ゴルフ名コース解剖~宍戸ヒルズCC・西コース編

今回は宍戸ヒルズCC・西コースについて、名コースと呼ばれ、かつトッププロたちが苦しむ理由を、コース設計の視点からご紹介していきます。

日本にあるゴルフ場は2,000コース以上。その数は、世界でもトップ5に入るほどです。その中には、広く知られた名コースも数多くあります。

この「ゴルフ名コース解剖」では、そんな名コースとして知られるコースについて、その理由をコース設計の視点からご紹介していきます。

第1回は、宍戸ヒルズカントリークラブ・西コースです。

なぜ宍戸ヒルズCC・西コースにトッププロたちは苦しむのか

宍戸ヒルズCC・西コースは、2003年から男子レギュラーツアーのメジャートーナメント「日本ゴルフツアー選手権」を開催しています。

毎年改修が行われ、トッププロたちも苦しむコースへと進化してきました。

なぜトッププロたちは宍戸ヒルズCC・西コースに苦しむのか。いくつかのホールをピックアップして、その理由を探っていきたいと思います。

宍戸ヒルズCC・西コースの概要

コースは茨城県のほぼ中央、笠間市の山麓地域にあります。

その歴史は、地元企業の重役でありシングルハンディのゴルファーでもあった山崎亥年生が、ゴルフ場を誘致すべく名匠・井上誠一に現地調査を依頼したことに始まります。

井上からの「地形的に良い場所」との評価をうけて宍戸国際ゴルフ倶楽部が設立され、1973年に着工開始。

1974年に18ホールで仮オープンしたのち、1977年に9ホールが加わった27ホールで正式オープン。

さらに1991年にさらに9ホールが増設され、現在の東・西各18ホールの計36ホールとなりました。

設計は全て、大谷光明や井上誠一に師事した発知朗の手によるもの。

経営母体は2003年に森ビルグループへと移り、その際にコース名も「宍戸国際GC」から「宍戸ヒルズCC」へと変わりました。

  • 住所:茨城県笠間市南小泉1340
  • 開場:1974年(西コースは1977年に9ホール、1991年に9ホールがオープン)
  • 経営:森ビルゴルフリゾート株式会社
  • ヤーデージ:7,437ヤード パー72
  • 設計者:発知 朗

距離が短いホールはグリーン周りに要注意~No.1~

宍戸ヒルズカントリークラブHPより引用
宍戸ヒルズカントリークラブHPより引用

Black・Blue:398Y White:358Y

https://hillsgolf.jp/shishido/course/west/hole1-w/

1番ホールは、398ヤードのパー4。緊張するスターティングホールとは言え、トーナメントで使われるBlackティーからでも400ヤードを切る短さ。

願わくはパー以下で上がりたいところですが、そうは問屋が卸さないのが宍戸ヒルズ・西コースです。

ティーショットのランディングエリア付近にある左右のフェアウェイバンカーもさることながら、待ち構えるのは左奥、右奥、手前の3面に分かれた複雑なグリーンです。

短いパー4の場合、セカンドショットでは多くの方がミドルアイアン以下の番手を持つことになります。

その精度を試すべく、グリーンやグリーン周りを難しくするというのが、コース設計で一種のセオリーになっています。このホールも御多分に漏れないわけです。

ちなみに今年行われた日本ゴルフツアー選手権の4日間のホールサマリーはご覧の通りです。

  • 1日目:3.932 難易度16番目
  • 2日目:4.148 難易度11番目
  • 3日目:3.851 難易度16番目
  • 最終日:4.162 難易度7番目

4日間のうち2日間は、平均ストロークがオーバーパーとなっています。

ピン位置によってはトッププロでも侮れないスターティングホールになるというのが、お分かりいただけるでしょう。

セカンド勝負の短いパー4~No.12

宍戸ヒルズカントリークラブHPより引用
宍戸ヒルズカントリークラブHPより引用

Black:408Y Blue・White:325Y

https://hillsgolf.jp/shishido/course/west/hole12-w/

12番ホールも、距離が短いながらもあなどれないパー4です。

ホールは途中から打ち下ろしになっており、ティーイングエリアからグリーンは見えません。

左に続くカート道のさらに左はOBとなっているので、こちらも要注意。

ドライバーでフェアウェイを捉えたとしても、左のバンカーから先は下っています。

そうなれば、セカンドは左足下がりのライから、手前にクリークが走るグリーンを狙わなければいけません。

そのため、多少距離を残してでも平らなライから打てるよう、ティーショットではドライバーを握らないという方も多いようです。

日本ゴルフツアー選手権における12番ホールのサマリーは、ご覧の通りです。

  • 1日目:4.205 難易度6番目
  • 2日目:4.213 難易度6番目
  • 3日目:3.959 難易度11番目
  • 最終日:4.338 難易度4番目

