「今の仕事にやりがいを感じません。どうしたら、やりがいのある仕事を見つけることが出来ますか?」
これは、私がコーチングを行う中で、非常によく聞かれる質問です。
そんな時、私が決まって確認することがあります。
それは「今の仕事にやりがいを見出す、具体的な方法を考えたことはありますか?」です。
なぜなら「やりがい」という言葉を使う方の多くは「やりがいを職種そのものに求めてしまっている」傾向にあるからです。
昨今では「好きを仕事にしよう!」というメッセージが、社会的にかなり広まっていますよね。
私もこの考え方には賛成です。
確かに「好きで、やりがいのある仕事をしたい!」という欲求はとても大切なことであり、突き詰めていくべきテーマだと思います。
しかしその反面で、本当のやりがいとは「やりがいを意図的に生み出せる能力」の先にあると思っています。
「卵が先か?鶏が先か?」のような話ですが、少なくとも「やりがい=職種」という固定観念があると、どんな仕事に就いても理想の結果は得づらいものです。(それで転職を繰り返す人を沢山見てきました)
「じゃあ、一体どうしたら良いんだ!」という言葉が聞こえてきそうですね。
結論として、私が今回オススメするのは「社内で自分の役割を“確立させる”こと」です。
今回はそんな「社内における役割」をテーマに、
- 仕事にやりがいを見出す方法
- 人から求められるポジションを得る方法
- 影響力を発揮できる存在になる方法
についてお伝えします。
あなたはいま、社内において役割と呼べるものを持っているでしょうか?
役割とは単に仕事上の地位だけでなく、個人のキャラクター、専門性、影響力という意味です。
もし、現時点で答えに迷っているようであれば、是非続きを読んでみてください。
好きな事をしている時、何が起きているか?
もし、あなたが好きな事をしている時と同じ感覚を、今の仕事で得ることができるとしたら、どう感じるでしょうか?
とても心地よく、前向きで、生産的に仕事ができそうだと感じるのではないでしょうか。
でもだからと言って、いきなり好きな仕事を探すのは少しお待ちください。
ここで大切なのは「好きな事をしている時に、あなたに一体何が起きているか?」です。
ちなみに、あなたが好きな事をしている時、あなたの身体や感情はどうなっていますか?
例えば
- 気づけばご飯も食べずに夜まで没頭していた
- 他人の評価が気にならない
- 難しい事でもどんどん頭に入ってくる
といった状態になっているのではないでしょうか?
『フロー体験:喜びの現象学』の著者であり、ハンガリーの心理学者であるミハイ・チクセントミハイ博士は、この状態を「フロー」と名づけました。
<フローとは?>
フロー(英: flow)とは、人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう。
引用:Wikipediaより
もし、あなたがスポーツに馴染みがあれば「ゾーン」と呼んでも良いと思います。
好きな事をしている時、真に注目すべきなのは「何をしているか?」ではなく、この「フロー状態に入っているかどうか?」なんですね。
フロー状態だからこそ、心地よいし、前向きになれるし、生産的に物事をこなせる、と言えるからです。
あなたも今の仕事において、フローに入った(もしくは入りかけた)ことで、集中力が発揮できた経験があるのではないでしょうか?
ちなみに「やりがい」という言葉については、以下のように説明されています。
<やりがいとは?>
事に当たる際の充足感や手応え、張り合い。
引用:Weblio辞書
フロー状態とやりがいには、密接な関係がありそうですね。
そう考えると「仕事にやりがいを感じるためには、フロー状態を目指せばよい」という視点を持つことができます。
意図的にフローに入る方法
では、フロー状態に入るには、一体どうしたら良いのでしょうか?
ミハイ博士は、フロー状態に入るための必要条件を、以下のように提示しています。
- 何をすべきか、どうやってすべきか理解している
- 日頃の現実から離れたような、忘我を感じている
- ただちにフィードバックが得られる
- 活動が易しすぎず、難しすぎないような、能力の水準と難易度とのバランスが適度にとれている
- その場を支配している感覚。自分が有能である感覚を持っている
- 活動に本質的な価値がある、だから活動が苦にならない。
- 自分はもっと大きな何かの一部であると感じる
これらの条件は全て満たす必要はなく「いくつかが同時に得られれば良い」とされています。
その上で、私がオススメしているのが以下の3点です。
- 1.何をすべきか、どうやってすべきか理解している
- 3.ただちにフィードバックが得られる
- 4.活動が易しすぎず、難しすぎないような、能力の水準と難易度とのバランスが適度にとれている
もう少し補足しておきます。
<何をすべきか、どうやってすべきか理解している>
これはそのまま、目の前の業務について、内容とやり方を明確にしているか?です。
あなたは新しい仕事を行う時、いつも何から取りかかりますか?
