
はじめに
「管理職になりたくない若手が増えている」
そんな声をあなたも耳にしたことがあるのではないでしょうか?
以前は、「出世=成功」という価値観が当たり前でした。
役職が上がることにやりがいや誇りを感じ、収入アップや自分の判断で動ける幅が広がることを嬉しく思う人が多くいたはずです。
ところが、今ではどうでしょう?
- 責任ばかりが増える
- 残業や休日対応が増える
- メンタルケアまで求められる
そんな“割に合わなさ”に、多くの人が疑問を抱くようになっています。
一方で、企業側としては「管理職になりたがる人がいない」「後継者が育たない」といった悩みが深刻化しています。
管理職は単なるポジションではなく、組織を動かす中心的な存在です。
だからこそ、そこを担う人材が不足すれば、会社全体の成長にもブレーキがかかってしまうかもしれません。
では、なぜここまで“管理職離れ”が進んでいるのでしょうか?
そして、どうすれば個人が納得できるキャリアを築きながら、組織も持続的に機能する仕組みを作れるのでしょうか?
本記事では、「管理職を敬遠する理由」や「マネジメント一択の昇進制度が抱える限界」を整理しながら、これからの時代に求められる「多様なキャリアの形」と「企業がとるべき支援策」について解説していきます。
“出世=正解”の時代が終わりつつある今、あらためて「キャリアのあり方」を見直してみてください。
管理職になりたくない人が増えている背景

以前は「昇進=キャリアアップ」と考えるのが当たり前でしたが、今では「できれば管理職にはなりたくない…」「今の働き方を続けたい」という声が増えています。
なぜ、そう感じる人が多くなってきたのでしょうか?
その背景には、現代の働き方や価値観の変化に加えて、管理職に対するプレッシャーや不安が大きく影響しています。
①割に合わない
「責任は増えるのに、見返りは少ない」
これが、管理職になりたくない理由として多く聞かれる声です。
部下の育成・チームの成果・トラブル対応など、抱えるタスクやプレッシャーは確実に増えるのに、昇進による報酬アップや評価がそれに見合わないと感じてしまうのです。
特に近年は、成果主義の名のもとに数字だけで評価されやすくなっており、「失敗のリスクばかり高く、成功しても当たり前」という風潮も、管理職のモチベーションを下げる要因となっています。
②マネジメントがストレスになりやすい
部下の悩みに寄り添ったり、チーム内の調整を行ったりと、マネジメントには人との関わりがつきものです。
しかし、全員に気を配りながら成果も出すというバランスは簡単なことではありません。
「パワハラと思われたらどうしよう」「部下のメンタル不調にどう対応すればいいのか分からない」と悩む管理職も多く、結果として“人を管理するストレスから逃れたい”と考える人が増えています。
③プライベートとの両立が難しい
「家族との時間をちゃんと取りたい」
「仕事だけじゃなくて、趣味や自分の時間も大切にしたい」
そんなふうに、仕事とプライベートをバランスよく保ちたいと考える人が増えています。
しかし、管理職になると、早朝からの会議や夜の緊急対応、部下からの相談ごとなどで、自分の時間がどんどん奪われてしまいます。
そんなイメージがあるからこそ、あえて昇進を選ばない人も少なくありません。
特に、子育て中だったり、家族の介護をしていたりと、家庭の事情を抱える人にとっては、「マネージャーになったら生活が回らなくなりそう」と不安になるのも無理はありません。
④やりたい仕事から離れる
管理職になることで、好きな仕事から離れてしまうのもよくある話です。
例えば、エンジニアやデザイナー、研究職など、専門性を活かして成果を出してきた人にとって、「マネジメントの比重が増える=自分の強みを発揮できない」という状態になってしまいます。
「自分はプレイヤーとして成長し続けたいのに、昇進すると別の職種になってしまう」
そんなギャップに悩み、あえて昇進を断るケースも増えています。
⑤成長の実感を得にくい
現場でプレイヤーとして活躍していたときは、自分の頑張りがそのまま成果につながり、達成感や手応えを感じやすかったという人も多いはずです。
ところが、管理職になると「成果はチーム次第」「部下がどう動くかにかかっている」という場面が増え、自分がどれだけ貢献できているのか実感しづらくなってしまうことがあります。
また、自分の裁量だけではどうにもならない場面が増えたり、組織の方針に沿って動くことが求められたりと、「思うように動けないもどかしさ」を感じる人も少なくありません。
