アメリカで見てきたギフテッド教育最先端について PART2 アメリカの受験戦争と就活
世界中のギフテッドが集結するアメリカの超難関大学への受験戦争。そしてトップ企業によるギフティッド人材争奪戦!
アメリカの受験戦争
大学におけるギフテッド教育について書かせて頂く前に、まず一般的なアメリカの大学入試システムをご説明したいと思います。
採用担当者の皆様には、アメリカの大学を卒業した日本人留学生やアメリカの大卒人材を採用なさる際に是非ともご参考にしていただければ幸いです。
アメリカの大学は「入学は簡単だが卒業が難しい」と言われる事がありますが、大学によっては熾烈な戦いが展開されています。
正確には、「入学が簡単な大学もあるが、世界中から頭脳が集まる超難関校もある。
しかしどの大学でも卒業するにはかなりの努力が必要である」
ということではないかと思います。
ちょっとギフティッドからは横道にそれますが、アメリカの大学で貴重な体験をしてきたバイリンガルのギフティッドの採用、そしてアメリカの大学を卒業した各国の優秀な人材を理解する上で、アメリカの受験のプロセスをご説明させていただきます。
受験資格:
高校の単位を修了しているか、高卒認定試験に合格していること。
一般的に年齢制限は上限も下限も記されていません。
この5月にカリフォルニアの12歳の少年が5つの学位を取得して大学を卒業したとニュースになりましたが、飛び級や卒検の利用でこの様なことが可能になります。
成績証明書:
日本との一番大きな違いは高校4年間の累積成績証明が大きな鍵を握ることです。
4年間の成績はGPA(Grade Point Average)という数字に変換され、これが非常に大切なのです。
難関大学を目指す生徒にとって、高校時代はまるで気が抜けない長丁場の受験となります。
単に成績だけでなく、どんな教科を取ったかも精査されます。
アメリカは高校在学中にAP(Advanced Placement)と呼ばれる大学レベルのクラスを取る事ができ、APコース終了時には全国レベルの認定試験を受け、それに合格すると大学の単位として認定されます。
また、高校によっては高校に在学しながら近隣の大学で授業を取ることもできる場合もあります。
高校にはそれぞれレベルの差がありますので、レベルの低めの高校の簡単な教科でオールAを取っても、難関校受験に際してはそれほど有利には働きません。
AP、またはそれに準ずるような高度な教科で優秀な成績を修めることが求められています。
AP教科の単位の認定はかなり厳しく、高校によってはAPの教科が準備されていない学校もあります。
また、アメリカにはかなりの学校格差がありますので、高校によっては高度な数学の教科を教えていない場合もあります。
従って、超難関大学受験を目指す場合には、どの高校に進学するかも重要な要素となります。
また、高校の教育内容の評価の観点からも、該当高校からの合格実績があるかどうかという事も大変重要です。
超難関大学を目指す場合には、合格実績のあるレベルの高い高校で、できるだけ多くのAPコースや高度な教科を取りながら、優秀な成績を収めることが要求されます。
統一試験:
アメリカの大学入試のために、SAT(Scholastic Assessment Test)またはACT(American College Testing)と呼ばれる標準テストがあります。
以前はほとんどの大学で、この試験の結果を重要視していました。
これらのテストは主に英語、数学、読解などの分野で学生の能力を測るための試験で、数学に関して言えば、日本の入試に比べてかなり難易度は低く、ほぼ数I程度の問題です。
いずれも営利企業が実施している試験であり、その公平さや実力の測定方法、そして受験生データの売買など、常に疑問を呈されています。
コロナ禍では統一試験受験が不可能だったこともあり、それを機会に統一試験の受験を要求しない大学が増えてきました。
この試験のウエイトは近年では低くなってきており、必要条件ではなくオプションという方向になってきました。