右端の奥にピンが切られた最終日は、全体でも4番目に難しいホールとなりました。

セカンドで、どのようにグリーンを狙うか。そのために、ティーショットをどこへもっていくか。プレイヤーに考えさせるホールになっています。

「日本一難しいパー4」とも呼ばれる名物ホール~No.17~

宍戸ヒルズカントリークラブHPより引用
宍戸ヒルズカントリークラブHPより引用

Black:481Y Blue:430Y White:412Y

https://hillsgolf.jp/shishido/course/west/hole17-w/

17番のパー4は、コースの名物と言える難関ホール。

「日本一難しいパー4」という声もあるほどで、2003年からこのコースを会場としている「日本ゴルフツアー選手権」においても、幾多のドラマが生まれてきました。

その仕掛けは、早速ティーショットから始まります。

右側にはレッドペナルティーエリアが続き、それを嫌がって左に曲げればラフの中へ。

左ラフの広がる法面は波打っているため、つま先下がりに左足上がり・下がりも加わった複合ライからセカンドショットを打つことになってしまいます。

運よくフェアウェイを捉えたとしてもランディングエリアは左足下がりとなっているため、喜んでばかりもいられません。

それは、セカンドでグリーンを狙うプレイヤーの前に、奥行き100ヤード以上の池が広がっているため。

そのためトーナメントにおいては、フェアウェイから打ったにも関らず思ったよりもキャリーが出ず池に落してしまう選手や、ラフからのセカンドを池の手前に刻む選手も見られます。

そして最後に厄介なのが、待ち構えるグリーン。奥から池に向かって傾斜の付いた、受けグリーンになっているのです。

そのため、グリーン奥に外した際のアプローチや、ピンをオーバーした場合のパットは、非常に神経を使うことになってしまいます。

そんな17番ホールの日本ゴルフツアー選手権におけるホールサマリーは、こちら。

  • 1日目:4.303 難易度3番目
  • 2日目:4.557 難易度1番目
  • 3日目:4.365 難易度1番目
  • 最終日:4.486 難易度3番目

「4日間のこのホールの出来が、トーナメントでの成績に直結する」「優勝争いの中でこのホールを迎える前には、何打リードがあってもいい」「優勝争いの中なら、吐き気を催してしまいそう」…。

日本のトッププロたちにそこまで言わせるホールには、やはりそれなりの理由があるのです。

距離の短いホールでも油断ならないトーナメントコース

今回は宍戸ヒルズCC・西コースについてご紹介してきました。

有名な17番ホールもさることながら、一見するとチャンスホールと思える距離の短いホールであっても安易にプレーすることを許さない、メジャーチャンピオンを決めるにふさわしいコースであるということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

とは言え、ただ難しいコースという訳ではありません。グリーン周りがすべて池といった、いわば「逃げ場がないホール」は作られていません。

また、コースメンテナンスにおいては、「ナイスショットには優しく、ミスショットには厳しい」という本来あるべき姿になるよう、マスターズをはじめ数々のトーナメントの視察・研究を重ね、その成果を日々の入念な整備で実践されています。

機会があれば自分の実力を試すつもりで、あるいはツアープロを疑似体験するつもりで、一度ラウンドされてはいかがでしょうか。

※記事内のコース画像は、全て宍戸ヒルズカントリークラブHPより引用

Who is writing

1982年生まれ。大手建機レンタル会社や書店チェーン、金属材料販売会社に勤務する傍ら、小学生のころにテレビで見たイギリスにあるリンクスコースの光景に衝撃を受けて以来、ゴルフコースに関する情報収集を趣味としている。ゴルフコースに関する蔵書は、洋書も含めて数十冊。