その結果、「自分って今、ちゃんと成長できているのかな?」「頑張っているのに報われている感じがしない…」と、モヤモヤを抱えてしまうこともあるのです。
こうした“成長の実感が薄れやすい”という点も、管理職を敬遠する理由の一つになっています。
管理職=唯一の昇進ルートの限界

これまで多くの企業では、「昇進=管理職になること」が当たり前の道でした。
成果を出せば課長、さらに部長へ、という一本道のキャリアモデルが主流だったのです。
しかし、管理職になれば業務の中心はマネジメントや管理業務となります。
自分で手を動かしていた頃と比べて、やりがいを感じにくくなる人も少なくありません。
さらに、マネジメント業務は責任が重い割に、報酬や裁量に見合わないと感じる場面もあるのが現実です。
特に近年では、「管理職になる=ワークライフバランスを犠牲にすること」と捉える人も増えてきています。
そうした中で、「マネジメントに興味はないけど、仕事は続けたい」「管理職にならないとキャリアが止まってしまうのは納得できない」と悩む人が出てきているのです。
つまり、“管理職になりたくない”という気持ちは、単なるわがままではありません。
「キャリアを積みたい」「成長したい」という想いはあっても、その手段が管理職しか用意されていないことに、もどかしさを感じているのです。
このような状況を放置すれば、優秀な人材が離職したり、成長の意欲を失ってしまうリスクにもつながりかねません。
だからこそ、企業としては「マネジメント以外にもキャリアアップの道がある」という選択肢を用意することが、これからますます重要になっていくのです。
昇進以外のキャリアパスが見えづらい現状

「管理職にはなりたくないけれど、成長はしたい」
「自分らしいキャリアを歩みたい」
そんな声が増えている一方で、管理職以外のキャリアパスが明確に用意されていない企業も少なくありません。
出世=マネジメントという一本道しか見えない状態では、「今のままでは先がない」「成長するには管理職になるしかないのか」と不安を抱える社員も増えていきます。
ここでは、そうした昇進以外のキャリアパスが見えづらい現状について整理していきます。
①出世しない=意欲がないと見なされる風土
「管理職にならない」という選択が、あたかも“やる気がない”という評価につながってしまう。
そんな職場の空気は、今も多くの企業に残っています。
本当は自分の専門性を深めたい、家庭とのバランスを優先したいなど、キャリアに対する前向きな意思であっても、「昇進を断った=会社への貢献意欲が低い」と受け取られることがあるのです。
こうした風土が続くと、社員は「選択肢があっても、評価されないなら意味がない」と感じてしまいます。
そして結果的に、マネジメントの適性がない人が昇進し、管理職に向いている人ほど管理職を敬遠するという“逆転現象”が起こってしまうのです。
企業がキャリアの多様化に本気で取り組むなら、「出世こそ正しい」という考え方にとらわれず、一人ひとりの働き方や得意分野に合った活躍の仕方をきちんと評価することが大切です。
②等級制度や評価軸が管理職前提でできている
多くの企業では、昇進や評価の仕組みが「管理職になること」を前提に設計されています。
等級が上がるにつれてマネジメント力が求められたり、「部下の育成」や「チームの成果」など、管理職向けの評価項目が増えていくのが一般的です。
しかしこれでは、専門職としてスキルを極めたい人や、マネジメントに興味がない人にとって、キャリアの先が見えにくくなってしまいます。
「管理職にならない=停滞」と見なされるような仕組みでは、多様な個性や価値観を持つ人が活躍しにくくなるかもしれません。
本来、キャリアの価値は“役職の高さ”だけで測るものではないはずです。
個人の志向や強みに応じた評価基準を整えない限り、キャリアの選択肢が狭まり、自分らしい働き方を見つけにくくなってしまいます。
③専門職や横展開型キャリアの不在
マネジメントに興味がない人にとって、「管理職を目指す以外の道」がほとんど用意されていないことは、大きなストレスになります。
特に問題なのは、専門職や横展開型のキャリアパスが制度として整っていないことです。
例えば、技術職やデザイン、企画職などでスキルを磨き続けたい人がいても、「等級が上がらない」「評価が上がらない」「給与も伸びない」といった壁に直面します。
