骨折をして分かったこと ~AIから治療法まで~

年明けに利き手である右手首を骨折しました。
ケガによって視点や価値観が変わったことから得られた気づきをみなさんと共有します。

はじめに

健康でいられることって本当に幸せなことだと実感しています。
 
年明けに運動中の事故で利き手である右手首を骨折しました。
 
しかし、右手を自由に動かせないことによって、今まで気にも留めなかったことにたくさん気づくことができましたのは、意外な発見でした。
 
体の一部が動かせない状況に陥ったことにより、自分の価値観や視点が変わったことによるものなのだと思います。
 
こんな経験はもう二度とないでしょう(と思いたい)から、記録に残し、この経験をたくさんの方と共有したいと考えました。
 

骨折する1秒前のスローモーション

それは本当に不思議でした。高いところから落ちている途中の映像が全てスローモーションだったのです。
 
おそらく体勢を崩してから、右手首で自分の体重を受け止めるまで、ものの数秒。
 
「あれ、私、手のひらを地面につこうとしている!このままだと手首は骨折する…どうしよう。でも、今から体勢を変えようとして失敗したら、肩か首、下手したら頭を強打するかもな…それなら、このまま手首に犠牲になってもらおう」とスローモーションで自分の手のひらを見ながら、冷静に頭の中で考えていました。
 
この現象は「タキサイキア現象」と呼ばれ、千葉大学の実験でも証明されています。
 
感情反応によって視覚の時間精度が上がり、平常時より情報を早く処理できるそうです。
 
どうやら命の危険を感じたときなどに、なんとか生存しようとするために起きる現象なのだとか。
 
ただし、アスリートは自分の気持ちの持っていき方ひとつで同じ現象を起こせるようで、相手のプレーがスローモーションに見えるのだそうですよ。
 
これが俗に言う「ゾーンに入った状態」だそうです。人間の脳ってすごいですよね。
 

心臓外科医の診断

はたして、1秒後「ポキ」っとキットカットを割ったときのような乾いた音がしました。
 
手首に激痛が走って5秒ほど、その場にうずくまっていたでしょうか。
 
社会人2年目の理学療法士と看護学校に入学する高校3年生の姉妹が「もしかしたら骨折しているかもしれないから、ズレないように簡単に処置します」と雑誌とスズランテープで簡易ギプスをつくり固定してくれました。
 
受傷したのは19時過ぎ。しかも田舎町なので救急を受け入れてくれる病院は1か所のみ。
 
当直は心臓外科の先生でしたが、レントゲンを一瞥して「骨折してるね。でもズレがないから、たぶん、手術は必要ないよ。明日、専門医に診てもらってね」。
 
わが町には翌日に開いている整形外科がなかったため、片道80km離れている病院に行き、全治2ヵ月の「右とう骨遠位端骨折」であると確定診断が下りました。
 
心臓外科の先生のお見立てどおり、手術はせずに保存療法で治療することになりました。
 
 

そうだ、音声入力を使おう!

さて、ここから問題になるのが仕事をどうするかです。
 
ギプスで固定するとなるとタイプは可能なのか。
 
先生に聞いてみると「ギプスをつけてみて、できるかどうか、なんだよねえ」。
 
患部固定に使用したのは水との化学反応で固くなる素材を使っている「ギプスシーネ」と呼ばれるもので、取り外し可能なものでした。
 
早速、家に帰って両手でタイプをしてみると不可能ではないのですが、右の肘と肩の関節に相当な負担がかかりそうでした。
 
しばらくは、左手と右手のこぶしを握った小指の側面を使ってタイプしていましたが、やはり少し窮屈です。
 
そこで、やっと思いつきました。
 
そうだ、音声入力を使ってみよう!
 
