【人事×医学】後編:アーユルヴェーダを活かせる!組織の適材適所

人をさまざまな観点で診るアーユルヴェーダ医学。なんと、組織の適材適所にも応用できるんです。

健康のカギは、引き算

前編では、アーユルヴェーダ医学の基礎的な考え方を中心にご紹介しながら、健康面だけでなく個性の捉え方についてまとめました。

後編では、それぞれのドーシャの特徴や、自分がどのような体質なのか、実際にセルフチェックをしながら、就職や転職、さらには組織の適材適所に活かせる点をお伝えしていきたいと思います。

自分の体質を知る前に、まずは自分の健康を維持したり取り戻したりするためのバランスのとり方について、アーユルヴェーダの考え方・実践方法をご紹介します。

アーユルヴェーダでは、自分を整えるために、増幅したドーシャを減らすことを意識します。(ドーシャについては、前編で説明していますのでご覧ください)

凸凹の凸に合わせるのでもなく、平均化するのでもなく、本来の自分の凸凹のバランスに近い状態に戻すというイメージです。

そのため、「ズレ」に注目します。

ズレがあったら、そのズレを修正していくことがカギになります。

どのように修正していくのか。

こたえは、増幅してしまったドーシャの性質と反対の性質のものを選択する、ということです。

反対の性質の食べ物・飲み物やスパイスをとることで、増えすぎたドーシャを減らすことができます。

例えば、カパが増えすぎていたら、カパを減らす食べ物をとる。

ヴァ―タが増えすぎていたら、ヴァ―タを減らす飲み物をとる。

他のドーシャを増やすのではなく、あくまで減らす、引き算の考え方です。

一つ具体例をご紹介しましょう。

朝食の代表例といえば、バナナ。

バナナとヨーグルト、パンにコーヒーが朝の定番という方も多いのではないでしょうか。

バナナ、粘り気があって密度もあり、とても甘いですよね。

熱帯のフルーツですから、身体を冷やし滋養する作用があります。

食べやすくて美味しいのですが、バナナはカパを増やす性質をもつ食べ物です。

カパのエネルギーは、体内に粘液を増やす作用があり、必要以上に粘液が分泌されると、身体の経路を塞いでしまいます。

そのため、喘息や鼻炎などカパ性のトラブルに悩まされやすいような、カパが元々優勢の体質の方には、常食はあまりオススメできません。

例えばバナナを食べたい場合は、シナモンや蜂蜜など、カパを減らす性質のスパイス等を加えたり、飲み物をコーヒーではなく生姜を効かせた紅茶にしたりと、カパを増やしすぎない工夫をしていただくことが可能です。

反対に、ヴァ―タが優勢な体質の人には、高滋養のバナナが合います。

こんな感じで、バナナが合う人もいれば、かえってカパを増やすので合わない人もいる。

乳製品や納豆・キムチなどの発酵食品、生野菜やフルーツ、玄米や小麦、さまざまなオイル類も、それぞれに性質があり、食べる人の優勢なドーシャによって同じことが言えます。

味の視点で簡単に整理すると、

  • ヴァ―タ優勢の人は、甘味・酸味・塩味
  • ピッタ優勢の人は、甘味・苦味・渋味
  • カパ優勢の人は、苦味・渋味・辛味

を意識して摂ると、自分の優勢なドーシャの増幅を抑える助けになります。

なんでもかんでも全員に当てはまるわけではなく、食べ物も自分の体質に合ったものが存在します。

そのためアーユルヴェーダでは、食べ物の好き嫌いもあってよい、と考えます。

どんなに身体に良いと言われていても、不味いと感じるもの、嫌いなものを無理して食べる必要はありません。

本来のバランスが整っている人間の身体は、自分が必要としているものを食べたい・飲みたいと感じます。

拒否反応が起きているということは、自分の体質には必要ではないということです。

子どもの野菜嫌いも、アーユルヴェーダでは寛容です。

今回は食事を例に挙げましたが、その他にも運動や日々の過ごし方も、体質によってバランスのとり方が異なります。

さらに、アーユルヴェーダでは、何を食べるか以上に、どう食べるかという視点がより重要なのですが、今回は健康の記事ではないので、興味のある方は調べてみてください。

では、みなさんはどのような体質をもっているのでしょうか。

 