それでも難関大学受験者は少しでも合格に有利な材料を増やす為に満点を目指して奮闘しています。
課外活動:
アメリカの大学の入試では学業以外の活動やリーダーシップ経験が大変重要視され、入試において相当大きな比重を占めます。
クラブ活動、スポーツ、ボランティア活動などや受賞歴なども入学審査の一環としてかなり重要です。
後述する面接では、課外活動の様子を中心に話が進められていくことが多々あります。
高校4年間を勉強だけに時間を費やすのではなく、時間を有効に使い、いかに多岐にわたる活動をしてきたが問われます。
課外活動がかなりのウエイトを占める為、高校時代には各種スポーツ競技やコンテスト、ディベートなどに奮って参加してレジュメを構築しなければなりません。
私が大学の卒業生として受験面接(後述)を担当した生徒の中には、保護者から多額の投資をしてもらって会社を設立し、途上国の貧民のために家を建たという富裕層の受験者もいました。
余談ですが、加熱した受験をビジネスチャンスとしたプログラムも多数あり、ほぼ観光旅行に等しいツアーを「国際交流ボランティア使節団」のような名称をつけて高額な参加費で学生を募り、「使節団選抜認定書」の類を発行する団体もあります。
推薦状:
一般的に、受験の際には、教師や指導カウンセラーからの推薦状が必要です。
推薦状は生徒の様子の具体的な描写が必要で、学業成績やクラスでの様子、特徴的な能力、リーダーシップの経験などが細かく書かれていなければ価値がありません。
高校はどこも数多くの学生が在籍していますから、カウンセラーや教員が全ての生徒を覚えているという訳ではありません。
より良い推薦状の為には、日頃から学内で様々な活動をして、教師やカウンセラーと密接な関係を持っておくことが大切なのです。
エッセイ:
受験者の資質の判断材料として、作文やエッセイが求められます。
一校につき、2~3エッセイを求められることもあり、受験者には大きな負担となっています。
最近はCommon Applicationという各大学共通の出願ウエブサイトがあり、共通エッセイは1つとなりましたが、大学によってはその他に大学独自の小エッセイが3~4点求められることもあります。
アメリカの受験生は平均7校から10校受験すると言われていますので、大学受験者は作文だけでも大忙しとなります。
面接/ビデオ:
多くの大学では入試担当者や卒業生との面接が実施されています。
アメリカは国土が広く、また世界中から志願者が集まることもあり、各地にちらばっている卒業生が面接を代行する事が一般的に行われています。
実は、私は母校ブラウン大学の面接ボランティアをしていた事があります。
ブラウン大学はアイビー・リーグの中でも比較的地味な大学だったのですが、ハリー・ポッターのエマ・ワトソンが入学して以来、ブラウン大学は志願者が激増。
そして「オープン・カリキュラム」と言われる、個人のニーズに応じて自由な専攻を作ることができるリベラルな学習環境が高い評価を得て、受験者数は鰻登り。
昨年は1600名ほどの定員に3万8000人以上の出願がありました。
私は年に4-5人の面接を受け持っていました。
我々面接官には受験者の成績表や入試に関する資料、個人情報などは一切渡されず、高校名と名前と連絡先だけが特別なウエブサイト上で知らされます。
また、面接に使用する場所や、質問上の禁忌事項、質問の例などがサイトに示されていますので、確認し、事前に準備をします。
面接後には提示された項目に沿って、具体例を挙げながら細かくレポートするように指示されています。
通常、面接には学生がレジュメを持ってくるので、そのレジュメに沿って話を進めていました。
私は単に卒業生というだけで、面接に関してはまるで素人でしたが、数年するとレジュメを見るまでもなく「不合格」は分かるようになってきました。
不合格だろうな、と思う学生はどんな質問に対しても深みのある答えが帰って来ず、大抵私の感は当たっていました。
