シリーズ『ビジネスエゴグラム』~同じことを繰り返すのは「脚本」のせい?~

シリーズ『ビジネスエゴグラム』。今回は、交流分析における考え方の柱の一つである「脚本分析」についてご紹介します。

  

長い歴史と確かな実績を持ち、ビジネスの現場で活用する企業も増えている性格分析手法「エゴグラム」と、その基礎となっている交流分析の考え方について詳しく紹介していく、シリーズ『ビジネスエゴグラム』。

今回は、交流分析における考え方の柱の一つである「脚本分析」についてご紹介します。

なぜあの人は同じことを繰り返すのか

いきなりですが、皆さんの周りにこのような方はいないでしょうか。

 

・いつも追い立てられるように仕事をしている

・自らの行動でケガや事故を繰り返す

・周囲がすすめるやり方を受け入れてくれない

・肝心なところで失敗する

・どうも本音を隠している

・飲み会など大勢が集まるイベントを「苦手だから」といつも欠席する

 

「実は私自身に当てはまる」という方がいるかもしれませんね。

当然、要因としては様々なものがありますが、その一つとして子供のころに親から受けた影響が考えられます。

そしてそのことが、場合によってはまるで決められたドラマの脚本を演じるような人生にまで繋がってしまうのです。

半ば人生を縛り付けている脚本が作られた原因について探り、人生をよりよい方向に向けていく作業が交流分析における「脚本分析」です。

次の章では交流分析における「脚本」の考え方について、更に詳しくご紹介します。

交流分析における「脚本」とは

交流分析においては、人生をある種のドラマとしてとらえており、その人が生きる人生を脚本と呼んでいます。

脚本は、子どものころに親の影響のもとで形成され、進んでいくとされています。まさに「三つ子の魂百まで」というわけです。

脚本がどのように形成されるかについては、交流分析の創案者であるアメリカの精神科医エリック・バーンが以下のような「脚本の法則」を提唱しています。

脚本のタイプ分け

人生の脚本については、いくつかの観点からタイプ分けできます。

【成功者・平凡・破壊的】

よく使われているのが、「成功者(勝者)」「平凡(非勝者)」「破壊的(敗者)」の分け方です。

・成功者(勝者)

 人生のゴールを自分で決め、それに向かって全力で尽くし、それを成し遂げる人。

 失敗したとしてもめげず、何をなすべきかを知っている。

・平凡(非勝者)

 何事も他の人と同じレベルに達すると、満足する。敗北しても発奮しようとしない。

 勤勉で誠実とみなされ、トラブルや悲劇的な結末もない反面、持てる力をフルに発揮せずに終わってしまう。

・破壊的(敗者)

 ゴールを達成することができず、自分で責任を負うことを避けて他人に責任を転嫁してしまう。

 「今、ここ」を生きようとせず、過去の記憶や将来への不安に心を奪われる。

ここでの「成功者(勝者)」「破壊的(敗者)」とは、いわゆる社会的ステータスに基づく「勝ち組・負け組」という考え方とは全く異なります。

また、「平凡」の脚本を「非勝者」とする考え方についても、思うところがあるでしょう。

あくまでも、

「自分の人生のゴールを自分で決め、責任をもって進んでいるか」

「子ども時代の影響によって、自分の人生が歪んだものや縛り付けられたものになっていないか」

という視点で、ご自身の人生がこの3つのどれに近いか考えてみてください。

【時間による脚本の分類】

また脚本は、時間によっても分類されます。

「その後」や「…まで」というように、脚本には時間の流れと結びついて作られているケースが多くあるためです。

時間の観点による脚本の分類には、次の6つがあります。

・「その後」式の脚本

 未来の困難を予想しているがため、現状維持に必死になったり、将来の不安が頭から離れなくなったりするという人の脚本です。

・「…まで」式の脚本

 「○○を達成するまでは我慢しなければいけない」という脚本で、強迫的・執着的な性格の方に多く見られます。

・「いくたびも」式の脚本

 子ども時代から「親より偉くなってはいけない」といった類のメッセージを感じていた人に見られる脚本です。

 目的を達成する直前に、自己破局に陥るということを何度も繰り返します。

・「いつまでも」式の脚本

 親から「言うことを聞かないなら、いつまでもそうしていなさい」と言われた人の脚本です。

 反社会的な行動をとる人に見られますが、成功者の脚本にもなるケースがあります。

・「決して」式の脚本

 子ども時代に、やりたかったことを親から禁じられた人の脚本です。

 したいことの願望を持ちながら、最後まで希望をかなえられずに人生を過ごします。

・「無計画」式の脚本

 定年や子どもの独立など、ある責任を果たした人がその後の人生計画を立てられないという脚本です。

 中高年に多く見られ、その結果ストレスを抱えるケースもあります。

脚本のもとになりやすい「禁止令」

「平凡(非勝者)」と「破壊的(敗者)」の脚本形成に関係が深いものに「禁止令」と呼ばれるものがあります。

「禁止令」とは、親が持つ子供の自我(C)から発せられるメッセージのことです。

例えば子供のころに親から虐待された、あるいは別の兄弟ばかりがもてはやされて自分は可愛がってもらえなかったとしましょう。

するとその経験は、子供が持つCの自我に「自分は存在してはいけない」という禁止令のメッセージとして伝わってしまい、その後はあえて危険な行動を繰り返すなど、禁止令に従うような人生を送ることになってしまうのです。

