セルフ・コンパッションを使って心をラクにする3つの考え方

今回は「セルフ・コンパッション」を使って、心をラクにする3つの方法についてまとめました。普段、自分にも他人にも厳しい人は必見です。

セルフ・コンパッションを使って心をラクにする3つの考え方

あなたは「セルフ・コンパッション」という言葉をご存知でしょうか?

これは、テキサス大学の准教授であるクリスティーン・ネフ氏が提唱している考え方で、同タイトルの著書「セルフ・コンパッション」は、Amazonでも高い評価を受けています。

直訳すると「自己慈愛」「自分への思いやり」という意味です。

私がこの言葉を知ったのは、とある心理カウンセラーさんからのご紹介でした。

私は昔から「自分を大切にする」「自分を愛する」といった類のメッセージがとても苦手でして・・・聞いただけで、何とも言えない気持ちになっていました。

いま考えれば、それは自己肯定感の低さから来ているものだと分かりますが、この「自分を大切にする」という言葉の重要性がよく理解できたのは、この本のおかげです。

現在は、自分のコーチング理論の中に組み込み、クライアントには必ずお伝えしているほど、無くてはならない考え方となりました。

本当であれば、この本を読んで頂くのが1番良いのですが、なかなかすぐに読むのが難しい場合もあると思います。

ですので、今回はそんな「セルフ・コンパッション」について、私のように自分を大切にすることが苦手な人が、少しでも自分を見つめるきっかけになるよう、噛み砕いてお伝えしたいと思います。

もし、あなたが

  • 普段は感情より思考を使いがち。
  • 気づけば効率を重視している。
  • 自分にも他人にも厳しい(それを「ストイック」という言葉で片づけている)。
  • 人を褒めるのが苦手。
  • 休日に休むことが苦手。

といった場合は、是非今回の内容を読んで頂きたいと思います。

きっと、今よりもラクな生き方が出来るようになるはずです。

セルフ・コンパッションとは?

セルフ・コンパッションとは?

これまで、ビジネスの最前線でバリバリと仕事をしてきた男性ほど、恐らくセルフ・コンパッションが苦手だと推測されます。

実際、私のクライアントにおいても、特に経営者層の男性はこの考え方にまず難色を示します(女性は受け入れるのがとても早い傾向にあります)。

自分に対して思いやりを持つといった考え方は、ビジネスとは真逆の考え方になりがちなので、当然と言えば当然でしょう。

では、一体それがどんな考え方なのか?

結論から申し上げると、セルフ・コンパッションは

  1. 自分に対する優しさ
  2. 共通の人間性
  3. マインドフルネス

の三つの要素から成り立っています。

これらの要素を組み合わせることで、心の健康と幸福感を向上させることができます。

1つずつ説明しましょう。

1.自分に対する優しさを養う

いきなりですが、いくつか質問をします。

とても大切なことなので、しっかりと考えてください。

  • Q.あなたは、あなたの同僚や部下に、どうなってほしいと願いますか?
  • Q.あなたは、あなたの顧客に、どうなってほしいと願いますか?
  • Q.あなたは、あなたの友人に、どうなってほしいと願いますか?
  • Q.あなたは、あなたの家族(両親・パートナー・子供)に、どうなってほしいと願いますか?
  • Q.あなたは、あなたの大切な人たちに、どうなってほしいと願いますか?

おそらくあなたは、経済的にも・健康的にも・人間関係的にも、今より良い状態になることを願ったのではないでしょうか?

・・・では、今度はその願いを「そのまま自分へ」投げかけてみてください。

すると、どんな気分になるでしょうか?

少し心が落ち着くような、胸の辺りが温かくなるような感じがしませんか?