少し前までは精度が十分と思えずに使わなくなっていたのですが、ここ1年での生成AIの進歩を考えたら、音声入力もかなりの速度で改善が進んでいるはずです。
 
音声入力での記事執筆に挑戦してみることにしました。
 

Googleドキュメント vs Windows11

記事の執筆にはGoogleドキュメントを使うことが多いので、まずはGoogleドキュメントの音声入力を試してみました。
 
Googleドキュメントの音声入力は「ツール>音声入力」または「Ctrl+Shift+S」で立ちあげます。
 
マイク部分をクリックして赤くなったら話します。
 
Googleドキュメントの音声入力では、単語と単語の間に少しだけ間を空けてしまうと、そこに半角のスペースが入る仕様になっています。
 
これは、メモや議事録を作成するときには便利な仕様かもしれません。
 
ただ、間を空けないように気をつけて音声入力をしても、同じところにスペースを入れられてしまうことがあり、このスペース削除には少し時間がとられました。
 
漢字の変換間違いも他の音声入力サービスと比べると少し多めだった気もしますが、全体的には使いやすいサービスになっています。
 
「新しい行」と言うと改行をしてくれますよ。オンラインで使用できます。
 
 
次にWindows11の音声入力を使ってみました。
 
Windowsキー+Hで音声入力の機能が立ち上がります。
 
筆者が試した範囲では、どのアプリにでも使用できました。
 
Windows11の音声入力もGoogleドキュメントの音声入力と同様に、変換をした後に必要な箇所を追って修正してくれます。
 
Windows11の音声入力では認識をした直後の変換が間違っていても、最終的に出てきたアウトプットはかなり高い確率で正しく変換されていました。
 
また、「かいぎょう」と言えば、改行をしてくれます。ほかにも声での指示ができるようです。
 
句読点を自動的に打ってくれる機能もあるので、その機能を使うと非常に楽でした。
 
Windows11の音声入力にはMicrosoftのAzure Speech Serviceが使われています。
 
これはクラウドを利用したオンラインの音声認識サービスであるため、残念ながらオフラインでは使用できません。
 
また、日本語以外の言語を使用する場合には、設定が必要になります。
 
ほかにも音声入力以外のアクションをしようとすると、音声入力が自動的にオフになる仕様があり、これは個人的に好みでした。
 
Windowsキー+Hで立ち上げて、歯車をクリックすると設定できます!
 
そのため、筆者はGoogleドキュメントにWindows11の音声入力を使用して執筆しましたが、用途によってはGoogleドキュメントの方が使いやすいかもしれません。
 
 
では、ここで実験をしてみましょう。
 
この記事の冒頭の文章をそれぞれの音声入力に認識させてみます。
 
健康でいられることって本当に幸せなことだと実感しています 年明けに運動中の事故で聞き手である 右手首を骨折しました(Googleドキュメント)
 
健康でいられることって本当に幸せなことだと実感しています。年明けに運動中の事故で利き手である右手首を骨折しました。(Windows11 句読点の自動化オン)
 
まず、Googleドキュメントのアウトプットには句点がありません。
 
しかし、文章の途中で「くてん」や「とうてん」と言えば、句読点を付けてくれます。
 
Windows11の「句読点の自動化」をオンにしていない場合も同様です。
 
しかし、Windows11では「とうてん」と言うと「、」ではなく「当店」になることがよくありました。
 
その頻度はGoogleドキュメントより多かった気がするので、Windows11では「句読点の自動化」を使うことをおすすめします。
 
 
2つ目に「聞き手」と「利き手」ですね。
 
Googleでは何度同じフレーズを言っても「聞き手」になってしまいました。
 
Windows11では「聞き手」が1度出現。それ以外は「利き手」としてくれました。
 
文章の内容から「利き手」としてほしいところではあります。
 
 
3つ目にGoogleバージョンは、「右手首」の前にスペースを配置しています。
 
何度、認識させても同じところにスペースを入れてしまいました。
 
わざと間を開けてみたり、開けないで言ってみたりしても、スペースを入れてしまいます。
 
 
では、英語をインプットすると、どうなるのでしょうか?
 
