【テクアシ日記 vol.16】人事や人間関係への「本能」の影響を考えたことはありますか?

怯えて噛んでしまう犬とパワハラ上司の間には「本能」という驚きの共通点がありました。そしてどうやら、そこには解決策のヒントもありそうです。

こんにちは。テクニカル・アシスタントの竹内です。

突然ですが、我が家の犬はビビりです。

初めて連れて行ったドッグランでは、壁にぴったりと沿って行動し、飼い主の陰に隠れるようにしていました。

体重差にして8倍以上の体格を持ちながら、チワワに追いかけられて悲鳴をあげ、正座をして見ていた私の肩までよじ登りました。

(※なおこのとき、14kgの体重がしっかり乗った爪により、私は太ももから首筋までミミズ腫れだらけになりました。そしてそれでも追跡をやめなかったチワワはそのまま私の上からも犬を追い払い、私の膝に堂々と仁王立ちになり、胸を張って勝利の遠吠えをかまし、私も含めた飼い主一同に爆笑をもたらしました。)

そんな「保護犬並み」といわれたビビりの我が愛犬ですが、この特性が分かってから、育てるのにはかなり慎重になりました。

ビビりの犬が噛むことを覚えると、気が強い犬のそれよりもはるかに矯正が難しくなるためです。

このことには理由があります。

気が強く、飼い主に自分の言う事を聞かせるために噛む犬は、ボスとして群れを支配する本能から噛みつきます。

このような犬に対しては、飼い主の方が犬よりも強く、頼れるボスであるとはっきりと上下関係を示すことで、その噛み癖を矯正することができると言われています。

「強いボスには従う」という行動もまた犬の本能であり、そうすることが群れの一員としての本能的な安心感にもつながるからです。

一方で、ビビりの犬は、ボスになりたいという意志ではなく「怖い!!!」という恐怖から噛みつきます。

恐怖の感情はとても強く、命を守る=生きる、という根源的な本能によるものです。

恐怖から噛みつくことを覚えてしまう犬の学習過程は、例えば以下のようになります。

①初めて首輪を着けるときなどに、犬が首輪への恐怖から噛みつく

②飼い主が痛みと驚きから手を引き、首輪をつけることを諦める

③犬は「噛みついたら危険(首輪という怖いもの)から免れた!」と学習する

④怖いと思ったことに対してとにかく噛みついて攻撃をするようになる

命を守るという本能に対抗して躾をするのは当然難しく、早い段階で「怖い」という感情と「噛みつく」という行動を結びつけないように育てていくことが大切になります。

 

そんな犬のお話をしたあとで、「パワハラには恐怖が潜んでいることがある」と言うと、驚かれますでしょうか。

人間においては理性や言語表現が発達しており、言う事を聞かせるために部下の首元や鼻先に噛みつく上司は、幸いにしておりません。

けれど、頭ごなしに怒鳴りつける上司、書類を投げつける上司は残念ながら存在します。私にも経験があります。

実は、この行動を掘り下げていくと、恐怖が潜んでいることがあるというのです。

怖いものなしのように見えるパワハラ上司が?と、私も最初は驚きました。

それは、「評価されなかったらどうしよう」という恐怖であったり、「舐められて、部下が言う事をきかなくなると仕事が上手くいかなくなるのではないか」という恐怖であったりします。

怯えなくていいんですよ…と、その恐怖を落ち着かせてあげたくなりますが、それで納得してくれる上司はいません。

 

それではどうしたらよいのでしょうか。

 

自分自身でその行動原理に気づかせる、「自己認知」を促すことが大切です。

そして、「そんなことをしていると損になるよ」という事実を伝えます。

①ありもしないことに怯えている現実を知る

②それよりも目前に迫る「今のままだと損をする」という事実に、「正しく恐怖する」

このステップで、人は変わることができるのです。

 

好評を頂いている弊社主催の社員研修では、社員一人一人が自分自身の行動原理を知る手助けをし、もし誤っていればその認識の修正を促します。

それにより結果として行動の変化がもたらされます。

研修とコーチングの活用により、パワハラ上司が変わった!と評価を頂いた例もいくつもあります。

集団での研修も実施しておりますので、ぜひご検討下さい。

竹内円

 

P.S.

ある時、そんなうちの犬にも自己認知を改めるチャンスが訪れました。

間もなく1歳になるというある日、体重が15kgを超えた頃、ドッグランで吠えかかるミニチュアシュナウザー(推定体重5kg)に対して、私の陰から顔だけ出して、ひとこと「ワン!」と吠え返しました。

すると、ミニチュアシュナウザーは大慌てで逃げ出し、ベンチの下に隠れました。

犬はむしろ呆気にとられてその姿を見ていましたが、自分の声の重低音っぷり、相手との体格差に、そこで初めて気付いたようです。

「もしかして、私って強い??ビビらなくても大丈夫なのでは!?」

自己認知が改められた瞬間です。

この発見以降、彼女は少しずつ飼い主と壁際から離れ、ドッグランの中を一人で駆け回れるようになりました。

チラチラと飼い主の所在を確認し続けるクセは抜けませんが、最初の頃よりもずいぶん楽しそうにしてくれています。

勇気を振り絞った「ワン!」がなければ、この結果はなかったかもしれない…そう思うと、行動することの大切さを改めて教えられたように思いました。

 

P.P.S.

今日も最後まで読んでいただきありがとうございます!

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Who is writing

経営人事パートナーズ テクニカル・アシスタント。
東北大学文学部卒業。製鉄会社の人事、大学法人の福利厚生制度の企画運営担当者などを経て現職。
持病の悪化による退職や家族の転勤による退職などを経験する中で、社員と企業双方にとっての最適解とは?人事を研究し突き詰めることはできるのか?という疑問を感じており、経営人事パートナーズの考え方に強い共感を覚えて入社。
生き物とバイクが大好きで、ボーダーコリーの女の子を溺愛しているが、彼女は熱烈なお父さんっ子なので若干片想い。うすうす感づきつつも、めげずに毎日愛を伝えている。