場合によっては、他人には優しく接しているのに、自分に対しては全く優しくなかったことに気づくかもしれません。

セルフ・コンパッションにおいては、このようにあなたが他人を大切にするのと同じように、自分自身を大切にするよう促されます。

もし、そのことに気づくことができたら、今日から以下の3つを意識してみてください。

①自分を大切にする

まずはとにかく、自分を大切にしましょう。

あなたに大切な人がいることは十分承知の上で、「その人よりも自分を大切にしてください」という意味です。

とはいえ、これが難しいこともよく理解しております。

これまで、自分を大切にしてこなかった人は、「自分を大切にする=自分を甘やかす」という構図が、頭の中で成り立っていることが多いです。

特にビジネスで戦ってきた人なら、尚更抵抗があると思います。

しかし、自分を大切にするとは、甘やかすこととは全く違います。

やることをやらずに、手を抜いて、過保護にするのではなく、ありのままを受け入れるという意味です。

むしろ、自分を大切にすることに全力を注いでいる状態ですね。

そのためには、まず普段の言葉を変えることを、強くオススメします。

もし、あなたが仕事中に「なぜ、こんな事もできないのか?」と思ったら、「まあ、すぐに出来るようになるさ」に切り替えましょう。

「私は、もっと出来るはずだ!」と感じたら、「もう十分出来てるよ」にして下さい。

些細なことですが、このように普段の言葉(思考)を少しずつ変えることで、自分を責めずに、受け入れることが可能になり、困難や失敗に直面しても、自分で自分を支えることができるようになります。

また、自分を大切にすることで、他人にも同じような思いやりを示すことができ、より深い絆が生まれるのです。

②自分を認める

自分を大切にするには、自分を認めてあげることも重要です。

セルフ・コンパッションが苦手な人は、良く言えばストイック、悪く言えば「ハードルの高すぎる完璧主義者」が多いです。

何が出来ていないのか?を探すことは、確かに生産性を高め、ビジネスを発展させます。

しかし、それが同時に自分自身を蔑ろにしていることにも気づいてください。

あなたは、自分のことをどれくらい認めていますか?

憧れの人に対する羨望の眼差しと、同じくらい自分のことを認めているでしょうか?

1日の終わりに、出来なかったことを思い出しながら寝るのと、出来たことに充足感を感じながら寝るのとでは、どちらが翌朝気持ち良く起きられそうですか?

何が出来ていないか?が気になったら、「すでに出来ていることは何か?」に、視点を切り替えてみてください。

自分自身を認める過程で、自分自身と向き合い、自分の弱点や限界を受け入れることも重要です。

③自分への理解を深める

自分を大切にして、自分を認めたら、更に自分への興味を深めましょう。

人は、他人の事なら細かいことまで気づくことができますが、自分自身の事になるとほとんど見えていません。

  • あなたが好きな事は何でしょうか?
  • ふと気づくと、いつも考えている事はなんですか?
  • どんな時に気分が上がり、逆にどんな時に落ち込みやすいですか?
  • 何を食べると元気になりますか?
  • 何時間寝ると、翌日調子が良いですか?

このように、自己理解を深めることで、自分の感情や行動に対する理解が深まり、自分自身とより健全な関係を築くことができるでしょう。

2.共通性を認識する

2.共通性を認識する

普段から自分に厳しい人は、「自分は自分、他人は他人」という、分離の意識が強い傾向にあります。

しかし、この分離状態が、実は非常に大きな問題を生み出していることに気づいていません。

過去の歴史においては、支配者や権力者が人々を意図的に分断し、争いを生み出して自らの支配を強化しようとする「分断統治」という戦略を用いました。

例えば、民族や宗教の違いを利用して争いを生み出し、支配者層が自らの権力を維持しようとする動きがこれにあたります。

これは、支配者層が「人々のつながりから生まれる力」を最も恐れていたからです。

そして、分離させることで、人が力を失うことをよく知っていたのです。

にも関わらず、私たちは普段、分離状態を自ら進んで作っていることがよくあります。

これは非常に怖いことですよね。

そこで、セルフ・コンパッションにおいては、自分本来の力を取り戻すために「他者との共通点」にフォーカスします。

他者との共通点を見つける

言葉にするとチープなのですが、人はみんな一緒です。

不幸が立て続けに起きると「なぜ、自分だけが・・・」と思いがちですが、実は同じような境遇に立たされている人は、思いのほか沢山います。

あなたが抱えている「誰にも言えない秘密」を、あなたの周りの人も同じく持っている可能性があります。

もし可能であれば、仲の良い親しい人たち数人で集まり、自分の秘密を1つずつ打ち明けてみてください。

ほとんどの事は共感され、受け入れられるはずです。

とはいえ、それは難しいと思うので・・・試しにあなたの尊敬する人と、自分の間に、どんな共通点があるか?を考えてみてください。(必ず共通点は見つかります)

