Contents
近年、私たちはますます異なる文化や背景を持つ人々と接する機会が増えています。
そんな中、グローバルな人材とはどういう人材だとお思いでしょうか。
多くの方は、「まずは英語が話せなければ」、とお思いになるのではないでしょうか。
私は1979年に渡米して以来、学生、一般社会人、起業人、教員、主婦、母親など、様々な立場で40年間アメリカで過ごしてきました。
40年もアメリカにいたというと「英語はペラペラなんでしょうね」とよく言われますが、英語はさほど重要ではなかった様に思えます。
現に、在留日本人の方でも、居住する地域や職業によっては英語があまりできなくても生活している方もいらっしゃいます。
もちろんコミュニケーションの手段として言語は不可欠なのです。
しかし、アメリカ人以外にも世界各国から様々な理由で移住した人と接し、異文化の中で長年生活する上で、言語以上に大切な事があると実感しました。
そもそも異国人の集まりのアメリカでは暗黙の常識などは滅多に存在しません。それぞれがルールブックです。
想定外の事は起きて当たり前なので、あらゆる面で細かく法律や規律が明文化されているのです。
私は多くの異文化と接し、異なる背景を持つ人々と協働する中で、多くの驚きを通してたくさんの事を学んできました。
そこで今回はグローバル社会において活躍するために必要なスキルや思考法について、私の経験を通じてお伝えしたいと思います。
グローバル化の中の言語 ― 英語について
私は大学付属の高校に通っていましたが、大学に進学する意味がどうしても見いだせませんでした。
そして、大学には進学せずにアメリカに語学留学して、通訳になって早く社会に出たいと思い、高校卒業後1979年に単身18歳で渡米しました。
アメリカに行くために英語は勉強していたので、英語学校での入学時の試験で上級コースに入りました。
そしてたった3ヶ月で英語学校を卒業する事になったのです。
かと言って、会話ができる訳ではなく、ほぼ聞き取りはできませんでした。
毎日何を言われているのかさっぱり分からない毎日で、大変焦り、自分の英語力に絶望していました。
これでは通訳どころではない・・・もっと勉強しなければ、とは思っていましたが、時は1979年。
インターネットもラインもない時代の18歳が単身留学したのです。
ホームシックで泣き明かす毎日。
とてもこの先4年間もアメリカの大学で学ぶ決心はできないでいました。
言葉も分からない異国での孤独に耐えかね、早く日本に帰りたい気持ちでいっぱいでした。
ある日、昼休みに公園のベンチで一人ポロポロと涙を流しながら身の振り方を思いあぐねていました。
すると、犬の散歩のおじさんが通りかかりました。
涙で真っ赤に顔を腫らした私を見て、そのおじさんは犬に芸をさせて私を慰めようとしてくれました。
“Come on Snoopy, sit down!” スヌーピーという名のその犬はきちんとおすわりをしました。
でも、私が分かったのはこれだけでした。
その後、色々芸を見せてくれたのですが、私にはおじさんの言葉は分かりませんでした。
一方、スヌーピー君はおじさんの掛け声に従って次々と芸を見せてくれました。
「スヌーピーくん賢いな。私は分からないのに、おじさんの英語を理解できるんだ・・・」
そう思った瞬間、全身に電気が走りました。
「この地に住んでいれば犬だって英語がわかる。
要は言語ではなく、何を伝えるかなんだ。中身がなくてはいけないんだ。
そのためにはきちんとした基礎を身に着けなければならない。大学に行こう。」
スヌーピーくんは私のエンジェルでした。
涙を拭い去り、即座にアメリカの大学進学の準備を始めました。
言語はツールであって、ツールは通訳や翻訳機などに置き換える事ができるのです。
言語ができる=グローバルではないのです。
”自分を違う言語で表現ができる”という選択肢が増えるだけの事なのです。
グローバル・マインドセットの大切さ
グローバルな舞台で何よりも大切な事は、国境や文化、言語などの違いに対して、リスペクトを持って認識し、コミュニケーションを取ることができる「グローバル・マインドセット」を持つことなのです。
日本人同士であっても自分と違う「常識」を持つ人々と接すると、しばしば誤解や衝突が生じます。対外国人ならばなおさらです。
