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ジェンダーギャップの現状
(本記事は2024年12月公開のものを一部変更し再公開したものです。)
春先、国際女性デーがある時期には、毎年男女共同参画に関するイベントが国内外で多数行われ、特集記事がたくさん組まれていました。
今年は私もいくつかのイベントに参加させていただく機会を得、このテーマへの関心の高さが広く社会に反映されている状況を目の当たりにしてきました。
どちらでも、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数が取り上げられていて、日本は世界146カ国中で総合118位 (2024年発表)、昨年より7位ランクアップしましたが、それでもまだまだ最下位グループで落ち着いています。
また、エコノミスト誌のOECD(経済協力開発機構)29カ国のランキングも併せて紹介されていました。
エコノミスト誌はジェンダーギャップを “キャリアアップを阻む「見えない障壁/天井」”という意味で、「Glass Ceiling – ガラスの天井」と表現しています。

これは2016年からの変化を左から右へあらわしたものです。
青で示されている上位はヨーロッパ諸国が占めていますが、ハンガリーの様に急落している国もあります。
意外に思われる方もいらっしゃると思いますが、アメリカも22位で赤線で示されています。
2016年には日本は28位、2023年にはわずかに上昇して27位になっています。
この様に、日本に関しては残念なデータが多いものの、今回いくつかのイベントに参加し、実際にキャリアを持って働いていらっしゃる女性の方々の現場の空気感や制度、御夫婦の役割などのお話をお聞きする機会を得て、私は日本の社会の明るい変化を実感してきました。
ちょっとこれまでの男女参画の動きを整理してみました。

まずは1985年に男女雇用機会均等法・労働者派遣法・国連女性差別撤廃条約が批准されました。
私はこの時代にはアメリカで過ごしていましたが、私の日本の同級生達はみな男女雇用機会均等法が施行された年に就職していて、総合職第一期も大勢いました。
ただ、この時代の女子総合職は、一部理工系の職種を除き、結婚・出産をきっかけに退職した、若しくは退職せざるを得なかった人たちがほとんどでした。
それが、1990年代に示されている「出産後の就労継続が困難な時代」に表現されています。
2000年に入ると女性の生き方が多様化し、女性未婚率や共働き世帯が増加し、2010年ごろまでには産休・育休・時短 両立支援制度が導入されてきました。
2010年代には、共働きが定着したものの、ワーキングママと未婚女性との間に不公平感が生じたり、「保育園落ちた日本死ね」のような社会現象が出てきました。
そして、2015年には女性活躍推進法が成立し、仕事と家庭を両立しながら能力を発揮できるように、男性も家庭生活に積極的に参画する様に促したり、マミートラックを解消しようなどと提言され、徐々に意識改革が行われてきました。
そして2020年代に入るとコロナ禍によって、リモートワークが一般的になりました。
その後、2022年に育児休業制度改正で産後パパの育休が開始され、2023年に女性版骨太の方針が設定されました。
この骨太の方針の柱は4つあります。

- 企業等における女性活躍の一層の推進
- 女性の所得向上・経済的自立にむけた取り組みの一層の推進
- 個人の尊厳と安心・安全が守られる社会の実現
- 女性活躍・男女共同参画の取り組みの一層の加速化
この中でも「2023年3月期の有価証券報告書から、上場企業は、女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金差異を公表することが義務付けられた事がかなり大きく影響を及ぼした」、と私が直接お話した女性が口々におっしゃっていました。

