費用対効果とは?意味や計算式を簡単に理解して活用する方法

施策の価値を判断する際に使われる「費用対効果」。その指標には、CPA・LTVなどいくつか種類がありますが、正しく説明できますか?

はじめに

人事業務では、採用活動や研修プログラム、福利厚生制度の導入など、様々な場面で「この取り組みは本当に成果に繋がっているのだろうか?」と疑問に感じることがあるでしょう。

限られた予算の中で、効果的な施策を選び抜くのは簡単なことではありません。

そのような時に役立つのが「費用対効果」という考え方です。

費用対効果を正しく理解し活用することで、限られた予算を効率的に使い、最大の成果を得ることができます。

少しでも無駄を省き、業務の効率化や成果の最大化を目指せるのは、人事担当者にとって大きな武器となるでしょう。

そこで今回は、費用対効果の基本的な意味から計算方法、ビジネスにおける活用方法まで詳しく解説していきます。

「どうしたらもっと効果的な取り組みができるのか」と日々考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

費用対効果とは?

まずは、費用対効果の基本的な意味について押さえておきましょう。

解説する内容は、以下の通りです。

  • 費用対効果の意味
  • 費用対効果が高いとは?
  • 費用対効果が低いとは?
  • 費用対効果の使い方
  • 費用対効果を使った例文
  • 費用対効果を使う場面

 

費用対効果の意味

費用対効果とは、かけた費用に対して得られる成果や利益を比較・評価する概念です。

簡単に言うと、「どれくらいの費用でどれだけの効果が得られるか」を示す指標で、ビジネスやプロジェクトの効率性や価値を判断するために使われます。

 

費用対効果が高い:費用<効果

費用対効果が高いとは、かけた費用に対して得られる成果が上回る状態を指します。

例えば、採用説明会に100万円を投じた結果、優秀な応募者を10人獲得し、うち3人が採用に至ったとします。

一般的に、1人当たりの採用コストは90万〜100万と言われているため、この場合は費用対効果が高いと言えます。

 

費用対効果が低い:費用>効果

逆に、かけた費用が成果を上回ってしまう場合は費用対効果が低いと判断されます。

同じく100万円を投じた採用説明会で、採用者が1名未満の場合、投資に見合った成果が得られていないため、費用対効果が低いと言えます。

このように、費用対効果が低い場合は、別の方法を検討する必要が出てきます。

 

費用対効果の使い方

費用対効果に続く言葉としては、「高い」「低い」以外に以下のようなものがあります。

  • を検証する
  • を考える
  • を重視する
  • を評価する
  • を最大化する
  • を比較する
  • が良い/悪い
  • が見込める
  • を追求する
  • が問題だ
  • を計算する
  • を測定する
  • に優れる

これらは、費用対効果が議論される際の具体的な状況や目的に応じて使い分けられます。

 

費用対効果を使った例文

費用対効果を使った例文は、以下の通りです。

  • 新しい採用広告を出す前に、過去の採用キャンペーンの費用対効果を分析して、より効率的な求人方法を選ぶことが重要です。
  • 今回のプロモーションキャンペーンでは、広告費用に対する売上増加が予想よりも少なく、費用対効果が低い結果となった。
  • 新製品の開発に500万円を投資した結果、予想以上に市場の反応が良く、わずか3ヶ月で費用対効果が十分に得られた。

これらの例文から分かる通り、費用対効果は結果の分析や取り組みの評価、意思決定など様々な場面で活用されます。

 

費用対効果を使う場面

費用対効果はビジネスシーンの様々な場面で活用されます。

特に、以下のような場面で重要です。

  • 広告活動:広告費用に対する売上や反応を評価する。
  • 採用活動:採用にかかるコストに対して、どれだけ優秀な人材が獲得できたかを評価する。
  • 社員研修・教育:研修にかかる費用と、その成果として得られる社員のスキル向上や業務効率化を評価する。
  • プロジェクト管理:プロジェクトの実施にかかるコストとその成果を評価する。
  • 製品開発:新製品やサービスの開発にかかる費用に対して、得られる売上や市場シェアの拡大を評価する。
  • 新規事業立ち上げ:新規事業に投入する資金と、その事業から得られる収益を比較し、事業の収益性や将来性を評価する。
  • マーケティング施策:キャンペーンやプロモーションの実施にかかるコストと、それによる売上増加やブランド認知度の向上を評価する。
  • コスト削減:企業内のコスト削減活動が実際にどれだけの利益を生み出したかを評価する。
  • アウトソーシングの評価:業務の外部委託にかかる費用と、その結果得られる効率化やコスト削減の効果を評価する。
  • 設備投資:新しい機械やITインフラなどへの投資が、どれだけ業務効率化や生産性向上に繋がるかを評価する。