しかし、グローバル・マインドセットを持つ人々は、自分たちの文化やバックグラウンドにとらわれず、異なる文化や習慣、価値観を尊重しながら、世界を見ることができます。
そして、国際的な場面で予想外の事が起きても、効果的にコミュニケーションを取り、問題を解決する能力があるのです。
例えば、国際的な時間の観念を挙げてみましょう。
日本人は約束の時間よりちょっと早めを目指します。
しかしアメリカでは相手によって異なるのです。
オフィスでのアポはほぼオンタイム。
ミーティングは定時に始まることを前提としています。
ご家庭に招かれた場合には、料理などの準備を考えてオンタイムよりもちょっとだけ遅めをターゲットにします。
あまり早く着きすぎるとかえって失礼になる場合があります。
これが業者になると感覚がガラリとかわります。
多くの在米日本人がアメリカに引っ越した時に洗礼を受けるのは、業者の時間のいい加減さです。
電話やネットの設置、家電製品などの配達など、大きく午前、午後ぐらいに区切られている場合が多いのですが、その時間内に業者が来る事は滅多にないと思って良いでしょう。
下手をすれば翌日に順延、という事も多々あります。アメリカの場合、時間の感覚は状況によって変化します。
これが南米の方を相手とするとなると2-3時間単位で遅れることは日常茶飯事なのです。
ブラジル人の友人のパーティが夜6時スタートと言われたので、それまでの経験値を考慮し、「ブラジル人だから・・・」っと、グっとこらえて7時に行ったもののまだ誰もおらず準備中。
やっとパーティが始まったのは9時近く。
はじめから9時と言ってくれればいいのですが、これは同じ文化圏では常識だそうです。
これはコロンビア、ベネズエラの友人も同様でした。
南米ではビジネスのアポをした事がないので分かりませんが、どういうスタンダードで業務が行われているか、必ず確認した方が良いでしょう。
これらは、どれが良い悪いではなく、それぞれの慣習なのです。
自分の基準で相手を感情的に判断しない事が大切なのです。
業者の時間帯は最初から信用しない寛容さを持ち、個人のつきあいでは、相手に何時に来てほしいかを明確に伝えたり、場合によっては人によって集合時間を変えて伝えるようにするなど、臨機応変の対応が必要です。
「風向きが変えられない時は、帆の向きを変える」
この柔軟な考え方こそ、グローバル・マインドセットの基本です。
グローバルマインドセットの育み方
それでは、グローバルマインドセットはどの様に育んだらよいのでしょうか。
海外生活を経験すると様々な想定外の体験を通してショック療法の様に習得していきますが、日本にいてもグローバルなメンタリティを養う事は可能です。
1)情報収集
グローバルマインドセットの第一歩は、異文化に関する知識や経験です。
日本以外の文化圏の方と応対するには、まず相手の文化、歴史、慣習などを尋ねたり、ネットで調べたりしながら情報を入手しましょう。
日本にも外国人居住者が増えてきましたので、わずかな接点でもご縁を大切にして交流するのもいいでしょう。
また、グローバルな活動を目指す方は常日頃からグローバルな情報にアンテナを立てて収集することはとても大切です。
現在外国の方との接点がなくても、時事情勢で話題なっている国に関する情報をネットで調べてみるのもいいでしょう。
歴史、文化、宗教、芸術、慣習など、色々な切り口で世界への理解を深め、世界と自分との距離を近くしておくように努めましょう。
世界情勢に関しては、日本のTVニュースの視点ばかりでなく、CNN(アメリカ)やBBC(イギリス)などの他、カタールのアルジャジーラの英語ニュースもおすすめです。
それぞれの海外ニュースで、何がトップに報道されているかなど、比較してみると面白いでしょう。
近頃は翻訳機能も発達しているので他の言語のニュースも簡単にアクセスできるようになりました。
色々な視点から世界を見てみるのも大変役立ちますし、グローバルな舞台で会話にも厚みが出てくること間違いなしです。
2)好奇心を持って多様性を楽しむ
多くの場合、日本の文化との比較をしながら異文化を学ぶ事から始まると思います。
ただ、文化や慣習に優劣をつけたり正解を求めたりしてはならないという事がポイントなのです。
日本と同じ位、世界各国それぞれに良いところがあり、困ったところもあるのです。
