転職先を決めてから辞める派vs辞めてから決める派
皆さんは、転職をされた経験がありますか?
2023年6月にIndeed Japanが発表したデータによりますと、日本の転職未経験者の割合は40.3%。転職経験率は59.7%だそうです。
参考:https://jp.indeed.com/press/releases/20230627
こちらで比較調査された他国のデータと比べると、日本の転職経験者の数はかなり少ないようですね。
しかし、日本国内で働き続ける私たちから見ると、近年なんとなく転職者が増えているような気もしませんか?
新卒で入社した企業で定年まで働き続けることが当たり前だった数十年前に比べ、プライベートの充実やキャリアアップを目指して転職をする方は、多からず増えてきているのではないでしょうか。
転職の理由は人により様々ありますが、それらがすべてポジティブなものばかりとは限りません。
中には、今いる会社での仕事や労働環境があまりにも厳しいことから、転職を検討し始めたという方もいるでしょう。
今の職場で働きながら今後の人生についてよく考え、冷静な判断力を持って転職活動を進められるかというと、すべての人がそのような環境であるとも限りません。
可能な限り早くブラック企業から抜け出したいけれど、次の仕事が決まるかどうかという不安に苛まれ、結局動き出せないという方は多そうですね。
一般的には、転職先を決めてから退職願を提出し退職、という流れが圧倒的に多いですが、必ずしもそうしなければいけないわけではありません。
「そうするのが当たり前でしょう?」という方もいれば、
「気持ちを切り替えてしっかり転職活動に挑みたい!」という方もいるでしょう。
仕事というのは、人生においてかなり大きな割合を占める方も多いですから、転職は言わば人生の節目のようなものです。
ということは、その人のライフスタイルや理想の働き方に合った手順があるはず。
自分に合った転職やキャリアチェンジについて、一緒に考えてみませんか?
今回は、転職を検討する際に「転職活動」と「退職」、どちらを先にするべきか、それぞれのメリットとデメリットを中心に紹介します。
ご自身の今後について悩んでしまった際は、是非ご一読ください。
パターン1:転職先を決めてから辞める
まず、最も一般的な「次の仕事を決めてから退職願を提出する」という流れについて考えてみます。
様々なリスクを軽減できる方法ですが、実際はどうでしょうか。
メリット①金銭的な不安がない
転職先が決まっているということは、今の仕事を離れてからすぐに新しい仕事に就くことになります。
当然ですが、お給料が途絶える期間が無いわけですから、生活における金銭的な不安はほぼ無いと言っていいでしょう。
こちらに関しては、多くの方がこの選択をする1番の理由になっている気がいたしますから、深く言及する必要はなさそうです。
メリット②社会的なリスクが少ない
転職先が決まっているということは、次の肩書きが既に決まっているということです。
退職時に上司から「次は何をするか決めているの?」と聞かれた場合でもスムーズに答えられるでしょう。
仕事を継続していることにより、社会生活における不安や焦りを感じることもなさそうです。
職歴に空白期間が無いというのは、大きなメリットの1つであると考える方もいるかもしれません。
すぐにまた働くつもりであるとはいえ、一瞬でも無職になってしまうことに不安を覚える方や、そういった不安定な状況を人に知られたくない場合は、最良の選択肢といえるでしょう。
メリット③転職先が確定していることになり退職しやすい
先の項で少し触れましたが、仕事を辞める際、おそらく「次の仕事は決まっているの?」と必ず聞かれます。
特にブラック企業の場合、慢性的な人員不足に悩んでいる会社がほとんどです。
「実はまだ何も決めていない」と答えた場合、退職を考え直すよう迫られたり、退職時期を有耶無耶にされてしまったりする可能性は大いにあり得ます。
そういった流れを作らないためにも、
「次の仕事がこの日から始まるので、この日までに退職したい」という伝え方が出来るのは、大きなメリットですね。
デメリット①転職活動に時間を割かなくてはならない
「転職活動」と簡単に言うものの、実は、仕事を続けながら転職活動に取り組むことは容易ではありません。