一方、合格、若しくは補欠の学生は、私がドキマキするほどシャープで頭の回転が早く、様々な意味合いで、私の方が学ぶ事が多く、会話に「感動」がありました。
まさにギフテッドの特徴が顕著に顕れている、好奇心旺盛で集中力の優れた学生たちでした。
余談ですが、ひとたび合格者が出ると、面接官は再度学生にコンタクトを取り、お祝いの言葉を述べると共に、複数の合格をもらっている学生に対しては、ブラウン大に進学する様に説得するお役目もありました。
ただ、応募者の増加や、リモート面接と対面での面接の不公平、そして面接官によって評価の差や偏見がある場合もあり、近頃では面接の代わりに2-3分の自己PRビデオを提出するというオプションがある学校が増えてきました。
入試面接も時代と共にどんどん変化しています。
レガシー優遇措置/寄付:
受験の際の必須条件ではないのですが、親や祖父母がその大学の卒業生である場合、その大学への入学申請時に優遇されるレガシー・プログラムというのがあり、願書に記入セクションが用意されています。
もちろん単に卒業生というだけで優先入学できる訳ではなく、ある一定の選考基準を満たしていなければなりません。
ただ、一定以上の寄付を行ったレガシー志願者を優先することによって、不平等が横行していると問題になっています。
大抵の大学では学生の多様性を保つために人種や性別で入学者割合を決めているのですが、
超難関校のレガシー枠のほとんどが白人であるため、優秀なマイノリティの学生より、金持ちの白人を優遇していると論争が戦わされています。
これらの批判を受け、最近では超難関校のジョンズ・ホプキンス大学やウエズリアン大学が、レガシー枠の廃止を決定したとニュースにあがっていました。
ちなみに、アメリカの大学入試では、特に専攻を決めなくても受験する事ができます。
また、専攻を決めて入学したとしても、転部する事は可能です。
大学入学前の18歳の時点で自分が何がしたいかを決めることはなく、大学で様々な教科を取りながら、自分の方向性を確立していく事が可能です。
また、最難関校は基本的に高校在学中の受験になりますが、それ以外は比較的何回もチャンスがあり、一度社会に出てから大学に行き直す事もできますし、ほぼ応募者全員が入学を認められる公立の短大(コミュニティカレッジ)などに通ってから4年生の大学に進学するなど、大学への道は多岐にわたっています。
特に公立の教育機関では年齢に関係なく学位を取得したり、リスキルの為の学習環境が整っています。
ハーバード大学 と MIT
2校ともアメリカ最高峰の頭脳と言われる大学です。私はボストンに27年間住んでいたこともあり、この最高峰2校は地元でも常に対比されていました。
両校ともトップクラスの最難関中と言われる大学で、正にギフテッド集団と言えるでしょう。
ただ、この2校には明確な違いがあります。
ハーバード大学は幅広い学術分野を提供している総合大学であるため、学生は多様性に富んだ資質を持ち合わせています。
文学、社会科学、自然科学、芸術など、さまざまなバックグラウンドを持つ学生が集まっています。
入試においては一般的に優れた学力の他、芸術、スポーツ、リーダーシップなど、あらゆる分野で突出した業績、そして知識を統合する能力を重視しています。
ハーバード大学に代表されるアイビー・リーグの大学は、ほぼこの様な選考基準で多才な学生を集めています。
ハーバード大学やアイビーリーグを目指すギフテッドは、学業ばかりでなく、芸術やスポーツ、慈善活動など多方面の活動が必要になりますので、学力や才能ばかりでなく、全てのアクティビティをこなす基礎体力と精神力が必須なのです。
超難関校を目指す場合、小さい頃から勉強の他に水泳や野球など、様々なスポーツが大切なのは、レジュメ構築の観点ばかりではなく、受験、そして合格後の大学生活で、強靭な体力が必要になるからなのです。
一方、MITは科学技術に特化した研究型大学であり、工学、コンピュータ科学、物理学、数学などの理系分野が強みです。
学生の多くはSTEM分野に強い関心や才能を持っており、工学や科学技術の分野での研究、リーダーシップやイノベーションへの貢献を追求しています。