とあるミステリー小説から「The desert air is wonderful — so incredibly fresh. 」という一文を音声認識させてみます。
 
わざと日本語設定のまま認識させてみます。
 
the desert air is wonderful so incredibly フレッシュ(Googleドキュメント)
デザートis wonderfulそうincrediblyフレッシュ。(Windows11 句読点の自動化オン)
 
どちらも同じような反応で、日本語でも使われる英単語を日本語に訳しているのが面白いですね。
 
英語の設定に変更して認識させると…
 
The Desert Air is wonderful so incredibly fresh (Googleドキュメント)
The desert air is wonderful so incredibly fresh. ( Windows11 句読点の自動化オン)
 
筆者の日本語なまりの英語でも認識してくれました。 
 
ただ、Googleドキュメントの場合、DesertとAirの頭文字が大文字になってしまいました。
 
固有名詞として認識しているのかもしれません。
 
 
さらに同じフレーズをカタカナ読みで認識させてみました。
 
The DeSoto air is wonderful so incredibly fresh (Googleドキュメント)
The desert air is wonderful. so incredibly fresh. (Windows11 句読点の自動化オン)
 
Windows11は完璧でした。カタカナ読みであることを考慮すれば、Googleドキュメントも決して悪くありません。
 
MicrosoftもGoogleも日本人の話す英語のサンプルをたくさん集めて学習させているのだろうと想像できます。
 
どちらの音声入力機能も想像以上によくなっていました!
 

おちゃめなChatGPT

ChatGPTはスマホアプリの音声入力が素晴らしい精度で、今回、筆者が試した音声入力の中では一番優秀だったと感じています。
 
そのため、ChatGPTを使用した仕事をする際には、PCでデータを読み込ませたあと、スマホアプリに音声入力をして壁打ちをしていました。
 
句点は勝手につけてくれますし、言語も自動で認識してくれます。
 
日本語なまりがあっても、ほぼ完璧に英語で書き出してくれました。
 
しかし、試しにカタカナ読みで認識させてみたら、なぜか日本語訳が出てきました。
 
おそらく音声入力ではなく、音声翻訳(音声をリアルタイムで翻訳する機能)が働いてしまったのだと思います。
 
ChatGPTには、こんなちょっとおちゃめなところもあります。
 
今回、音声入力を記事の執筆に使ってみて、すごいスピードで精度の改善がされていることが分かりました。
 
音声入力に限らず、AI関連技術の開発スピードは尋常でなく、それだけ各企業が資金、時間、人材を集中的に投資しているのだろうと思います。
 

骨折を早く治す方法を探せ!

骨折をしたとき、実は海外出張を1ヵ月後に控えていました。
 
しかし、無情にも全治は2ヵ月との診断。
 
一緒に行く友人かつビジネスパートナーに話をしたところ、「手首は繊細な場所だから無理をしないほうがいい。治療に専念してほしい」とのこと。
 
海外出張に行ける状態まで回復できそうかを来週の通院時に担当医に聞くから、それまでキャンセルは待ってほしい、とパートナーに伝えて、骨折を早く治す方法はないか、自分でいろいろと調べてみました。
 

ベッカム選手が使った「LIPUS」

超音波骨折治療器(LIPUS)
 