このように、費用対効果は投資や施策が本当に有益かどうかを判断するため、あらゆるビジネス活動において活用されています。

 

費用対効果と似た言葉の違い

費用対効果は、「ROI」や「コストパフォーマンス」と混同されやすいため、ここで違いを理解しておきましょう。

 

費用対効果とROIの違い

ROI(Return On Investment)は、投資利益率を意味します。

具体的には、投じた費用に対してどれだけの「利益」が得られたかを計算する指標です。

違いをまとめると以下のようになります。

  • 費用対効果:金銭的な利益以外の効果(社員満足度やブランド価値向上など)も考慮する。
  • ROI(投資利益率):金銭的な成果にフォーカスし、純粋な利益率を重視する。

例えば、新しい研修プログラムを導入した場合、費用対効果は「参加者のスキル向上」や「業務効率の改善」などを評価しますが、ROIはその結果として生まれる「売上増加」に焦点を当てます。

 

費用対効果とコストパフォーマンスの違い

コストパフォーマンス(コスパ)は、消費者目線での「費用に対する満足度」を指す言葉です。

一方、費用対効果は、企業側の視点で施策の価値を判断する際に使います。

例えば、同じ教育研修で「参加費用が安く内容が充実している」と社員が感じる場合、それは「コスパが良い」と言えます。

一方で、企業側が「この研修で離職率が減少した」と評価する場合、それは「費用対効果が高い」と言えます。

 

費用対効果がビジネスで重要な理由

費用対効果は、ビジネスでの成功に直結する重要な指標です。

ここでは、以下の5つの理由について解説していきます。

  1. 意思決定を合理化できる
  2. リソースを最大限に活用できる
  3. 収益の向上に繋がる
  4. 効果が不透明な投資を避けられる
  5. ステークホルダーからの信頼を得る

 

①意思決定を合理化できる

費用対効果を考えることで、施策や投資の効果を「数値」で客観的に評価できます。

これにより、「勘」や「経験」だけに頼った判断ではなく、データに基づいた合理的な意思決定が可能になります。

例えば、新しい採用ツールを導入するか迷っている場合、過去の採用施策の費用対効果を分析すれば、「どの手法が最も効率的だったのか」を明確に把握できます。

その結果、次にどの方法に注力するべきかが分かり、無駄な投資を防ぎながら効率的な採用活動を実現できます。

こうしたアプローチにより、経営資源を最適に配分し、より良い成果を得られる可能性が高まるのです。

 

②リソースを最大限に活用できる

どの企業にも、リソース(資金・人材・時間)には限りがあります。

そのため、限られたリソースを最大限に活用して成果を上げるためには、費用対効果を意識し、優先順位をつけることが重要です。

例えば、採用活動を行う際に予算が限られている場合、これまで使用した求人広告媒体ごとの費用対効果を分析することが有効です。

どの媒体が最も多くの応募者を集め、優秀な人材を獲得できたのかを把握すれば、無駄な媒体への投資を避け、成果が期待できる媒体に予算を集中させることができます。

こうすることで、同じ予算内でもより多くの成果を生み出すことが可能となり、効率的な採用活動を実現できます。

この考え方は、採用だけでなく、マーケティングやプロジェクト運営など、様々なビジネスシーンで活用可能です。

 

③収益の向上に繋がる

費用対効果を考慮することで、収益を最大化するために利益率が高い施策を選択できます。

これにより、限られたリソースを有効に活用しながら、無駄なコストを削減し、効率的に収益を増やすことが可能になります。

例えば、売上が伸び悩んでいる状況では、マーケティング施策の中で顧客一人を獲得するのにかかる費用(CPA)が低いものに注力する戦略が効果的です。

これにより、同じ費用でより多くの顧客を獲得できるため、売上が効率的に増加します。

このように、費用対効果を基準に施策を選ぶことで、結果的に事業全体の利益率を向上させ、ビジネスの成長を加速させることができます。

 

