口ばかり、プライベートを詮索されがち
「活気ある職場」←怒号が飛び交っている
などといった飛躍した解釈をされていることもあります。
職場や労働環境の説明としてこれらのキーワードが多用されている場合は、やはりもう少し具体的な情報を得てから応募を検討しましょう。
いわゆる「ホワイト企業」の求人では、これらのキーワードはあまり見かけません。
その代わり、業務の詳細や職場の従業員規模、どのような人が在籍しているかなど、働く人が求める情報がきちんと書かれています。
かなり極端な例になりますが、自分が働くかもしれない職場の環境をイメージしやすいのはどちらでしょうか?
ブラック企業の場合、あえて具体性のある情報を書かずに、実際の労働環境やそれに関する問題を隠そうとしている場合があります。
「妙にふわっとした言葉ばかりだな」と思った場合は、慎重に進みましょう。
キーワード③若手が活躍中!
会社の創業年数によって異なるので一概には言えないのですが、若手の活躍を強くアピールし過ぎている企業は少々危険です。
若き経営者と20~30代の社員で構成されるスタートアップ企業等でない限り、ある程度の規模の企業であれば、40代以上の中堅社員・ベテラン社員が活躍しているはずではないでしょうか。
その方たちはどこへ行ってしまったのでしょう?
転職サイクルの早いブラック企業では、望んでいないにもかかわらず、入社して間もなく重要なポジションを押し付けられたり、いきなり管理職として配置され残業代が適切に支払われなかったりということも大いにあり得ます。
「活躍」という表現の意図について慎重に調べましょう。
若い新入社員でも自由に相談・提案・企画ができる職場環境を求めるのであれば、その旨がはっきり書かれている求人の方が魅力的ですよね。
もし、あなたが魅力を感じる企業がこれに当てはまるようであれば、採用前に
・従業員の年齢層や割合
・若い世代の従業員の主な役職や業務内容
・ベテラン社員の実績や勤続年数
…などについて、具体的な話を聞いてみるのも良いでしょう。
「若手を酷使中!」の可能性が高そうな求人には注意してください。
キーワード④「成果」「目標」「昇進」など実力主義の圧があまりにも強い言葉
体育会系といいますか、「熱血!情熱!パワー!」といった印象を受ける言葉を使用し、職場の活力や上昇志向の高さをアピールしている企業は多くあります。
実際そのようにエネルギッシュな企業であれば良いのですが、この手のキーワードを多用して実力主義的な環境をアピールする企業は、従業員を駒扱いし思い通りに動かそうとする「支配型ブラック企業」である可能性もあるのです。
実際の給与システムや評価方法に関しては、必ず事前によく調べておきましょう。
何の実績も無いにもかかわらず、さも高給が望めるかのようにアピールしているだけの場合もあります。
こういったキーワードに加えて、
・仕事の内容がはっきり書かれていない
・最低賃金ギリギリ
・常に求人が掲載されている(慢性的な人材流出による人手不足)
・独立や理想、夢に関連した記載が多い(理想が高く洗脳しやすい人材を求めている)
などの要素が複数重なっている場合はかなり危険です。
ブラック企業には様々なタイプが存在しますが、このタイプにおいては、ある意味お手本のようなブラック要素を持っていることが多くあります。
例えば、
・薄給、諸手当がない
・有休が使えない、休みがない
・長時間労働、時間外労働
・厳しすぎるノルマ
・パワハラ、セクハラ、アルハラ
といったようなことが常態化しているような企業です。
そのような企業は会社にとって都合のいいやり方を追求しすぎておかしな業務を命じられたり、それによって大きなトラブルを招いたりするようなこともあるので、応募は控えておきましょう。
例え給料が安かったり勤務時間が長かったりしたとしても、こういった企業よりも働きやすい環境は他にたくさんあるはずです。
キーワード⑤「感謝」「信頼」「やりがい」などの精神系ワード
実は、私自身が皆様に最も気をつけていただきたいのが、搾取・吸収型ブラック企業です。
自社に関する説明に「感謝」「信頼」「やりがい」「思いやり」「素直」などのキーワードをあからさまに多用している企業は、それに当てはまる可能性があります。
一見あたたかく優しい印象の言葉たちですが、冷静に考えて、これらの言葉は自ら発信して主張するものではありません。
仕事やコミュニケーションについて他者から評価を受ける際に使用される言葉ではないでしょうか。
それを自分たちで必死にアピールしているということは、「自分たちはこう思われたい」という単なる願望である可能性が高いです。
その場合、外部の人や従業員の多くはその会社に対してそのようなことは思っていません。
それどころか、まったく逆である可能性もあるのです。
そして、そのような会社が求めているのは、従業員からの会社に対する「感謝」「信頼」「やりがい」「思いやり」「素直」です。
つまり、会社に対して忠実で扱いやすい人間を探しているだけのケースになります。
このタイプのブラック企業であった場合、これらのキーワードを掲げて奉仕を強要したり、労働力やスキル、能力を搾取され酷使されたりというようなこともあります。
善人の皮をかぶって非人道的なことをやってのけることもあるので、非常に質が悪いです。
自社についてあまりにも美しい理想像を掲げてアピールしているような企業には注意しましょう。
ブラック企業に吸い込まれないためには「ブレない意思」が必要
これらのキーワードを含む求人がすべてブラック企業と断定できるわけではありません。
「NGワードが含まれているからブラック企業である」というよりは、「ブラック企業にはNGワードが含まれている可能性が高い」という観点から、求人文をチェックしてみてください。
そして、当てはまる要素が複数あり、なおかつあなたが求人票に対して納得できない部分や理解に苦しむ箇所があるようであれば、応募は一旦控えましょう。
地域情報誌や掲示板、情報サイトなどを含めてよく調べてから応募を検討しても遅くはありません。
なかなか仕事が決まらずにプレッシャーを感じてしまうときもあるかもしれませんが、冷静に落ち着いて、巧みな言葉遣いで誘うような企業は出来るだけ避けましょう。
また、自分が仕事を決めるにあたっての明確な条件をはっきりと定めておくことも大切です。
仕事を見つけるために応募を繰り返しているうちに、
「ちょっと気になるところはあるけど、これくらいであれば別に良いかな」
と、自分でも気がつかない間にどんどんハードルを下げてしまい、結果としてブラック企業へ足を滑らせてしまうことも十分あり得ます。
自分が仕事に対して求める条件は明確に決めておき、それを元にして企業を選別することで、判断がブレないように準備しておくのが良いでしょう。
一度設定した条件を改める場合は、特定の求人と比較して決めるのではなく、自分の市場価値や意思を元によく検討することをおすすめします。
そうしておけば、こうしたキーワードで応募者を惑わす求人に翻弄されるリスクを少なからず減らすことができるはずです。
求人への応募は、新しい道へ進むための第一歩になります。
自分自身との対話を楽しみながら企業を冷静に分析することで、素敵な仕事との出会いに期待しましょう。