禁止令としては、以下のようなものが挙げられます。

・存在してはいけない

・成長してはいけない

・人に従ってはいけない

・まともに考えてはいけない

・成功してはいけない

・人を愛してはいけない

・健康であってはいけない

・感情を言葉にしてはいけない

・人生を楽しんではいけない

・皆の仲間に入ってはいけない 等

いずれの禁止令も、人生を送るうえで大きな足かせとなることがおわかりいただけるでしょう。

「脚本」から変わるためにできること

では、自らの「脚本」を変えるためには、どうすればよいのでしょうか。

最も大切なのは、「自分が同じような失敗をしたりトラブルにあったりするのは、『脚本』によるものではないか」と一度考えてもらうことです。

失敗やトラブルを繰り返している場合、えてして「自分は何をやってもダメだ」と思ったり、逆に「こんな目に遭うのは周りのせいだ」と責任転嫁したりと、原因を冷静に考えられない精神状態や思考になっていることがよくあります。

そのため、まずは落ち着いて現実を客観的に見つめ、そのうえで自分の生い立ちなど、根本的な背景に目を向けることが大切です。

もし原因が自身の「脚本」によるものだとなった場合、「再決断」という心理療法を行っていきます。

具体的には、まず自分が問題を繰り返してしまう時に、どのような不快感情(怒り、後悔、罪悪感など)を持つのか振り返ります。

その上で、同じような感情を持った過去の体験がないか思い起こしてもらい、思い当たる体験があった際は「今の自分ならこうする」と再決断をすることで、脚本からの解放を目指すというものです。

ただし、再決断療法ではつらい記憶が呼び起こされる可能性もあるため、一人で取り組むのは非常に困難を伴います。

まずは一度、交流分析に精通した医師や臨床心理士といった専門家によるカウンセリングをお受けになってください。

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今回ご紹介した脚本分析を含め、交流分析においては前提として人の思考や感情、行動のもとには、

・P:親(Parent)の影響で取り入れたもの

・A:大人(Adult)になってから備えたもの

・C:子供(Child)のころのまま残っているもの

という3つの自我状態があるとされています。

さらにP・A・Cの自我は下記5つに細分化でき、それらの自我の高低をグラフで示してくれるのが「エゴグラム」です。

 

Pから

  • CP(Critical Parent)・FP(Father Parent):厳しい父親的な部分

道徳的、厳格である、理想がある、頑固、批判的

  • NP(Nurturing Parent)・MP(Mother Parent):優しい母親的な部分

優しい、思いやりがある、世話好き、過保護・過干渉

 

  • A:冷静で客観的な大人な部分

合理的、冷静、クール、情に欠ける

 

Cから

  • FC(Free Child)・NC(Natural Child):自由な子どもの部分

活発、行動的、感情を隠さない、わがまま、自己中心的

  • AC(Adapted Child):従順な子どもの部分

他者を優先、協調性がある、他者が気になる、自信がない

 

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ぜひこちらのリンクから、自分のエゴグラムを調べてみてください。

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まとめ

今回は交流分析の柱の一つである「脚本分析」についてご紹介しました。

失敗を繰り返してしまう時、表層的な反省や対策は行っても、心の奥底では「運が悪かった」「わかってはいるけど、やめられない」などと思ってやり過ごしてしまうということはないでしょうか。

でも、もしもそれが自分の心にある「脚本」によるものであれば、その脚本から解き放たれることで、人生はより良いものになるはずです。

今回の記事を読んで、ご自身や身の回りの方で思い当たる節があれば、ぜひきっかけとしてご活用ください。

また、「賢者の人事」を運営する株式会社経営人事パートナーズでは、エゴグラムを活用した人材採用コンサルティングや人事戦略コンサルティングを行っております。

今回の記事を読んで会社としてエゴグラムの導入を検討したいという際は、お気軽にご相談ください。

 

※参考資料

杉田峰康著「3つの自分で人づきあいがラクになる エゴグラムで見える本当の私」創元社,2018年

杉田峰康著「あなたが演じるゲームと脚本 交流分析で探る心のうら・おもて」チーム医療,2006年

中村和子ら著「わかりやすい交流分析」第二版,チーム医療,2007年

杉田峰康ら著「脚本分析」チーム医療,1988年

中村延江ら著「図解&ワークでわかる・身につく 初学者のための交流分析の基礎」金子書房,2012年

Who is writing

1982年生まれ。大手建機レンタル会社や書店チェーン、金属材料販売会社に勤務する傍ら、小学生のころにテレビで見たイギリスにあるリンクスコースの光景に衝撃を受けて以来、ゴルフコースに関する情報収集を趣味としている。ゴルフコースに関する蔵書は、洋書も含めて数十冊。
日本交流分析学会 正会員