見つけたのはサッカーのイングランド代表だったベッカム選手の治療方法。
 
ベッカム選手は2002年日韓W杯の8週間前に右足の第二中指足骨を骨折しました。
 
全治1.5~2ヵ月の診断で、W杯出場は絶望的だと思われていましたが、W杯を諦められなかったベッカム選手。
 
彼のメディカルチームが用いた治療法の一つが「超音波骨折治療法」でした。
 
パルス状の低出力超音波を患部にあてて、骨癒合をうながすというもので現場ではLIPUS(ライプス)と呼ばれています。
 
当時では先進医療でした。
 

私もLIPUSを使いたい!しかし…

現在、日本では手術を実施した骨折や難治性の骨折に保険適用されています。
 
しかし、これ以外の骨折でも、自費であれば治療を受けられます。
 
病院や整骨院などで治療機器を患部に当てることができればOK。
 
安価で安心な治療法で、今のところは重大な副作用も認められていません。
 
そこで、筆者は近所の整骨院に電話して聞いてみました。
 
すると、LIPUSは導入しているが、担当医からの許可がないと治療はできないルールになっている。
 
整骨院で治療を受けることに担当医の了承をもらってから来院してほしいとのこと。
 
よし、LIPUSを受けられれば、海外出張も行けるかも!と担当医に確認したところ、「別のところでの治療は保証できないから」と断られてしまいました。
 
先生いわく、LIPUSは高齢でなかなか骨がくっつかない患者さんによく使っているとのこと。
 
「うちにもあるけど、遠いから毎日これないもんね。あれ、毎日、20分は受けないと意味ないんだよ」。
 
残念ながら、海外出張はキャンセルとなりました。
 

医師の許可が必要なのは分かるけど…

LIPUSについて、以前は骨がなかなか融合しない難治性のケースに特に有効だとされていました。
 
しかし、近年の研究で、ギプスによる保存療法で骨治癒が普通に得られる症例においても有効であることや発症したばかりの骨折であっても治療期間が40%ほど短縮されたことが報告されています。
 
全て自分で管理したいという医師の気持ちも分からなくはないのですが、比較的リスクの低い治療法なので患者が希望する治療を受けられるように医師側にも配慮していただきたいと思いました。
 
医師の許可が必要なのは、被保険者が同じ疾患やケガで複数の診療機関に並行してかかり、医療費が膨れてしまうのを防止するためだそうで、理解はできます。
 
しかし、医療費の膨大を防ぐためのルールが患者が希望する治療を受ける妨げになってしまうことには、納得がいきませんでした。
 

なぜLIPUSは選択肢にならないのか?

LIPUSが保険適用となる難治性の骨折の方にとっても、骨がくっつきづらいことが分かってからではなく、最初からこの治療を受けられた方が早く治癒することができて、結果として医療費も節約になるのではないか、とも思います。
 
またLIPUS治療により短期間で骨融合が進めば、保存療法で治癒を目指す患者のギプスを外したあとにみられる筋肉の衰えや硬直が少なくてすむため、リハビリ科に通う医療費も節約できるかもしれません。
 
比較的新しい治療法であり、治験等による根拠となるデータが少ないため、保存療法で治癒する骨折の治療法としてLIPUSを選択肢としている医師はそこまで多くないようです。
 
今後はデータやエビデンスも増えていくでしょうから、積極的にLIPUSを治療の選択肢に入れる医師が増えていくといいな、と思います。
 

ケガと損失と医療費

この経験から国は、医療費の枠という視点だけではなく、ケガによる経済的な機会損失を減らすというもっと大きな視点からも医療費について考えるタイミングなのではないかと思いました。
 
現役世代の勤務中のケガであれば、医療費だけでなく、労災の休業補償で支払いも発生するうえに、患者が得たはずの経済的な利益も損失してしまいます。
 
そのため、治療期間が短縮されることは受傷者のみならず、企業、さらに大きな枠でとらえたら国にとってもプラスになるのではないでしょうか。
 
具体的に数字で見てみましょう。
 
筆者の医療費は現時点で約2万円。
 
あと2~3回は通院するとして、自己負担額が2万5000円としましょう。LIPUSは使用していません。
 
この場合、ざっくり見積もって公的医療保険で賄われるのが8万3000円ほどです。
 
 
LIPUSを使って治癒までの時間を40%短縮できたとしたとき、大まかに受傷者の支払う医療費は2万5,000円×0.4=1万円、公的医療保険による費用負担は8万3000円×0.4=3万3,200円程度は節約できる計算になります。
 
自費治療のLIPUSを1,000円/回としたとき、1,000円/回×36日(全治60日から60%に短縮された治療期間)=3万6,000円。
1万円ー36,000円=-2万6,000円となり、受傷者が自費でLIPUSを受けるとLIPUSを受けないときと比べて2万6,000円多く支払うことになります。
 
しかし、LIPUSを保険適用したと仮定しましょう。
 
受傷者が支払うLIPUS治療費は300円×36日=1万800円 
LIPUSを受けると受けないときに比べて、自己負担が800円が増えてしまいますが、治療期間が24日間も短縮されるのであれば許容範囲ではないでしょうか。
 