ワクワク感を持って異文化探訪すること、これこそがグローバルマインドセットです。
一つ注意点は、国や文化圏、一般的な傾向はあるものの、もちろんひとりひとりの人格は異なります。
過度な一般化は偏見につながってしまうので禁物です。
異文化の方との場面では、相手の文化を尊重しながら、それぞれの持つ個性をも感じ取り、お互いのスペース(距離感)を調整しながら付き合っていくことが重要になってきます。
3)多様性を象徴する考え方 -Think outside the box- の実践
実はこのThink outside the boxをお伝えしたくてこの原稿を書いています。
アメリカは世界各国から様々な文化を持つ外国人が移民し、その子どもたちがアメリカ人として育っていき、GAFAMに象徴されるような巨大なグローバル・ビジネスを起こして世界経済を牽引しています。
そのアメリカの経済の根底を支えるグローバルマインドセット、その教育の根本にはThink outside the boxという考え方があるのです。
“Think outside the box” は、創造性や革新性を象徴する言葉で、直訳すると「箱の外を考える」となります。
日本流に言えば「枠にとらわれずに創造的なアプローチをする」「常識にとらわれずに考える」「発想の転換」「斬新なアイデアを出す」「新しい視点を持つ」という事でしょうか。
このフレーズは、枠にはまった考え方を超えて、新しいアイデアや解決策を生み出すとして、アメリカで頻繁に用いられます。
通常、人々は自分たちの経験や先入観、文化的な制約などから、一定の枠組みの中で問題を解決しようとします。
しかし、”Think outside the box”の考え方を用いることで、新しい角度から問題にアプローチしたり、従来の方法では想像できなかった解決策を見つけることができるのです。
このフレーズは、ビジネス、芸術、科学など、様々な分野で広く使用されていますが、実は子供の頃からアメリカの教育の中に組み込まれているのです。
アメリカの学校では、他の子が考えつかない事を考えたり、奇想天外なプロジェクトを企てたりする事を称賛し、日常的に創造性を重んじる教育がなされています。
最終的な結論が正解であるかが重要なのではなく、何故そういう結論に行き着いたか、その過程を説明し、自分の意見を論じるディベートが大変盛んに行われています。
私はフロリダ州のギフティッド・スクール(一定のIQ以上の生徒を集めて英才教育を行う学校)で教員をする機会があったのですが、英才教育の先端ではThink outside the boxの教育が徹底されていました。
子どもたちは大いに”想定外”を謳歌し、大人はそれらに驚きの声をあげ、認め、褒め、育んでいました。
(この学校で目の当たりにしてきたギフティッド教育に関しては、また別の機会にご紹介したいと思います。)
枠の中のニッポン
日本でも創造性、独創性を重んじるという掛け声はありますが、実際はどうでしょう。
創造性の重要性は皆さんも十分認識なさっていらっしゃり、社会も徐々に変化をしているとは思いますが、実際にはその真逆の暗黙のルールで日本社会は縛られてはいないでしょうか。
ちなみに「型破り」をネットの同義語辞典で見てみましょう。
おきて破り ・ アクが強い ・ アウトサイダー ・ ユニーク(な人物) ・ 一風変わった人 ・ 目障り(な存在) ・ 異星人(社員) ・ (彼はまるで)異星人(だよ) ・ 宇宙人 ・ (まるで)別の星の人 ・ (会社の)エイリアン ・ やさぐれ刑事 ・ 奇骨 ・ 変性 ・ 不可解な行動 ・ 異な者 ・ 奇人 ・ 異色の存在 ・ (周囲と)なじまない ・ (周囲から)浮いている ・ 異彩を放つ男 ・ 常識外れ ・ (その存在に)慌てて目をそらす ・ 変人 ・ 風来坊 ・ 迫害(される) ・ 天の邪鬼 ・ (社内で)異質(な存在) ・ 異物的(な存在) ・ まともでない ・ 奇妙(な男) ・ (世の)すね者 ・ 少数派 ・ 変物 ・ 異端者
アメリカでは超がつくほどポジティブな「型破り」は、日本においてはざっとこんなにネガティブな語句が並びます。
これだけでも日本社会で型破りがどれほど冷遇されているかおわかりいただけますでしょうか。