また、営業からマーケティング、人事から広報といった職種間の異動や、横断的なキャリア形成が支援されていない企業では、挑戦の幅が限られてしまいます。
その結果、多くの社員が「出世するには管理職になるしかない」と感じてしまい、やりたいことをあきらめてしまったり、離職という選択に至ってしまうこともあります。
キャリアの多様化に向けて企業ができること

もはや「管理職=キャリアのゴール」という時代ではありません。
働く人それぞれの価値観やライフスタイルが多様化する今、企業には「マネジメント一択」ではない選択肢を用意することが求められています。
ここでは、企業ができる具体的な取り組みを3つご紹介しますので、参考にしてみてください。
①専門職のキャリアルートを整備する
マネジメントではなく、専門性を極めたい人のためのルートを明確に示すことが大切です。
例えば、
- 等級制度を分ける:同じグレード内で「マネジメント型」と「専門職型」の2つのルートを設定。職種やスキルに応じて選択できるようにする。
- 専門職用の評価基準を明確に設ける:売上や部下の育成ではなく、「技術力・知識の深さ」「社内外への貢献度」など、専門性に基づく評価項目を導入する。
- 役職がなくても報酬が上がる制度にする:役職手当に頼らず、等級や評価によって年収が上がる設計にすることで、管理職に昇進しなくても報われる環境をつくる。
- 専門職の社内認定制度を導入する:特定のスキルに優れた社員に対し、「社内○○認定」などの称号を付与し、専門性の見える化と処遇の納得感を高める。
このように、「プレイヤーとして極める道」が明確に用意されていれば、無理にマネジメントに進む必要がなくなり、自分に合ったキャリア形成が可能になります。
結果的に、専門性に優れた人材が社内に定着しやすくなるのです。
②キャリア面談やキャリアの自律支援体制を整える
管理職かどうかに関わらず、自分のキャリアを定期的に見直す機会があることが必要です。
とくに、管理職になることだけが選択肢ではない今、企業が支援すべきは“自分らしいキャリアを描くための土台づくり”です。
具体的な取り組み例は以下の通りです。
- 年に1〜2回のキャリア面談の制度化:上司との1on1では話しにくい将来の希望や悩みも、専用の面談枠であれば安心して話しやすくなります。育成・配置だけでなく「今の仕事をどう捉えているか」にも丁寧に耳を傾けることが重要です。
- キャリアコーチングや外部メンター制度の導入:第三者の視点で自分の強みや志向性を再確認できることで、「なんとなく管理職は嫌」という感情の背景も言語化しやすくなります。
- 自己申告制度の活用と見える化:異動希望やスキルアップ希望を年次で提出できる仕組みを整え、次の人材配置や育成計画にしっかり反映させることで、社員の信頼感が高まります。
こうした仕組みが整っていれば、「自分はどうなりたいのか」を軸にキャリアを考える人が増え、管理職に進む・進まないという選択自体が前向きなものになります。
③一時的な管理職離脱ができる制度設計にする
マネジメントに一度就いたら、どんなに状況が変わっても「そのまま続けなければならない」といった固定観念があると、管理職になること自体をためらう人も少なくありません。
例えば、育児や介護など家庭の事情を抱えるタイミングや、「今は専門スキルを磨きたい」といったキャリアの意向がある場合、柔軟にプレイヤーへ戻れる仕組みがあれば、「管理職=一方通行」ではなくなります。
また、こうした制度を設けることは、以下のような効果につながります。
- ライフイベントとの両立による離職防止:状況に応じて役割を見直せることで、「続けられない」ではなく「形を変えて続ける」という選択肢を持てるようになります。
- 再チャレンジの機会の提供:一度マネジメントから離れた人が、経験や意欲が整った段階で再び管理職にチャレンジするという「キャリアの再設計」が可能になります。
- 心理的安全性の確保:「合わなければ戻ってもいい」という安心感が、結果的に管理職への挑戦を後押しします。
実際に、一部の企業では「任意で役職を一時的に辞退できる制度」や「キャリアパスの見直し申請」を導入しており、特に中堅層や女性管理職の離脱防止に効果を上げています。
大切なのは、「キャリアは直線ではなく、曲線で描いていいもの」という考えを、制度として具体化しておくことです。
そうすることで、管理職というポジションもより柔軟で挑戦しやすいものへと変わっていきます。
管理職をなりたいポジションにするためには?