共通点を認識することで、分離の状態から脱却し、それだけで自分の力が増したように感じます。

また、他者も同じような経験や感情を抱えていることを知ることで、自分だけが孤独ではないという安心感が生まれます。

これにより、驚くほど自己肯定感が向上し、よりポジティブな人間関係を築くことができます。

特に普段から、自分のことをあまり話さない人こそ、これを試してみて欲しいと思います。

3.マインドフルネスの実践

3.マインドフルネスの実践

マインドフルネスとは、「現実に起こっていることに意識を集中し、あるがままを受け入れてバランスを整える考え方のこと」です。

セルフ・コンパッションの実践においては、マインドフルネスを使って、自分の思考や感情を客観的に観察することも重要です。

逆に、失敗を大袈裟に捉えすぎて、負の感情に飲み込まれている状態を「過剰同一化」と言います。

客観的な視点を保ちながら、思考や感情に対処することで、自分への思いやりを促進させることができます。

自己観察の習慣化

過剰同一化を回避し、マインドフルネスの状態をキープするためには、自己観察を習慣化する必要があります。

代表的な方法としては、日常的な瞑想などが挙げられます。

自己観察を通じて、自分の内面に起こる変化や反応をよりよく理解し、適切に対処することができるようになるでしょう。

このように

  • 「自己否定」ではなく「自分を大切にする」
  • 「孤独」ではなく「繋がりを作る」
  • 「過剰同一化」ではなく「マインドフルネス」

を目指す事で、心がどんどんラクになっていくのを感じ取ってください。

では続いて、日常生活におけるセルフ・コンパッションの実践方法についてもお伝えしておきます。

日常生活でのセルフ・コンパッションの実践

日常生活でのセルフ・コンパッションの実践

経済的にも、健康的にも、豊かに生きている人たちは、意図してるかどうかに関わらずセルフ・コンパッションを実践していると言えます。

しかし「自己否定」「孤独」「過剰同一化」の状態で生きている人にとって、セルフ・コンパッションは非日常的な考え方に感じるかもしれません。

でも、それはそうせざるを得ない状況の中で、意図せず培ってしまった悪習慣に過ぎません。

であれば、日常生活でセルフ・コンパッションを実践することで、「自分を大切にする」「繋がりを持つ」「マインドフルネス」を当たり前にすることも可能です。

というわけで、日常生活でセルフ・コンパッションを実践するための方法を、いくつかご紹介しておきます。

新しい自分を発見する

日常生活でセルフ・コンパッションを実践するためには、新しい趣味や興味を見つけることが効果的です。

自分の興味や関心を追求することで、自己成長や喜びを感じる機会が増えます。

例えば、新しい料理を試してみる、趣味の写真撮影に時間を割く、あるいは興味のある分野の本を読むなど、あまり難しく考える必要はありません。

もしここで「いや、私にはそんなことをしている余裕はない」と感じたら・・・その思考こそが、これまでの悪習慣の結果です。

人生において、「自分の興味」以上に大切なことはありません。

新しい自分を意欲的に探すことで、自分自身を大切にする時間を持ち、心の中でポジティブな気持ちを育てることができます。

自己表現の機会を増やす

自分の考えていることや持っている知識を、積極的にアウトプットする機会を作ることも、セルフ・コンパッションの実践に繋がります。

これまで悪習慣を続けてきた人の多くは

  • 自分には大した知識がない。
  • 自分の意見に大した価値はない。
  • 黙っている方が安全だ。

と考えています。

しかし、そうすることで自分を蔑ろにしていることは、もう分かりますよね?