日本の皆さんはお気づきか分かりませんが、外からみた日本社会は正にThink INSIDE the boxなのです。
日本の教育は正にアメリカの真逆、よほど突出た才能を有していない限り、「箱の中にいかに収まるか」という事に価値が見出されているように映ります。
日本の人々は幼い頃から社会が作り出した期待に答えるべく、同じ価値観を持って行動することによって、社会の秩序が整えられてきました。
その「箱」の中は暗黙の了解によって、実に整然と整理整頓されています。
その結果、大変ポジティブな結果が生み出されてきました。
日本は類をみないほど凶悪犯罪の少ない安全な社会となり、緻密で優秀な労働力が提供されています。
暗黙の了解で、レジに並ぶ時はすみやかに済ませる準備をし、順番や時間をしっかり守り、共通した道徳心が備わり、正直者・・・という素晴らしい文化が成り立っているのです。
これは他国が真似をできない輝かしき日本の文化なのです。
但し、違う角度から見ればこれによってグローバル社会への対応や柔軟性が阻まれてしまっています。
型にはまれない人々ははじき出されてしまい、格差が生まれ、イノベーションが抑制され、今後の日本経済にとっても足かせとなってしまっている社会構造が形成されています。
子供の遊びにみる日米の違い
抽象論では分かりにくいかもしれませんので私の娘の話で恐縮ですが、例を挙げたいと思います。
娘は両親とも日本人ですが、アメリカ生まれ、アメリカ育ちです。
小学校に入学した頃から毎年夏に日本に帰り、地元の小学校に体験入学をしていました。
家庭内では日本語でしたが、それ以外は全部英語で過ごしていました。
日本に一時帰国の折に地元のお友達も増え、放課後に公園に遊びに行くようになったある日、娘がぷんぷん怒って帰ってきました。話を聞くとー
ケードロという遊びを教えてもらって、みんなで毎日のように公園で遊んでいたある日、娘が「今日はこのルールをちょっと変えて、こうやってあそばないか」と提案したそうです。
いつものやり方に変化をつけたかったそうです。
アメリカでは日常的にアイデアを出しながら遊びをアレンジしていく事が行われていたので、みんな乗ってきてくれると思ったのに、全員が全員、「それはケードロじゃない」と言って拒否したのだそうです。
そしてアレンジしようとした娘のことを「ルールが守れない子」として責めたそうです。
娘は一生懸命説明しても一人も賛同者がいなかったので、ガッカリするばかりでなく、日本の友達には受け入れてもらえない、と涙して帰ってきました。
日本では子供の遊びすら「箱の中」なのでした。
予定調和が大前提:
期待に答える日本 VS 「型破り」を楽しむアメリカ
もうひとつ、娘が国語の教科書で「スイミー」を勉強していた時です。
先生は教科書を途中からクリップでとめて、先のストーリーの展開が分からないようにして途中まで読むように指導されました。
注)「スイミー」は、一匹だけ黒い小魚のスイミーが、大きなクジラに対抗するために、赤い小魚たちをまとめて巨大な魚の群れに化けて、一丸となって協力する物語です。
多くの赤い小魚がクジラに追われ、飲み込まれてしまっても、黒いスイミーは逃げ切りました。
先生は「なぜクジラはスイミーを飲み込まなかったのか」と生徒に問いました。
手をあげたほとんどの子供が「スイミーがすばしこかったから」という模範解答を口々に発言したそうです。
そんな中でうちの娘は「他の子供たちとは違う答えを言おう」と思って考えたそうです。
そして
「スイミーはクジラと同じ黒色だったので、クジラは自分の子供だと思ったから食べなかった」と言ったそうです。
他の子どもたちは、模範解答ではない娘の答えを「間違えた!」「変な答え!」として、大きな声で笑ったそうです。
日本の子どもたちは教科書どおりの正解を答えようとしました。
アメリカ育ちの娘は、他に類のないユニークな答えを探しました。
これがboxの中に収まることを教える教育と、boxの外を奨励する教育の違いなのです。
Think outside the box の実践
枠の中で育った子どもたちは、物事を正誤で判断する傾向があります。
枠の外を特異なものとし、無意識に間違いであると拒否してしまいます。
これが社会の単位になると、前例主義や、同調圧力につながり、社会的偏見、過労、いじめ、格差が生み出されてしまいます。