④効果が不透明な投資を避けられる

費用対効果を事前に計算することで、成功の可能性が低い施策や、効果が不透明な投資にリソースを浪費するリスクを未然に防ぐことができます。

これにより、事業のリソースを効果的に活用し、失敗を回避しながら計画的に進めることが可能になります。

例えば、新製品の開発に1,000万円を投資する場合、類似する過去のプロジェクトが「コストに対して期待された利益を上回った」実績があれば、投資を決断する根拠になります。

一方で、過去に費用対効果が低かった場合には、計画を再検討したり規模を縮小するなどの対策を取ることができ、リスクを最小限に抑えることができます。

このように、費用対効果の分析は、投資の透明性を高め、結果的に効率的な資源配分を可能にする重要なプロセスなのです。

 

⑤ステークホルダーからの信頼を得る

費用対効果を明確に示すことで、上司や経営陣、投資家などのステークホルダーに対して、施策や投資の妥当性を説明しやすくなり、信頼を得ることができます。

例えば、新しい人事制度を導入する際に、「導入コストは300万円ですが、離職率の低下によって年間500万円のコスト削減が見込めます」と説明すれば、納得を得やすくなります。

このように、費用対効果のデータを活用することは、施策を成功に導くだけでなく、ステークホルダーとの信頼関係を築く重要な鍵となります。

 

費用対効果の計算方法

費用対効果は、主に次の2つの計算式で求められます。

  1. 費用対効果=効果−費用(利益に相当するものを計算)
  2. 費用対効果=効果÷費用(コストに対する効果の割合を計算)

これらの式を用いることで、施策や投資がどれほど有益であったかを数値化して比較できます。

例えば、費用300万円、効果1000万円の場合は以下のようになります。

  1. 1000万−300万=700万
  2. 1000万÷300万=3.33

このように、計算した数値が0以上であれば費用対効果があると考えられ、数値が大きいほど、より高い費用対効果が得られたと判断できます。

 

費用対効果を測る主な指標

ビジネスにおいて、費用対効果を測る指標にはいくつか種類があります。

ここでは、よく用いられる6つの指標について解説していきます。

  1. ROI(Return On Investment)
  2. ROAS(Return on Advertising Spend)
  3. LTV(Life Time Value)
  4. CPA(Cost Per Acquisition)
  5. CPO(Cost per order)
  6. CPR(Cost Per Response)

 

①ROI(Return On Investment)

ROIは、投資に対する利益の割合を示す指標で、「この投資はどれだけのリターンを生んだのか」を定量的に評価するために用いられます。

具体的には、新規事業の立ち上げやマーケティング施策の評価、設備投資の判断など様々なビジネスシーンで活用されます。

計算式は以下の通りです。

ROI=(利益−投資額)÷投資額×100

この値が高いほど、「投資が効率的」であることを意味します。

例えば、採用ツールに50万円を投資し、それにより年間100万円の利益増加が得られた場合、計算式は以下のようになります。

ROI=(100万円−50万円)÷50万円×100=100%

これは、投資額の2倍の利益を生み出したことを意味します。

ROIに「絶対的な基準値」はありませんが、一般的には以下の要素を考慮します。

  • 業界ごとの目安:業界によって期待されるROIは異なります。例えば、製造業では20%以上、広告業では100%以上が求められることが多いです。
  • 投資のリスクとリターンのバランス:高リスクの投資では高いROIが求められ、低リスクの投資では低めのROIでも許容される傾向があります。例えば、株式投資では10%〜15%のROIが目安とされる一方、安定収益の公的債券では数%でも許容されます。
  • 回収期間との関係:短期間で投資回収できる施策ほどROIが高いと評価されます。例えば、広告施策で2週間以内に効果が現れる場合、ROIが30%でも十分価値があると判断されることがあります。

ROIは、投資判断や施策の有効性を検討するために非常に役立つ指標ですが、単独で判断するのではなく、具体的な状況や目標に応じて適切に活用することが大切です。

 

②ROAS(Return on Advertising Spend)