これはプライスウォーターハウスクーパースのデータです。左側の開示項目の開示率が右側にあります。
2022年12月期にこの3指標すべてを開示した企業は11社だったのですが、2023年3月期から有価証券報告書に開示することが義務付けられた結果、2023年3月期には811社が開示しています。
私がお話した女性は、口々にこの情報開示義務で、会社が変わったと仰っていました。
かといってすぐに管理職が増えたりする訳ではないのですが、この数字の改善に向けた施策が話題にのぼり、対策を講じられるようになったとお話していました。
女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金差異が公表される事によって、企業の価値として公に認知され、真剣に、そして積極的に取り組むようになったといえるでしょう。
女性の活躍推進を日本企業で達成するには
それでは、実際に日本企業が女性の活躍推進を実現するためには何が必要なのか、ボストンコンサルティンググループ(以下BCG)の分析レポートをご紹介したいと思います。
このレポートでは、まず日本で女性の活躍に障害となる3つのステージを分析しています。
1. 家庭や学校における男女別の役割の固定概念の植え付け
2. 総合職候補となり得る上位大学での女子学生の少なさ
(日本の上位大学における女性比率は約20~35%、理系学部においては約15~25%だが、欧米の上位大学では学部を問わず男女比はほぼ半々である)
3. 仕事と家庭のバランスを取ることが困難な上、労働市場が流動性に乏しい為にキャリアを中断すると復帰が困難
確かに、日本では幼い頃から「男の子だから~」「女の子だから~」と言われて育ってきています。
「女子は理系に弱くて当たり前」「女子の高学歴は敬遠される」など、現代でも我々の潜在感覚に根付いているのではないでしょうか。
ただ、かなり伝統的に凝り固まった男女の概念ではあると思いますが、(アメリカで40年過ごした視点では、その根強さにかなり驚かされていますが)少しずつ社会が変化をしている、もしくは、変化しなければいけないという認識が進んでいる事は確かではないかと思います。
ここでは、組織の経営者、人事担当者として組織内でいかに改善していくかという事にフォーカスして、BCGが提言する女性の活躍推進を日本企業で達成する4つのステップをご紹介したいと思います。

女性活躍推進の4つのステップ
① 女性の活躍推進の本質的な必要性を理解し、経営トップ主導で取り組む
BCGのレポートでは、女性の活躍推進は、時代の流れという側面だけではなく、CSR(企業の社会的責任)を果たすためにも行われるべきだ、と提言されています。
そして、このような取り組みは、「経営トップが女性の活躍とビジネスの目標の関係に納得し、自らリーダーシップを発揮し、そして組織全体に明確に伝えることで成功の可能性が高くなる。」と分析されています。
ダイバーシティに関する取り組みをCEO直轄の経営課題に設定し、経営陣が人事部に代わって主導権を取る事が大切だと書かれています。
経営トップ主導で経営課題に設定した上で、人事部は各プログラムの運営を担うように役割分担することで、成功率が上がると報告されています。
② 本当に必要な施策を抽出し、効果を最大化する。
女性の活躍を推進するためには、休暇制度や勤務体系といった、各種の具体的な施策の導入が必須なのですが、実際にどのような取り組み・施策が役に立つか については、男女で認識に大きなギャップがあると書かれています。
こちらの図、左側が女性マネージャーが有益だと思う取り組み、そして右がほぼ男性が占めているシニアマネージャーの考えが書かれています。

日本の女性マネージャーが有効と考える取り組みのトップ3は 、「時短勤務が可能」「法律で定めらている以上の育児休暇を取ることができる」「柔軟な勤務時間と勤務場所」となって いるのですが、男性が大半を占める経営幹部層の回答を見る と、これらの取り組みは有効と思う施策の上位にあがっていません。
本当に機能する有効な施策を実行するためには、女性従業員の意見によく耳を傾け、真のニーズをつかむことが重要であり、これらのニーズに応じた制度やプログラムを効果的に組み込む必要がある、と書かれています。

この表は女性リーダーと男性リーダーが考える施策の有効性を分類したものです。
左上にある「隠れた宝」と表現されている箇所には女性が高く評価しているにもかかわらず、男性シニアリーダーが効果を過小評価している具体的な施策が書かれています。
これによりますと、隠れた宝とされる施策には
- 育児休暇から復職した時、海外ポジションに挑戦する時など、「決定的な瞬間」に適切なコミュニケーションをする
- 採用、評価、昇格の意思決定などにおける無意識のバイアスに注意する
- 社内の女性リーダー・ロールモデルの姿の見える化・発信につとめる
- 組織内外の女性ネットワーク構築を支援
- 人材マネジメントプログラムやエグゼクティブコーチングなど、専門的能力の開発プログラムを提供する
- 男性従業員を女性活躍推進の取り組みに巻き込む。
この様な施策が挙げられています。
思い込みや前例などで判断せずに、女性リーダーとコミュニケーションを取りながら、管理職を育てていく御社独自の施策を作り上げていく事が大切だという事なのです。