日常においてやるべきことが増えてしまうわけですから、大変な時間と労力が必要とされる場合もあります。
ブラック企業にお勤めの方であれば、ただでさえ労働時間が長いために、思うように時間が取れずなかなかスムーズに進まないということもあり得るでしょう。
体調と相談しながら、無理せず転職活動に取り組めるスケジュールを考えなくてはなりません。
デメリット②転職活動が長引く可能性がある
そうした貴重な時間を割いて転職活動を行ったとしても、すぐに新たな就職先が見つかるとは限りません。
先の見えない戦いになりますが、時間をかけてじっくり取り組んでいく必要があります。
次の仕事が見つかるまで、モチベーションを維持して継続できるか否かが大きなポイントとなるでしょう。
デメリット③転職活動に焦り、ブラック企業を引き当てる可能性がある
おそらく、仕事をしながら転職活動を進める大変さについては、多くの方が覚悟していることでしょう。
しかし、そのように継続した転職活動が上手くいかなかった場合も想定しておかなくてはなりません。
最悪の場合、なかなか上手くいかない状況から焦りを感じてしまい、せっかく頑張ったにもかかわらず、ブラック企業を引き当ててしまう可能性もあります。
特に、ブラック企業から逃げるために転職活動をし、再びブラック企業に入社してしまうなどということは、絶対に避けなくてはなりません。
そうならないためには、自分が仕事に対して求める条件がブレないよう、しっかり定めておく必要があります。
また、希望していた企業との御縁がなかった場合や、理想的な求人と巡り会えなかった場合に、どこを区切りとするべきかも決めておくといいかもしれません。
実際、理想的な求人となかなか出会えないタイミングもありますから、その場合は求人のチェックをしながらまたの機会を待ちたいですね。
パターン2:転職先を決めずに辞める
次に、転職活動をせずにとりあえず会社を辞める場合を考えてみます。
向こう見ずで無計画な印象を受ける方も多いようですが、実際はこちらにもいくつかのメリットがあるようです。
メリット①転職活動に専念できる
ブラック企業に勤務している方が、仕事が忙しすぎて自分の時間がほとんどなく、転職活動をする暇がないという話はよく聞かれます。
ただでさえ毎日忙しく自分の時間を持つ余裕がない中で、転職活動にも時間を割くというのは、なかなか難しいという方もいるでしょう。
先に退職をすることで、時間的余裕に関する悩みは一掃されます。
考えるための余裕を作ることで、冷静な思考や判断ができそうです。
時間的な余裕がない中で転職先を決めなければならないプレッシャーと戦うか、仕事を手放してから何としても転職先を見つけなくてはならないプレッシャーと戦うかは、大変悩ましいところですね。
メリット②働く以外の選択肢を持てる
会社を退社してから、日常における多くの時間を転職活動に充てる方がいる一方で、まったく別のことに時間やお金を使う方もいます。
あなたの人生において、もし仕事以外に関するところで何か夢や目標があるのだとしたら、仕事をしていない期間というのはその大きなチャンスです。
何か成し遂げたいことがある方は、こういった方法を検討するのもいいかもしれません。
また、転職活動を進める前に、資格取得や自主勉強に取り組むことも可能です。
明確な目標があるとその後の計画も立てやすくなりますから、何か新しいことに取り組んで人生をガラッと変化させてみたいという方は、この機会を逃す手はありませんね。
メリット③ステップアップやキャリアチェンジを狙いやすい
先の項にて資格取得や自主勉強について触れましたが、転職活動中はこういったスキルアップに時間を使うこともできます。
計画を立てて勉強に取り組み資格を取得し、次の新しい仕事に挑戦することも可能です。
働きながらの転職活動は、自分が持っている既存のスキルや経験に頼る形になりますが、退職後の時間を有効に使える場合は、新しい業界や業種に挑戦できる可能性もあります。
キャリアチェンジやキャリアアップを考えている場合は、こういった期間を有効活用してから挑むのも良いかもしれません。
デメリット①金銭的な不安が大きい
おそらく、ほとんどの方が最も恐れていることではないでしょうか。