入試の際にはハーバードの様に多岐にわたるタレントはさほど求められず、サイエンス分野に突出した天才肌の学生が多く在籍しています。
もちろんギフテッド学生は多岐にわたって才能を発揮する場合が多いので、私の知り合いのMITの青年は物理で全米コンテストに優勝するような頭脳を持ちながら、ピアノも音大レベルでした。
ハーバード大学の医務室
相当昔のことなのですが、私は1979年の夏に、ハーバード大学で夏学期を受講する機会がありました。
夏学期は受験なしに誰でも受講することができましたので、英語学校を卒業した後、大学受験の結果を待つ間に、一般の講座の中から政治学と英文学のコースを取ることにしました。
もしも、大学に受からなかったら、そのまま日本に戻ろうと考えていたところでした。
まさかハーバード大学で受講できるとは思っていなかったので、それはそれは喜び勇んで通い始めましたが、いざ授業が始まると唖然としました。
英語学校では優秀な成績で卒業できたものの、ハーバードでは何もわかりませんでした。
それもそのはずです。
英語学校の先生は、外国人学生に分かりやすいように喋ってくれるのですが、一般の講義では容赦なしに一方的に早口英語で授業が進んでいきます。
そして学ぶ内容は新しいことばかり。
英語学校のレベルと、一般の大学の講義のレベルの違いにただただ呆然としました。
日々、何も分からずに頭は空回り。教室で座っているだけ。
授業が終わったらトイレに駆け込み、悲しくて泣いていました。
どれほど時間をかけても宿題は追いつかず、たった1ページ読むだけで辞書をひきながら20分かかる始末。
一睡もせずに勉強したとしても、週末に200ページを読む宿題は物理的に不可能でした。
そんな頃、授業が終わって午後になると、毎日のように発熱するようになりました。
最初は夏風邪かと思っていましたが、他の症状はありませんでした。
そこでハーバードの医務室を訪れて診察してもらいました。
血液・尿検査やレントゲンを撮りましたがどれも異常なし。
ただ、熱だけあるのです。
検査の結果を教えてもらったその後に、担当医師が私に聞きました。
「検査には、何も異常はありません。ただ・・・一つ質問があります。
何か悩みごとがあるんじゃないですか?」
その質問に、私は医師の前で声を出して泣き崩れました。
そして、自分が置かれている立場、
授業も何もわからない、自分は英語学校では何も学んでいなかったとの思い、
そしてこのまま大学に合格しなければ、英語を学ばないまま日本に戻ってしまうという不安、
合格したとしても大学の授業にはついていけないという不安、
国際電話代が高額でろくに家族とも話ができずに極度のホームシックの苦しみなどなど、多くの悩みを語りました。
内科のお医者さんでしたが、根気強く聞いてくださいました。
そしてその医師は
「私の処方箋はただ一つ、
一週間に一日は絶対に勉強しない日をつくること。
ボストンは素晴らしいところですよ。今、一番美しいシーズンです。
外に出てボートに乗ったり、ビーチに行ったり、楽しんでください。
アメリカ人の学生でさえ、ハーバード大学の夏学期でAを取るのは大変です。
ましてや、数ヶ月前に日本から来たばかりでは、授業についていけなくても当たり前ですよ。
できないことを嘆くのではなく、できた事を数えて、ひとつひとつ喜んでください。
人生はあなたが考えるよりもずっと長いから、いくらでもやり直しがききますよ。
そして、いつ日本に戻ることになっても後悔のないように、ボストンを存分に楽しみましょう!」
私の熱はものの見事に、この日を境になくなりました。
そして、先生の言いつけ通りに週に一日は遊びに出るようにしたところ、何と成績はみるみるうちに上がっていきました。
最終的にはAは取れなかったものの、BとCで無事終了、単位取得できました。
それと同時にボストン大学の合格通知が届きました。
その秋からは先生の処方を守って、適度に息抜きをしながら大学に通うことができたのでした。
さすが、ハーバード大の医務室!