また、「女性公務員のリアル」という本を書かれた川崎市職員の佐藤直子さんという方は、男性は若い頃からスキル形成業務を経験していたものの、女性は重要な部署とはされていない業務に就いている場合が多く、管理職という立場になった時の男女の経歴差があると述べています。
勤続年数は同じでも、男女での「経歴差」が女性の昇進を阻んでいる為、早い段階から、男女のギャップなく管理職を養成していく計画をたてる必要性があると警鐘を鳴らしています。
③ 男女区別なく、社員のマインドを刷新する
BCGのレポートでは、女性の活躍推進のジェンダーギャップを、旧来の日本の文化的な側面 のみから画一的にとらえるのでは、問題を単純化してしまっていると述べられています。
これもコミュニケーションが鍵をにぎる大切なポイントです。
女性職員ばかりでなく、育児に直面している男性がどの様な葛藤を抱えているかを話合う機会が大切だという事なのです。
性別に対する偏った考え方を変えるためには、全社員に対して継続的なトレーニングやサポートを提供する必要がある、としています。
こちらは男性の家事サポートの時間数とWEF(世界経済フォーラム)のジェンダーギャップ順位の相関関係を示した表です。縦軸が男性が家事に費やす時間、横軸がジェンダーギャップの順位になっています。

ご覧のとおり、ジェンダーギャップの少ない、トップの国々の男性が家事に費やす時間は、ほぼ一日100分以上となっていて、明らかな相関関係が確認できます。

こちらはアエラに掲載されていた日本の全国家庭動向調査です。
2008年と2022年の女性の意識を比較しているのですが、女性側もいまだに強固な性別役割分業意識を持っているのがお分かりになると思います。
日本の風土で専業主婦の母親に育てられた年代では、ジェンダーの意識は急激に変わるものではないと言う事でしょう。
さすがに「結婚後は専業主婦に専念すべきだ」の賛成派は減っていますが、「夫は会社の仕事と家庭の用事が重なった時は会社の仕事を優先すべきだ」「子供が3歳位までは母親は仕事を持たずに育児に専念した方が良い」という考え方は、女性の中に今なお根強く支持されています。
この意識が、本人の意識内に留められていれば良いのですが、家族や友人、周囲からの見えないプレッシャーとなり、子供を預けながら働く女性が罪悪感を感じない様に、周囲が配慮する必要があるのではないかと思います。
一方、冒頭にもお伝えしましたように、社会は2022年を境に大きく変わってきました。
男性の育休取得率と取得日数は2023年、爆発的に増えました。多くの企業が女性版骨太の方針に大きく反応したといえるでしょう。メディアでも女性活躍推進のPRが多く目にするようになりました。

みずほ銀行が東京都とコラボして東洋経済に出した記事の中でCEOの秋田氏が次のように語っています。
- 金融業界の男性の育業(育児休業)取得日数は、全体的に短い傾向がある。
- 出産の前後で取得できる配偶者出産休暇と育業を合わせた取得日数の平均が6日で、有給休暇と併用する人も多い。
- 10日間を超えて育業している従業員は9%
- 育業と配偶者出産休暇で10日間の取得率100%を達成するのが目標。
- 1カ月以上育業した従業員は2020年は5人だったのが、22年には32人になった。その中に管理職がいたことで、育業しやすい雰囲気も生まれてきた。
- 「従業員アンケートで、男性社員の8割が『育業したい』と回答していて、『1カ月以上育業したい』という声も6割に。
「制度を整えるだけでは何も変わらない。企業は、誰がどんな困り事を持ち、どんなサポートを必要としているのかに耳を傾け続け、前例にとらわれずフレキシブルに手を打っていく。」ここでもコミュニケーションの重要さが説かれています。

セミナーでお会いした都銀勤務の女性は、女性総合職の離職を防ぐために、女子総合職の転勤を首都圏で通勤できるエリア内に留める様、便宜をはかってくれていると仰っていました。
もう一つ、森永乳業の例です。