自分の体質をチェックしてみよう

前編でお伝えしたとおり、アーユルヴェーダにおける体質(サンスクリット語でプラクリティ)とは、一人ひとり異なる、生まれもったバランスの体質であり、個性のことです。

体質には、外見や身体の生理的側面だけでなく、性格や気質、好み、考え方や行動パターンの傾向まで含まれます。

プラクリティは生涯変わることがありません。

今回のセルフチェックは、あくまで一つのアプローチで、これだけですべてが分かるわけではありませんが、参考になると思います。

チェックするときの視点は2つです。

・子どもの頃の特徴 もしくは ずっと変わっていないもの

・現在のピンポイントの状況

プラクリティは、生まれもった体質のため、まだ周囲の影響の少ない小学校低学年くらいまでの気質や性格が、本来の自分に近いものであると考えることができます。

そのため、できるだけ幼少期の自分がどんな状況だったか、もしくは子どもの頃から現在まであまり大きく変化していないと感じる特徴を観察してみることがポイントです。

対して、現在のピンポイントの状況は、さまざまな環境要因で、何か突出している特徴があるかもしれません。

それは、増幅され、乱れてしまっているドーシャ=後天的な体質である可能性も高いです。(後天的な体質についても前編でご紹介しておりますので、ぜひご覧ください)

この両者のズレに気づき、違和感があれば修正していくことで、本来の楽な状態の自分を取り戻していく、という考え方になります。

 

それでは、体質の簡単なセルフチェックをしてみましょう。

アーユルヴェーダでは、「観察」を重視します。

よくよくご自身と向き合ってみてください。

今回は比較的わかりやすい観察項目をピックアップしてみました。

それぞれの項目で3つのドーシャのどれに当てはまるか(または近いか)をチェックしていきましょう。

 

【身体的・生理的な特徴】

【精神面・言動の特徴】

 

それぞれ、何個当てはまりましたか?

一番多いものが、あなたの体質の優勢なエネルギーの可能性があります。

どれか2つのドーシャが同じくらいの数という方も多いと思いますが、その場合は混合型のタイプです。

セルフチェックだけでなく、身近な人や、上司・部下に当てはめてみても、興味深い結果がでてくると思います。

長い付き合いのある人を思い浮かべて、まずは精神面や言動の特徴から見ていき、優勢なドーシャの目星をつけて、最後に外見の特徴をみていくと、確かにあの人はピッタ優勢かもしれない、なんて、妙に納得するケースもあるでしょう。

もちろん、どの体質が良い悪いはまったくなく、相手を決めつけるような単純なものでもありません。

このチェックを通して、自分自身の日々の何気ない言動を意識的に観察してみるきっかけになればと思います。

また、自分だけでなく、他の人との違いを認め合うこと、そして相手を許容できることをアーユルヴェーダでは大切にしています。

最終的に自分の本来の体質を知りたい方は、熟練のアーユルヴェーダドクターの脈診が必要ですので、機会があれば、ぜひインドやスリランカを訪れてみてください。

 

スーパーでりんごを1個だけ買ってくるのは誰?

ここで、こんなケースを想像してみましょう。

お母さんが、3人の子どもにおつかいを頼んだとします。

3人の子どもは、それぞれ体質が違います。

ヴァ―タ優勢のAちゃん、ピッタ優勢のBくん、カパ優勢のCちゃん。

「商店街のスーパーで、りんごを1個だけ買ってきてほしい」

さて、お母さんの依頼に、それぞれどんな行動をとるでしょうか。

 

まず、一目散に駆け出したのはヴァ―タ優勢のAちゃん。

目的を実行するために、初動が速いです。

Aちゃん、いつもお母さんと行く商店街のスーパーに着きました。

はて、何を買うんだっけ?

一瞬忘れますが、りんごを思い出します。

りんごを1個手に取ると、店員さんから「今日はみかんが美味しいよ」とオススメが。

じゃあ、みかんもくださいと、依頼にはなかった大袋のみかんも買うことに。

帰り道は、目的を達成したことに満足し、興味のある他のお店についつい寄り道。

ずいぶん時間が経ってから、戻ってきました。

 

次にピッタ優勢のBくん。

なんだかご機嫌ななめです。

ちょうど買ってもらったばかりのゲームをしようと思っていたからです。

商店街にまっすぐ向かい、いつものスーパーに着くと、激安セールで店内が混雑していました。

レジも長蛇の列。

並ぶ時間がもったいない。

一刻も早く帰宅してゲームをしたいBくん。

お腹もすいて我慢できなかったので、早々にスーパーを出て、隣の八百屋に売っているりんごを2個買って、1個食べながら戻ってきました。

 