ROASは、広告費に対してどれだけの売上を生み出したかを示す指標で、広告キャンペーンの効果を評価するために用いられます。

デジタル広告では、Google広告やSNS広告などの費用対効果を評価する際に最もよく使われます。

計算式は以下の通りです。

ROAS=売上÷広告費×100

この値が高いほど、「広告費に対する売上効果が高い」ことを意味します。

例えば、広告費10万円で50万円の売上を上げた場合、計算式は以下のようになります。

ROAS=50万円÷10万円×100=500%

つまり、投資した広告費の5倍の売上を生み出したことを意味します。

ROIと同様に、絶対的な基準値はありませんが、以下の点を考慮して目安を設定するのが一般的です。

  • 業界ごとの目安:利益率が低い業界では高いROASが求められる傾向があります。例えば、アパレル業界では300%以上が目安、IT製品のような高利益率商材では150%でも許容範囲とされることがあります。
  • 利益率との関係:ROASだけを見ると「売上が伸びている」と評価できますが、利益率が低ければ実際には赤字になる可能性もあります。そのため、利益率と合わせて判断することが重要です。例えば、売上の利益率が20%の場合、ROASが最低500%以上でないと利益を生み出せない計算になります。
  • 広告の目的に応じた基準:ブランディング広告など、売上以外の目的がある場合はROASの基準値が変わります。これらの場合、直接的な売上よりも長期的な効果を重視します。

ROASは、短期的な売上を評価する指標なので、長期的な視点も踏まえて総合的に活用することが成功の鍵となります。

 

③LTV(Life Time Value)

LTVは、顧客1人が生涯にわたって企業にもたらす利益を示す指標です。

この指標は、短期的な売上や取引の成果だけでなく、顧客との長期的な関係性や価値を重視します。

そのため、リピート顧客やロイヤルカスタマーの価値を把握する際に非常に有用です。

計算式は、以下の通りです。

LTV=1回あたりの取引額×購入頻度×継続期間

例えば、1回の購入額が5,000円、年間の購入回数が10回、顧客としての継続期間が5年の場合、計算式は以下のようになります。

LTV=5,000円×10回×5年=25万円

この場合、この顧客は生涯で企業に25万円の売上をもたらすと予測されます。

業種やビジネスモデルによって基準値は異なりますが、一般的にLTVはCPAの3倍以上が理想とされています。

これは、顧客を獲得するためのコスト以上に長期的な利益が得られる状態を意味します。

例えば、LTVが10万円でCPAが3万円であれば、7万円の利益が期待できます。

このように、LTVは収益の最大化やマーケティング施策の最適化において重要な指標です。

特に、競争が激しい市場では、LTVをもとに顧客との関係を深め、長期的な利益を確保することが企業成長の鍵となります。

 

④CPA(Cost Per Acquisition)

CPAは、顧客や採用候補者など「1人を獲得するためにかかったコスト」を示す指標です。

ビジネスでは、マーケティング施策の費用対効果を判断するために広く活用されます。

また、採用活動では、1人の採用に必要なコストの計算に応用できます。

計算式は以下の通りです。

CPA=費用÷獲得人数

例えば、採用活動に100万円を使って5人の新規社員を採用した場合、計算式は以下のようになります。

CPA=100万円÷5人=20万円

つまり、1人あたり20万円のコストがかかっていることを意味します。

CPAの基準値は業界や目的によって異なりますが、以下の要素を考慮して判断することが一般的です。

  • 業界ごとの基準:業界や商材によって顧客獲得にかかる費用の相場は異なります。例えば、BtoBは高単価商材が多いため、CPAが高くても許容されることがあります(例:10万円以上)。一方で、BtoCは利益率が低いため、CPAは数千円から数万円程度が目安となります。
  • 利益率との関係:獲得した顧客の平均利益(LTV)を上回るCPAでは、利益を生み出せません。CPAがLTVの50~70%以内に収まることが理想的です。例えば、1顧客から平均5万円の利益が見込める場合、CPAは25,000円以下が望ましいです。
  • 採用活動における基準:業種や地域によりますが、日本では1人あたりの採用コスト(CPA)は、新卒採用で90万円~95万円、中途採用で100万円前後という相場があります。