完璧主義故に悩める多くのギフテッド学生の応対をしていらっしゃったのだと思います。
1979年の時点で既に学生のメンタルのサポートが充実していたとは驚きです。
一般的な大学のギフテッド対応
一般論で言えば、ギフテッドの学生は一部の難関校や専門性の非常に高い大学に集中していますが、本人の資質や経済状況、専攻などの様々な理由で、難関校以外の大学、特に学費の面で優遇されている公立の教育機関にも数多く在籍しています。
アメリカの大学では通常ギフテッド学生のために様々な支援プログラムが用意されています。
オーナーズ・プログラム:
多くのアメリカの大学では、ギフテッドな学生を選抜してオーナーズ・プログラムという特別なプログラムを提供しています。
これは一般のカリキュラムよりも高度な授業や研究の機会を提供し、よりチャレンジングな環境でギフテッドな学生の能力を引き出すことを目的としています。
普通のクラスよりも少人数で、教授とより深いコミュニケーションをとりながら高度な経験を積む事ができます。
アクセラレーション:
ギフテッドの学生は一般的に高校在学中に前述のAPコースや大学の課程を受講している事が多く、特に公立の大学ではその単位が大学の卒業単位として認められる場合が多いので、4年かからずに大学を卒業する事もできます。
私の勤務していたギフテッド学校の卒業生で高校時代に既に大学の課程を終了し、高校卒業後は大学を通り越し、17歳でいきなりアイビーリーグの大学院に入学した学生がいました。
奨学金:
多くの教育機関は、ギフテッドの能力を最大限に発展させるため、またギフテッドの学生の入学を募るために、学費や学習に関連する経費の一部または全部を補助する奨学金を付与しています。
US NEWS によると、2022年のアメリカ私立大学の1年間の平均授業料は$39,723 (約550万円)で、寮費などを含めると$80,000(約1,100万円)近くなります。ほとんどの学生が何らかの奨学金を得ているものの、差額は学生ローンでまかなっています。
アメリカの大学生は卒業時点で平均$30,000(約420万円)以上の借金があるとされており、学生にとっては奨学金の額は進学先決定の上でも大変重要な要素です。
ちなみに毎回アメリカ大統領選で学生ローンの返済免除がトピックに上がるのは、アメリカ国民の4,300万人がまだ学生ローンの返済に苦しんでいるからなのです。
メンタルサポート:
ギフテッド学生に限らず、広く学生が利用できる医務室があり、必要に応じて心理カウンセラー、臨床心理士に診てもらう事ができます。
大学における発達障害サポート
アメリカの大学では障害を持つ学生への適切な対応は法的に定められており、アメリカ合衆国の障害者教育法(Americans with Disabilities Act, ADA)のセクション504に基づいて、発達障害や学習障害も含めて障害者対策の対象としています。
通常は、大学の障害サポートセンターに医師や専門医療機関の診断書等を提出して、適切なサポートが受けられるように認定してもらいます。
認定後は、テスト時間の延長、音や光などに過敏な学生の為のテスト場所の手配、対人障害のある場合などのオンラインでの受講、アカデミック・コーチの手配、コミュニケーションの為のソフトウエアの使用など、診断に従って適切なアコモデーション(個別の配慮)が許可されます。
また、ほとんどの場合、障害サポートセンターでは心理面もサポートするカウンセラーが整えられています。
アメリカは大学においてもこの様な配慮がなされており、発達障害を持ち合わせたギフテッドの学生が、その実力が十分に発揮できるように、環境が整備されています。
アメリカの新卒採用活動
ごく一部の場合を除き、アメリカでは一般的に新卒採用に関してはそれほど熱心ではありません。
アメリカの学生は在学中からインターンシップなどをしながらキャリアを少しずつ積み上げ、卒業後に転職を繰り返しながらキャリアアップしていきます。
ただ、難関校に通うギフテッドな学生に関しては例外で、特に理系やビジネス系の学部を中心に、一流企業による人材争奪戦が活発に行われており、新卒とは思えぬ給与で採用されています。
ちなみにMITのコンピュータ・サイエンス専攻の新卒給与の平均は$118,100($1=¥140換算で16,534,000円)と発表されています。
GAFAMを初めとする最新鋭IT企業のみならず、様々な分野での大企業は、才能ある新卒に関しては戦略的なアプローチを試みています。