同じように公的医療保険の負担について考えてみます。
 
公的保険で支払うLIPUS治療費は700円×36日=25,200円。
 
LIPUSによる治療期間短縮で節約できる3万3,200円-LIPUS治療費2万5,200円=8,000円で、LIPUS不使用のときに比べて節約できます。
 
また、会社員である方の業務中のケガであれば、医療費は労災保険の給付金で全額、賄うことになります。
 
このケースも見ていきましょう。
 
医療費全額10万8,000円×0.4=4万3,200円が治療期間の40%短縮によって国が節約できる医療費です。
 
LIPUSによる治療を毎日受けたとして1,000円×36日=3万6000円。
 
4万3,200円からLIPUS治療費を差し引いても、7,200円の節約になります。
 
これに加えて、労災保険の被保険者に支払われる休業補償を40%削減できるとしたら、どうでしょうか。
 
1日8時間を時給1,000円で働いた場合、1,000円×8時間=8,000円。
 
休業補償は給料の8割が支払われるため、補償の日額は時給1000円×8時間×0.8=6,400円です。
 
休業4日目以降なら土日も補償の対象であるため、治療期間が40%短縮されると6,400円×33日=21万1,200円が支払われることになります。
 
全治60日の場合、支払われる休業補償は6,400円×57日=36万4,800円となり、支給額には15万3,600円の差額があります。
 
さらに受傷者の治療期間が24日間短縮されて、仕事もできるとしたら、どうでしょう。
 
1日8時間を時給1,000円で働いた場合、1,000円×8時間×20日(4日間は休日)=16万円がLIPUSを使用し、治療期間が短縮された24日間に生み出される価値ということになります。
 
つまり、LIPUSにより短縮できた治療期間(24日間)に得られたはずの16万円の機会損失+休業補償の差額15万3,600円=31万3,600円は社会全体で節約できる可能性があるのです。
 
会社員ではない方の場合、労災は使えませんが、やはり骨折による休業期間の機会損失が小さくないのではないでしょうか。(※2024年11月からフリーの方も労災への特別加入ができるようになる見込み)
 
もちろん、同じ部位の骨折でも全治や治療期間には個人差もありますし、LIPUSの効果や治療費もまちまちであることに加えて、受傷者の業務によって休業期間が変わることも考えられるため、一概に大幅な節約になるとは言えません。
 
もっと様々なケースを考慮に入れて試算する必要はあると思います。
 
しかし、こういった損害や損失に加えて、どこの業界でも人手が足りていない現状もあります。
 
企業からすれば、従業員には少しでも早く現場復帰してもらいたいはずです。
 
国には医療費という枠だけではなく、他の経済的な損失や人材不足の状況も考えて影響を試算し、保険適用とする治療を検討してもらえたら、と思います。
 
ちなみにLIPUSは認知症への活用も研究されているそうです。こちらにも期待を寄せたいですね。
 

日本企業ってすごい!

利き手を使えなくなってしまったので、日常生活の様々なことを左手一本でこなさなくてはなりませんでした。
 
右手が無事だったときには、全く気が付いていなかったのですが、利き手ではない左手には右手ほど力が入りません。
 
本来の握力は左右であまり違わないのですが、いざとなると力が入らないのは不思議です。
 
特に困ったのが、商品に入っているタレなどの小さな袋を開けるときと文字を書くときでした。
 
自分の利き手が自由ではないからこそ、日本企業の消費者に寄り添う商品開発や細やかな配慮に気づくことができました。
 
 

「マジックカット」+αは最強

骨折を早く治すためにも必要な栄養を摂ることが大切という記事を読み、ビタミンやカルシウム、たんぱく質など積極的に食べ物に取り入れることにしました。
 
ビタミンKは血液の凝固促進だけでなく、骨へのカルシウムの定着の促進もしてくれることから、骨折時には積極的に摂取したい栄養素です。
 
そのビタミンKをたくさん含む食品に安くておいしい納豆があったので、毎日納豆を欠かさず食べています。
 
その納豆を食べるときに難儀したのがタレの開封でした。
 
各メーカーさんで工夫なさっているのですが、握力の弱い左手では開けづらいものが多かったのです。
 
そこから食品に添付されている、ありとあらゆるタレや薬味のパッケージをよく観察するようになりました。
 
タレのパッケージにはよく「マジックカット」が採用されています。
 
マジックカットはどこからでも切れるという画期的な技術。
 
みなさんも1度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
 
最初に見たときには、どこからでも切れるってすごいと感動したのを覚えています。
 
しかし、意外なことに筆者の極端に握力の弱い左手には、マジックカットは難敵だったのです。
 
 
ところが、ある日。
 
ハンバーグに同封されていたソースのパッケージを見るとマジックカットの部分に、さらに小さな切れ目が入れてありました。
 
 
マジックカット+α!これなら、開けられるかもしれない!
 
