「小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道だと思っています。」
野球界のレジェンドである、イチローさんはそう言いました。
確かに、毎日1つ新しいことに挑戦すれば、1年間で365個の新しい経験を積むことができますよね。
・・・確かにそれは分かるのですが、その小さいことの積み重ねが、なかなかできないのが人間です。
だからこそ、いつの時代も「どうすれば習慣が身につくのか?」を探し求める人が後を絶たないのでしょう。
というわけで本記事では、そんな習慣化について、リーダーが自らの目標達成に向けて、セルフコーチングを活用しながら新しい習慣を身につけるための5つのステップをご紹介します。
これを読んで、今日からあなたも新しい習慣を手に入れてください!
習慣化と脳の仕組み
結論からお伝えすると習慣とは「脳が効率的に処理するための機能」です。
毎日繰り返し行われる行動は、何も考えなくても選択できるよう、そのプロセスを脳が自動化すると言われています。
新しいことを始めると、最初は意識を払わなければなりませんが、繰り返し行うことで脳内に回路ができ、無意識下で行動できるようになるのです。
その結果が「習慣」なんですね。
よく考えてみれば、私たちの中に「1つも習慣を持っていない」なんて人は存在しません。
- 毎日の歯磨き
- お風呂で体を洗う順番
- 休憩中のコーヒーやタバコ
など、何かしら習慣を身につけています。
ただ、その習慣が自分にとって「理想的な結果をもたらすのか?」「望まない結果をもたらすのか?」の違いがあるだけですよね。
そう考えると、脳と習慣化の仕組みを理解することが、より良い習慣を身につける第一歩になるはずです。
脳は省エネ志向
私たちの脳は、省エネ志向です。
もう少し補足すると、脳は「現状維持」を好んでいます。
なぜなら、私たちの生存確率を高めるためです。
脳にとって「今この瞬間生きている」という事実は、生存戦略として揺るぎない最も有効なデータです。
今生きているのですから、生きるためのそれ以上の方法は無いですよね。
であれば、この状態を維持することが、明日も明後日も生命を維持させる根拠になるので、結果的に「今のままで良い」という現状維持の機能が働くわけです(この機能をホメオスタシスと言います)。
これは逆に言うと、新しい行動が脳にとって大きな負担であることを表しています。
- 明日から5km走る
- 毎日1時間読書をする
- 資格の勉強を始める
といったチャレンジが億劫だったり不安になるのは、背景にこういった脳のメカニズムがあるからなのです。
・・・つまり、私が言いたいのは「なかなか新しいことに取り組めないのは脳のメカニズムであり、あなたのせいではない」ということです。
残念ながら、これはすべて脳のせいだったんですね!
なので、新しい習慣を身に付けたければ、まずは開き直ることから始めましょう。
習慣は自動化されたスキル
また、人間には顕在意識と無意識の2つのモードがあると言われています。
顕在意識では合理的に状況を判断し、行動を選択します。
一方の無意識は、記憶や経験に基づいてパターン化された行動を自動的に実行します。
習慣とは、まさにこの無意識下で自動化された行動のことを指します。
行動が顕在意識にいるうちは、手順を一つ一つ意識しながら行動しなければなりません。
しかし、同じ動作を繰り返すことで、やがてその行動が無意識化され、自動化されていくのです。
試しに、いまこの瞬間に「呼吸」に意識を向けてみてください。
鼻から吸うのか、口から吸うのか、何秒吸って、何秒吐くのか?途端に細かいことが気になり始めて、うまく呼吸ができない感覚になったのではないでしょうか。
これは、呼吸を無意識から顕在意識に切り替えた状態と言えます(これをあえて行うのが、マインドフルネス瞑想ですね)。
このように、習慣と脳には密接な関係があります。
質問力を活かしたセルフコーチングとは?
なんとなくでも、脳と習慣の仕組みをご理解頂けたでしょうか?