- 5年前までは育業取得率10%台だったが、2022年度は女性113.6%男性90.5%だった。日本企業の平均(女性80.2%・男性17.13%)と比べて非常に高く、特に男性の取得率が高い。
- 2022年産後パパ育休を「100%有給」として導入。
- 男性の育業取得率は100%となり、その多くが最大の28日間。
- 「育業しやすい風土」作りの為、管理職に対してダイバーシティーマネジメント研修を実施。アンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)の払拭や、ケーススタディーを通した育業への理解度の向上を目指し、D&I(ダイバーシティ・アンド・インクルージョン)や教育機会の拡充を推進。
- 「子育てサポートセミナー」を実施し、育児と仕事を両立させるためのナレッジを伝えている。
育業を入り口に、D&Iに対して当事者意識を持って向き合う空気が社内で流れ始めているばかりでなく、育業を推進することで、『企業価値の向上』につながる、と述べられています。
そして、すべての社員にとって有益な環境をつくるための 「働き方改革」を実施し、各従業員がその能力を十分に発揮できる職場になれば、生産性ばかりでなく企業価値はいっそう高まる、という明確な方針を打ち出しています。
日本企業では、育児休暇など、高い効果が期待される制度が導入されているにもかかわらず、施策によっては 利用率が極めて低く、実際には機能していないケースもあります。
このようなことが起こるのは、経営層が制度の活用を十分に奨励していないというのが理由の一つ であると、BCGは分析しています 。
これを解消したのが、森永乳業の産後パパ育休を「100%有給」として導入した本気の示し方だったのではないかと思います。
経営層は、制度があることを伝えるだけでなく、 実際に経営層が利用することを真摯に推奨し、自らもこれらの制度を活用する事によって、効果は高まるだろうとしています。
すべての社員にとって有益な環境を
「すべての社員にとって有益な環境」という表現がありましたが、ここで、以前ご紹介したギフティッド人材の活用の仕方の方法を改めてお伝えしたいと思います。
ギフティッド人材を最大活用するためには、
- フレックス就業時間
- リモート勤務
- ナップタイム
- 個別のニーズに応じた物理的な職場環境
- OKR(目標設定や目標管理の手法)などタスク重視の就労管理
- メンタルサポートの充実(EAP従業員支援プログラム)
この様に、個々のニーズに応じた対応が大切だとお話しました。
ジェンダーギャップ解消に取り組む企業は、「すべての社員にとって有益な環境」を作りだすことによって、同時に多様な人材の採用とマネジメントも可能にするという事なのです。

BCGのレポートには次のようにまとめられています。
「多様性に富む職場は、あらゆる人(男性にも女性にも)や企業、そして経済全体に恩恵をもたらすものである。
女性の活躍に真剣に取り組む企業は競争優位性を 得ることができる。
前述の4つのステップに示したような推進プログ ラムを実施できない組織は、今後ますます人材の獲得・ リテンションが難しくなる。
特にワークライフバランスと ダイバーシティを当然のものとする価値観を持つ若い世代の人材を惹きつけられなくなる可能性が高い。
女性活躍推進の取り組みを、全社的な構造改革を行う時と同様の厳格さで進めることが必要だ。
すなわち、 自社組織内の男女格差の真因をさぐり、必要な打ち手 を特定し、進捗を確かめながら進める。
役に立たない 施策は断固として切り捨て、小さなことにも目を配りながら、徹底して実行するのだ。」
女性の活躍の優位性が、企業価値として認められる時代になってきました。
是非とも社内でコミュニケーションをとりながら、男女ともに仕事と家庭を両立できる様に、全ての社員に有益な環境や働き方改革の施策を作り、経営陣自らが制度を利用、実践し、御社独自の推進方法を開拓していって頂きたいと思います。
経営人事パートナーズでは、女性の活躍推進のための「キャリアアップ・セミナー」などの他、女性社員のキャリア構築に並走してエンパワメントを支えるキャリアコーチングを行っています。
私は40年にも及ぶアメリカでの生活を終え、3年前に帰国しました。
女性の活躍のみならず、グローバルな視点から女性のエンパワーメントをお手伝いさせて頂いています。お気軽にご相談ください。
