ファシリテーション力を高めるための10のポイント徹底解説!

今回のテーマは「ファシリテーション」です。あなたはそもそもファシリテーターと司会の違いが分かりますか?答えられなければ続きをご覧下さい。

ファシリテーション力を高めるための10のポイント徹底解説!

あなたはこれまで「ファシリテーション」を行なったことがあるでしょうか?

私はこれまで自分自身も含め、会議などで他人が行うファシリテーションについてフィードバックを行い、より良い結果を生み出すためのサポートもしてきました。

そんな経験から今回は「ファシリテーション力を高めるための10のポイント」として

  • ファシリテーターとしてのマインドセット
  • 求められるスキル
  • タイプごとの向き・不向き
  • スキル以外のポイント

についてお伝えします。

ファシリテーションの定義

ファシリテーションとは、グループの作業を効果的に進めるためのプロセスやテクニックを指します。

ファシリテーター(進行役)は、参加者全員がその場に関わり、創造性を発揮できるよう環境を整えることが目的です。

自ら率先して主導するのではなく、あくまで対等な立場から参加者の対話を促進し、合意形成を助けるのがファシリテーターの役割です。

決してリーダーだけが行う役割ではありませんが、少なくともリーダーにはなくてはならないスキルだと言えるでしょう。

なぜファシリテーションが重要なのか?

チームには、多様な意見や経験を持つメンバーがいるのが当たり前ですよね。

そんな環境においてファシリテーションは、メンバー間のコミュニケーションを円滑にし、よりよい意思決定やアイデア創出を可能にします。

また、参加者全員が主体的に関与することで、合意形成がスムーズになり、決定事項への理解と実行力が高まります。

ファシリテーションは、チームの成果を最大化するための重要なプロセスなのです。

司会との違いは?

司会との違いは?

