AIへのビジネス界による過剰な期待

ビジネス界でのAIに対する期待度の高さには、正直時折驚かされます。AIに何ができて何ができないのか。見極める必要がありそうです。

突然ですが質問です。

AIにできることは何でしょうか?

例えばchatGPTを使えば、それらしい文章を出力することができます。

これまで人間が行っていた情報収集をchatGPTに任せることもできますし、あるいは翻訳については自分で読むよりも翻訳AIを使った方が圧倒的に早いです。

そういった意味では、AIとの協業によって得られるメリットはたくさんあります。

 

では、AIは今後の需要を正確に予測できるのでしょうか。

実は、ハーバードビジネスレビューにこんな論文が上がっていました。

【AIの進化で企業が直面しうる6つのシナリオ】

https://dhbr.diamond.jp/articles/-/10358

曰く、AIの進歩は非常に速いので、コンサルティングの提案を待っていては間に合わない。

だからこそ、社内できちんと議論を行い、備える必要がある。

そしてそのために、AIを理解する必要がある。

大きく影響がある分野は以下の6つである…。

そんなお話でした。

 

例えば後半の方に出てくるセキュリティなどのリスクの話。

これは、とても納得感があります。

取り扱うデータが増えれば増えるほど、その管理は大変になりますし、万が一流出した際のリスクは大きくなります。

AIに知らずのうちに乗ってしまった価値観のバイアスによって、消費者からの非難を浴びる恐れもあるかもしれません。

 

一方、最初に書いてあったことは、AIによる「精度がもたらす利益」でした。

どういうことかというと、これまで人間が思考錯誤して予測してきた複雑な事象を、AIがあらゆる変数を考慮したうえで、精度を高めて価値を生み出すというのです。

…正直、現在のAIはその位置までは来ていないと思います。

もちろん、いつかそのような状況になるかもしれない、という可能性は否めません。

AIがすべての将来を見通してくれる日も、いつか来るかもしれません。

現に、天気予報の精度が上がったのは物理演算を行い天気を予測するスーパーコンピュータがあるからだ、という話も聞きます。

でも、まるで今「AIは具体的なニーズを予測できる」「あらゆる機能の意思決定を導くことができる」と言ってしまうのは、時期尚早な気がしてなりません。

余りにも、AIを過大評価しすぎているのではないでしょうか。

 

AIの弱点は、これまでのデータからしか学べないことです。

そのため、例えばコロナ禍のような過去に例のないことに直面した場合、AIは正しく予測することはできません。

人間であれば、過去の病気の大流行や、薬の開発度合いなど、直接は病の流行と関係なさそうな情報を考慮し、予測をすることができます。

しかしAIは、人間のように、仮説を立てて予測することも苦手分野です。

(似たようなことはchatGPTさんもできるのですが、やはり人間には及びません。)

 

「AIはすごい!」

もちろんリスクに備えることは重要かと思いますが、必要以上に恐れ、備えすぎてしまうことも、現在のチャンスを狭めてしまうのではないか。

と、AIの研究者のはしくれとしては思います。

とはいえ、精度を上げられるように日夜研究が進められているわけで、どこまで進歩することができるのか。

その予測も含め、とても難しい問題です。

 

 

Who is writing

大学にてデータサイエンスを学ぶ傍ら、多くの人にデータ分析の面白さを伝えたいと日々奮闘中。