キャリアの選択肢を広げるだけでなく、「管理職って大変そう…」というイメージそのものを見直すことも、これからの企業には求められます。
つまり、管理職を「やりたくない役割」ではなく、「成長できるチャンス」「目指したくなるポジション」にしていくことが必要です。
「管理職になって良かった!」と思える人が増えていけば、自然とそのポジションを前向きに目指す人も増えていくはずです。
①適性に合ったマネジメント研修
すべての管理職に“完璧なリーダー像”を求めるのではなく、それぞれの得意分野や性格に合った研修や支援を提供することが大切です。
例えば、人を巻き込むのが得意な人には「チームビルディング中心」の研修、論理的に物事を整理するのが得意な人には「業務設計・仕組み化」に特化した学びの機会を提供するといったように、“その人の強みを軸にマネジメントを学べる設計”にするのがポイントです。
また、すぐに管理職を任せるのではなく、
- 副リーダー制度(リーダーのサポート役を経験できる)
- プロジェクトリーダー経験(短期的に少人数のチームをまとめる)
など、段階的にマネジメントスキルを身につけられる仕組みを整えることで、「いきなり責任が重くなるのは不安」という人の心理的ハードルも下がります。
「自分のスタイルでマネジメントできるかも」「管理職にもいろんなタイプがあっていい」と感じられることが、キャリア選択の幅を広げる第一歩になります。
②サポート体制の構築
管理職というポジションは、業務上の責任だけでなく、メンバーへの気配りや対人調整など、目に見えない負荷も多くかかります。
そうした中で、”なんでも一人でこなさなければならない”と感じてしまうと、心身の負担が大きくなり、管理職を続けたいという意欲が削がれてしまいます。
そこで大切なのが、「孤立させないサポート体制を整えること」です。
例えば、メインの管理職を支える副リーダー制度を導入すれば、日々の意思決定やスタッフとのやり取りを分担しながら進めることができ、心理的なプレッシャーも大きく減らせます。
また、悩みや不安を抱え込まずに話せるメンター制度や管理職向けの相談窓口があれば、「困ったときに頼れる人がいる」という安心感につながります。
特に初めてマネジメントを担う社員にとっては、自分のやり方を見直したり、他のリーダーの知見を得られる貴重な場にもなります。
さらに、「管理職同士の情報交換の場」を設けるのも有効です。
他部署のリーダーと悩みを共有し合うことで、「自分だけが大変なわけじゃない」と感じられ、孤独感の軽減や学びの機会にもなります。
このように、孤立せずに、安心して役割を果たせる環境が整えば、管理職に就くことへの不安が薄れ、「管理職=大変」という印象も、次第に「やりがいのある立場」として捉えられるようになっていきます。
③感謝や成果が可視化されるしくみ
マネジメントの仕事は、成果が数字に表れにくく、「自分の頑張りが見えづらい」と感じる場面が少なくありません。
メンバーの成長を後押ししたり、トラブルを未然に防いだりと、目立たないところで力を発揮していても、それが評価や感謝につながりにくいのが実情です。
だからこそ、管理職の貢献を“見える化”する工夫が必要です。
例えば、
- ピープルマネジメント指標を導入する:部下の成長度合いやエンゲージメントスコア、離職率など、管理職の“人を育てる力”を数値で見える化します。定量的なデータでの評価があることで、「頑張りが見えない」と感じるストレスを減らすことができます。
- チームの成果に対する評価と連動する:個々のメンバーだけでなく、チーム全体の目標達成や雰囲気づくりも、管理職の成果として評価します。
- 「ありがとう」を可視化するフィードバックを行う:部下や同僚から「このマネジメントに助けられた」「この働きかけがありがたかった」などの声をアンケートなどで集め、社内イントラや1on1の場で紹介する。感謝の声がデータとして残ることで、周囲からの信頼や貢献が見えるようになり、管理職本人のやりがいにも直結します。
こうした工夫を通じて、「管理職ってちゃんと見てもらえる」「評価される役割なんだ」と感じてもらえるような文化を育てていくことが大切です。
まとめ
今回は、管理職を敬遠する人が増えている理由と、これからのキャリアのあり方について解説しました。
かつては「昇進=管理職」が当たり前とされていましたが、今ではそうした考え方は変わりつつあります。
「責任の割に報われない」「やりたい仕事から離れる」「プライベートを犠牲にしたくない」といった理由から、管理職を目指さない人が増えているのです。
キャリアの価値観が多様化するなかで、管理職に進むことだけが正解ではない時代になっています。
だからこそ企業は、マネジメント以外にも多様なキャリアパスを整備し、それを支援する制度を構築していく必要があります。
それと同時に、管理職そのものの魅力も見直すことが求められます。
「大変なだけのポジション」ではなく、「影響力があり、やりがいもある役割」として捉え直し、安心して挑戦できる環境を整えることが大切です。
こうした取り組みによって、社員は自分らしいキャリアを選びやすくなり、結果的に定着率の向上や組織の持続的な成長にもつながっていきます。
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