はじめに
今回は、中間管理職のストレス要因と人事が取るべき対策について解説していきます。
仕事をしていれば誰しもが感じたことのある”ストレス”ですが、新人の頃は先輩や上司が相談に乗ってくれたり、サポートしてくれるおかげで、うまくコントールできていたかと思われます。
しかし、経験を積むに連れて、いつの日か指導する立場になると、今度は自分でコントロールしなければならなくなります。
中間管理職はチームを牽引する立場の人間なので、部下をマネジメントして目標に向かって導かなければなりません。
ただ、他の職員と比べても業務量が多くストレスを感じやすい環境にあるため、実際にはストレスを上手くコントロールできず1人で抱え込んでしまう方が多いです。
最初から上手く立ち回れる人はほとんどいないので、人事が中間管理職のサポートをしてあげることが重要となります。
そこで今回は、以下の内容について解説していきます。
- 中間管理職の役割とは
- 中間管理職がストレスを抱える5つの要因
- 人事が取るべき5つのストレスケア対策
本記事を読み終えれば、中間管理職の抱えるストレスに対して適切な対策が取れるため、職員一人ひとりのパフォーマンスUPも期待できるでしょう。
人事コンサルティングを行っている弊社が、中間管理職のストレスケア対策について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
中間管理職の役割とは
中間管理職は、上層部と部下の間に位置する管理職で、両者の橋渡し的存在です。
別名「ミドルマネジメント」とも呼ばれ、部長や課長、係長、主任が中間管理職にあたります。
中間管理職の役割としては、以下のような内容が挙げられます。
- 経営陣の戦略や方針を現場に伝える
- 部下の育成・教育・マネジメントを行う
- アクションを起こし、チームとして成果を上げる
- 現場で出た意見・改善点を経営陣に伝える
現代では、経営方針に従ってチームを統括するだけでなく、自分もプレイヤーとして成果を上げる「プレイングマネージャー」が中間管理職の約9割を占めるとも言われています。
なぜ、これほどまでにプレイングマネージャーが多いのかというと、バブル経済崩壊による人件費削減に伴い、売上を上げない管理職が必要とされなくなったからです。
また、職員一人ひとりの業務負担が増えたこともあり、ノルマを達成するためには管理職も同じように業務を遂行する必要が出てきました。
このようにして、中間管理職は①自分の業務②チームを統括する業務③上司と部下の連携をとる業務の3つの役割を担うようになったのです。
中間管理職がストレスを抱える5つの要因
ここでは、中間管理職がストレスを抱える5つの要因について解説していきます。
イメージできる方も多いかと思いますが、中間管理職は上司と部下の両方、ひいては自分の生産性の3方向に目を向ける必要があります。
そのため、多方面から違ったストレスがかかってしまうのです。
では、具体的にどこにストレスを感じるのかを解説していきます。
①経営目標への責任
中間管理職は、上層部や経営陣の立てた方針や目標達成のために、チームをまとめてアクションプランを実行します。
そのため、目標が達成できなかった場合は、中間管理職の責任だとされているケースが多いです。
例えば、営業部の月の目標が契約本数であると仮定とします。
「人材が不足している・力量のある職員が少ない」などの理由があったとしても、なんとしてでも目標は達成しなければなりません。
そのためには、部下をマネジメントしなければなりませんし、場合によっては自分で契約本数を稼がなければならないでしょう。
このように、マネジメント業務に加えプレイヤーとしての業務が重なることで肉体的にも疲弊し、目標が達成できない状況下であれば、そこに精神的ストレスもかかってしまいます。
人手不足や部下に仕事を任せられないような状況であれば、なおさら中間管理職の負担は増えるため、労働環境によっても左右されると言えます。
②部下のマネジメントやメンタルケア
中間管理職は部下の直属の上司になるため、マネジメントが上手くいかないとストレスに感じてしまうこともあるでしょう。
- 会社のビジョンや経営方針を共有し、共通認識を持つ
- 適切なフォローやフィードバックを行う
- 視座が広がるようなアドバイスを行う
- 段階的に成長できるような指導を行い経験を積ませる