よくあるのは「ファシリテーター=司会進行役」だというイメージです。

結論からお伝えすると、これは似て非なるものです。

ここを勘違いしてしまうと、会議などから得られる結果が大きく変わるので注意が必要です。

では具体的にどんな違いがあるのか?見ていきましょう。

司会者の役割

司会者の役割は、あらかじめ決められた内容や進行を参加者に一方的に伝え、イベントや会議を滞りなく進行させることです。

そのため、司会者には参加者を決まった流れに従わせることが求められます。

場合によっては「速やかに〇〇を行なってください」といった、指示口調になることも少なくありません。

つまり、司会者は指示者や管理者としての立場から、参加者を仕切る役割を担っています。

ファシリテーターの役割

一方、ファシリテーターの役割は、参加者全員が対等な立場から主体的に関与し、建設的な議論ができるよう環境を整えることにあります。

そのためには、中立的な立場から参加者全員を公平に扱う必要があり、自身の意見を押し付けるようなスタイルは避けなければなりません。

参加者一人ひとりの発言に耳を傾け、丁寧に対応していくスタイルが求められます。

発言を促したり、意見をまとめたりと、参加者同士の対話を助ける役割を担っているのです。

このように、ファシリテーターと司会者の役割の違いから、実際のスタイルも大きく異なってくるため、その点を理解しておくことが重要です。

ファシリテーターに求められるマインドセット

ファシリテーターに求められるマインドセット

ファシリテーションを行う上では、いくつかのマインドセット(心構え)が必要ですが、特に以下の3つは重要です。

  1. 中立性と公平性
  2. 傾聴力と共感力
  3. 柔軟性と創造性

1つずつ見ていきます。

1.中立性と公平性

ファシリテーターに求められる最も重要なマインドセットは、中立性と公平性です。

ファシリテーターは自身の意見や立場を押し付けるのではなく、参加者全員の意見を等しく尊重し、公平に扱わなければなりません。

中立性を保つことで、ファシリテーターは特定の個人や意見に偏ることなく、オープンでバランスの取れた議論を促すことができます。

また、公平性を保つことで、参加者一人ひとりが発言しやすくなり、力関係に左右されずに自由に意見を言える環境が作れます。

ファシリテーションの効果を最大限に発揮するには、この中立性と公平性が欠かせません。

2.傾聴と共感の姿勢

ファシリテーターには、参加者一人ひとりの発言に真剣に耳を傾け、相手の立場に立って理解しようとする傾聴と共感の姿勢が求められます。

傾聴とは、単に言葉を聞くだけでなく、相手の伝えようとする本質的なメッセージを捉えようと努めることです。

参加者の発言の裏にある思いや意図、背景にある事情などを読み取る力が求められます。

加えて、ファシリテーターには共感力も欠かせません。

参加者一人ひとりの価値観や立場の違いを認識し、その人なりの視点から物事を捉えようと心がける姿勢が大切です。

そうすることで、参加者の気持ちに共感でき、より深い理解につながります。

3.柔軟性と創造性

また、ファシリテーターには柔軟性と創造性が求められます。

柔軟性とは、計画通りにいかない場合でも動じずに冷静に対処する力のことです。

会議や議論の過程で、予期せぬ事態が起こることは珍しくありません(というより、想定通りにいかないのが会議です)。

そんな時こそ、ファシリテーターは柔軟な姿勢と創造力を発揮して、状況に適切に対応しなければなりません。

議論が予想外の方向に進んだり、時間配分が崩れたりしても、それを受け入れて臨機応変に進行を調整できるよう、心構えが重要になります。

一方で創造性も欠かせません。

議論が行き詰まったり、参加者の集中力が切れて場が乱れてきた時には、それを打開するための新しいアプローチを考える必要があります。

そのために必要なのが、豊かな想像力であり創造力と言えます。

計画だけに頼るのではなく、そこから自在に脱却できるかどうか?がファシリテーターの腕の見せ所ですね。

ファシリテーションに必要なスキル

ファシリテーションに必要なスキル

では、実際にファシリテーションを行うために、どんなスキルが必要なのでしょうか?

今回は、以下の3つにまとめてお伝えしたいと思います。

  1. コミュニケーション能力
  2. 質問力
  3. 場作り力

1.コミュニケーション能力

先ほどの「マインドセット」の項目からも分かるように、ファシリテーターには、高いコミュニケーション能力が求められます。

ファシリテーションの場面では、グループ内の多様な参加者と効果的にコミュニケーションを取る必要があるからです。

そのために、まずは明確な言葉遣いが大切になるでしょう。

ファシリテーターの発言は、参加者全員に正しく伝わるよう、わかりやすく簡潔な言葉を心がける必要があります。

(例)「この新商品はミレニアル世代をターゲットとして進めましょう」→「この新商品は、20代から30代前半の若者をターゲットに、彼らの好むポイントを的確に押さえる戦略で進めましょう!」など。

ビジネスで使われがちな、分かるようで分からない言葉は避け、誰もが理解できる言葉を使うよう意識します。

次に適切な話し方も欠かせません。

発言のタイミングを計り、場の空気を読みながら話すよう心がけましょう。

参加者の発言を遮ったり、強引に話を進めたりすれば、議論の流れが止まってしまいます。

(例)議論が白熱して進まない場合:「一旦、目的を見直してみましょう」沈黙が続く場合:「〇〇さんはどうお考えですか?」「例えば□□といった事例が集まると良さそうですね」など。

