
近年、ダイバーシティ経営の重要性が高まる中、女性リーダーの育成は企業にとって大きな課題となっていますよね。
ちなみに、私はコーチングなど人材育成もさることながら、育児と家事がとても得意です(笑)
更に妻はとても優秀なセールスマンなので、ありがたいことに仕事においては色んな方から必要とされています。
そんな環境なので、娘のご飯も私が作っていますし、毎日の公園散歩も欠かせません。
個人的には、子育てから学べることが非常に多いと感じていますし、子供の成長を見守りながら感じたことをコーチングに活かしています。
話を戻して、結論から申し上げると、私は「女性はもっと仕事で可能性を広げるべきであり、男性は家事・育児から大切なことを学ぶべきである」と考えています。
また、私はこれまで様々な業界の方々のコーチングを行なってきましたが、クライアントの女性比率が高いこともあり、非常に強いリーダーシップを発揮している女性を沢山見てきました。
女性の視点や発想を取り入れることで、組織においては間違いなく意思決定の質が向上し、生産性や創造性の向上にもつながるでしょう。
しかしながら、厚生労働省の「企業調査結果概要」によると、課長相当職以上の、管理職に占める女性の割合は12.3%と低い割合にあります。
また、世界経済フォーラムが2022年7月に公表した「The Global Gender Gap Report 2022」によると、各国における男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数において、日本は先進国の中で最低レベルとのこと。
今回はそんな厳しい状況にある「女性リーダーの育成」について、自分自身の経験を交えてお伝えしたいと思います。
日本で女性リーダーが少ない理由
まず、そもそも日本に女性リーダーが少ないのはなぜでしょうか?
その理由としては、主に以下の3点が挙げられると考えています。
1.役割分担意識が残っているため
厚生労働省の「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」によると、男性育休等取得率は46.2%とあります。
最近では男性も積極的に育休を取ったり、家庭内で主夫として活躍している方は確実に増えているでしょう。
しかし、その内訳を見ると「男性の育休等平均取得日数:46.5日」とあることから、ほとんどの家事育児はいまだ女性が担っていると予想されます。
日本社会では依然として「男性は外で働き、女性は家庭を守る」といった役割分担意識が根強く残っていると言わざるを得ないのではないのでしょうか。
参考:厚生労働省「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」
実際あなたの周りでは、まだ何となくこんな意識が残っていませんか?
- 長時間労働は男性が行うべき
- 育児や家事は女性の方が向いている
- 管理職は男性が務めた方が安心
この「何となく」の意識は、いざという時にとても強い力を発揮してしまいます。
例えば、管理職候補として男性と女性が挙げられたとします。
彼らの評価はほとんど変わらず、どちらが昇進してもおかしくありません。
そんな時に上記の「何となく」の意識が働くことで、結果的に男性が有利になってしまう傾向にあるのです。(もちろん全てのケースに当てはまるわけではありません)
このような意識が組織内に残っていると、当然、女性社員の昇進やキャリア形成が阻害されます。
また、現実問題として家庭と仕事の両立が難しくなり、離職を選択する女性も少なくありません。
組織が女性リーダーを育成するためには、まずこうした性別役割分担意識に立ち向かい、一人ひとりの能力を最大限に発揮できる環境づくりに取り組む必要があります。
2.働きやすい環境の未整備
日本企業では、長時間労働や転勤が常態化しているため、女性が出産・育児と両立しながらリーダーを目指すことが難しい環境にあります。
私のクライアントには、育児から復帰して、出産以前よりも更に出世して活躍している方もいますが、それは稀なケースでしょう。
企業の支援制度は整備されつつありますが、まだまだ以下のような課題があります。
- 制度の実質的な活用が進んでいない。
- 上司や職場の理解が不足している。
- キャリア形成支援が十分でない。
女性リーダーを育成するには、働きやすい環境を整備することが不可欠です。
3.ロールモデル不足
日本企業において、女性リーダーがまだ少ない大きな理由の一つに、ロールモデル不足があげられます。
女性リーダーが少ないがゆえに、その存在自体が希少であり、後進の女性社員にとってロールモデルとなる存在が乏しいのが現状です。
私が知る限り、心の中で「もっと活躍したい!」と思っている女性は非常に多いです。
しかし、ロールモデルとなる方がいないため、いざ行動しようと思っても「何をどうすれば良いかわからない・・・」となってしまうのです。
また、組織としても、女性リーダー育成に向けた具体的な取り組みが遅れがちです。
せっかく意欲的になっている女性社員が、キャリア形成の段階から総合職を避けてしまわないように、育児支援の充実や働き方改革を進め、総合職でも働きやすい環境を整備することが重要です。
女性リーダー育成のメリットとは?
