ゴルフ名コース解剖~茨木CC・西コース編

日本の名コースを紹介するシリーズ「ゴルフ名コース解剖」。今回は今年の日本オープンの舞台である、茨木CC・西コースをご紹介します。

日本にあるゴルフ場は2,000コース以上。その数は、世界でもトップ5に入るほどです。

その中には、広く知られた名コースも数多くあります。

この「ゴルフ名コース解剖」では、そんな名コースとして知られるコースについて、その理由をコース設計の視点からご紹介していきます。

第2回は、茨木カンツリー倶楽部・西コースです。

(※なお記事中の画像はすべて、茨木カンツリー倶楽部ホームページから引用したものです。)

今年の日本オープンの舞台は日米名匠の“合作”

今年の男子ゴルファー日本一を決める第88回日本オープンゴルフ選手権が、10月12日から始まります。

開催コースは、大阪府茨木市にある茨木カンツリー倶楽部・西コース。

原設計は、日本を代表するコース設計家である名匠・井上誠一です。

そこに2011年、全米オープン開催コースの改修を数多く手がけ「オープン・ドクター」とも呼ばれるリース・ジョーンズが、大改修を施しました。

目指したのは、「様々なレベルのプレーヤーが、持てるゴルフの腕前全てを発揮してプレーを楽しめるとともに、セットアップで難易度をつければ世界基準のトーナメントも開催できるコース」。

今年の日本オープンの舞台は、いわば日米名匠の“合作”とも呼べるコースで行われるわけです。

今回はそんな茨木CC・西コースの注目ホールを紹介しながら、日本オープンの勝負の行方についても占いたいと思います。

茨木CC・西コースの概要

コースは大阪府北部、千里丘陵とよばれる地域に作られ、近くには太陽の塔もそびえる万博記念公園があります。

大阪市中心部から車や電車を使って40分ほどで着く近さながら、コース内は豊かな自然を残しており、オオタカやオシドリ、ウグイスといった多くの種類の野鳥を目にすることができます。

平成元年には、環境庁(現・環境省)長官より、「愛鳥ゴルフコース100選」の最優秀コースにも選出されました。

倶楽部は今からちょうど100年前の1923年、大阪の豪商であり後に大同生命の社長も務める10代目広岡久右衛門と実業家の加賀正太郎が中心となり、大阪の若手実業家らによって設立されました。

そしてまず、1925年にスコットランド出身のプロゴルファー、ダビッド・フード氏の設計によって東コースが完成。

第1回・第2回の日本プロや、2度の日本オープンが開催されます(その後、設計家チャールズ・ヒュー・アリソンの助言に基づき、昭和初期に改修)。

戦後、コース大型化の時代要請に応える形で、井上誠一設計の西コースが1961年に開場。

以来、西コースにおいては日本オープンを2度、日本女子オープンを1度開催しました。

2011年の改修後は度々男子レギュラーツアートーナメントの会場となり、そして三たび日本オープンを開催する運びとなった訳です。

  • 住所:大阪府茨木市大字中穂積25番地
  • 開場:1925年(西コースは1961年にオープン)
  • 運営:一般社団法人茨木カンツリー倶楽部
  • ヤーデージ:7,407ヤード パー72
  • 設計者:井上誠一(改修:リース・ジョーンズ)

美しくもプレッシャーをかける池越えホール~No.3~

CHAMPION:195Y BACK:154Y REGULAR:131Y

リース・ジョーンズが手掛けた大きな改修として、それまでの2グリーンを1グリーンに移行したことが挙げられます。

この3番のパー3も池から縦に並ぶようにあった2つのグリーンが1つになり、更にはグリーン手前にあったバンカーも無くすことで、より池のプレッシャーが効くようになりました。

とは言え、トーナメント時のプレーヤーと、通常営業で回るアベレージゴルファーでは、そのプレッシャーの度合いも異なるかもしれません。

トーナメントの際、池へと向かうグリーン手前斜面の芝は刈り込まれます。また、グリーン面は、左側が低い二段グリーンとなっています。

チャンピオンティーからの距離が195ヤードですから、軽い打ち下ろしとは言え多くの選手はミドルアイアン以上を持つ長さ。

グリーン左にカップが切られた際は、ショートすれば池、安全に右や奥を狙っても距離のある難しいパットや池に向かうバンカーショットという中で、選択を迫られる事になるのです。

