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このシリーズでは、ブラック企業への就職を回避するために、企業の求人へ応募する際の様々な過程において注意していただきたいことについて解説しています。
シリーズ最終回となる今回は、選考を終えてから会社の一員となるまでの期間についてです。
具体的には、企業との雇用契約を結ぶ段階での話をさせていただきたいと思います。
「そこまで行ったらもう引き返せないよ!」
と、お思いになる方もいるかもしれませんが、もし相手がブラック企業だった場合、この段階で逃げられるならば逃げるに越したことはありません。
最後まで気を抜かずに参りましょう。
ポイント①一般的な雇用契約書に書かれている内容を把握しておく
まず、「一般的な雇用契約書には何が書かれているか」ということを是非知っておいていただきたいと思います。
これは、正規雇用に限った話ではありません。
パートやアルバイトなど、様々な働き方を選択されているすべての皆様にお伝えしたいことです。
実は、法律上において雇用契約書の作成義務はありません。
そのため、中には「契約書にサインなんてした記憶はないかも…」という方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、ほとんどの企業では業務内容や雇用形態、給料などの条件についてのすり合わせを行うため、この契約を求められます。
これはブラック企業においても同様です。
中には、実際に仕事を始めてから被雇用者に文句を言われたりトラブルになったりすることが無いよう、より慎重に契約を進める企業も存在します。
そのような中で、やはり一般的な雇用契約書の内容を知っておかなければ、これから紹介する「おかしな契約内容」に気づくことはできません。
そのため、雇用契約書には通常どういったことが書かれているのかを知っておいていただきたいのです。
雇用契約書の記載事項は、主に以下のようなものがあります。
- 就業の場所、従事する業務の内容
- 労働時間、休憩時間、休日、休暇、就業転換に関すること
- 賃金の計算・支払いの方法
- 契約の有効期間
- 退職・解雇に関すること
具体的な書面は「雇用契約書 テンプレート」などで検索をすると、無料で簡単に見ることができます。
また、これまでの勤務先などで契約時に受け取った控えなどをお持ちでしたら、参考にしてみてください。
あなた自身が良い職場だったと感じている企業の雇用契約書であれば、不審な内容であることは少ないでしょう。
ポイント②求人票や採用面接の際に提示された条件と比較する
さて、①のポイントを踏まえて、契約時の条件をチェックしていただきたいと思います。
契約書には、給与、賞与、勤務時間や休日日数などについての詳細な記載があるでしょう。
その際に、応募時一番初めに目にした求人票の内容を思い出してください。
出来れば、応募の時点で求人票の記載事項を控えておくのが良いですね。
そして、記憶の中の求人票と契約書の内容を比較し、記載されている情報が一致しているかを確認しましょう。
この際、求人票の内容と大きく異なる記載がある場合は危険です。
試用期間内で労働条件が異なる場合などでも、この時までに1度は説明があるでしょう。
あなたが契約書を読んで思い当たらない内容が多いなと感じた場合、またそれに関する説明がなかったり、この場面になって突然こちらに強要してくるかのような言い方をされたりした場合は、不誠実な企業である可能性が高いので注意しましょう。
ポイント③オリジナルの契約書を提示された際は要注意
企業によっては、よく見る一般的な契約書とは別に、その企業独自の契約書を提示する場合があります。
それがその企業や職種、業務内容に特化したものであれば、それほど問題はないと言っていいでしょう。
しかし、中には会社に都合がいいように労働者を縛り付け、支配するために、独自の契約内容を持ち出してくる企業が存在します。
そのため、あまり見かけない体裁の契約書を提示された場合は隅々までよくチェックしましょう。
以前私が勤めていたブラック企業では、このような独自契約書に「退職の申し出は退職希望日の3か月前まででなければ認められない」という旨の記載がありました。
これはおそらく、一般的な1か月前までの申し出による退職や、従業員が急に出社しなくなるような事態を防ぐためでしょう。
しかし、わざわざ別に契約書を作成してまで念を押してくるということは、自社は従業員の退職・バックレが絶えない企業なのだと言っているようなものです。
一般常識から外れた労働条件や契約内容には、必ず理由があります。
何故そのような事になっているのか、どうしてそのような条件が定められたのか、という書面の裏側を分析することによって、これから働くかもしれない企業がどのようなところなのかを知ることができるのです。
ポイント④分からないことや気になることをそのままにしておかない
「契約」という言葉の響きはなかなか重々しく、細かい文字や複雑な文章に強い苦手意識を持っているという方もいるでしょう。
相手から求められるままに、その場であまり深く考えずにサインをしてしまい、結果的に苦労をする羽目になってしまったという方もいるかもしれません。
採用が決定した後というのは、今後その企業で働くことがほぼ確定しているわけですから、「あまり時間をかけない方が会社からの印象が良いのではないだろうか」などと遠慮してしまい、なかなか自分の疑問や不安を解消できないまま契約に応じてしまう方もいるようです。
しかし、自分がこれから長く身を置く会社であればこそ、分からないことや悩んでいることについては必ず解消しておかなくてはなりません。
とても勇気がいることだと感じる方もいるかもしれませんが、契約や仕事に関して分からないことや気になることは決してそのままにしておかず、是非積極的に質問しましょう。
こういった契約時は、会社の一員となることがほぼ確定しているということもあり、多くの企業ではとても丁寧かつ親切に教えてくれます。
逆に、ブラック企業においては特にほころびが出やすい場面です。
人材をゲットした安心感から急に態度を変えてきたり、既に部下であるかのような乱雑な扱いを受けたりということもあります。
質問をすることで、その会社や担当者があなたのことをどのように思っているか、どのように評価しているかが分かる場合もあります。
入社後に契約内容について相談ができる機会はそれほど多くありませんから、貴重な機会を無駄にしないようにしたいですね。
ポイント⑤おかしいと思った際はすぐにサインをしない!