では、ここからは具体的に習慣化を促進させる方法に触れていきます。
習慣化を促進するためには、単に行動を繰り返すだけでなく、自らを客観的に見つめ直す作業が重要になってきます。
そこでオススメしたいのが「セルフコーチング」です。
セルフコーチングとは、そのまま「自分で自分にコーチングを行い、目標まで導く」という意味です。
具体的には、適切な質問を自分自身に投げかけ、答えを見つけていくことで、新たな気づきを得ることができます。
この「気づき」が、習慣化をサポートしてくれる材料となります。
自問自答で気づきを促す
セルフコーチングと言っても、難しいことはなく、自分自身に質問をするだけで結構です。
例えば「なぜこの習慣が大切なのか?」「どうすれば実行できるか?」「どこでつまずいているのか?」といった具合に、自問することで、自分の内面と向き合うことができます。
そして、その答えを見つける過程で、新たな気づきが生まれてくるのです。
習慣化の障壁となっている根本原因に気づいたり、具体的な対処法が浮かんだりするかもしれません。
習慣化を後押しする質問の使い方
とはいえ、どんなタイミングで、どんな質問を投げかけるか?は頭を使う必要があります。
質問の内容や投げ方次第で、習慣化にプラスの影響を及ぼすからです。
例えば「ダイエットのためにお米の量を半分に減らす!」と決め、1週間は頑張ってみたものの、8日目に食欲が止まらなくなりお米を食べすぎたとします。
その際には「なぜやめてしまったのか」という問いかけよりも、「どうすれば続けられるか?」と質問した方が、建設的な答えが見つかりやすくなりますよね。
ちなみに、自分に対して質問を行う際は「なぜ?」よりも、具体的な行動を問う「どうすれば?」という質問の方が行動を起こしやすいです。
基本的に「なぜ?」という質問には答えがないため、より本質的な答えに向かって、あえて思考を膨らませたい時に活用するのが良いでしょう。
このように、質問の切り口や言い回しを工夫することで、習慣化に向けた前向きな気づきが得られやすくなるのです。
また、セルフコーチングでは、単に質問をするだけでなく、その答えを行動に移すことが何より大切です。
質問を通して気づいた点を具体的な行動計画に落とし込み、実行に移すことで初めて習慣化が促進されます。
自問自答を繰り返しながら、PDCA(計画のPlan→実行のDo→確認のCheck→行動のAct)のサイクルを回していくことが重要となります。
新しい習慣を身につける5つのステップ
では続いて、新しい習慣を確実に身につけるための5つのステップをご紹介します。
1つ1つのステップを確実にこなしながら、質問力を発揮して自らをコーチングし、目標達成に向けて着実に前進していきましょう。
Step1. 明確な目標設定
習慣化を始める上で最初に重要なのが、目標を明確化することです。
習慣化を行うには「モチベーション(ドーパミン)」も必要なため、目標に対して今どこにいるのか?どれだけ進んだのか?を細かく確認することが大切です。
「なぜその目標が必要なのか?」「目標を達成したらどうなるか?」といった質問を投げかけ、目標の意義や到達点をしっかりとイメージしていきましょう。
<目標設定への質問例>
「なぜこの目標が重要なのか?」「達成によってどのようなメリットがあるか?」「目標達成後の自分の姿をイメージできるか?」など、目標の意義や到達点をしっかり自問することが大切です。
Step2. 実行可能な行動計画
目標が定まれば、次は具体的な行動計画を立てる必要があります。
「どのように実行していくか?」「いつ、どこで、何をするのか?」など、できるだけ詳細に計画を立てることで、実行が容易になります。
計画立案の際は、現実的で実現可能なものにする必要があります。
ここでよくある間違いが「最初の勢いに任せて、無茶な行動計画を立てること」です。
いきなり毎日10km走るとか、1日1食に減らすとか、読んだこともない分厚い本を読むとか、そんなことは絶対にしないでください。
最初は自分を過信せず、小さく小さく始めましょう。
例えば、ランニングであれば「毎日100m」でもOKです。
もっと言えば「毎日20時になったらランニングウェアに着替える」だけでも良いです。
「え、それだけ?」と思うかもしれませんが、脳の現状維持機能を甘くみないでください。
低い目標を確実にこなし、小さなことから習慣にすることで、習慣化の感覚を体に覚えさせましょう。
<行動計画への質問例>
「目標を達成するために具体的に何をすべきか?」「いつ、どこで、どのように行動するか?」「障壁になりそうな点は何か?」など、実行可能な計画を立てるための質問を投げかけましょう。
Step3. 日々の振り返りと修正
習慣化に向けた行動を開始したら、毎日の振り返りが重要になってきます。
「今日はうまくいったか?」「どこに課題があったか?」と自問し、気づいた点を行動に反映させていく必要があります。
もし、プランとの差異が大きければ、容赦なく計画の修正を検討します。
大事なので繰り返しますが、毎日5km走ることを1週間続けた人と、毎日ランニングウェアに着替えることを1ヶ月続けた人では、どちらが習慣化に成功したと言えるでしょうか?