ここまでは、女性リーダーに関する厳しい現状をお伝えしましたが、そんな女性リーダーが一度活躍し始めると、企業には以下のような大きなメリットが生まれます。
1.企業イメージと多様性の向上
女性リーダーの登用は、企業のイメージアップと多様性の向上につながります。
組織の意思決定に多様な視点が加わることで、より幅広い顧客ニーズに応えられるようになります。
具体的には、以下のようなことが期待できるでしょう。
- 新規顧客の獲得:女性の感性を活かした商品開発で新規顧客層を開拓できる。
- ブランド価値の向上:多様性を重視する企業イメージで優秀な人材を確保できる。
このように、女性リーダーの登用は企業の成長に大きな影響を与えます。
2.女性社員のモチベーション向上
組織内に女性リーダーを育成し、活躍の場を広げることは、女性社員のモチベーション向上にも大きく寄与します。
女性リーダーが活躍すれば、女性社員は以下のようなメリットを実感できるためです。
- 同性のロールモデルが現れ、キャリアビジョンが描きやすくなる。
- 家庭と仕事の両立に向けた制度整備など、女性の視点が反映されやすくなる。
- 評価における男女格差の是正や、マネジメント層において多様性が生まれる。
こうした変化により、女性社員は会社に対する信頼感が高まり、モチベーションの向上につながります。
モチベーションの高い社員は生産性が上がるため、結果として組織全体の活性化も期待できます。
3.組織の意識改革が促進される
女性リーダーの活躍は、単に女性社員のモチベーション向上にとどまらず、組織全体の意識改革を促すでしょう。
それにより、下記のようなポジティブな変化が期待できます。
- 多様性の受容:性別や個性の違いを受け入れる風土が醸成される。
- 働き方改革:フレックスタイムや在宅勤務など柔軟な働き方が進む。
- ハラスメント防止:パワハラやセクハラが許されない組織風土ができる。
このように、女性リーダーの存在は「多様性の尊重」「働きやすい環境づくり」といった観点から、組織の意識改革をけん引する役割を担います。
このような改革には時間がかかりますが、女性リーダーの活躍から得られるメリットを考えると、コストをかけてでも取り組む価値は十分にあると言えるでしょう。
女性リーダー育成に向けた取り組み
ここまで読んで下さっているあなたであれば、女性リーダーの活躍については、ある程度の理解を示されているでしょう。
では、具体的にどうやって女性リーダーを育てれば良いのか?
これまでの私の経験から、いくつかの重要なポイントをお伝えいたします。
1.働きやすい環境と評価制度の整備
まずは何より、女性社員が活躍しやすい環境を整備することです。
環境整備は長い時間が必要ですが、ここを無視して表面的に女性リーダーの育成に取り組もうとすると、いずれ計画は破綻するでしょう。
多くのケースにおいて、女性として会社勤めをされている方は「どうせ出産するまでしか働けない」「男性のようには評価されない」「いざという時に女性の立場は弱い」という考えを持っていることは否めません。
コーチングにおいては、こういった考えを持っているクライアントの場合、まずは相手の話をよく聞き、相手の存在を無条件に認めることで、自然と次の一歩へと進むことが多いです。
であれば、組織においてもまずは女性の不安を少しでも理解し、その固定観念を自ら手放すことができるような環境を整えることが最優先だと言えます。
具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
- 多様な働き方の推進:在宅勤務、時短勤務、フレックスタイムなどの導入。
- 育児・介護支援:保育施設の設置、介護休暇の整備。
- メンター制度の導入:経験豊富な先輩社員によるアドバイスの機会提供。
こうした取り組みを通じて、女性社員が能力を十分に発揮できる環境を整備することが、女性リーダーの育成につながります。
2.女性リーダー育成研修の実施
当然のことながら、組織が女性リーダーを育成するためには、計画的な環境整備と共に専門的な研修プログラムを用意する必要があります。
とはいえ、プログラム自体は男性リーダー育成と大きく変える必要はないでしょう。
- リーダーシップ理論
- ビジョン構築力
- ストレスマネジメント
- 交渉力
- プレゼンテーション力
- メンタリング能力
といった、基本的なスキル獲得が目指せる研修があれば十分です。
ただし、女性の場合は先に述べたような、社会の固定観念からくるネガティブな思考を持ち合わせていることもあるため、研修実施後のアフターケアに注力することが重要です。
さらに、男性部下や上司を対象とした「ダイバーシティマネジメント研修」を実施し、女性リーダーの活躍を阻害しがちな無意識の偏見を払拭することも大切となるでしょう。