一般的に、雇用契約は入社後数日以内に締結するという企業が多いそうです。
入社日よりも前に契約を交わす企業はあまり多くないようですね。
実際には入社が確定していても、書面上においては仕事を始める前の最終段階です。
その会社で働くことはほぼ決定事項であり、自分も相手もそのつもりで事が運んでいくでしょう。
一方、その労働環境に身を置いたことで改めて気がついた点や、不安になった点などもあると思います。
もし、あなたがここまでの採用過程に疑問や不安、不審点を感じていた場合、深入りする前に逃げ出せる最後のチャンスです。
相手がブラック企業であった場合、サインをする前ならばまだ関係をリセットすることができます。
もし、企業との契約に応じたくない場合は正直に、
「申し訳ないが、少し検討する時間が欲しい」
と伝えるか、それが難しい場合は、
「家族に相談してから決めたい」
などの言い方で、その場でサインをしない意思を伝えてください。
それを伝えた際、
「社会人なのだから自分で決めろ」
など、あなたに問題があるかのような言い方ですぐにサインをするよう迫られたとしても、無理に応じる必要はありません。
契約のためにすべてが整えられていれば、そのような事態になるようなことはそう無いのです。
あなたの今後の生活を左右するかもしれない、大切な選択になります。
自分の感覚を頼りに、この会社で働きたいという気持ちをしっかり確認してからサインをするようにしましょう。
まとめ
最後に、このシリーズについてのまとめです。
採用される前にブラック企業から逃れるため、特に重要なポイントは以下の5つになります。
- 怪しいキーワードを過度に使用している求人には応募しない
- 求人票の掲載文をよく読み、不審な点はないか、インターネットやその他メディアにおける情報と差異が無いかよく調べる
- 採用過程において、自分自身が感じた違和感は無視しない
- 契約書の内容は、一般的な労働条件と比較しながらよく確認する
- 判断に迷いが生じた場合はその場で慌てて返答をしない
経験を積むには年齢や時間が必要になりますが、知識は今すぐにいくらでも身につけることができます。
もし求職活動で迷いや不安が生じた際は、これまでの内容を参考にしていただければ幸いです。
また、「自分の人生なのだから自分の好きな仕事を自分で決めればいい」という考えの方が多いと思いますが、もしそれで自分の望まない展開や悪い方向へ進んでしまうことは避けたいですよね。
自分自身の判断に自信が持てず、理想と現実との間で判断に迷ってしまうようなこともあるでしょう。
そのような状況に陥ってしまった場合は、是非家族や友人に相談したり、インターネット上の様々な意見を参考にしてください。
こういった状況において、第三者の目線や意見というのは非常に重要になります。
周りの方も、あなたが大変な目に遭ったり心身の健康を脅かされるようなことは望んでいないはずですから、きっとあなたの身を案じて様々なアドバイスをくれるはずです。
度々お伝えしてきたように、私自身もブラック企業で勤務した経験があります。
入社前にいくつも不審な点を感じていたにもかかわらず、あまり深く考えないままついうっかり入社してしまい、数年にわたって苦しい経験を積む羽目になりました。
今でこそ、自分の若さや経験不足による判断の誤りであったと自覚できますが、当時は、
「どうして自分がこんな目に遭わなくてはならないのか」
という思いもありました。
しかし、退職してから数年経過した今、こうしてライターとして活動したり、自分の経験をもとに周りの友人の相談に乗ったりという機会を重ねるにつれて、少しずつですが自分の人生経験の一つとして受け入れられるようになっています。
決して人に自慢できるようなことではありませんし、どちらかというと人生の汚点として感じているレベルの出来事ですが、少なくともまったくの無駄ではなかったと思えるようにはなりました。
しかし、やはりこのような思いはしないに越したことはないでしょう。
こういった内容の記事は、決して人を楽しませるようなものではありませんし、どちらかというと不快感を覚える方のほうが多いかもしれません。
それでも、「こんなこともあるんだな」と知っておいていただくことで、もし今後ブラック企業に遭遇してしまった場合に打開策を見出すきっかけとなればいいなと思っています。
世の中にはきちんと労働環境の整った素敵な会社がたくさんあります。
一人でも多くの方が、適切な労働環境でやりがいある仕事ができるよう、願っております。