- 相談に乗り、抱えている悩みや問題の解決を行う
上記のように、部下に対して行うマネジメントは多く存在します。
ただ、一人ひとり性格や仕事への向き合い方は異なるため、同じようなマネジメントすればいいというものでもありません。
経験が浅い方であれば、どのように部下と接していいか分からないこともあるでしょう。
最近では、ハラスメント問題も多く取り上げられるようになったため、部下との関わり方に悩まれる方も少なくありません。
プレイヤーであれば自分のことだけ考えていればよいですが、中間管理職になると部下を含め、チームを管理しなければならないため、考えることが多くなり結果的にストレスへと繋がってしまいます。
③外部に対する責任
外部事業者と関わりを持つ企業の場合は、社内だけでなく外部にまで気を配る必要があります。
例えば、あるプロジェクトを進めるにあたり、他社に外注を依頼したと仮定します。
外部とのやりとりは、担当領域の責任者である中間管理職が担うことが多いため、社内業務に加えてタスクが増える形となります。
前述したように、プレイングマネージャーは多くの業務を抱えているので、外部との関わりがあるだけでストレスが溜まりやすいと言えるでしょう。
万が一大きなトラブルがあれば会社のイメージダウンにもつながりますので、社外の人間との関係性の悪化は絶対に避けたい所です。
④上司と部下の板挟み
前述した通り、中間管理職は上司と部下の橋渡し的存在であるため、板挟みになってしまうことも多々あります。
- 上司は目標達成を求める
- 部下は現場の不満を訴える
立場的に双方から別々の要求を受けるため、管理職としてのスキルが不十分な場合、上手く立ち回ることができずストレスを抱えることとなってしまいます。
マネジメントスキルや対人能力がないとチームがまとまらず、結果を出すこともできなくなるため、板挟みの状態になりやすいと言えます。
⑤働き方改革によるしわ寄せ
働き方改革により「有給休暇が取りやすくなった・残業時間に制限が設けられるようになった」などと労働環境は良い方向に変化しましたが、中間管理職の業務負担は以前より大きくなったと言われています。
その理由は以下の通りです。
- 部下の有給休暇時の業務をカバーする
- 残業時間が減っても業務量は変わらない
- テレワークが可能になり仕事を持ち帰ることが多くなった
- テレワークの導入によりマネジメント方法が多様化している
勤務時間や出勤日数が少なくなったことにより、勤務時間内にタスクを処理できなくなり、サービス残業や持ち帰り残業をする人が圧倒的に多くなりました。
これは全ての職員に言えることですが、チームを統括している管理職が溢れた業務をカバーするケースが多いため、中間管理職の負担が一番増えていると考えられます。
また、テレワークの導入により直接顔を合わせることが少なくなったため、従来の方法では部下のマネジメントが難しくなっています。
このように、中間管理職は業務量の増加に加えて、テレワークという新しい働き方に対応しなければならないことから、ストレスが蓄積しやすいと状態にあると言えます。
人事が取るべき5つのストレスケア対策
ここでは、人事が取るべきストレスケア対策について解説していきます。
中間管理職には、多方面への強い責任感やマネジメント能力などが求められますが、これらを最初から持ち合わせている人は少ないため、養うための対策をとることが重要です。
ストレスの管理方法もあわせて解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
①ITツールの導入
ITツールを導入することで業務効率化が図れるため、中間管理職の負担を減らすことが期待できます。
テレワークの働き方が普通になった現代では、部下とのコミュニケーションや現状把握能力などが今まで以上に必要となります。
そこで重要なのが、チャットツールやタスク管理ツールなどのマネジメントに役立つツールの導入です。
これらのツールを使えば気軽に連絡がとれるだけでなく、職員一人ひとりの業務遂行状況を一目で把握できるため、チームをよりまとめやすくなります。
- タスクが多すぎて効率よく進められない
- 部下とのコミュニケーションが少ないため、上手くマネジメントできない
- 部下の業務遂行状況が分かりにくいため、仕事を振り分けづらい
このような状況にある方は、ITツールを導入することで業務を円滑に進められるでしょう。