もし、意図もなく「とりあえず手を動かしてみる」であれば、少しやり方を変えても良さそうです。
例えば、作業を行う前に
- なぜ作業を行うのか?目的を理解する。
- どうなったら成功なのか?着地点を明確にする。
- 全体像において、自分がどの役割を担うのか?を明確にする。
- 行き詰まった場合は、解決方法を誰に尋ねれば良いか?を明確にする。
- 目的達成までのプロセスを、5〜10段階ほどに細分化する。
といった具合です。
ちなみに私も、この記事を書く際には「何を伝えたいのか?」「読んで頂く方にどうなって欲しいのか?」から始まり、全体の文章構成、見出し設定、内容執筆、推敲・・・とステップに分けています。
このような事前準備を行うだけで、作業に対する認識と集中力が随分と変わります。
<ただちにフィードバックが得られる>
次に重要なのが、フィードバック(何かしらの反応)です。
例えば、あなたが精一杯行った業務を上司に報告した際に「あ、メールで送っておいて」と言われたまま、何週間もリアクションが無かったら、どう感じるでしょうか?
どれだけ好きな事であったとしても、誰からも何の反応もない状態では、いつかモチベーションは下がるでしょう。
であれば、自らフィードバックが発生する環境を整える必要があります。
- あなたがフィードバックをもらうべき相手は誰(上司・同僚・顧客)でしょうか?
- どんな形(対面・メールなどのテキスト)でフィードバックを貰うのが望ましいですか?
- どんな粒度(大まかになのか、詳細になのか)で伝えて欲しいですか?
もちろん、フィードバックを依頼する相手の都合がありますので、思い通りのフィードバックが貰えるとは限りません。
こういった環境を自ら望み、整える意識が、フロー状態を目指す上で大切と言えます。
<活動が易しすぎず、難しすぎないような、能力の水準と難易度とのバランスが適度にとれている>
これはつまり「丁度良い難易度の作業にチャレンジしていると、フローに入りやすいよ」という意味です。
例えば、自分の能力が低い状態で、難易度の高い仕事が与えられると、どう感じますか?
逆に自分の能力が高い状態で、難易度が低い仕事を担当したらどうでしょう?
前者は不安が優先してしまいますし、後者は充実感や手応えを感じることが出来ないですよね。
どちらもフローに入ることが出来ず、やりがいも感じないわけです。
あなたが仕事でやりがいを感じるには、自分に丁度良い難易度の仕事を、積極的に得る必要があります。
以上が、フロー状態に入るために意識したい3つのポイントです。
では、これら3つのポイントをクリアし、自分の欲しい環境を手に入れるにはどうしたら良いでしょうか?
今回はその具体的な方法を、5ステップに分けてお伝えします。
欲しい物を手に入れるための5ステップ
結論、あなたが欲しい物を手に入れるための最短の方法は「まず自分が差し出せるものを明確にすること」です。
ほんのわずかなアピールが足りないばかりに、適正な評価が得られず、本来であればすぐに手に入る物も手に入れることができない・・・という方は本当に沢山います。
そんな状況に陥らないよう、ここでは自分が差し出せる物を明確にし、欲しい物を手に入れるための道のりを伝えします。
ステップ1.求められているスキル・人物像を確認する
これもよくあるケースなのですが、自分が欲しいと思う物がある時、多くの人は「どうすればそれが手に入るのか?」を詳細まで確認しようとしません。
あなたがイーロン・マスクにように、宇宙へ行こうとしているなら話は別ですが、仕事に関してはもっと簡単ですよね。
あなたが差し出せるものを、提示すべき相手は誰ですか?
特定の仕事、役職、環境を得るために、決まった条件があるはずですので、まずは然るべき相手に確認してみてください。
もし、その過程で特定の役職に就くつもりがなかったとしても、独自の役割を担うことは可能です。
いずれにせよ、そのためには
- 社内で何が求められているのか?
- 会社は、上司は、同僚は、顧客は何に困っているか?
- もし「〇〇があればもっと仕事がしやすくなるのに!」があるとしたら、それは何か?
を考える必要があります。
このようなリサーチができるだけでも、求められている人物にグッと近づくことが出来るはずです。
ステップ2.自分の強みと得意なスキルを分析する
あなたが、自分の欲しい物の代わりに「これが出来ます!」と、差し出せるものは何でしょうか?