とは言え、いきなり人前に出て、自分の意見を言う必要はありません。

最初は自分の考えや感情を書き出すだけでも結構ですので、自己表現を通じて内面の声に耳を傾けてみてください。

他にも、日記をつける、絵を描く、何かを作ってみる、服選びにこだわる、または音楽を聴くなど、自己表現の手段は多岐にわたります。

自分に目を向ける時間を増やしていきましょう。

自分を褒める時間を作る

最初はとても気恥ずかしく感じるかもしれませんが、自分を褒める時間をつくることも非常に効果的です。

自分の成果や努力を認め、自分自身に賞賛を送ることで、自己肯定感が向上し、自信を育てることができます。

毎日鏡の前で自分を褒めてみてください。

たとえ小さな成功や進歩であっても、自分自身を褒めることで、心の内側からポジティブな気持ちを生み出すことができます。

どの方法も、お金は一切かかりません。

今すぐ出来ることばかりですので、是非実践してみてください。

まとめ:セルフ・コンパッションの持続的な実践

まとめ:セルフ・コンパッションの持続的な実践

さて今回は、セルフ・コンパッションについてお伝えしてきました。

聞き慣れない言葉が多かったかもしれませんので、最後にもう一度重要なポイントをまとめておきます。

  • セルフ・コンパッションは、「1.自分自身への思いやりを持つこと」「2.他者との共通性を認識し、繋がりを築くこと」「3.マインドフルネスを実践すること」から成り立っています。
  • 自分を大切にするには「日常の言葉を変えること」「何が出来たか?を考えること」「自分に興味を持つこと」が大切です。
  • セルフ・コンパッションを実践するための具体的な方法は「新しい趣味や興味を見つけること」「自己表現の機会を増やすこと」「自分を褒める時間を作ること」です。

これらの方法を取り入れることで、自己肯定感を向上させ、心のバランスを整えることができます。

ストレスとの向き合い方

ちなみに、厚生労働省の調査によると、仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は、「54.2%(2020年)」だったそうです。

私は、現在ストレスを感じているすべての人が、セルフ・コンパッションを実践すれば、間違いなくこの数値を減らすことが出来ると信じています。

だからこそ、日々仕事に真剣に向き合い、自分以上に人のことを考えてしまう方にこそ、効果を実感して頂きたいと思います。

セルフ・コンパッションは、何か特別なことを伝えているわけではなく、人としてごく当たり前のことを、分かりやすく体系化しているだけです。

今回の記事にピンときたら、今日から少しずつ実践して頂ければ幸いです。

Who is writing

岩下 知史(いわした ともふみ)

職業:メンタル&ビジネスコーチ、ライター。

クライアントは経営者、会社役員、ドクター、看護師、個人事業主〜主婦まで多岐に渡る。

大学卒業後は主にホテル業界に従事、東証一部上場企業にてチームマネジメントに携わり20名ほどの部下を抱える。

離職率の高いホテル業界で、人材教育へのプレッシャーから躁鬱病を経験するも、それまで一度も予算達成したことがなかったチームを常勝チームへと成長させる。

その後2015年に独立、様々な成功と失敗体験を積む中で「教育」に情熱があることを再認識し、経験・人脈ほぼゼロの状態から、コーチング、ライティング、Webマーケティング、研修講師業などを通じて本格的に人材教育業界へ。

2020年からは世界で100万人が活用しており、MicrosoftやIBMといった有名企業に人材育成ツールとして導入されている「ウェルスダイナミクス」において、専属のメルマガライター兼・日本に3人しかいない公認トレーナーを務める。

その間は1,000人以上のビジネスパーソン、有資格者の指導にあたり、2022年にトレーナーを卒業〜現在に至る。

人生のミッションは「自ら思考・選択・行動できる人材を育てること」、趣味はギターと筋トレ、心理や精神世界に関する読書、娘と遊ぶこと。