はじめに
今回は、テレワークにおける健康管理の課題やリスク、対策について解説していきます。
コロナの影響により感染防止対策が必要となった企業は、社員同士が接触機会を減らすために、テレワークの導入を始めました。
いざ、テレワークを実施してみると「移動時間が削減できて生産性が上がる」「いつでもどこでも仕事ができるため、柔軟な働き方が可能になった」などと多くのメリットがあり、今でも継続している企業が多いです。
ただ、働き方が変われば、”身体的・精神的負担”も変わります。
今まで立ち仕事だった人が座り仕事になれば、身体への負担のかかり方が変わるのは容易に想像できるでしょう。
このように、時代や経済の変化に伴い働き方をスイッチすることは大切ですが、社員の健康管理まできちんと対応できているかというと、あまり気にしていない企業が多いのではないでしょうか?
実際に、テレワークの導入により身体的・精神的ストレスを抱えている人も多くいるので、課題やリスクを把握し、適切な対応をとることが重要です。
そこで今回は、以下の内容について解説していきます。
- テレワークによる身体的・精神的負担とは
- テレワークにおける健康管理の課題
- 人事が取るべき3つの対策
社員の健康を守ることができれば会社に対する評価も上がり、結果的にパフォーマンスアップや利益向上にも繋がるでしょう。
採用・育成・人事評価のコンサルタントを行っている弊社が、テレワークの働き方について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
テレワークによる身体的・精神的負担とは
「会社でやっていた仕事をそのまま自宅でやるだけだから、特に負担は変わらないでしょう?」
このように思われがちですが、自宅と会社では環境が大きく異なるため、身体的・精神的負担も変化します。
テレワークによる身体的・精神的負担は以下の通りです。
- 肩凝り・首凝り
- 眼精疲労
- 腰痛
- 視力低下
- ドライアイ
- 手指や腕のしびれ
- ストレスの増加(生産性・意欲・発言の低下、表情や声色が暗い、不満が多い)
「移動時間の減少」「座っている時間の増加」「コミュニケーションツールの変化」などと、テレワークの導入はメリットもあればデメリットもあります。
業務効率化という視点ではメリットに感じられる部分が多くありますが、実際には「動かないストレス」「コミュニケーションが取りづらいストレス」というものが非常に大きいです。
こういった身体的・精神的負担の増加は、集中力の低下やパフォーマンスの低下をもたらすため、早期に解決すべき課題と言えます。
テレワークにおける健康管理の課題
ここでは、テレワークによる身体的・精神的負担がどこからくるのか、原因をさらに深掘りするとともに課題を明確にしていきます。
コミュニケーション不足
テレワークでのやり取りは、直接会って対面でやりとりするよりも手間と時間がかかるため、コミュニケーションが不足してしまう傾向にあります。
テレワークで用いられる連絡手段は、大きく分けて以下の4つです。
- メール
- チャット
- 電話
- ビデオ通話
メールやチャットで送る文章を作る時間が必要となりますし、何度も連絡する訳にはいかないため、伝えることをある程度まとめておく必要もあります。
こういった手間暇がかかることから、「面倒くさい」「伝えたいことが伝わらない」「メイン業務を進めるための時間が足りない」などと感じる人も多くいるでしょう。
ストレスは一つひとつが小さくても、積もり積もって大きなストレスになれば、仕事に対するモチベーション低下に繋がりかねませんので、コミュニケーションが上手く取れているかどうか再確認する必要があります。
運動不足
テレワークは出社する必要がないため座っている時間が長く、運動不足に陥りやすい状態と言えます。
運動不足が身体に与える主な影響としては、以下の5つが挙げられます。
- 肥満症
- 生活習慣病
- 精神疾患
- 筋力低下・筋肉量の減少
- 膝や腰などの関節痛
デスクワークは腰や肩首にかかる負担が大きいので、こういった身体の悩みを抱えている人が多いです。
テレワークの導入により座っている時間が長くなったことはもちろん、仕事に合った机や椅子がないことから、身体的負担が大きくなっている人も多いでしょう。
「コロナ太り」という言葉が話題になったように、身体の変化を感じている人も多いかと思いますので、環境を変えることや運動不足の解消が必要です。
人事評価の不透明さへの不安
テレワークは、社員同士の接触回数が少ないため、仕事ぶりが適切に評価されているかどうか不安になる傾向にあります。
従来のように出社していれば、「上司や部下との関わり方」や「勤務態度」などが評価されやすかったですが、テレワークでは実際に働いている状況を見ることができないため、評価しづらい状況にあると言えます。
「こんなに頑張っているのに、なんで評価されないんだろう?」
今までは”仕事の過程”も含めてトータルで評価されていましたが、テレワークだと結果重視の評価になりやすいため、上記のように人事評価に対する不安や不満を抱く人が多いのでしょう。
働き方が変わることで評価基準や評価方法が変わることは当然ですので、従来のやり方から一新することが人事評価への不透明さをなくす上では重要です。
仕事とプライベートの切り替えが難しい