穏やかな口調で話し、参加者の反応に応じて話の調子を変えるなど、臨機応変な対応力が求められます。

2.質問力

ファシリテーターが適切な質問をすることで、参加者の思考を深め、議論を促進することができます。

とはいえ、単に質問するだけでなく「オープンクエスチョン(はい・いいえで答えられる質問ではなく、参加者に自由に考えを述べてもらえるような質問)」を意識します。

また、質問するタイミングも重要です。

議論が停滞している時、新たな視点が必要な時、掘り下げが必要な時など、状況に応じて的確な質問を投げかけることがファシリテーターに求められます。

その上で、質問に対して参加者から発言があった場合は、適切にフォローアップを行います。

参加者の意見の背景にある理由や根拠を質問し直すことで、より深い気づきや気付きを引き出せるかもしれません。

このように、質問を通じてファシリテーションを効果的に進めていくことができるでしょう。

3.場作り力

ファシリテーションの成功には、適切な場づくりが欠かせません。

まず大切なのは、参加者一人ひとりを尊重し、受け入れる雰囲気を作ることです。

年齢や立場、経験に関わらず、全員が対等に扱われているという実感を持ってもらう必要があります。

また、プライバシーが守られ、失敗を気にすることなく発言できるような「心理的安全性」の高い場を創り出すことも重要です。

意見や質問を気兼ねなく言える空間があって初めて、創造性が生まれてくるのです。

このように、適切な場作りができるかどうかが、ファシリテーションの成否を大きく左右します。

ファシリテーションの向き・不向き

ファシリテーションの向き・不向き

私はこれまで1,000人以上の方にコーチングセッションを行なっていますが、正直に申し上げると「ファシリテーションの向き・不向き」は存在します。

冒頭でもお伝えした通り、ファシリテーション力はリーダー力にも繋がりますので、ある程度はこなせるだけのトレーニングが必要です。

しかし、例えば会議内でファシリテーションを行うよりも、意見を出す側として参加した方がより生産的なタイプもいるので、管理者は適宜見極める必要があります。

ファシリテーションに向いていないタイプ

ファシリテーションに向いていないタイプは、以下のような特性を持つ方々です。

  • 空想に耽るのが好きで人の話をあまり聞かない。
  • 時間感覚に疎く、盛り上がるといつまでも続けてしまう。
  • 発想がどこまでも広がってしまい、行動が本来の目的から外れがち。
  • まとめることが苦手。
  • 良くも悪くも根拠のない自信がある。

こういったタイプの場合は、ある程度トレーニングを行なったら、以下のようなファシリテーションが得意なタイプに任せる方が良い結果を生みやすいです。

ファシリテーションに向いているタイプ

逆に、ファシリテーションに向いているタイプは以下の通りです。

  • 調和的で場の空気を敏感に察知できる。
  • 参加者一人一人の様子に目が向く。
  • 本来の目的を忘れない、本質的な思考ができる。
  • 自分が発言するより、人の意見をまとめる方が楽だと感じる。
  • 時間感覚・バランス感覚に優れている。

こういった特性を持っている方がファシリテーションを行うと、時間内に適切な結果を出すことができるでしょう。

↓タイプの違いについては、こちらも併せてお読みください。

「アサーション×タイプ診断でコミュニケーション力を高める方法」

スキル以外のファシリテーションのポイント

ファシリテーションのスキルが分かったところで、スキル以外の重要なポイントも押さえましょう。

目標と期待値の明確化

効果的なファシリテーションを行うためには、事前に目標と期待値を明確化しておくことが非常に重要です。

例えば、課題解決のための意思決定をすること、新たなアイデアを出し合うこと、合意形成を図ること、短時間での進捗確認など、具体的な目標を設定します。

会議あるあるとして「新たなアイデア出し+合意形成」といったように、目標が明確でない会議をよくみかけます。

これをしてしまうと、アイデアが宙に浮き、時間内に会議が終わらず、何がまとまって・何がまとまらなかったのか?が分からず、次回に繰り越すも次回も同じような話をして終わる・・・ということが起きるので注意が必要です。

次に、参加者全員がその目標を共有し、期待値を合わせることが大切です。

目標達成に向けて、参加者一人ひとりにどのような貢献が期待されているのか、ファシリテーターから明確に説明し、参加者同士で確認し合う必要があります。

これにより、参加者は目標を明確に意識でき、ポジティブに関与ができるようになるでしょう。

補足:事前共有が大切!