CPAは単にコスト効率を測る指標であり、長期的な顧客価値や採用後の成果を反映しません。

そのため、LTV(顧客生涯価値)や採用後の離職率などと併用することで、より総合的な判断が可能になります。

 

⑤CPO(Cost per order)

CPOは、1件の注文を獲得するためにかかったコストを示す指標です。

広告やマーケティング施策の効果を評価する際に活用され、特にEコマースや小売業界で頻繁に使われます。

計算式は以下の通りです。

CPO=費用÷注文数

例えば、広告に30万円を投じて100件の注文を獲得した場合、計算式は以下のようになります。

CPO=30万円÷100件=3,000円

つまり、1件の注文を獲得するために3,000円かかったことを示します。

CPOの基準値は、業界や商品の価格帯によって大きく異なるため、以下の要素を考慮して判断します。

  • 商品単価や利益率との関係:CPOは、1件の注文で得られる利益(粗利)を下回る必要があります。例えば、1件の注文で平均2万円の利益が見込める場合、CPOは2万円以下であることが望ましいです。理想的には利益の50~70%以内に抑えると良いとされます。
  • 業界の平均値:
    ・Eコマース:1,000~5,000円(商品単価が高いほどCPOの許容範囲も広がる)
    ・飲食業界:500~2,000円
    ・サブスクリプション型サービス:2,000~10,000円
  • 広告チャネルごとの特性:広告媒体やキャンペーンの種類によってCPOは変動します。SNS広告やディスプレイ広告は比較的CPOが低くなる傾向がある一方、高単価商品に特化した検索広告ではCPOが高くなることもあります。

CPOは、広告やマーケティング施策の効果を測定し、収益性の高い戦略を実現するための重要な指標です。

しかし、注文数に基づくため、購入金額や顧客のリピート率といった「注文の質」を反映していません。

CPOが低くても、利益率が低い商品ばかりが売れる場合、結果的に収益が伸びないことがあります。

そのため、他の指標と併用して、施策全体の効率性を評価することが重要です。

 

⑥CPR(Cost Per Response)

CPRは、広告やマーケティング施策に対して、1件の反応を得るためにかかったコストを表す指標です。

ここで言う「反応」は、具体的には応募・問い合わせ・資料請求・ウェブサイトへの訪問などの行動を指します。

特に、採用活動やリード獲得施策、キャンペーンの効果測定でよく使われます。

計算式は以下の通りです。

CPR=費用÷反応数

例えば、求人広告に10万円を投じて50件の応募があった場合、計算式は以下のようになります。

CPR=10万円÷50件=2,000円

つまり、応募1件あたりに2,000円のコストがかかっていることになります。

CPRの適切な基準値は、業界や施策の目的、対象となる「反応」の価値によって異なるため、以下の要素を考慮して判断します。

  • 反応の価値:反応が直接的に利益に結びつく場合(例:商品の購入に繋がる問い合わせ)や間接的な場合(例:ブランド認知向上)があり、後者の場合はCPRが高めでも許容されることがあります。
  • 業界ごとの目安:
    ・採用活動:1,000~10,000円(職種や地域によって変動)
    ・BtoBマーケティング:2,000~5,000円(資料請求や問い合わせが対象)
    ・小売業:500~3,000円(店舗集客やクーポン利用が対象)
  • 広告チャネルごとの特性:ソーシャルメディア広告(Facebook、Instagramなど)はCPRが低い傾向にある一方、リスティング広告は高価になることがあります。ただし、後者はターゲットが絞られるため「反応の質が高い」ことが多いです。

CPRはあくまで「反応」の数に基づく指標であり、そこから実際の顧客獲得にどれだけ繋がったかはCPAで補完する必要があります。

例えば、CPRが低くても、反応が実際の購入や採用に結びつかない場合、CPAが高くなり収益効率が悪化する可能性があります。

これではコスト効率が悪化し、広告の費用対効果が低いと判断されるため、反応から成果までのフローを見直す必要が出てきます。

このように、CPRが低い施策が必ずしも良いわけではなく、反応が実際の成果に結びついているかをCPAで確認することで、施策の本当の費用対効果を把握できます。

 