最後はカパ優勢のCちゃん。

あれれ、頼まれたのに、なかなか出かけません。

30分後、ゆっくり動き出すと、そのままいつもの商店街のスーパーへ。

「みかんも安くて今日はオススメだよ」と店員さんに声をかけられても、依頼されたりんごを1個だけ買って、そのまま真っすぐ帰路へ。

気づけば、ずいぶん前に出かけたAちゃんよりも早く帰宅しました。

 

それぞれのドーシャの行動特性にフォーカスすると、こんなことが起こり得るかもしれません。

子どもで考えると、3人とも愛おしいキャラですよね。

しかし、これが責任を伴う仕事となると、別問題。

しっかりと適材適所を考えることが大切になってきます。

 

人事に応用!長所を活かした適材適所

さて、「賢者の人事」は人事情報メディアなので、ここからが本題。

この体質論をもとに、実際の組織の適材適所を考えてみましょう。

就職や転職をお考えの方は、自分自身と志望企業を想定してみてもいいと思います。

 

ヴァータ体質のキーワード:アイデア豊富、発想力やセンス、スピード感、外交的

芸術的なセンスやクリエイティブな才能を発揮するのが、ヴァ―タ体質の人です。

好奇心旺盛で、フットワークが軽く、発想力も豊かなので、企画職や新規事業の立ち上げメンバーなどに1人いると助かるかもしれません。

ただし、体力がないので、仕事のピークに風邪を引きやすく、どちらかというと瞬発力を発揮する短期集中型の傾向にあります。

また、頭の回転が速く、社交的で誰とでも楽しく話すことができ、打ち解けることが得意なので、新規開拓の営業にも向いています。

社内で頻繁に異動があっても、興味のある分野であれば、理解力があり適応も早いので、すぐに戦力になることも期待できます。

トレンドにも敏感なので、ChatGPTなど、最新のAIや最先端の技術にすぐ反応し、抵抗なくインプットできるのも、ヴァ―タ優勢の人の得意分野です。

 

ピッタ体質のキーワード:リーダーシップ、簡潔なアウトプット、決断力、効率化

決断力があり、はっきり分かりやすく自分の意見を述べるので、統率型のリーダーとしてチームをまとめる役割も得意です。

責任感・正義感のある医療従事者や福祉関係者、また企業の経営者の方々に、ピッタ優勢の体質の方は多い印象です。

わりと気が短くプライドが高い傾向もあるので、他者に対して攻撃的になってしまう一面もある一方で、一度受け入れた相手にはとことん親身になる人情家でもあります。

また、目的が明確でない、収穫のないダラダラした社内会議などには、意味を見出せずにイライラしてしまうタイプです。

反対に、業務効率化を考えて計画的に実行するような仕事は、ピッタ優勢の人は俄然やる気が出ます。

体力も継続力も、ヴァ―タとカパの中間くらいのエネルギーです。

 

カパ体質のキーワード:コツコツ、継続型、確実なインプット、忍耐力

長期的にじっくりスキルを習得することが求められ、一人前になるのに時間がかかるような仕事を任せると、忍耐力があるため、安定して力を発揮してくれます。

3つの体質の中で、もっとも体力があるので、踏ん張りどころの時期に、うまく体調管理をしながらコンスタントに遂行してくれる可能性が高いです。

一方で、新しいことやスピードが求められることが苦手なため、変化の激しい仕事はストレスを抱えやすくなる可能性があります。

例えば人事部の中でも、これら3つの体質のメンバーがうまく組み合わさるといいかもしれないですね。

ヴァ―タ優勢の人は、採用イベントや研修の企画、大学や関連機関への渉外活動、とにかく興味のあることにはフットワーク軽く、動きまわることが好きで得意です。

スピード感を求められる仕事や、マーケティングや情報収集を任せても力を発揮してくれるでしょう。

煮詰まったときに、人が思いつかないような逆転の発想を生み出すこともあります。

ピッタ優勢の人は、大きな決断が求められるような、組織の最終責任者としての役割が向いています。

自社の利益も考えながら無駄を省く、効率型です。

採用活動であれば、会社説明会など、人前に立って求職者に分かりやすく説明することが得意です。

話が脱線することが少なく、的を射た回答をします。

計画的にきっちり遂行するタイプなので、年間のスケジュール作成やプロセス管理にも向いています。

カパ優勢の人は、ひな形のある資料作成や当日の会場準備、イベント後のアンケート集計などのコツコツ事務をはじめ、一見地味な作業も同じ工程も飽きることなく、ミスなく遂行します。