働いていない期間が長ければ長いほど、収入を得られない期間も長くなります。
自主退職の場合は、失業手当を受け取るまでのブランクもありますから、転職期間に何か副収入を得る方法がない限り、期間中は無収入となります。
貯蓄や手当に頼って生活する場合は、どこまでに転職活動を終え新しい仕事を始めるかというゴールを前もって決めておかなくてはなりません。
貯蓄や副収入がいくらあったとしても、いつ新しい仕事が決まるかは分かりませんから、金銭面での不安は常につきまといます。
特に、ご家族のいる方であれば、その不安はさらに大きくなるでしょう。
しっかりと話し合い、今後の生活についての計画を立てておかなければなりませんね。
デメリット②仕事勘が鈍る
長期に渡って仕事から離れる場合、スキルにもブランクが生まれることになります。
仕事内容によって差があるとは思われますが、特にトレンドや最新情報・技術等が重宝される業界である場合、スキルが鈍ってしまうことにもなり得ます。
ご自身が継続して積み重ねたものが一旦途切れるということがどのような影響をもたらすか、そして今後それをどのようにアップデートしていくかについて考えておく必要があるかもしれません。
デメリット③履歴書に空白期間が残る
あなたの履歴書には、最終学歴以降で仕事をしていない空白の期間はあるでしょうか?
転職やその他の事情で仕事から離れた期間がある場合、履歴書には空白期間が生まれます。
これを気にするか気にしないかというのは人によって大きく判断の分かれるところでしょう。
「そのような空白は絶対に作りたくない!」という方もいれば、
「別にどうでもいい…」という方もいると思います。
実は、筆者の履歴書には計2回、合わせて半年強の空白期間があります。
1度目は運転免許の取得と介護のため、2度目は転職活動のためです。
面接の際は、この期間に何をしていたのかと聞かれることが多いですが、いつも正直に答えています。
お相手の反応も「ああ、そう」という程度のもので、それほど深く突っ込まれたことはありません。
逆に、
「自転車で日本一周してました!」
「海外でボランティア活動をしていました!」
「ずっとゲームをしていました!」
という類まれな(?)経験を披露すれば、そこから話が広がっていたのだろうなと思います。
他人と異なる経歴を持つ人というのは、とても魅力的だと思う方もいれば、嫌悪感を示す方もいるでしょう。
そもそも、「人と異なる」ということが嫌だという方もいますね。
そのため、履歴書の空白期間はそれほど意識する必要はありませんが、この有無はあなた自身の印象に多少の影響があります。
転職活動において自分がどのような人物だと思われたいか、どういった人間性をアピールしたいかということを考えておく必要があるでしょう。
最も重視されるべきは、仕事と生活のバランス
今回、デメリットと併せてお伝えしたために、転職活動に対してネガティブなイメージを抱いてしまった方もいるかもしれませんが、転職活動は人生における新しい道の第一歩。
不安ながらも、ちょっとした好奇心や向上心を感じられることも大いにあるかと思います。
特に、ブラック企業からの転職を希望している場合は、それが大きな原動力となって積極的な転職活動に繋がることもあるでしょう。
ところで、近年ワークライフバランスという言葉がよく聞かれるようになりました。
仕事と生活の調和、2つをバランス良く両立させるという考え方です。
この言葉が示すように、どちらかに大きく偏りバランスを崩してしまうと、現状や将来、精神と身体の健康に影響が出てしまう恐れもあります。
転職活動というのは、厳密にいえば仕事とは異なるものですが、このバランスが非常に重要となるという点においては、同じ考え方ができるでしょう。
つまり、転職活動のために生活や仕事で極端に無理をするようなことは、あまりおすすめできません。
短期的なものだからと言ってつい頑張りすぎてしまう方がいますが、それがもし長期化してしまった場合、あなたの健康やご家族の生活に影響が出てしまう可能性もあります。
あまり焦らず計画的に、今の自分の生活リズムや労働環境と相談しながら、ご自身に合った方法とペースでの転職活動を心がけてください。
そして、自分に合ったスタイルで転職活動を行うことで、新しい第一歩を踏みだせるよう目指しましょう。