そして、この様な枠の中のメンタリティを持って育った人が世界に出たときには、個人としての判断力やリーダーシップが乏しく、異文化の人々との交流の際には積極性がない内弁慶になってしまいます。
世界の舞台に立とうとする日本の皆さんには、今こそThink outside the boxの実践を提言したいと思います。
この概念は後天的にも身につけられるものです。そのためのヒントをお伝えしたいと思います。
A)自分に絶対的な自信を持つ。
たとえ人と違っても、自分の個性、特性を信じ、「違うから素晴らしい」と自分を肯定すること。
相対的な評価ではなく、自分の絶対価値を自ら認め、それに自信を持つことが鍵になります。
アメリカの子育てでは、親は絶対に子供のことを謙遜しません。
誰の前でも褒め倒します。他の子とどこかが違ったら、それこそ天下を取ったように誇らしげにどう違うのかを語ります。
日本には謙遜という文化が存在するので、中々自己肯定は難しいかもしれません。
でも謙遜は”唯一無二の個性と能力を持つ自分”に対して失礼ですよ!
中々自分に自身が持てない、肯定できないという方は自分の長所や自慢をノートやスマホのメモにコッソリ記してみましょう。
そして自信を失いかけたらその紙を見て自分で自分を励ましてあげましょう。
スマホに自分を褒める言葉を語りかけて録音して、心が折れかけた時に聞いてみるのもいいでしょう。
人と違っていいのです。
それでいいのです。
いや、その方がいいのです。
堂々とその違いを類のない個性として喜び、育み、自信を持ちましょう。
そうして世界に通用するあなたが育っていくのです。
B)常に疑問を持ち、新しいアプローチを試す
今、淡々と行っている業務、作業は果たして意味があるのか、または効率がいいのかなど、常に問題意識を持って、自分にとって一番よい方法を見つけることが大切です。
従来のやり方にとらわれずに新しいアプローチを試してみましょう。
人とは違う次元で考えてみる練習をしてみましょう。
新しいアイデアを思いつくためには、異なる分野や文化に触れることも有効です!
トヨタが「カイゼン」という経営理念を掲げていますが、既存の業務のルティーンを現在の状態からより良い状態へと持続的かつ進化的に改善していくよう、常に思考をめぐらせる事が大切です。
就活生、転職希望の方の場合は、こういう新しい挑戦ができる会社なのかをしっかり見極めて就職先を決める事は、とても重要でしょう。
残念ながら前例を忠実に踏襲する文化の中では、改善の提案が”現状への批判”としてネガティブに捉えられてしまうことも多々あります。
会社の規模やランキングなどに惑わされずに、社内のイノベーションは推奨されているか、意思決定プロセスはどうなっているか、組織文化や社内のコミュニケーションはどうなっているか、PDCAのサイクルが活性化されているかなどしっかり見極めましょう。
そして、仕事の場ばかりでなく、日常的な小さなことでも、心して様々な事に疑問を持ち、どんどん枠を飛び出して Think outside the boxを実践してみましょう。
C)失敗から学ぶエネルギーを持つ
エジソンは”I have tried 99 times and have failed, but on the 100th time came success.”(私は99回試みて失敗しましたが、100回目に成功しました。)と言いました。
そして、「失敗すればするほど、我々は成功に近づいている」と、全てをポジティブに捉えて成功へのエネルギーにしました。
凡人は99回も失敗する前に、2-3回失敗したら大抵諦めてしまうと思います。
しかし、エジソンは99回の失敗は、”このやり方では成功しないという事を発見した99回の学び” であったと言っています。
何度失敗しても、まわりに何と言われようが、失敗は成功へのステップストーンだと気を取りなおし、更に挑戦し続けるエネルギーが必要です。
99回とまではいかなくとも、七転び八起きぐらいなら私たちでもできるのではないでしょうか。
失敗はないのです。それは全て学びなのです。
就活生へのメッセージ
人にはそれぞれの特性があります。
枠の中で与えられた仕事をキッカリとこなす事が得意な人もいれば、Think outside the boxが得意な人もいます。
あなたは枠内で生きるのが得意ですか?
