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ChatGPTとExcel
人事を含めたバックオフィス業務でよく使われるソフトの一つがExcelではないでしょうか。
ChatGPTは世界中のテキストデータを学習しており、Excelの関数やVBAに関する知識も含まれています。
そのため、この両者は非常に相性がよく、使い方次第で業務の効率化が図れます。
両者の得手不得手を明らかにし、どのように使い分けたらいいのか、を探っていきます。
ChatGPTに表を読み込ませよう
ChatGPTではコピペしたExcelの表を加工することができます。
Excelでは、ややこしい関数やVBAを用いる必要のある加工でもChatGPTでは簡単にできるものがあります。
早速やってみましょう。
今回もchatGPTにサンプルを作ってもらいました。
そのデータをExcelに落としたのが以下の架空社員リストです。
まずはExcelからChatGPTに表をコピーしてみましょう。
Excelで範囲を指定してコピー、そのままCtrl+VでChatGPTのプロンプト入力エリアに貼り付け、表形式にします。
ここから表の加工をしていきますが、最初に注意事項です。
OpenAI社はChatGPTの学習データとして、皆さんが入力した情報を使用します。
表に個人情報が含まれる場合はご注意ください。
個人情報は入力しないことをおすすめしますが、それでも心配な方はOpt out formをOpenAI社に提出することをおすすめします。
このフォームを提出すると、そのユーザーが入力した内容はAIの学習に使われません。
また、会話の履歴が必要ない方は、Setting>Data control>showから、Chat history&Trainingをオフにすれば、学習に使われることもないようです。
カテゴリー別に表を分割する
ChatGPTでは、特定の情報ごとに表を分割することが簡単にできます。
ここでは、役職ごとに表を分割して、分割した表を「部長」→「課長」→「係長」の順に並べてもらいます。
サッとやってくれました。
【ポイント】分類の表記を示す単語にはカギかっこを使用する
実験をしてみましょう。この表に「石田係長」という名前の「部長」を追加してみます。
この表に対して、係長を抽出するように伝えると…
「石田係長」さんも抽出されました。
それでは次に、プロンプトをもう少し具体的に、しかし、カギかっこを使用しないで打ってみます。
やはり、抽出されてしまった「部長」の「石田係長」さん。
それでは、カギかっこを使ってみましょう。
「部長」の「石田係長」さんは抽出されませんでした。
名前を姓と名に分ける
次に「名前」を「姓」と「名」に分ける作業をChatGPTにやってもらいましょう。
データの作り方によっては、Excel上では処理が難しい作業です。
元々のデータの姓と名の間にスペースがあるから、Excelでも簡単にできると思った方もいらっしゃるでしょう。
ChatGPTは姓と名の間のスペースがないデータでも姓と名に分けることができます。
問題なく処理してくれました。
ふりがなを振る
Excelのデータにふりがなを振る場合、Excelで対応するにはいくつか方法があります。
フラッシュフィルで上手くいかない場合は手入力やほかの方法をとる必要がありますが、ChatGPTではさっと振ってくれます。
「「名」と「入社年」の間に「せい」列と「めい」列を作成し、「せい」=「姓」のふりがな、「めい」=「名」のふりがなを入力してください」とプロンプトを打ちました。
ふりがなを振ることはできましたが、「せい」と「名」の列の並びがこちらの意図と異なっていますので、修正します。
このように、1回ではうまくいかなくても、プロンプトを直しながら、期待する出力に近づけていきましょう。
また、二通り以上の読み方ができる「姓」の場合はふりがなを間違えてしまう可能性があるとChatGPT自身が言っていました。
出力結果の確認をおすすめします。
データを抽出する
条件に沿ったデータを抽出することができます。
ただし、以下のように、プロンプト1文に条件が2つ以上ある場合はプロンプトを工夫しないと、正しく抽出されない可能性があります。
課長まで抽出されてしまいました。
このような場合、箇条書きにすると解決することもあります。
また、数学に関する知識も学習しているため、プロンプト内に=、>、<などの数学記号を用いてプロンプトを簡略化することも効果的です。
正しく抽出してくれました。
2つ以上の条件がある場合はExcel側でソートをかけてしまう方がプロンプトを打つより、早いかもしれません。
情報を追加する
列や情報を追加することもできます。
一度試した際にA列のすべてのセルに「削除」と表示されてしまったことがあったので、ここでは、A1に「削除」と入力し、ほかは空欄のまま、とプロンプトを入力しました。
それでは、「削除」欄に印をつけてもらいます。
ここでは、最初に社員番号を使ってプロンプトを打ちましたが、ChatGPTが混乱していました。
代わりに名前を入力したところ、問題なく印がつきました。
出力された表をExcelに貼り付け、体裁を整えましょう。
Excelに関するアドバイス
ChatGPTからExcelにコピーした表の体裁を整えました。
今度はExcel側で「削除」欄に印をつけた行をグレーアウトさせましょう。
そこで、ChatGPTにアドバイスを求めます。
「エクセルについて教えてください。
A列に○がある場合にその行をI列までグレーアウトしたいです。