リサーチを重ね、じっくり考えてこたえを出す類の仕事も向いています。

また、長期スパンの重要な外部研修の受講を誰かに任せたいと思ったら、カパ優勢のメンバーに行ってもらうと、学び好きで忠実な側面を発揮し、しっかりインプットしてきてくれることでしょう。

 

私たちの資質の中に、これら3つとも存在しているのですが、きっと無理なく遂行できるうえに成果も上がりやすい、自分の得意なものがあるはずです。

あくまで上記は一例ですが、それが含まれるドーシャが、自分の優勢な体質である可能性が高く、発揮しやすい力ということになります。

 

体質は変わらないけれど、人間性は変えられる

最後にもうひとつ、アーユルヴェーダが教えてくれる大切な考え方をご紹介します。

それは、自分の生まれもった体質や個性は変えられないけれど、心の性質、つまり人間性・人間力は変えられる、ということです。

アーユルヴェーダでは、心には主に3つの性質(サンスクリット語でグナと言います)があると言われています。

サットヴァ:純性 

  • 明るく軽やかで素直、感情が安定している。
  • 物事を公平にみることができ、誠実で向上心がある。
  • 自信があり、目標が明確である。
  • 心身ともに満たされていて、とてもクリアな状態。
  • 自分を律することができ、他者に与えることができる。

ラジャス:激性

  • エネルギッシュで活発に動くが、疲れているのに頑張りすぎる傾向がある。
  • バランスが崩れると怒りや嫉妬に支配される。
  • 物質的な豊かさや刺激を求めがちで、自分の内側より外側に意識が向いている。
  • 他人と比べて感情が左右されやすい。
  • 我が強く、野心や欲望が強い。

タマス:惰性

  • 何もする気が起こらず、常にネガティブな状態。
  • 自己中心的な考え方で、他人に興味がない。
  • 執着心が強く、思い込みや妄想が激しい。

 

私たちは3つとも併せ持っていますが、生涯を通してサットヴァな生き方に近づくことが理想とされます。

タマス→ラジャス→サットヴァの順に成長していくことになります。

メンタルの状態で表すと、躁状態がラジャス、鬱状態がタマスの性質に支配されてしまっているとも言えます。

サットヴァは非常にバランスのとれた状態です。

どんなに忙しくても、心に余裕があって、軽やか。

筆者の今までの社会人生活を振り返ると、尊敬する上司や、年齢関係なく素敵だなと思う人は、それぞれ個性はまったく違っても、サットヴァな言動が多く、とても穏やかな人が多いです。

 

体質・個性は、もともと備わっているもの。認識して発揮させていくもの。

人間性は、育てていくもの。互いに成長し合うことができるもの。

 

組織における人材育成においても、スキルに関する育成とは別に、何か組織に問題があったときに、それは個性がうまくはまっていない環境の問題なのか、互いの成長が必要な人間力の問題なのか、その見極めがとても大切です。

問題の渦中にいると、両者は案外ごっちゃになりやすく、地味に落とし穴になっているケースもあるかもしれません。

 

さいごに

いかがでしたでしょうか。

アーユルヴェーダ医学の理論を、人事の視点から解釈し、2回に分けてお届けしてきました。

アーユルヴェーダは、人はそれぞれ違うことを知るためにあるとも言えます。

“みんな違ってみんないい”を地でいく医学、それがアーユルヴェーダです。

自己理解のためのツールとして、エゴグラム・エニアグラム・ストレングスファインダーなど、さまざまな診断を受けたことがある方も多いと思いますが、アーユルヴェーダの診断は観察が中心です。

自己評価・他己評価ともに可能なので、人事研修のプログラムの中に取り入れても面白いですし、就職や転職の際の自己分析のひとつに加えても、理解が深まるのではないでしょうか。

人の個性や資質について興味のある方、アーユルヴェーダをもっと知りたい方は、日本でもさまざまな機関やスクールで学ぶことが可能なので、ぜひ探究してみてくださいね。

Who is writing

大学卒業後、人材業界にて法人営業・キャリアコンサルティングに従事。
20代~60代まで幅広い年齢層のキャリア・メンタル相談を経験する。
その後、企業の新卒採用代行、大学生の就職活動支援、さまざまな生きづらさを抱えた学生と向き合う伴走支援に携わり、現在の社会構造と人の活かし方に疑問をもつ。
また、人にかかわる問題の根底は「教育」にあると考え、幼少期の教育・子育て分野にも
キャリアを広げている。
2級キャリアコンサルティング技能士(国家資格)