費用対効果が見合わない時の施策

費用対効果が期待以下だった場合、そのまま放置してしまうと利益の損失やリソースの浪費に繋がります。

そのため、適切な対策を講じることで費用対効果を改善し、企業全体の成果を向上させることが重要です。

具体的な施策は以下の通りです。

  1. コストを削減する
  2. 生産性を向上させる
  3. 価格設定を見直す
  4. 代替案を検討する
  5. プロセスや目的を見直す

 

①コストを削減する

費用対効果が低い要因として、「過剰な支出」が挙げられます。

そのため、支出内容を精査し、必要性の低いコストを削減することで効果を高めることが可能です。

例えば、複数の広告媒体を活用している場合、反応率が低い媒体を停止し、効果の高い媒体に予算を集中させることで、コストを最適化できます。

ただ、コストを削減しすぎると成果も下がってしまう場合があるため、必要最低限に留め、成果に悪影響を与えないようバランスを保つことが重要です。

 

②生産性を向上させる

コスト削減だけでは限界があるため、生産性を向上させて同じリソースで高い成果を得ることも必要です。

具体的には、タスク管理ツールや自動化ツールを活用し、業務に集中できる環境を整えたり、スキルアップ研修を通して社員の能力向上に投資することなどが挙げられます。

生産性を向上させる施策は、すぐに効果が出なかったり、短期的にはコストがかかる場合があります。

しかし、成果が出るようになれば費用対効果も高くなるため、長期的な成果を見越して行うべきです。

 

③価格設定を見直す

価格が市場や競合と比較して適正でない場合、顧客からの需要が減少し、費用対効果が悪化することがあるため、価格設定の見直しを行う必要があります。

価格設定の見直しを行う方法は以下の2パターンです。

  1. 価格を上げる:競合よりも安い価格設定の場合、適正な価格に引き上げることで利益率を高めることが可能です。ただし、品質の向上や付加価値のアピールなど、顧客にその価値を納得させる説明が必要です。
  2. 価格を下げる:高すぎる価格設定が原因で需要が低迷している場合、値引きや特典キャンペーンを導入し、売上を拡大する施策が有効です。

価格設定の見直しは直感で行うべきではないため、競合分析や顧客ニーズの調査をもとに行い、需要の変化を定期的にチェックする必要があります。

 

④代替案を検討する

現行の施策で上手くいかない場合は、他の選択肢を模索することも必要です。

例えば、対面形式で行っていた採用説明会をオンライン形式に変更することで、会場費や移動費を削減できます。

成果が出ない施策に固執していては、リソースを無駄にするだけでなく、改善のチャンスを逃す可能性もあるため早期の見直しが不可欠です。

現状の施策を定期的に見直し、必要に応じて柔軟に対応できる体制を整えておきましょう。

 

⑤プロセスや目的を見直す

施策が効果を発揮していない原因が、そもそも目的やプロセスの設定に問題がある場合、根本的な見直しが必要です。

例えば、「短期間での売上拡大」を目的としていたが、実際にはリピーターを増やすことの方が重要であれば、戦略を変更する必要があります。

このような方向性のズレを防ぐためには、現状のデータを分析し、課題の本質を見極めることが必要です。

その上で、適切な指標を用いてKPIを設定し、それに基づいた戦略を立てることが重要です。

 

まとめ

今回は、費用対効果の意味や計算方法を中心に解説しました。

費用対効果は、限られたリソースを最大限に活用し、ビジネスで成果を上げるための重要な指標です。

これを活用することで、無駄なコストを削減し、効果的な施策に集中できます。

人事業務では、採用コストの最適化や教育プログラムの効率化、福利厚生の効果測定などに役立ち、社員の満足度向上や企業の成長を後押しすることに繋がります。

本記事で紹介した ROI・LTV・CPA などの指標を使えば、数値に基づいた合理的な判断が可能となり、上司や経営陣への説明もしやすくなるため、しっかり活用できるようにしておくとよいでしょう。

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Who is writing

医療系大学卒業後、理学療法士として医療機関に勤務。その後、整体院を運営をするなかでWebマーケティングも経験する。コンテンツ制作スキルを活かし、医療健康分野や不動産、プログラミングなどの幅広いジャンルの記事執筆を行うとともにWebディレクションにも従事。「一人でも多くの人の悩みを解決する」をモットーに活動の幅を広げている。