「この辺りの研究興味あるんですよね~」
私が所属している研究室では、基本学生さんがどのような研究をしようとも自由、という形式を取っています。
もちろん、機械学習に関わる研究である必要はありますが、それでも多岐にわたる研究を自由に進めることができる、という状況であることは間違いありません。
自由に研究できる。
すなわち、自分の興味の赴くままに探索しても良い、ということになります。
過去には金融に興味があるからと、株価の変動に着目した研究を行った学生さんもいましたし、ユニークなところでは大好きな競馬の予測を行った学生さんもいました。
(ただし、自分の手法で予測した結果の馬に投票したところ、その日1日では利益は出なかったとのことでした。
機械学習は多分に確率論が関係してくるので、仕方ないことではあるのですが、ちょっと悲しいです。)
そんな状況下ですので、先日も、これまであまり先輩が取り組んでこなかった、馴染みのない分野にチャレンジしようとする学生さんがいました。
「強化学習、面白そうだけど何から勉強したらいいか分からないです。」
冒頭の彼が興味を示していたのは、強化学習と呼ばれる、主にロボットの分野などでは非常に盛んに研究されているテーマでした。
最近では企業による商品推薦のアルゴリズムなどにも応用はされており、これからもまだまだ研究が続けられていく大きな分野です。
自由にテーマを決められることは良いことだと思いますが、反面、デメリットもいくつかあります。
それは、興味を持った領域についてのノウハウが、それほど蓄積されていないことです。
(もちろん、自由に決めていい、と言われてなかなかテーマが決まらない、というのもある意味デメリットの一つかと思います。)
いくらノウハウが蓄積されていなくとも、博士課程を取ろうとする身である私が音を上げるわけにはいきません。
唯一読んだことのある強化学習の1手法に関する論文と、調査した論文を後輩に放り投げました。
果たしてどんな風に読んできてくれるのか、彼の勉強を一緒にフォローすることで私も勉強できるので、今から楽しみです。
ところで私が渡した強化学習の論文は、その論文を読むために複数の事前知識が必要になります。
そのため、その論文1本を読むために、別のA、Bという論文を理解しなければいけません。
こういった積み重ねが必要になるのは、何も機械学習の分野だけではないように思います。
例えば人事の分野でも、理論やこれまでの背景などの基礎知識が無ければ正しく活用できないようなシステムも、たくさんあるように思います。
新しいものが出てきても、過去の自分の蓄積が役に立ってくれる。
なんだかとっても、勉強をするモチベーションが湧いてきました。
P.S.
ちなみに後輩に渡した強化学習の手法を読むためには、グラフ構造を深層学習で表現するモデルと、そこに様々な知識を入れ込む手法の知識が必要不可欠です。
実際、その論文1つ1つを読むだけでもかなり労力が必要になるだろうことを考えると、新しいものの習得がいかに大変か、思い知らされる気持ちです。