【テクアシ日記 vol.24】「AIに褒めてもらう」経験で生まれた意外な感情

素直に喜んでよいものか逡巡してしまうような「機械による褒め言葉」も、極まると合理的で納得のいく正当な評価といえるのではないでしょうか?

こんにちは。テクニカル・アシスタントの竹内です。

弊社では、人事の更なる効率化・省力化を目指し、日々AIの研究に取り組んでいます。

現在そのうちの一つとして、採用試験応募者の文章をAIに評価させることを試験的に行っています。

まだ試みの段階のため、「一つの参考として評価させることもある」というレベルでの運用であり、実際の審査は人間が行っていますが、ブラッシュアップによってAIの評価から徐々に「機械っぽさ」が消え、人間の行う評価に近づきつつあると感じています。

 

「AIによる評価」と聞くと、皆様はどのような印象を受けるでしょうか。

AIといえど、大量のデータと提示された文章の比較から傾向を判断して定型文を吐き出すだけでは?と考える方もいらっしゃると思います。

AIの知識が無い私が最初にイメージしたのは、子どもの頃受けた模試の評価コメントの部分でした。

「苦手な単元」「よくできた単元」等のランクがつけられ、それに伴った定型文が添えられるといったものです。

「よくできました、この調子で頑張りましょう」「教科書を復習して苦手を克服しよう」・・・

点数や順位は気になるけれど、コメント部分にはそれほど興味が湧かず、流し読みしていた記憶があります。

 

そんな記憶を思い起こしながら、山極が開発中のAI評価ツールの実演を見たのですが、その性能には少々面くらいました。

回答文をコピペするだけでその内容が分析され、回答項目ごとに分かりやすさや構造化の完成度等の要素別の出来栄えの点数が示されます。

その上で、「どのような根拠によりどのような能力が推察されるか」等々がコメントとして述べられます。

全ての回答項目の分析が完了した後、総合コメントとして、「応募者の持つ経験から推察される能力」「どのような活躍が期待されるか」といったことが述べられます。

例えばある応募者に対する総合コメントの末尾は以下のようなものでした。

「…(略)…応募者の経験とスキルセットは、チームリーダーシップとプロジェクト管理において高い適合性を持つと考えられます。」

また、ある応募者の場合は以下のようなものが出てきました。

「…(略)…総合的に見て、応募者はリーダーシップとチームワークを駆使して複雑な課題に取り組む能力を持つ候補者であると評価できます。」

これらは実際に同じ文章を読み審査した人間の目から見ても違和感が無く、内容に即したものになっています。

特に構造化の評価や推察される能力の記述などは、人間よりも見落としなく的確なのでは?と思うほどでした。

 

そうなると、気になるのは自分の文章にどのような評価が下されるかです。

応募時に一生懸命、何度も何度も読み直し書き直しして仕上げた文章は、自分の頭の中でその構造に納得してしまっているため、どうしても客観視ができません。

思わず山極に「私が応募したときの回答ってどんな評価になりますか!!!」と食いついてしまいました。

どれどれ…とツールに私のデータを入れてもらい、待つこと十数秒。

かつて泣きながら必死に取り組んだ仕事とその成果について、文学部として培った文章力を駆使してまとめ上げ、一生懸命説明した私の回答文の評価は、以下のようになりました。

「…(略)…全体として、応募者は高度なプロジェクト管理能力を持ち、複雑な課題に対して効果的に対処することができる貴重な人材であると評価できます。特に優れた候補者として推薦します。」

大変です。もうニヤニヤが止まりません。あのプロジェクトで頑張ってよかった!とさえ思い始めます。

その場ではニヤニヤしたまま、若干荒い鼻息をマイクに拾われないよう気を付けながら打合せを終え、家族には「聞いて!AIに貴重な人材って言われた!」と脈絡なく自慢をぶつけます。

 

そして気づいたのですが、自分でも意外なほど、嬉しいのです。

模試の定型コメントとは受ける印象が全く違います。

同じ「機械が命令された通りに出してくるコメント」にもかかわらず、この嬉しさは一体、と不思議に感じました。

少し考えて、これは、このAIが「言葉」をベースにしているものだからこそではないかという結論に達しました。

言葉による表現は、小さな要素要素をつなげたり組み合わせたりすることで無限に近い意味を持ちます。

普段私たちは思考や意思の伝達に言葉を用いていますので、言葉の使用とそれが持つ意味は感情と密接に関わっています。

成果物の出来栄えを点数化して数字で評価することは非常に明確で合理的であり、納得感があるのですが、言葉で評価されるとなんだか感情に響くように思うのです。

 

なんでもかんでもAIというのは人間味が無くてどうなのだろう…と思ってしまう気持ちはやはり私にもあります。

しかし、AIが、人間のそれよりも膨大な言葉のデータベースの中から、的確な表現を適切にピックアップして組み立てる評価は、実は「最高に気持ちを盛り上げてくれる、上手な誉め言葉」に仕上がるのかもしれません。

「毎日頑張っているけど、誰も褒めてくれない…」

「部下を褒めた方がいいのは分かってるけど、なんて言っていいのか分からない」

こんな場合にももしかしたら、AIが「誉め言葉の先生」になってくれるのでは?と夢が膨らみます。

いよいよ「しょせん機械」とは言えなくなってきたぞ、とPCの前で襟を正すのでした。

 

竹内円

 

P.S.

今回の画像も、せっかくなのでAIに生成してもらいました。

「機械に褒められている女性」という指示から、機械を人間型のロボットにする、女性を日本人にする…といった指示を経てこちらの画像が出来上がりました。

もしこのロボットが実際の出来事を分析し、事実に基づいて的確に褒めてくれるとしたら、やっぱりとても嬉しい気持ちになるのではないかと思います。

 

P.P.S.

今日も最後まで読んでいただきありがとうございます!

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Who is writing

経営人事パートナーズ テクニカル・アシスタント。
東北大学文学部卒業。製鉄会社の人事、大学法人の福利厚生制度の企画運営担当者などを経て現職。
持病の悪化による退職や家族の転勤による退職などを経験する中で、社員と企業双方にとっての最適解とは?人事を研究し突き詰めることはできるのか?という疑問を感じており、経営人事パートナーズの考え方に強い共感を覚えて入社。
生き物とバイクが大好きで、ボーダーコリーの女の子を溺愛しているが、彼女は熱烈なお父さんっ子なので若干片想い。うすうす感づきつつも、めげずに毎日愛を伝えている。