どのようにしたらいいか、いくつか方法をリストアップしてください。
表はA2~I11です」とプロンプトを打ちました。
しかし、1.の条件付き書式が上手く作動しません。
何がおかしいのか、確認したところ…
2.にあるように相対参照から絶対参照に変更したところ、うまく作動しました。
また、IF関数を使用する方法でもフィルターを使用する方法でも、問題なく対象の行をグレーアウトできました。
そこでVBAでも同じ作業が可能か聞いてみました。
問題なく作動させることができました。
コードをシートに張り付ける方法が分からない方はChatGPTに聞いてみてください。
優しく根気強く教えてくれます。
では、次に関数について具体的に質問してみましょう。
別のサンプルのデータを作成してもらいました。
B列が2だった場合のみ、C列にA列の下9桁を抽出する方法を聞きます。
4.と5.の表現が微妙ではありますが、数式は問題ありません。
VBAで処理する方法も聞いてみます。
こちらも問題なく作動しました。
ExcelでVisual Basic Editorを表示する開発タブが表示されていない方は、是非、ChatGPTに質問してみてください。
どうやったら表示できるのか、教えてくれます。
評価・解析
次にExcelのデータを評価・解析する方法について、例を二つ挙げて、ご紹介します。
まずはアンケートを例にとってみましょう。
企業の人事担当者向けに特化したチャットボットサービスのアンケート結果という前提でサンプルをChatGPTに作ってもらいました。
まずはアンケート結果の評価をしてもらいましょう。
2行目の大阪の女性のコメントはネガティブと判断されました。
これを中立に評価しなおしてもらいましょう。
この中から中立とネガティブな意見を抽出します。
中立とネガティブな評価をしたユーザーより指摘のあった改善点について、数分で表形式でまとめることができました。
次に数字のデータもみてみましょう
経済産業省から発表されている「コンビニエンスストア販売額等」をサンプルとして利用します。
数字を読みこませて、販売額の多かった年月のトップ10を抽出してもらいます。
【ポイント】「ステップバイステップで考えてください」
計算をChatGPTにお願いする場合、「ステップバイステップで考えてください」とプロンプトに入れるだけで、計算結果の精度があるという研究結果が出ています。
同じく「あなたは世界的に著明な数学者です」というプロンプトを入れても計算の精度が上がるようです。
また、ここでは無料版のGPT-3.5モデルを使用していますが、有料版で使用できるGPT-4.0モデルでは、計算結果の精度もかなり改善しているらしいです。
ステップバイステップで、考えています。
出来上がった表を見ると…
残念ながら、正しい結果ではありませんでした。
多くの数字の中から特定の数字を抽出するのは苦手なようなので、Excelに任せた方がいいかもしれません。
気を取り直して、新しいプロンプトを入れてみます。
すると以下のような返信がありました。
こちらも残念ながら、肝心な統計量の計算結果が間違っていました。
Excel関数で正しい数値を求め、ChatGPTに入力し、再度、解析を依頼しました。
このように正しい数値を提示すれば、解析をしてくれますので、現時点では数字をExcelで計算し、その結果を提示してChatGPTに解析してもらう使い方がよさそうです。
ちなみにNumPyはPythonというプログラミング言語で計算をする時に使用されるツールだそうです。
次は数字のデータにみるトレンドについて、聞いてみましょう。
同じく経済産業省がまとめたドラッグストアの販売額のデータを使用します。
今回は商品カテゴリー別の販売額も読み込ませました。
傾向の原因や理由についても聞いてみます。
今後の傾向についても聞くと…
今後、販売が増加しそうな商品についての予測も聞いてみました。
数字を使用した解析についてはExcel側で作業をして、大まかな傾向とその原因や理由(社会的情勢や影響を与えたイベント)などについては、ChatGPTに聞いてみるのがいいでしょう。
ただし、将来のトレンド予測を立てるのにChatGPTを利用する場合は注意が必要だという印象を受けました。
ChatGPTの学習が済んでいるのは、2021年までの情報であり、最新の情報については、こちらから提示しなければ考慮されません。
上記の回答の中では、外食を自粛されている方が多いのは今ではなく、少し前ではないか、と違和感を感じました。
ChatGPTとExcelの使い分け
ここまでChatGPTとExcelを併用する方法や使い分ける方法を紹介しました。
今回の記事では以下のようにまとめます(私見ありです)が、普段のExcelの使い方によって、一人ひとり感覚が違うと思います。
皆さんも自分なりの併用法を是非、見つけてください。
まとめ
楽をして効率化するためには、ChatGPTとExcelのいいとこどりをしましょう。
そのためにはChatGPTとExcelの得手不得手を把握して、どこからどこまでをChatGPTで、どこからをExcelで作業するのか、ある程度、作業のプロセスを事前にイメージして、成果物完成までの筋道を組み立てることが大切です。
Excelのどの機能や関数を使ったらいいのか、分からない場合や迷った場合もChatGPTを頼りましょう。
とても丁寧に手順を教えてくれるのに加えて、アイディアもいくつか提案してくれます。
その中から、自分ができそうなもの、楽そうなものを選んで、作業を効率化しましょう。
ただし、ChatGPTは全能ではありません。出力結果の見直しも忘れずに。