さらに、目標達成に向けたプロセスについても、事前に参加者と共有しておきましょう。

全体の所要時間、各議題に割りふられた時間、休憩の取り方など、会議の進め方を明示することで、参加者の意識を合わせられます。

時間管理と進行管理

ファシリテーションの効果を最大限に発揮するためには、適切な時間管理と進行管理が欠かせません。

時間管理が不十分だと、重要な議論が十分にできなかったり、逆に時間の無駄が生じてしまったりする可能性があります。

ちなみに、テスラやスペースXのCEOとして有名な「イーロン・マスク氏」は、会議の時間を少しもムダにしたくないため、従業員の会議への参加姿勢にとても厳しいそうです。

実際、とある従業員が戦々恐々としている動画を見たことがありますが、イーロン・マスク氏は最高の起業家ではあるものの、最高のファシリテーターにはなれないかもしれません(笑)

そこまでの厳しさは必要ありませんが、ファシリテーターは事前に各議題にかける時間を見積もり、その範囲内でファシリテーションを進める必要があります。

議論が予定時間を大幅に超えそうになった場合は、焦点を絞り直したり、次回に議論を持ち越したりと柔軟に対応しなければなりません。

だからこそ、ファシリテーターが議論そのものに没頭したり、自分が何を言うべきか?に意識を置きすぎてしまわないよう、常に客観的な視点をもたなくてはいけないのです。

状況に応じて、臨機応変に時間配分を調整する柔軟性が求められます。

一方、進行管理も重要な役割です。

ファシリテーターは、議論の方向性が目的から外れないよう注意を払う必要があります。

議論が主題から逸れたり、参加者の発言が繰り返しになったりした場合は、適切に方向修正を図る必要があります。

このように、ファシリテーターは時間管理と進行管理の両面から、状況を冷静に判断し、臨機応変な対応を取る必要があるのです。

おわりに

おわりに

最後に、ファシリテーション力を高めるための10のポイントをまとめると・・・

  1. 中立性と公平性
  2. 傾聴力と共感力
  3. 柔軟性と創造性
  4. コミュニケーション能力
  5. 質問力
  6. 場作り力
  7. ファシリテーションに向いていないタイプ
  8. ファシリテーションに向いているタイプ
  9. 目標と期待値の明確化
  10. 時間管理と進行管理

です。

とは言え、ファシリテーション力は一朝一夕には身につきません。

また、結局のところ理論やテクニックだけでなく

  • どんな結果をもたらしたいか?
  • そのために参加者にどんな風に関わってもらいたいか?
  • そのために自分がすべきことは何か?

といった「一生懸命で前向きな気持ち」もファシリテーションには必要です。

すぐにうまくいかないかもしれませんが、失敗を恐れずにチャレンジし続けるだけの価値があります。

ファシリテーション力は、組織の課題解決力やイノベーション力を大きく左右する重要な能力なのですから。

Who is writing

岩下 知史(いわした ともふみ)

職業:メンタル&ビジネスコーチ、ライター。

クライアントは経営者、会社役員、ドクター、看護師、個人事業主〜主婦まで多岐に渡る。

大学卒業後は主にホテル業界に従事、東証一部上場企業にてチームマネジメントに携わり20名ほどの部下を抱える。

離職率の高いホテル業界で、人材教育へのプレッシャーから躁鬱病を経験するも、それまで一度も予算達成したことがなかったチームを常勝チームへと成長させる。

その後2015年に独立、様々な成功と失敗体験を積む中で「教育」に情熱があることを再認識し、経験・人脈ほぼゼロの状態から、コーチング、ライティング、Webマーケティング、研修講師業などを通じて本格的に人材教育業界へ。

2020年からは世界で100万人が活用しており、MicrosoftやIBMといった有名企業に人材育成ツールとして導入されている「ウェルスダイナミクス」において、専属のメルマガライター兼・日本に3人しかいない公認トレーナーを務める。

その間は1,000人以上のビジネスパーソン、有資格者の指導にあたり、2022年にトレーナーを卒業〜現在に至る。

人生のミッションは「自ら思考・選択・行動できる人材を育てること」、趣味はギターと筋トレ、心理や精神世界に関する読書、娘と遊ぶこと。