そして案の定、左手で簡単に開けることができたのです。
 
あんなに小さなタレのパッケージひとつでも、これでもか、というほどに消費者に寄り添って考えてくれる企業がある。
 
この細やかな気遣いこそが、日本企業の誇れる部分なのだと感激しました。
 
 

ノン利き手ユーザーにも寒冷地のユーザーにも最強のJETSTREAM

パソコンであらゆる事務手続きを済ませていたものの、どうしても左手で文字を書かなくてはならない局面も数回ありました。
 
左手にはやはり利き手ほどの力が入らず、筆圧が弱すぎるため、ボールペンのインクが出てきてくれません。
 
もっと書きやすいペンはないのかな?と考えていたら、知り合いの獣医師が言っていたことを思い出しました。
 
「JETSTREAMは寒い日に現場でメモを取りたいときもインクがちゃんと出るんですよ。ほかのボールペンだとインクが出てこないんです」。
 
 
近所のスーパーにあるペンコーナーに赴いたところ、JETSTREAM専門コーナーがありました!
 
太さも0.38~0.7mmまでそろっており、色も黒、赤、青に加えて3色ボールペンの展開もあります。
 
赤の0.7mmを購入し、早速試したところ、私の左手の握力でもスムーズに文字を書くことができて感激しました。
 
どのように開発をしたのかを知りたくなって「jetstream 開発」でググってみたところ、三菱鉛筆株式会社さんのサイトにある開発ストーリーがヒット。
 
JETSTREAM開発プロジェクトのリーダーのIさんはもともと、握力が弱く、油性ボールペンが苦手だったそうで、軽いタッチの油性ボールペンを作りたいと思ったそうです。
 
しかし、粘度の低いインクの開発は初めてだったこともあり、細かい部品も一から作り直しをすることになったそうです。
 
「このなめらかさが嫌い」という社内の意見もあったようですが、そんな声にもめげずにこんなに素晴らしい商品を販売してくださった開発チームの皆さんには頭の下がる思いです。
 
おかげさまで、利き手の治療中でも寒冷地でも苦労なく文字を書くことができます。
 
日本企業の開発する商品に感じられる気遣いや優しさは、たくさんの可能性を秘めていると思いました。
 
しかし、一方で課題も感じました。
 
音声入力にみるAI関連の開発のように時代の流れを読んで、そこに日本のあらゆる分野の企業が一丸となって協力して、人材や資金を惜しまずに集中的に注いで日本全体を良くしていこうという「熱感」みたいなものは、もう少し必要なのではないかなとも思いました。
 
でも、これは企業だけの問題ではなく、政治も含めた日本の社会全体の課題なのかもしれません。
 

まとめ

今回、受傷時には家族や友人をはじめ、見ず知らずの方にもたくさん助けていただきました。感謝しています。
 
ケガや病気をしない方がいいのはもちろんですが、こういった機会に得た視点や考え方を同じ経験のない方にも是非、共有したいと考え、今回は記事に収めることにしました。
 
でも、やっぱり人間は健康第一です!ご自愛ください。

Who is writing

米国カリフォルニア州ベンチュラ郡立 Ventura Community College
米国ケンタッキー州立 Murray State University卒業。
プロンプトリサーチャー。
東日本大震災をきっかけに「後悔しないよう、今やりたいことやる!」と決意。
たくさんの動物と暮らすことを夢見て夫婦で田舎に移住。
仕事のモットーは「楽して良いものを作る」。
アナログとデジタルを両立したハイブリッドな田舎暮らしをめざし、chatGPTに鍛えられる日々を過ごす。