これは優劣ではなく適性なのです。
枠の中の仕事が得意な方は、ルールに従って緻密に完璧にこなす事のできる才能をお持ちなのです。
きちんとしたルールに従って行う方がいなければ会社という組織が動いていきません。
そういう方は自分の特性を多いに伸ばして活躍できる仕事かを判断なさってください。
一方、現在の就活のあり方に疑問を持たれながらも、従わざるを得ないという方、また、実は従いたくないという気持ちをお持ちの方は現在の就職活動を再考してみてはいかがでしょうか。
企業に忖度して自分を殺して模範解答を述べて会社に入っても、あなたはその模範解答への同調を求められて仕事をしていくことに耐えられるでしょうか。
思い切って模範解答から脱却して、あなた「自身」になってそのままのあなたで就活する事をおすすめします。
誰も社名を知らないような小さな会社でも、あなたの働きで大きく成長させる事ができるかもしれません。
あなたが将来起業する時に役立つ知識や人脈を築ける可能性も開けるかもしれません。
企業があなたを選ぶのではなく、あなたが企業を選ぶのが就活です。
あなたを求めている会社は必ずあるのです。
それを探す宝探しが就活です。
エジソンに習ってどんどん体当たりしてください。
そして人に雇われることばかりでなく、自分で道を切り開く起業というオプションもあるという事、そして反骨精神のあるあなたにはそのポテンシャルがあるという事を是非覚えておいてください。
ーーー
私が留学をお世話した中で、就活はせずに大学卒業後、すぐにボストンの語学学校に留学した青年がいました。
彼は在学中に小さなIT系の会社でアルバイトをして、当時の新進技術、ウエブ作成言語を学びながらお金を貯めました。
大学の同期が熱心に就活する中、彼は自分の夢を遂行すべく留学を決行したのです。
アメリカでは英語を学びながら見聞を広めるのが目的で、得意のIT技術を生かして現地でもホームページ制作のバイトをして資金を稼ぎながら、各地を旅行したりアメリカ留学体験記をウエブにアップしながら過ごしていました。
そして丁度資金が尽きる頃にボストンキャリアフォーラムがあり、見事、大手米系IT企業の東京オフィスへの就職が決まりました。
日本企業はまだ第二新卒を敬遠していた時代でしたが、彼の決断力や行動力を評価してくれる素晴らしい外資系の企業がみつかりました。
彼はそもそも第二新卒を敬遠するような古い体質の企業には興味がありませんでした。
そういう意味では彼は自分を信じ、彼に最適な就職先を自ら引き寄せたと言えるでしょう。
しかし、彼のゴールはここではありませんでした。
15-16年その会社に勤め、社内でもトントン拍子で出世し、結婚してお子さんも3人できたところで、彼は退職を決意します。
そして、約10年前になりますが、家族全員でマレーシアに移住して、マレーシアで起業することにしました。
現在ではマレーシアでもう1社、会社を立ち上げ、多種多様の人種のスタッフを雇い、経営者として大成功をおさめています。
彼のメンタリティから察するに、多分これが彼のゴールではなく、まだまだ進化を遂げていくと思い、楽しみにしています。
ーーー
こんな人生もあるのです。
彼は「グローバル・マインドセット」を持った人材の典型です。
周囲の情報や常識に巻き込まれることなく自分を信じ、自分で人生を開拓してきました。
彼は留学以前の段階で、日本にいながらにしてグローバル・マインドセットを持ち合わせていたのです。
当時英語はあまり得意ではなかった様な記憶がありますが、言語を超越したグローバル感覚を持ち合わせていました。
彼を成功に導いた主な要因は語学力ではなく、彼のメンタリティでした。
自己肯定が基盤となり、自信をもって型どおりではない人生を自ら作りあげているのです。
就活生のみなさんには、グローバル・マインドセットさえ持ち合わせていれば、環境に左右される事なく、自分ならではの人生を開拓できる、そして人生の主人公になれるという事を、是非是非覚えておいていただきたいと思います。
人事担当の方へのメッセージ