これは、あなたの強みでありスキルです。
そんな話をすると「私には特別な強みも、スキルもありません・・・」とおっしゃる方がいますが、少なくとも私が知る限り、これが本当だったことはありません。
誰にでも、必ず強みがあります。
それを理解するために、以下の質問に答えてみてください。
- 気づけば時間を忘れるほど、没頭している事は何ですか?
- これまでに、お金と時間を費やした事は何ですか?
- 他の人から「なぜ、そんなことが出来るの?」と言われる事は何ですか?
- 他の人が出来ないと、イライラする事は何ですか?
- これまでピンチを乗り越えた時、無意識にやっていた事は何ですか?
ここで得られた答えは、間違いなくあなたの強みです
自分の強みが分かったら「私が出来る事はこれです!」と、胸を張って周りに提示してください。
ちなみに、提示する前から「こんな事は、なんの役にも立たない」と自ら判断を下してしまう方がいます。
しかし、唯一その判断が出来るのは「相手だけ」です。
相手がOK!と言えばOKですし、NG!と言えばNGです。
もし仮にNGだったとしても、それは現段階における結果に過ぎません。
欲しいものを得るために、今の強みだけでは不十分だとしても「じゃあ、何があればOKなのか?」を追求してみましょう。
結果として、その基準が「丁度良い難易度の作業」として機能し、あなたがフローに入るきっかけになるかもしれません。
ステップ3.「〇〇ならあなた!」を目指す
もし今すぐ欲しいものが手に入らなくても、全く問題ありません。
その場合は「いま出来る事」を考えてみてください。
例えば、あなたが人の話を聞くことが得意だとします。
であれば「他の誰よりも人の話を聞く!」を徹底してみてはどうでしょうか?
同僚から「困ったら〇〇さんに相談してみなよ。親身に話を聞いてくれるから。」と言われるような存在になれたら、どんな気分になりそうですか?
もし、整理整頓することが得意なのであれば、社内で整頓されていない場所(オフィスだけではなく、PCの中身まで)を徹底的に整理してみて下さい。
最終的には、業務効率を上げるためのマニュアル整備や、人材管理に携わることになるかもしれません。
このように、いまこの瞬間から「〇〇に関してはあなた!」と言われるようなポジションを目指すことができます。
ステップ4.スキル・経験を磨く
今の自分に出来る事を確実に遂行しながら、本来の得たい目的も忘れないでください。
安定した成果を出すべき仕事においては、いまできる事を淡々と行う必要があります。
しかし、これから新しくチャレンジする事には、多少の背伸びも必要です。
自分を成長させ、理想の目的を達成するために、必要なスキルや経験は何でしょうか?
新しいスキル獲得を目指す際には、必ず「既にそのスキルを持っている人」の話を聞いて下さい。
スキルを得るために「何が必要で、何が不要なのか?」や「スキルのメリット・デメリット」を確認しておくことで、自分のすべきことを明確にすることが出来ます。
ステップ5.応援される人になる
最後のステップは「人間性について」です。
最終的に人の心を動かすのは「優秀な人」でも「権威のある人」でもなく「人間的な魅力のある人」です。
もちろん、仕事においてスキルや経験は必要です。
しかし、多少欠点があったとしても「それも〇〇さんの良いところだよね!」という評価を得ることができたら、とてもラクに立ち回れると思いませんか?
そのためには、まずは自分で自分のことを理解し、人から応援される人間になることが必要です。
あなたが、つい応援したくなる人はどんな人でしょうか?
例えば、プレゼンすることが苦手で、口下手ではあるけれど「事前のリサーチに関しては誰よりも的確に調べている人」はどうでしょうか?
言い方が厳しくなりがちで、周りから誤解されやすいけれど「本当は誰よりもアツイ想いを持っている人」をどう思いますか?
自分が応援したくなる人は、自分もそうなれる可能性がある人です。
まずは、自分が応援したくなる人を目指してみて下さい。
以上が欲しい物を得るための5ステップです。
恐らく、このステップを全てこなせる人はあまり多くありません。
だからこそ、これらが意図的に出来る人は、どんな仕事に就いたとしても他人から求められる人になれるでしょう。
まとめ:仕事にやりがいは必要か?
今回は「仕事のやりがい」をテーマにしましたが、いかがでしたでしょうか?
中には「仕事にやりがいなんて必要ない!」とおっしゃる方もいますが、私はそうは思いません。
なぜなら、これまでお伝えした通り、やりがいを見出すことは人生を豊かにする能力の一環だからです。
やりがいは偶然見つかるものではなく、必要なプロセスの先にあるものだと私は考えています。
もし、あなたが「やりがいのある仕事を探したい」と思っていたら、まずは少しでも良いので、今回の内容を実践することから始めてみてください。
転職を決断するまえに、きっと新しい気づきが得られるはずです。