このように、組織全体で女性リーダーの育成に取り組み、女性の安心を確保することが、企業の持続的成長につながります。
3.女性リーダーのコミュニティ形成
研修実施後のアフターケアとして、すぐに取り組みやすいのが「女性コミュニティの形成」です。
女性は男性に比べて、集団に属したい(輪を乱したくない、足並みを揃えていたい)という気持ちが現れやすい傾向にあるため、同じような環境で共感しあえる場所があると、安心して行動が継続できます。
ちなみに、このあたりは性別だけではなく、タイプによって傾向が異なります。
タイプによる行動や思考の違いを理解しておくと、女性リーダー育成においても良い結果を得られやすくなるでしょう。
タイプの違いについては、こちらもあわせてお読み下さい→「アサーション×タイプ診断でコミュニケーション力を高める方法」
女性リーダー同士が定期的に交流し、お互いにロールモデルとなり合うコミュニティを形成することで、以下のようなメリットが期待できます。
- 経験の共有と気づきの促進
- モチベーションの向上
- キャリア形成へのアドバイス
- メンター制度の構築
このようなコミュニティを通じて、女性リーダーは孤独感を払拭でき、様々な気づきを得ることができます。
また、世代を超えた繋がりから、後進の育成にも好影響があります。
組織としても、このようなコミュニティを積極的に支援し、女性リーダーの成長を後押しすることが重要です。
女性リーダーと社会課題の解決
さて、女性リーダーの育成について重要なポイントを押さえたところで、女性リーダーに期待したい取り組みもまとめておきましょう。
女性リーダーはこれらを意識することで、会社内だけではなく、社会全体においても自らの価値を大きくアピールできるでしょう。
ジェンダー平等の実現に向けて
SDGsでも掲げられている「ジェンダー平等の実現」に向けて、女性リーダーは大きな役割を果たすことができます。
女性リーダーは、女性が直面する様々な困難を身をもって経験してきただけに、その実態をよく理解しています。
そうした理解の上に立って、具体的な施策を提言・実行することができるでしょう。
例えば、採用・昇進における男女格差是正、性別に捉われない評価制度の導入、ハラスメント対策の強化など、組織内のジェンダー課題解決に女性リーダーは貢献できます。
また、政策決定における女性の参画を促進することで、社会全体のジェンダー平等推進にもつながります。
ワークライフバランス実現のカギ
女性は家事・育児と仕事の両立を常に求められてきた存在です。
そのため、ワークライフバランスの重要性を誰よりも身に染みて理解しているはずです。
そんな女性リーダーだからこそ、長時間労働の是正、休暇取得の促進、在宅勤務の推進など、働き方改革を主導することができます。
さらに、育児休暇制度の拡充やフレキシブルな勤務体系の導入により、出産・育児を経ても継続就業できる環境を整備できるでしょう。
このように、女性が抱える課題を熟知した女性リーダーこそが、真のワークライフバランス実現の鍵を握っているといえます。
子育て支援の充実化
子育て支援は女性が直面する大きな課題の一つです。
待機児童問題の解決や、子育ての経済的負担軽減など、従来の施策では十分な対応ができていない状況が続いています。
この分野においても、女性リーダーならではの発想と先見性が活かせるはずです。
私のように、男性にも家事や子育てに興味を持っている方はいますので、そういった方々を集めて共同でプロジェクトを推進することもできるでしょう。
まとめると、女性リーダーは「当事者意識」を持ち合わせているからこそ、これらの社会課題を的確に捉え、立場に立った解決策を生み出せる存在なのです。
多様な視点を生かした施策立案が期待できることから、今後ますます女性リーダーの活躍が求められるはずです。
まとめ
今回は女性リーダーの育成についてお伝えさせて頂きました。
女性リーダーを育成するには
- 環境・制度整備
- 長時間労働の是正、評価制度の見直し
- 育成研修
- リーダーシップ研修、メンター制度の導入
- コミュニティ形成
- ロールモデルとの交流の場の提供
など、解決すべき課題が沢山あります。
しかし、そういった課題を乗り越えることで、組織全体としても得られるメリットは大きいはずです。
最近は若い世代を中心に、それぞれの価値観を優先したビジネスとチームビルディングを推進することで、大きな成果をあげている組織が増えています。
この概念を「若い世代だからできること」として済ませるのではなく、既存の組織にも取り入れることはできるはずです。
改めて「女性は仕事で活躍し、男性が家事・育児から大切なことを学べる」そんな社会になってほしいと心から願うばかりです。