近頃は面接時に「ビジネスカジュアルや私服で」という会社も多くなってきたと聞きます。
ただ、巷では「私服と書いてあっても就活スーツが無難」というアドバイスが圧倒的に多く見られます。
いつの日からか、ボストンで行われるキャリアフォーラムでさえ、就活ルック一色となってしまいました。
あのアメリカの巨大コンベンションセンターで、まるで制服を与えられたかの様に、ほぼ紺か黒。本当に異様な光景です。
アメリカ側の目から見れば、就活はなぜあのスタイルでなければいけないのか、合理性が見いだせず困惑します。
日本の同調圧力が、アメリカでの採用イベントにまで反映されているのですね。
―――
ところで、日本では「まっ赤な太陽」という言葉があるように、太陽は赤く塗るものとされています。
もしも誰かが太陽を黄色に塗ったらどうするでしょうか。
間違いだと指摘しますか?
既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、国際的には多くの国では太陽を黄色に塗ります。
赤いのは夕陽です。
国際的には太陽は黄色が主流で、日本の常識の”赤い太陽”は多くの文化圏から見ると異様に映ります。
それでは太陽を紫に塗ったらどうでしょう。
皆さんは間違いだと思うでしょうか。
或いは心理的に問題があるとお考えになるでしょうか。
Think outside the box の考え方ができる人は、正誤や善悪の判断ではなく、「何故紫なのか」に興味を持つのです。
その創造性の源を探り、斬新な発想を称賛できるのです。
創造性には正誤は関係ありません。
その発想、その視点が大切なのです。
人事の方には是非紫の太陽を描くような逸材を発掘し、採用してほしいと思います。
―――
なぜ、日本の教育は枠の中に整然と入る人を育てつづけるのか、考えてみました。
日本は受験の採点がしやすい様に、正誤で判断する問いが多いのか。
受験が教育内容を変えられない原点なのか。
そう紐解いていくと大学が目標ではない、「ゴールは就職だ」に行き着きます。
現代の日本は「いかに良い就職をするか」というところから紐解かれた教育になっているのではないでしょうか?
日本の経済やグローバル化の基礎となる日本の教育改革は、今、そのゴールとされている企業の採用基準にかかっていると言っても過言ではないのはないでしょうか。
企業の採用担当者の方々こそ、是非ともグローバルな視点をもってThink outside the boxを実践して頂きたいと思います。
ボストンキャリアフォーラム誕生秘話で書いた(株)ディスコは、現地の単なるアルバイト社員を上手に育てて海外での初のイベントを成功させたばかりでなく、副社長に抜擢しました。
それによって初めての海外の企画運営が円滑になり、世界最大のバイリンガルイベントへと成長しました。
比較的小規模な組織だったのでそれが可能だったのですが、これからの日本経済のイノベーションを考えた時、今こそこの様な英断が必要なのではないでしょうか。
採用の基準が変われば、教育の現場も変わっていきます。
採用とは、それほど重要な役割を負っているのではないでしょうか。
また同時に、既に社員となっているメンバーのマネジメントの上でもThink outside the boxのコンセプトをご紹介いただきたいと思います。
社内で「発想」の面でもダイバーシティ化を進め、異論もポジティブな提案としてリスペクトできるように、人々のメンタリティや組織構造も変革していかなければならないでしょう。
Think outside the boxの実践は、グローバル・ビジネスの発展や円滑な運営をもたらし、発想の転換から生まれるイノベーションを活性化させ、想定外のことを予測する危機管理を行う事ができ、そして何よりもより優秀な人材を獲得して活躍の場を提供する事ができるでしょう。
人事の方々には是非ともこの機会に真のグローバル人材とは何かを再考していただき、人事の場からThink outside the boxを実践して、社会改革、教育改革を促すような原動力となって頂きたいと願います。