★大学の就職課へのアプローチ・大学主催のキャリアフェア/オンラインイベントに参加:
アメリカの各大学には日本の様に就職課が用意されており、企業は就職課を通じて求人票を提示したりやインターンシップの案内などを行います。
ただ、日本の様に一斉に就職シーズンが始まり、4月入社式という慣習はなく、年間を通じて採用が行われています。
前述の通り、一般的に新卒採用に関しては、一部の大学、専攻を除いては、そこまで熱心ではないと言っていいでしょう。
特に大学4年生は授業の密度が高く、本格的な就職活動はできない場合が多く、アメリカの大学生の卒業時点での内定率は3割と低くなっています。
学業が忙しいため、卒業後に一休みしてから就職活動する学生が多くみられます。
そういう事情から、アメリカの大学の就職課は卒業後も利用することができます。
日本の大学の就職課との違いは、新卒での就職よりも、生涯にわたっていかにキャリアを築いていくかというキャリア構築のサポートやアドバイスを提供することが主な役割です。
★教育機関との連携: 優秀な人材を育成する大学、研究機関、教育プログラムと提携する。
これは日本も同様だと思いますが、優秀な学生が集まる大学のプロジェクトをスポンサーして共同研究を行ったり、研究支援の資金を提供したりしながら、優秀な人材にアプローチします。
アメリカにおいても目ぼしい大学の教授や研究機関とのコネクション作りは、採用担当者にとって大変重要な任務です。
★インターンシップやフェローシップ・プログラム:
アメリカの大学の夏季休暇は3ヶ月ほどある事を利用して、インターンシップとして企業や団体で働く学生が数多くいます。
日本でも昨今インターンシップを行う企業が出てきましたが、大きな違いはアメリカのインターンの多くが有給で比較的長期間(夏季2-3ヶ月若しくは学期ごと)であるという事だと思います。
日本ほど「新卒採用」に直結しておらず、一種、企業の社会貢献的な意味合いも含みながら、優秀な学生に社会経験の場を提供しています。
企業側は、安い人件費で空いているポジションを埋めたり、新しいアイディアを取り入れたりしながら、実利のあるインターン採用を行っています。
そして、既存の職員に「新しい人材をトレーニングする」という経験を積ませることにより、管理能力や業務の指示の仕方の実地教育を行っています。
一方、学生は少しでも将来的に有利になるよう、インターンを選別しています。
アメリカではほとんどがジョブ型採用なので、自分がどのジョブのカテゴリーで応募していくかを、経験を積み上げながらキャリアの方向性を築いていきます。
ただ、難関大学のギフテッド学生や需要の高い専攻分野の学生に関しては青田買いの意味合いを込めて、インターン募集をかける場合が多く、インターン機関が終わった後も密接に連絡をとり、様々なイベントに招待したりする場合もあります。
コンテストやハッカソン:
業界関連のコンテストやソフトウェア関連プロジェクトのイベント、ハッカソンを主催したり、スポンサーをしています。
こうしたイベントは、競争環境に秀でた優秀な人材を発掘し、採用するのに最適な方法となっています。
奨学金:
優秀な学生を高校、大学在学中から資金面で個人的に支援する企業もあります。
私の知人の娘さんは高校時代から全米の科学コンテストで優秀な成績を修めていました。
さらなる実験のために資金が必要になり、目ぼしい企業、30社以上にプロジェクトの支援を求めるグラント申請書を送ったそうです。
その中で一社、彼女の実験を支援してくれる企業が見つかり、研究を継続する事ができました。
優秀な彼女が大学入学の際には大学側ばかりでなく、いくつかの企業からも奨学金をもらって進学しました。
報酬:
同じ会社に就職する同期の新卒であっても、給与は個人交渉で決定します。
自分の市場価値はどのくらいなのか、各企業でどの様に評価されているかはズバリ報酬に反映されますので、これはとても大切な要素です。
正当な評価とそれに見合う報酬、これはズバリ一番大きな要素だと考えられます。
一般的に日本ほど新卒人材争奪戦は激しくないものの、ギフティッド人材の獲得には各企業趣向を凝らしてアプローチしています。
新卒でも日本円にして年収1000万円超は当たり前。
多くの難関を乗り越えてきたギフティッド人材は、その社会人一年生から高待遇で迎えられています。
次回は、社内でのギフティッドを最大限にその才能を発揮させ、社に定着させる環境づくりやマネジメントを常に模索、開発しています。