②ストレスチェック制度の強化
ストレスチェック制度とは、自分のストレスがどのような状態にあるかを調べる簡単な検査で、従業員が50名以上いる事業所では2015年から義務化されています。
必要な回数は年に1回となっていますが、定期的に行うことで自分では気づかない些細な変化にも気づくことができるので、複数回実施することがおすすめです。
中間管理職は部下のマネジメントやメンタルケアを行う一方で、自分のことは後回しにしてしまう傾向があります。
そのため、中間管理職の健康管理には企業のサポートが大切です。
ストレスを抱え込んで精神的に追い詰められてからでは遅いので、定期的なストレスチェックを促し、早期に対策できるとよいでしょう。
③中間管理職同士のつながりを強化
中間管理職同士のつながりを強化することで、1人で抱え込むリスクを減らすことが期待できます。
上司と部下の板挟みになりやすい中間管理職は、悩みを打ち明ける相手がいないことも多く、ストレスを溜め込んでしまう傾向にあります。
上司と良好な関係を築くことも重要ですが、中々相談しづらい方も多いと思いますので、同じ立場にある人との交流を深めることが必要です。
具体的には、中間管理職が集まるミーティングやランチの機会を設け、悩みを相談し合うとよいでしょう。
④中間管理職のマインドセットを変える研修の実施
中間管理職はプレイヤーとは違う考え方を持つ必要があるため、マインドセットを変えるための研修の実施が必要です。
特に必要なマインドセットととして、以下の3つが挙げられます。
- 部下を信用して仕事を振ること
- 積極的にコミュニケーションをとること
- 上司・同僚・部下に相談すること
特にプレイングマネージャーの場合、「自分が率先してやらねば!」という気持ちから、仕事を人に任せられなかったり、抱え込んでしまう傾向にあります。
しかし、管理職というのは部下をマネジメントしたり、チームをまとめる役割があるため周りを巻き込むことが必要です。
プレイヤーとして優秀な人ほど人を頼るのが苦手なこともあるので、中間管理職向け研修のプログラムにマインドセットに関する内容を加えられるとよいでしょう。
⑤セルフケアや休暇を促す
セルフケアや休暇をとることは、直接的なストレスの軽減につながるので積極的に促すとよいでしょう。
中間管理職は責任感が強い立場ですので、他の職員と比べて休暇を取得しづらい傾向にあります。
そこで必要なのが、周りからの声掛けや半ば強制的な休暇の取得です。
働きすぎの状況が続けば誰でも疲労が溜まってしまうので、しっかり休暇を取りストレスをコントロールすることが大切です。
おすすめの休暇中の過ごし方としては、以下の5つが挙げられます。
- 仕事から適度な距離を取るために連絡をとらない
- 気持ちを落ち着かせるためにリラックスする
- 自己啓発のために時間を使う
- 好きなことをしてストレス発散する
- 運動やストレッチなどのセルフケアをして身体の負担をリセットする
これらを意識して休むことができれば心身ともに回復し、仕事のパフォーマンスアップも図れるでしょう。
まとめ
今回は、中間管理職のストレス要因と人事が取るべき対策について解説しました。
- 中間管理職には、「プレイヤーとして成果を上げる・チームを統括する・上司と部下の連携をとる」という3つの役割がある
- 中間管理職がストレスを感じる要因として、「目標達成や外部への責任・部下のマネジメント・上司と部下の板挟み・働き方改革のしわ寄せ」が挙げられる
- 人事はITツールの導入やストレスチェック制度の強化などを行い、中間管理職の負担軽減やストレスの管理・サポートを行うべき
中間管理職は、組織の中で重大な役割を担う役職であるため、様々な面でストレスを抱えてしまいます。
部下のマネジメントは上司が行いますが、中間管理職のストレスケアは基本的に自分で行わなければなりません。
ただ、セルフコントロールが難しいケースがほとんどですので、人事がストレス要因を把握し、サポートをすることが必要です。
今回解説した対策を実行することで、「業務量の増加・ストレスの抱え込み・マインドセット」などのストレスにつながるあらゆる問題を解決することができるので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
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