人事評価の未来形は人間中心のアプローチへ

感情とバイアスの影響を受けない科学的根拠に基づく評価方法とは?

From 山極毅 丸の内のオフィスより

なぜ人事評価を再考すべきなのか?

経営者として、従業員の人事評価に頭を悩ませていませんか?

伝統的な人事評価制度は、しばしば好みや先入観、評価バイアスに囚われがちです。

これは決して社員個人の瑕疵ではなく、私たち人間が持つ本質的な特性から来るものです。

しかし、この現実が、従業員の能力評価やモチベーション管理において、真の透明性と公平性を達成することを困難にしています。


変革への第一歩は、評価システムそのものに対する根本的な見直しから始まります。

最も重要なのは、評価プロセスを人間中心のものへとシフトし、従業員一人ひとりの声を聴くことです。

これには、透明性の向上、頻繁なフィードバックの促進、そして何よりも、評価のプロセス自体を従業員の成長と発展に直結させることが含まれます。

新しいアプローチによって、従業員は自身の能力と潜在性を最大限に引き出す機会を得られます。

また、個々の従業員だけでなく、組織全体のパフォーマンス向上にも寄与します。

従業員が自分自身の成長を実感できる文化を構築することで、企業は持続可能な成長と革新を達成することが可能となるでしょう。


心理学からみた人事評価制度の問題点とは?

企業の生命線はその人材にあり、従業員の評価方法はその成功を大きく左右します。

しかし、伝統的な人事評価制度は、しばしば人間の根本的な感情や評価バイアスの影響を受けやすいという問題が指摘されています。

この認識は、実際に多くの研究で裏付けられています。

たとえば、ハーバードビジネススクールの研究では、従来の年次評価が従業員のモチベーションを低下させ、パフォーマンスの改善にほとんど寄与しないことが明らかにされました。

また、心理学の分野では、人間は無意識のうちに自分に似た人物を高く評価する傾向(いわゆる「類似性バイアス」)があることが知られています。

このようなバイアスは、公平で客観的な評価を困難にします。

さらに、Googleが実施した「プロジェクト・アリストテレス」では、チームの成果に最も影響を与える要素は、個々のチームメンバーのスキルや成績ではなく、「心理的安全性」であることが判明しました。

従業員が安心してリスクを取り、アイデアを自由に表現できる環境がパフォーマンス向上に不可欠であることを示しています。

この発見は、評価制度が従業員間の信頼とオープンなコミュニケーションを促進する必要があることを強調しています。

これらのエビデンスは、企業が従業員評価の仕組みを根本から見直し、より人間性を尊重し、個々の従業員の成長と発展に焦点を当てる新しいアプローチを模索する必要があることを示唆しています。

従業員の真の価値と潜在能力を引き出し、組織全体のパフォーマンス向上に繋がる新しい評価の枠組みの構築は、今日の企業にとって不可欠な課題となっているのです。

人間の基本感情、好き嫌いが避けられない理由

人間は基本的に感情を持つ存在であり、無意識のうちに自分の好みや価値観を判断基準にしてしまいます。

これは社会的な相互作用の中で自然に形成されるものであり、完全に排除することはできません。

特に職場環境において、これらの感情や好き嫌いは評価プロセスに大きな影響を及ぼし得ます。

人事評価における評価バイアスとは何か?評価バイアスとは、非客観的な判断や先入観に基づく偏りのことを指します。

これには、前出の類似性バイアス(自分に似ている人を高く評価する傾向)、ハロー効果(一つの特徴が全体の評価を左右する現象)、過去の実績に対する過度の依存などがあります。

これらのバイアスは、公平で正確な評価を妨げる主な要因となります。

新しい評価の枠組みは、これらのバイアスを認識し、それに対処する方法を含める必要があります。

多角的なフィードバックの導入、評価基準の明確化と共有、定期的な自己評価と他評を組み合わせることが含まれます。

目標は、従業員の能力と成果をより公正に評価し、個人の成長と組織の発展を促進することにあります。

新しい評価システムの活用法

新しい評価システムでは、何を実施すれば良いのでしょうか?