もし「続けるのがしんどいな・・・」と感じたのであれば、「どこまでだったらできる?」「どうすればできるようになる?」といった質問を自分に投げかけていきましょう。
地味な作業ですが、振り返りを怠ると、対策を立てる前にやめてしまうこともあるので注意が必要です。
<振り返りへの質問例>
「今日の行動でうまくいった点は?」「課題だった点は何か?」「なぜそうなったと思うか?」「次はどう改善すべきか?」と、毎日の振り返りを行い、気づいた点を次の行動に活かしていきます。
Step4. 小さな成功を積み重ねる
習慣化が苦手な人は、とにかく大きな結果を求めようとします。
そのため、目の前にある小さな成功に気づくことができません。
1日の終わりには「今日は○○ができた!」と自分を褒め、達成感を味わうことが何より大切です。
この際はセルフコーチングで「今日の小さな成功は何か?」と自問自答するようにすれば、脳が成功したことに意識を向けて勝手に探してくれるでしょう。
ポイントは「気分良く小さな成功を受け入れること」です。
Step5. 定期的に結果を評価する
一定期間が経過したら、習慣化の進捗状況を総合的に評価することをおすすめします。
「この習慣は目標達成に役立っているか?」「もっと効率的な方法はないか?」など、メタ的な視点から検証し、必要に応じて軌道修正を図ります。
この際も、自問自答を活用して課題や改善点を見つけ出し、次のアクションにつなげていくとよいでしょう。
習慣が身につくということは、つまり脳の現状維持が始まったというサインでもあります。
ある程度、習慣化を感じることができたら、あえて少しハードルを上げて成長を促すことも重要です。
そのために定期的な評価が効果的なのです。
<評価のための質問例>
「期待した成果が得られているか?」「習慣を定着させるために、さらにどんな工夫が必要か?」「習慣を軌道修正する必要はあるか?その場合の具体的なプランは?」など、少し自分に厳しく投げかけてみます。
このように、目標設定から実行、振り返り、維持に至るまで、場面に応じた質問を投げかけることで、自らを深くコーチングでき、習慣化を着実に進めることができます。
3日坊主にならない!習慣継続のコツ
セルフコーチングによる習慣化の流れが分かったところで、習慣継続に役立つ具体的なコツもご紹介しておきましょう。
1.やる気を保つ小さな工夫
習慣化は脳との戦いであり、簡単ではありません。
しかし、わずかな工夫をするだけで継続しやすくなります。
例えば、毎朝目に付く場所に習慣を書いた紙を置いておくことで、意識づけがしやすくなります。
スマホのアラート機能を使って、毎日決まった時間に通知を知らせるようにしても良いでしょう。
2.自分へのご褒美を活用する
やる気が出ない時こそ、自分に対して適切な報酬を設定することが重要です。
習慣を実行した日には、小さな喜びを味わうなどの報酬を用意しておくとよいでしょう。
報酬は個人によって違いますが、例えばお気に入りの食べ物を用意したり、リフレッシュできる時間を確保したりするのが一般的です。
シンプルな方法ですが、実は脳の報酬システムを活用するという意味では、理にかなった行動と言えます。
その際は、やり過ぎて習慣化のメリットを打ち消すようなことがないようご注意を・・・。
3.周りの人の力を借りる
ここまできても、どうしても習慣が身につかない場合は、 周りの人の協力を得ましょう。
例えば、家族や友人、同僚に習慣化の目標を共有して応援をもらっても良いですし、SNSで複数の人たちに向けて公言しても良いですね(昔、SNS上で1日ごとの目標と成果を毎日投稿している人がいましたが、その方は日が経つにつれて応援者が増えてましたね)。
さらに、お互いに習慣化を競う仲間をつくれば、刺激し合えるメリットもあります。
このように、小さな工夫や報酬の設定、周りの協力などを組み合わせることで、3日坊主にならずに習慣を持続できるはずです。
まとめ:習慣化を促進させる小さな一歩
さて、今回は「習慣化×セルフコーチング」についてお伝えしましたが、いかがだったでしょうか?
習慣化への道のりはラクではありませんが、セルフコーチングを活用することで、着実に前進することができます。
まずは脳の仕組みを理解して、自分のせいではない!と開き直りましょう。
その上で、解説した5つのステップを踏みながら、質問力を磨き、自問自答を繰り返せば、新しい習慣を確実に身に付けることができるでしょう。
特に重要なのは、目標設定から行動計画、実行、振り返り、修正へと一連の流れを確実にこなすことです。
加えて、3日坊主にならないためのコツも活用してくださいね。
ちなみに、私は比較的習慣化が得意な方ではあるのですが、その経験上から「習慣が増える感覚を体験すること」が非常に重要だと考えています。
だからこそ、誰にも言えないような小さな習慣から始めることを強くオススメします。
1つ習慣が増えると、過程を知っている分だけ2つ目の習慣化がラクになりますので、是非最初の習慣化を徹底してください。
その体験が、職場の同僚や部下、これからあなたが関わるであろう多くの方々に対しても、とても大きな価値となっていくはずです。
応援しています!