1年半ほど前。
chatGPTのサービスがまだ世の中に公開されていなかったころ。
自然言語処理の主なタスクは翻訳がメインであったように思います。
例えばGoogle翻訳でウェブページを翻訳してもらったり。
あるいは、論文を読むときにも翻訳アプリを使うことはありましたが、あまり複雑な文章である場合には、翻訳の精度はそれほど高くなかったのではないかと記憶しています。
他にも、画像が何を表しているかを表現する「ラベル」を推定するための研究も多々なされていましたが、あくまで研究者の中でのみ共有され、機械学習を専門にしない多くの方には届いていなかったように思います。
ところが2022年11月、chatGPTが現れ、AIに対する世間の認識は一変しました。
意外と便利。
でも、なんだか怖い。
ポジティブな意見もネガティブな意見も集まりながら、それでもその可能性に多くのビジネスマンが商機を見出して、様々なサービスが開発・提供されています。
例えば様々な飲食店の情報が載せられており、かつ予約ができるサイト「食べログ」では、いち早くchatGPTの機能を使って、かなり柔軟性の高いお店探しを可能にするサービスを提供しました。
https://tech-blog.tabelog.com/entry/first-challenge-tabelog-chatgpt-plugin-devleopment
少し経ち画像の生成が可能になり、さらには音声での対応が可能になり。
これまで全く想像だにしていなかったことが次々とできるようになる、まさに「不確実性が高い」時代の真っただ中にいることを実感させられます。
ところで、ハーバードビジネスレビューに以下のような記事が上がっていました。
【不確実な時代に、部下のやる気を高める4つの方法】
https://dhbr.diamond.jp/articles/-/10417
不確実で不安定な状況は時として、チームのメンバーに悪影響を与えることがあります。
そんな時、モチベーションを下げることなく、どうやってやる気を高めていけばよいのか?
その為の手法として例えば信頼関係の構築や、メンバーへの働きかけ方法など、様々な対応策が紹介されています。
実は機械学習においても、不確実性を考慮するモデルがいくつかあります。
例えば最も基本的なモデルのひとつである、ガウス過程というモデルがあります。
手元にあるデータでxとyの関係性を分析しようとするとき、xに対応するyの値はガウス分布(正規分布)に従う、と仮定するものです。
例えば身長(x)から体重(y)を推定する問題を考えるとき、もちろん同じ身長の人であっても体重はばらつきますが、そのばらつきを考慮するようなこともできます。
(このようなシンプルな問題であれば、もちろん他の手法でもモデル化することはできます。)
他にも、そもそもデータのばらつき自体を推定しようとするモデルもあります。
このように多岐にわたる「不確実性を明らかにするモデル化」ではありますが、実は悲しいことに、恐らく部下のやる気を向上させるために表現すべき不確実性を明らかにすることはかなり難しいことだと思われます。
なぜならば、機械学習はあくまでこれまでのデータに基づきAならばBになりそう、ということを表現するモデルを学習するにとどまるからです。
全く新しいAIが登場したときに、どんな状況になるのか?というのは、Aに全く新しい要素が追加されることを示しており、モデルで表現することはとても難しくなります。
もちろん、まったく新しい入力に対応できるようにするモデルもあるにはあるのですが、どうしてもその精度はとても低くなってしまいます。
同じ不確実性という言葉を使っているのに、対象が違うために応用ができない…。
言葉の定義をきちんと把握しておかないと、なんだか騙されてしまいそうです。
P.S.
将来の不確実性を予測をしてくれるAIが登場したら、これまた世界がひっくり返るかもしれません。
なんだかとってもわくわくします。