テレワークは自宅で仕事を行うことからプライベートとの切り替えが難しく、集中力が下がりやすい環境であると言えます。
1人で集中して仕事ができる人なら問題ありませんが、”家族が同じ空間にいては仕事がしづらい”と感じる人も中にはいるでしょう。
- 子育てをしている人
- 仕事用の部屋がない人
特に、このような人はプライベートとの切り替えが難しいと言えるため、仕事と両立していくことが必要です。
ただ、集中力が下がったことで今までできていたことができなくなると、それもストレスとなってしまうので要注意です。
メンタルヘルス不調者の発見が遅れる
テレワークでは、顔を合わせる機会が少なくなるため、メンタルヘルス不調者の発見が遅くなる傾向にあります。
会社に出社していれば、誰かしらが体調不良者に気づくことができますが、テレワークの場合は一度も顔を合わせないこともあるので、むしろ気がつく方が珍しいでしょう。
また、体調不良だけであれば本人が申告するかと思われますが、メンタル面の不調はコミュニケーションが不足しがちなテレワークにおいては、相談しづらい内容とも言えます。
- 就業時間や退勤時間が遅れている
- 遅刻が増えている
- ミスが多くなっている
上記のような行動が見られる方はメンタルヘルスや身体的な不調があると考えられるため、周りからの声掛けが必要です。
発見が遅れると、生産性の低下や離職率の増加などが起こり業績が悪化する可能性もあるので、早期発見できる仕組みづくりが課題となります。
人事が取るべき3つの対策
運動不足問題や仕事とプライベートの切り替え問題など、社員自身が対策しなければならないこともありますが、人事が取れる対策も多くあります。
ここでは、具体的に何をすべきか一つひとつ解説していきます。
管理システムの導入
勤怠管理システムの導入により勤務状況を可視化することで、「働きすぎ防止」や「プライベートとの切り替え」が可能となります。
テレワークの良さの一つに、「いつでも仕事ができる点」が挙げられますが、これはデメリットでもあるのです。
働きすぎは、単純に身体的負担の増加に繋がりますし、いつでも仕事の対応ができることからプライベートとの線引がなくなってしまうリスクもあります。
したがって、勤怠管理システムで勤務状況を細かく管理することが必要です。
具体的には、以下のような状況が把握できているとよいでしょう。
- 昼休憩の時間はパソコンの電源をOFFにしている
- トイレ休憩をとっている
- 勤務時間外のメールやチャットをしていない
- 勤怠通りに出退勤している
勤怠管理システムを導入していても、勤務時間外に仕事をしようと思えばできてしまうのがテレワークのデメリットです。
身体的・精神的ストレスを軽減するにはメリハリが重要ですので、労働時間だけでなく、上記のような細かい所まで管理するのがポイントです。
コミュニケーションをとる機会を設ける
テレワークでは、コミュニケーションが不足しがちですので、意図的にコミュニケーションをとる機会を設けることが重要です。
具体的には、「1on1ミーティング」や「メンター制度」の導入が挙げられます。
これらは、大勢でコミュニケーションを取るのとは違い、個別でやり取りをするものなので、1対1で信頼関係を築くことができます。
特に新人の場合、メールやチャットでは気が引けてしまい、伝えたいことを上手く表現できないことも多いでしょう。
しかし、日頃からコミュニケーションをとっていれば、臆すことなく先輩や上司と接することができるため、心置きなくテレワークに臨むことができます。
自分からコミュニケーションを取るのが苦手な人も多いかと思いますので、人事がこういった仕組みを作り、少しでも働きやすい環境にしていくことが大切です。
ストレスチェックの定期的な実施
ストレスチェックは、「こころの健康診断」とも呼ばれ、精神的ストレスをチェックするための検査です。
テレワークの導入により人と会う機会が少なくなると、自分がストレスを抱えているのかどうか判断しにくくなります。
そこで、定期的にストレスチェックを行い、心身ともに健康であるかチェックすることが重要です。
一般的には、秋〜年末にかけて実施されることが多いですが、新人の場合は、新人研修終了後にも実施しておくことで、入社直後からのストレス状況も併せて把握することができます。
ストレスチェックの結果は、運動不足や生活習慣の改善に取り組むキッカケにもなりますので、必ず実施することをおすすめします。
まとめ
今回は、テレワークにおける健康管理について課題やリスク、対策を解説しました。
- テレワークは、肩こり・腰痛・眼精疲労などの身体症状に加え、精神的ストレスがかかりやすい働き方である
- テレワークは、「コミュニケーション不足や運動不足、仕事とプライベートとの切り替えが難しい」などが課題である
- 人事は、健康管理システムの導入やストレスチェックの導入により、社員の健康を守ることが重要である
社会情勢の変化に対応していくことは非常に重要ですが、環境への適応を強いられる社員のサポートも並行して行っていく必要があります。
社員の健康が失われてしまっては元も子もありませんので、労働環境を整備する取り組みとして、今回解説した3つの対策を実施していけるとよいでしょう。
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