一方、通常営業時はグリーン手前斜面の芝も伸ばされていますし、それでも不安であれば右手前の花道を狙う手もあります。

グリーンからティー方向を振り返った時に広がる、池越えの美しい景色を楽しむ余裕も生まれるでしょう。

滝が連なる名物パー3~No.14

CHAMPION:181Y BACK:161Y REGULAR:141Y

こちらも、以前は横に並ぶようにあった2つのグリーンを1つにしています。

高低差のある池やクリークを4つの小さな滝で繋げた造形にはクラブ側も感銘して、「ジョーンズ・ホール」の愛称をつけるほど。

また、改修を手掛けたジョーンズ自身も気に入っており、ティーイングエリアには自身の名が刻まれたプレートがあります。

池からグリーンまでは間があいており、プレッシャーはさほどではありません。

ただし、グリーンは前後2面に分かれているため、カップとは別の面に乗せると厳しいパットを強いられることになります。

自信のない方は右手前に乗せて、そこからアプローチで寄せるというのも有効な攻略方法でしょう。

池が絡んだ勝負を決める最終ホール~No.18

CHAMPION:565Y BACK:542Y REGULAR:525Y

勝負の行方を決める、最終18番ホール。チャンピオンティーから565ヤード、レギュラーティーからでも525ヤードあり、いずれも西コースでは最長です。

改修によって新たに設けられたフェアウェイ右サイドの2つのバンカーは、チャンピオンティーから281~327ヤードの位置にあり、男子ツアープロの飛距離をもってしても越していくのは容易ではありません。

神経を使うティーショットになるでしょう。

2打目地点からはグリーンまでは、左サイドに亀ヶ池が広がっています。

ティーショットでフェアウェイをキープできて2オンを狙う場合、グリーン自体は縦に38ヤードと長いため、手前から乗ればグリーンに残る可能性は高いでしょう。

ただし、曲げてしまえば池や深いガードバンカー、長いラフへと沈むことになってしまいます。

また安全に刻むにも、グリーン手前90ヤードの右側には3本の木が配されていて、ターゲットを狭めています。

安易なショットは痛い目に遭いそうです。

ドラマチックな展開も起こりそうな、ナショナルオープンの最終ホールにふさわしいホールとなっています。

日本一を決めるカギは、○○の影響を受けたコースか?

今回は10月に日本オープンを開催する茨木CC・西コースについてご紹介してきました。

美しいながらも、要所要所にバンカーや池といったハザードがある、一筋縄ではいかないコース。

加えて日本オープン開催時にはラフも伸ばされ、ハザードに入りやすい仕掛けも施されることが予想され、ゴルファー日本一を決めるにふさわしいセッティングになることでしょう。

今回の日本オープンでカギになるかもしれないと思っているのが、実は天気の影響。特にこの夏の猛暑です。

全国を襲った異常ともいえる猛暑は、植物や農作物に大きな影響を及ぼしています。

ゴルフコースの芝もその難を免れなかったようで、ゴルフ中継を見ていてもその痕跡を目にするケースが度々ありました。

また、見た目には整っていても、例年のコンディションとの違いに戸惑う選手たちもいたようです。

実際に茨木CC・西コースが猛暑の影響を受けたかは、定かではありません。

ただ、もし猛暑の影響はなかったとしても、大会期間中の雨の有無、そしてその量によってコースの攻め方はがらりと変わります。

ゴルファーの心技体に加え、天気によるコースの状況変化にうまく対応できたゴルファーが、栄冠を手にするのではないかと思います。

Who is writing

1982年生まれ。大手建機レンタル会社や書店チェーン、金属材料販売会社に勤務する傍ら、小学生のころにテレビで見たイギリスにあるリンクスコースの光景に衝撃を受けて以来、ゴルフコースに関する情報収集を趣味としている。ゴルフコースに関する蔵書は、洋書も含めて数十冊。