1.定期的なチェックインの導入

月一で設ける従業員との個別のチェックイン(進捗確認)では、達成した目標や直面する課題について話し合います。

この対話を通じて、成功体験を共有し、具体的な改善点や次のステップに繋がるアクションプランを一緒に策定します。

こうしたセッションが、従業員のモチベーションを維持し、持続可能なサポートを提供する鍵となります。

2.マルチソースフィードバックの活用

年2回実施するマルチソースフィードバックは、上司だけでなく、同僚や部下からも意見を集めることで、より全面的かつバランスの取れた評価を行います。

この多角的な視点は、評価バイアスを減少させ、従業員一人ひとりの真のパフォーマンスを明らかにします。

3.成長と発展に焦点を当てる

評価プロセスは、パフォーマンス向上だけでなく、従業員のキャリア進展や学習とスキル開発の機会にも重点を置くべきです。

従業員が自己の可能性を最大限に発揮し、組織内での成長と発展を実感できるよう支援することが重要です。

4.透明性の確保

評価基準やプロセス、そして結果を従業員と共有することで、評価の透明性を保証します。

信頼の構築と従業員の理解と納得を促すことは、評価システムの成功に不可欠な要素です。

この開かれたコミュニケーションが、企業文化の進化と従業員のエンゲージメント向上に寄与します。

 

評価の革新は人間性を中心としたアプローチから

現代の企業が直面している最大の挑戦の一つは、従業員の能力と貢献をどのように評価し、認識するかという問題です。

従来の人事評価システムがもたらす評価バイアスや不公平感に対処するため、人間性を尊重し、個々の従業員の成長と発展に焦点を当てる新しいアプローチが求められています。

この変革は、従業員と組織双方にとって利益をもたらすことが明らかになっています。

評価プロセスを再設計することは、単に公平性を確保するためだけではありません。

それは、従業員が自分自身のキャリアパスと成長機会について深く考え、自己啓発に取り組む環境を提供することにもつながります。

企業が成長するためには、従業員一人ひとりが自分の可能性を最大限に発揮し、継続的にスキルを向上させる必要があります。

継続的なフィードバックは、従業員のパフォーマンスとモチベーションを向上させる鍵です。

定期的なチェックインやマルチソースフィードバックを通じて、従業員は自分の仕事に対する直接的な評価を受け取り、何が期待されているのか、そしてどのように改善できるのかを明確に理解することができます。

これにより、従業員は自身のキャリアを積極的に形成し、組織の目標達成に貢献する意欲を持つことができます。

評価プロセスの透明性を高めることで、従業員は自分がどのように評価されているのかを正確に理解し、そのプロセスに信頼を置くことができます。

また、共感を基にしたコミュニケーションは、従業員と管理者の間の信頼関係を深め、より良い職場環境の構築に寄与することでしょう。

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変化は、今こそ求められています。

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一緒に学び、成長し、あなたの組織を変革していきましょう。

今こそ行動の時、あなたからのご連絡を心よりお待ちしています。

Who is writing

山極 毅(やまぎわ たけし)
株式会社経営人事パートナーズ 代表取締役
横浜国立大学大学院工学研究科卒業

元日産自動車グローバル人事部長 兼日本人事企画部長
日本交流分析学会正会員

”人は、会社がなくても生きていける。 しかし、会社は人がいなければ存続できない。”

2009年12月、もうすぐ冬季休暇になるある日、私は人事部長に呼ばれました。そして、このように告げられました。

「来年の4月1日付けで、本社のグローバル人事部の部長職に異動してもらうことになりました。詳しい仕事の内容は、着任後に上司の役員から聞いてください」

私の人事部人生は、このように突然始まりました。

4月に着任し、そのアメリカ人上司のところに行くと、

「あなたには、世界中の社員の採用と離職に伴う人員の変動と、日産グループ全体の人件費管理をやってもらいます」と言われました。

人事部経験の無い私に、なぜそのような重要な仕事を任せるのですか?と聞いてみたところ、「今の人事部は、数値の扱い方が出来ていない。エンジニアと商品企画の経験を活かして、人的資源管理(リソースマネジメント)を会社に定着させて欲しいのです」、という答えが返ってきました。

経験も前例もない仕事ですから、それからしばらくは悪戦苦闘の日々が続きました。古くから人事部にいる先輩や同僚だけでなく、社外の知恵も聞きに行きました。

前例のない悪戦苦闘の3年が過ぎた頃、私のチームはグローバル社員数25万人と、毎月1万人の人の出入りを管理し、約1兆円の人件費の活用状況を毎月役員会にレポートできるまで成長していました。

日本の連結会社のデータは稼働15日で、全世界のデータは稼働25日でまとめられるようになっていました。

これらの経験を通して得られた教訓は、「すべての人事業務は、連携させて考えた方が上手くいく」ということでした。

採用は採用チームの問題、人材育成は育成チームの問題、人事評価は評価制度チームの問題、賃金テーブルは経理部門が検討する課題というように、課題ごとに対応策を考えていくことが、効率的な方策であると信じられています。

ギリシアの思想家アリストテレスは、「全体は部分の総和に勝る」という名言を残しました。これは、全体には部分の総和以上の構造が存在していることを示しています。

人間だれしも、自分のことを客観視することは難しいわけですが、同じことは会社にも当てはまります。

弊社は、様々な成功例と失敗例を見てきた知識と経験を応用して、お客様の人事課題を客観的に把握し、共に解決策を考えるパートナーとなることを目指しています。