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日本にあるゴルフ場は2,000コース以上。その数は、世界でもトップ5に入るほどです。
その中には、広く知られた名コースも数多くあります。
この「ゴルフ名コース解剖」では、そんな名コースとして知られるコースについて、その理由をコース設計の視点からご紹介していきます。
第4回は、西那須野カントリー倶楽部です。
パリ五輪開催コースと同じ設計家によるトーナメントコース
前回1924年以来、100年ぶり3度目の開催となったパリ五輪。
ゴルフ競技も日本人選手の活躍により、大いに注目を集めました。
その舞台となったのはパリ近郊、ベルサイユ宮殿のほど近くにある「ル・ゴルフ・ナショナル(アルバトロスコース)」です。
フランスゴルフ連盟のホームコースとして当初からビッグイベントの開催を想定し、何もない原野に大規模な土木工事を行って1990年に作られました。
毎年フレンチオープンが開催されているほか、2018年にはアメリカとヨーロッパの男子対抗戦「ライダー・カップ」も開かれています。
このコースの共同設計者として名を連ねているロバート・ボン・ヘギーは日本でも設計を手掛けており、中でも代表作と言えるのがトーナメントの開催実績もある西那須野カントリークラブです。
今回は、特色ある4ホールを中心に、西那須野カントリー倶楽部をご紹介していきましょう。
(※なお、記事内の画像は全て西那須野CCのHPから引用しています。)
西那須野カントリー俱楽部の概要
西那須野CCは、栃木県の那須塩原市にあります。
明治時代にアカマツの原生林を切り開いて欧米式の大規模農場経営を導入した「千本松牧場」の経営母体が、1993年に開場しました。
未開のままとなっていたアカマツ林を切り開き、土を掘って人工の池を何か所も作り、掘った土でマウンドを作る…。
その様にして作り上げられたコースは、全体としてはフラットでありながらリンクスのようなマウンドによる光の陰影が美しい、「光の魔術師」の呼び名をもつヘギーならではのコースとなっています。
また美しいばかりではなく、バンカーや池をはじめとするハザードも随所に効いており、安易なプレーを許しません。
2021年からは、男子ツアー選手会(JGTPC)主催のトーナメント「JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP by サトウ食品」の開催コースとなっています。
なお西那須野CCの隣には、同じロバート・ボン・ヘギー設計による姉妹コースでトーナメントの開催実績もあるホウライCCがあります。
オフィシャルHPのコメントを借りれば、ホウライCCは「距離は短めだが、1打1打に気の抜けない正確なショットを常に求められるコース」であるのに対し、西那須野CCは「距離は長めで直線的なコースだが、より戦略的なマネジメントが求められる」とのこと。
近くにはロッジなどの宿泊施設もありますので、泊りがけで両コースを堪能するのもありですよ。
住所:栃木県那須塩原市千本松804-2
開場:1993年
運営:ホウライ株式会社
ヤーデージ:7,036ヤード パー72
設計者:ロバート・ボン・ヘギー
西那須野カントリー倶楽部HP
トッププロも手を焼く2つの巨大バンカー~No.6~
BACK:427Y MIDDLE:405Y FRONT:380Y LADIES:315Y
西那須野CCにおけるハンディキャップ1となっている、緩やかに左へドッグレッグしていくパー4。
その難しさの理由は、2つの巨大バンカーにあります。
バンカーの一つはフェアウェイ左サイドに沿うように伸び、ドッグレッグのコーナーで右サイドへと横切る形で続いています。
そして2打目地点からグリーンの方向に目を向ければ、今度はホールの左半分はあろうかという幅のバンカーが、グリーンの数十ヤード手前からグリーンエッジまで広がっているのです。
グリーンも奥からの傾斜がきついため、パーオンにはこだわらず「ボギーならOK」くらいの気持ちを持ちましょう。
ちなみに先述した「JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP by サトウ食品」は、通常とイン・アウトを入れ替えて行われており、このホールは15番ホールとなります。
そして2024年大会の4日間は以下のようなホールサマリーとなりました。トッププロでも手を焼くホールということが分かるかと思います。
1日目:4.226 難易度1番目
2日目:4.133 難易度1番目
3日目:4.266 難易度2番目
最終日:4.156 難易度1番目
池と5段グリーンが待ち構える難ホール~No.9~
BACK:436Y MIDDLE:403Y FRONT:393Y LADIES:305Y
ティーイングエリアからグリーンまで、左サイドに大きな池が広がっている難ホールです。
ティーショットには、左から右に曲がるフェードボールが有効でしょう。
また、仮に1打目を成功させてもセカンドで狙う大きなグリーンは5段に分かれており、乗せた場所によっては簡単に3パットしかねません。
「JAPAN PLAYERS~」では、最終18番ホールとなるこのホール。2024年大会のホールサマリーは以下の通りです。
最後まで息をつくことができないフィニッシングホールと言えるでしょう。
1日目:4.187 難易度2番目
2日目:4.053 難易度3番目
3日目:4.281 難易度1番目
最終日:3.750 難易度11番目
ぐるりとバンカーに取り囲まれたグリーン~No.12~
BACK:161Y MIDDLE:141Y FRONT:127Y LADIES:96Y
バックティからでも約160ヤードと距離こそ短いパー3ですが、グリーンは右の手前をのぞいて大きなバンカーにぐるりと囲まれています。
加えてグリーンは前後2段に分かれており、ピンそばにつけるためには左右のコントロールはもちろん、縦の距離感も合わせることが必要です。
左右2つのフェアウェイを持つパー4~No.14~
BACK:372Y MIDDLE:356Y FRONT:327Y LADIES:279Y
高低差で隔てられた左右2つのフェアウェイがあるユニークなホールです。
右側ルートはティーショットが少し打ち上げ、セカンドが打ち下ろしとなる左ドッグレッグとなります。
比較的フェアウェイは広めでバンカーといったハザードもありませんが、その分Y字型のようなグリーンを狙う際は半分程度隠れてしまうのです。
一方の左側ルートは、右側ルートをショートカットするような形で直線的に設けられています。
狭いフェアウェイは大きなバンカーの先にあり、またグリーンも全体が見渡せるもののセカンドは池越えです。
「リスクと報酬」をそのまま形にしたようなホールが、プレーヤーのコースマネージメント能力を試してきます。
美しくも難しいコースでオリンピアン気分
今回は西那須野CCについてご紹介してきました。
ル・ゴルフ・ナショナルの18番を思い起こさせる9番ホールを始め、パリ五輪のコース同様の美しさと難しさを感じていただけたのではないでしょうか。
ロバート・ボン・ヘギーは西那須野CCについて「優雅で、雄大で、エキサイティングなゴルフ経験のできる舞台を創造することに成功した」と語っています。
また、「ゴルフ初心者の方にも受け入れられるコースであると同時に、チャンピオンシップレベルのプレーヤーの皆さんには、より高度な技量を要求するコースでもあります」とも述べました。
西那須野CCではグリーンはもちろんのこと、ティーイングエリアやフェアウェイにまでベント芝が張られています。
そのため見た目のみならず、実際のショットでも海外でラウンドするかのような気分にさせてくれるのが特徴です。
あなたも一度コースを訪れ、オリンピアンになった気分でご自身のゴルフの力量を試してみてはいかがでしょうか。